まだ五分咲きほどの桜並木は染井吉野。 その桜並木にあってひと際純白に咲く桜の木がある。 艶やかな緑の葉と合わさりなんともいえず可憐な花が。 こぼれ落ちそうに咲いているのを見つけた。
名はなんと呼べばいいのだろう。知りたくてたまらなくなる。 だけども桜はさくら。ほんのつかの間のひと時を惜しむように。
さくらに逢った。
ひとが慌しく去っていく。退職です。転勤ですと言って去っていく。 また会える日も来るでしょうと。なるべくの笑顔でお別れを告げつつ。
若いその人は。もう今の仕事ではやっていけないと嘆き遠い町へ行くのだと言う。 不景気の嵐のさなか。30歳の節目を機に決めた再出発であるらしかったけれど。
前途を祝福する気持ちは大いにありながら。やたら淋しさが我が身を襲ってくる。 少しばかり親しくしてもらっていたものだから。ひどく情というものが私にあった。
これが今生の別れ。すっかりそう決め付けているようにも思う。
彼の10年と私の10年は。とんでもなくかけ離れてはこの先過ぎて行くだろう。 私は決して追いつけないところにいる。そしてどんどん老いて先を行くのだろう。
一期一会をおもえば。ほんとうにありがたい縁だとつくづくそう思う。
どうか元気で。そんなありふれた言葉しか言えない。
この先。どんなに老いても。生きて再会できればどんなに嬉しいことだろう。
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