| 2007年09月04日(火) |
あしたの風にあいにいこう |
真夜中に。つくつくぼうしが鳴いていた。それはとてもか細くて哀しくて。 午前二時。誰もその声を聴いていないのなら。せめて私がと耳を澄ました。
夢だろうって彼がいう。真夜中にセミが鳴くもんかって彼が言うので。 もう知らない。もうなにもおしえてなんかあげないって思う。本気で。
仕事に行く。今日も峠の道を越えていく。窓を全開で走ると緑の風が心地良い。 真っ白の星みたいな花が今年も咲いた。名も知らぬ花だからよけいに愛しい花。 蔦みたいに絡まって咲く。緑のために咲く。それはとても健気な姿で咲くのだ。
お遍路さんを追い抜く。まだ夜が明けぬうちから歩き始めたのだろうか。汗で。 白装束がべっとりと濡れていた。赤いTシャツが透けて見える。まだ青年の顔。
いつものように会釈をする。気がついてはもらえないけれど。それが私の日課。 とてもとても自己満足だけれど。そうして始まる一日はとても穏やかに思える。
いらいら虫がおとなしくしてくれる。ささいなことで目くじらなど立てない。 けれど。時たま失敗もする。いかんいかんと反省しつつ。なんとか遣り過ごす。
そんな日々だ。ありがたい日々だといつも思う。そうして心を穏やかにたもつ。
お昼。今日は野暮用のため早退だった。お弁当を持ったまま『蛍湖』へ向かう。 水筒にちゃんとお茶も用意して。今日こそはのんびりゆったり食べようと思う。 いらいら虫がいつも愚痴る。私がお弁当食べてる時、目の前で仕事しないでって。
だいじょうぶ。今日は誰も邪魔するひとがいないから。胃も痛くならないのだ。
ダムの休憩所で風に吹かれながら昼食。蛍湖って蛍いるのかなって思いながら。 なんかとりとめもないことばっかり思って。もぐもぐと唐揚げチキンを頬ばる。
そうして帰路。今度はかなりの下り坂だ。エンジンブレーキで鼻歌の坂道だ。 嬉しくてならない道。帰るってほんとに嬉しい。いつも逃げるように走る道。
そうしていると。目の前に見覚えのある姿を発見した。今朝の若いお遍路さんだ。 赤いTシャツ。タオルで髪の毛をぎゅっとして。つんのめるように前へ進んでいる。
ここまで歩いたんだ。かれこれ4時間。ずっと歩いてここまで辿り着いたんだ。 お昼ご飯ちゃんと食べたのかな。おなか空いているんじゃないかなあって心配。 なんかそう思うと申し訳ないような。ついさっきまでのんびり寛いでいた自分。
だけど。彼の足取りはとても元気だった。なんだか気持ち良さそうに歩いていて。 そういうのってすごい嬉しい。そういうのって自分だってすくっとしてくるから。
がんばってねって声をかける。もちろん聴こえはしないけど。がんばってねって。
ああ今日もいい日だった。そう思える夜は。私なりに幸せな夜なのであります。
あしたは明日の風にきっと出逢えるんだもん。
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