| 2009年08月18日(火) |
生まれてくれてありがとう |
日暮れがほんの少し早くなったように思う。 紅い太陽がぐんぐんと落ちていくところを。 呼び止めるように縋りつくように見ていた。
あの日も夕陽を感じた。部屋中に紅が満ちていて。 私はうめき声をあげながらその時を待っていたのだ。 痛みは12時間も続きもう耐え切れずただただ苦しく。 お腹に手をあてながら何度も懇願するように呼んだ。
午後7時50分。ほんとうにあっけなくすぽんとかるく。 その子が生まれる。けれども泣き声が聴こえなかった。 一瞬パニックになってしまい大声をあげて喚き叫んだ。 ほんのつかの間の事。やがて火がついたような泣き声。
ちっちゃくてしわくちゃでほんとうにお猿さんみたいだ。 手を握ってみる。足に触れてみる。ああこの踵だと思う。
その踵の手触りは確かに私のお臍のあたりにいつもあった。 時々は蹴ってみたり。時々はとんがったまま痒くなったり。 その踵がすべてであるかのように語りかけてもみたのだった。
28年前の今日のこと。その子はそれから「さっちゃん」になる。
親は子供に育ててもらうというけれど。まさにその通りだと思う。 夏に生まれたその子は向日葵のように明るく朗らかな子供だった。
子育てが苦手だった私を助けるようにすくすくと育ってくれる。 そうしていつの間にかおとなになって今もそばにいてくれるのだ。
やがては嫁ぐ日も来るだろう。母はとても淋しくなってしまいそう。
引きとめられず縋りつけず。それも親の成長の過程かもしれない。
ちいさな秋を知らせるように虫の声が絶え間なく聴こえてくる夜。
少しだけ老いた母はサチコのことをたくさんたくさん想っています。
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