もう今年は見ることもないだろうと思っていた入道雲の空。 そうして日暮れてから声を限りにして鳴く蝉の声を聴いた。
いきながらもどりつつやがて遠ざかるだろう夏のことを思う。
晩春に終えていた川仕事の再開。また漁場の準備を始める頃になった。 月日の経つのがほんとうに早く感じる。そうしてすぐに冬が来るのか。 今日は川に竹の杭を打つ作業に励んだ。冷んやりの水もすぐに温かく。 右往左往しながら心地よく汗を流した。数日はかかるだろうが頑張ろう。
どんなに疲れても身体を酷使するのが楽しい。とても活き活きとする。
夕方。例のごとく散歩。今日はあんずのことを「あんこ」と呼んでみた。 「あんこ、さんぽ、いっぽ、さんぽ」と歌うように声をかけながら行く。 やはり思ったとおりだった。なんとご機嫌が良い。私も楽しくて笑った。
お大師堂には今日も明かりが灯っている。直感を頼りにすぐに踵を返す。 昨日とは確かに違う。雰囲気というか空気というか近寄りがたい気がした。
昨日はどうしても行きたくなってしまいひとりのお遍路さんに出会えたのだ。 自分でも不思議でならない。なにかとても引きよされるように会いに行った。
それが縁というものですよとその人は言う。とても澄んだ目をした人だった。 「あなたは頑張っていますね。すごくわかりますよ」とまで言ってくれた。
その途端に張り詰めていたものがどっと崩れるようになり涙が出そうになる。
修行僧だというその人はとても尊かった。そして何よりも清々しい人だった。
この人が私を呼んでくれたのだと思う。だからなのだ私は迷わず歩いて行けた。
こんなふうにして出会える。なんとありがたい縁だろうこころから感謝をする。
手繰り寄せられる糸。か細くてとても頼りなくも思える糸。
けれども繋がっている糸。きっと巡り会える糸が必ずある。
たての糸とよこの糸を重ねあいながら縁という布ができる。
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