12月の声を聞くと。やはりさすがに冬らしく。南国とはいえきりっとした寒さ。 青空にほっとしていてもたちまちのうちに暗雲が広がり。強い風と共に時雨も来る。
早朝。彼とふたり川仕事に出掛けた。ちょうど朝陽が昇り始めた頃の紅い空は。 なんともいえず美しい空で。月ではないかと思うほどの太陽はその輪郭も鮮やかに。 くっきりと燃え始める前の光のかたちを見せて。終わりではなく歩むことを知らせてくれる。
堤防から見下ろす川海苔の漁場は。これもまた感嘆の声をあげずにはいられなくして。 カメラ持って来ればよかったなあって彼が言ってくれたのが。やたらと嬉しかったりした。
今年も海苔の生育は順調で何よりに思う。年明けからすぐに収獲出来そうで胸が膨らむ。 自然の恩恵を受けられることは。ほんとうにありがたいことだとつくづく思うのだった。
午後。急に思い立ち。和室の障子を張り替えてみようと決める。 昨夜見たテレビ。 三丁目の夕日の影響かもしれなかった。
障子を破いてみたかった。拳骨でバシッバシっとそうしてベリベリっと剥がしてみたい。 うん。そうそう。子供の頃にはこれが楽しみだったと思い出しては懐かしくてたまらない。 水の冷たさもなんのその。この爽快に勝るものはないと思える。ほんとにいい気持ちだった。
だけど。それからすぐに時雨が来て大慌てで。まだ乾き切れぬのを座敷に立てかけては。 ふうはあの溜息がどっと出て来る。破くのは楽しいけれど張るのはいささか憂鬱なものである。 それはひとりではとうてい無理であると決め付けて。とうとう彼の手を借りることになった。
彼はさすがに手際よく。それも遠い昔を思い出しているかのような微笑ましい姿で。 下から順番に張るんだぞとか言いながら。近視の眼鏡をはずして目を細めての作業であった。
そしてもう夕暮近く。おおっと声をあげるほど綺麗にすべての障子を張り替えてくれたのだ。
真新しいその和紙の白さほど暖かなものはなく。なんだか胸に込みあげてくるような空気に。 満たされていて。ほのぼのと幸せだなと思う。彼にそっと手を合わしたい気持ちだった。
思えば。今までずっと。破り続けていたのは わたし。
彼といういうひとは。なんどもなんどもそれを繕ってくれたひとだったのだ・・。
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