柔らかな陽射しが穏やかに降り注ぐ小春日和。
こころのどこか見えないところにどうしようもなく。 重いことがあったのだろうか。忘れたふりをしては。 確かめていたのかもしれない。霧かもしれないこと。 泡かもしれないこと。吹き溜まった風かもしれない。
こと。いまは微かに影法師。光をみつけたかげぼうし。
「ありがたいことやねお父ちゃん」父の遺影に手を合わす。
月明かりに助けられて夜道を独りぼっちで歩いた。 あんずはお散歩より晩御飯の方が良いのだと言って。 いやいやをする。尻込みをして梃子でも動かなくて。 犬小屋の前でふたりすったもんだをして愉快だった。
だいじょうぶ。母さんは独りで行ける。満月の夜だもの。
土手の石段をあがり堤防の道から夜空を仰ぐ。星がみっつ。 そうしてひとつきりの月のなんと綺麗で輝かしい事だろう。 しばし放心状態になり。夜気を心じゅうに感じ深く息をする。
お大師堂の灯りを目指して歩きながら。ずっと月を見ていた。 わたしが歩くと月も動く。同じ方向へちゃんと一緒にうごく。 ウサギさんもいる。今夜は美味しいお餅が搗きあがるだろうな。
子供のような心になって。おとなの今を一歩いっぽ足取り軽く歩く。 重かったこと。そうしてとことん自分を責め続けていた秋の日々が。
初冬の満月に照らされてもう救われていることを感じた。ありがとう。
もう思い残すことがないくらいの影法師が。まだ生きたがっていることを。
どうかゆるしてくださいね。わたしが星ではなくて月になれるその夜まで。
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