雨のち晴れ。午後つよく吹きぬける西風が心地よかった。 吹かれたくてならなくなる。雨の残り香が漂う道を歩く。
川辺には野バラが満開になり。あちらこちらに群生している。 それはほのかに優しく匂い。立ち止まらずにはいられなかった。
自分がそこに佇んでいることをふと奇蹟のように思うことがある。 歩いてきたことを忘れて。そこに舞い降りてきたかのように思う。
蝶であるわけがなく鳥でもない。羽根らしきものは何ひとつない。 けれどもふわりとしたその感覚。それはどんな言葉でも言い表せない。
川岸に続く石段に腰をおろし。しばし放心していた。波立つ川面を。 ただぼんやりと見つめていると。何か灰汁のようなものがぽとりと。
落ちた。
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