朝の肌寒さがゆっくりと緩み始める。やわらかな陽射しだった。 猫になりたいと思うほどそれは真綿のように身を包んでくれる。
朝の道。国道の長いトンネルの手前で昨日の彼女に追い着く。 街路樹の近くに荷を下ろしひと休みをしているところだった。
つかの間の語らい。やはりもう何日もお風呂に入っていないとのこと。 昨夜のことを正直に話す。結局何もしてあげられなかった事を詫びた。
若い女性の身で野宿はどんなにか辛い事だろう。今日は行ける所まで。 重い荷物を背負っての旅は計り知れなくて。寝場所を探すのも苦労だ。
でも歩いてみます。少し不安そうな顔をしながら微笑んでくれたのだった。
12月8日で26歳になるのだそうだ。それまでにはきっと結願をしたい。 そう決めて大阪から四国に渡ったのだと言う。大丈夫きっと叶うから。 苦しい時や辛い時がどんなにあっても。嬉しいこともきっとあるから。
そう言って励ますのが精一杯だった。ぼちぼちと行こうね無理をせずに。
朝陽が射し始めた街路樹の下で名残惜しく手を振ってふたり別れる。 胸に熱いものが込み上げてくるのを振り切るように私は駆けて行った。
なんだろうこれは。それは痛みでもなく感極まったのでもない気がする。
涙がとまらなくなった。胸が熱くてならない。どうしようもなく熱くて。
これも一期一会なのだろう。ありがたい縁なのだろうとつくづくと思った。
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