やはり青空は愛しいものだった。濁流の名残りの大河さえ眩しく光に満ちていて。 水鳥が群れて飛ぶ空から天使のように舞い下りて来ては。浮かぶ川面に心が和む。
今日は。悲しいお弔いの日であった。 その庭にはくっきりと切り揃えられた山茶花の垣根に。激しかった雨のせいか。 桃色の花びらがまるで小道のように散り続いていては。胸に痛く儚なげであるばかり。
私たち夫婦にとっては恩人にほかならず。そのひとがいてくれたおかげで今がある。 ふたりには元同僚であり。夫にとってはよき先輩でもあったのだけど。 すぐ裏隣に住んでいながら。その恩にどれほど報えたのかと問うてみても。 あまりにも不義理を重ねてばかりだったと。今になり悔むばかりであった。
身近すぎたのかもしれないとも思う。朝に晩にすぐ近くに声を聞きながら。 それに慣れすぎて。それが当然のように思って。気がつけばながい歳月が流れた。
だからこそ最期の声も真っ直ぐに届いて来てくれたし。すぐに駆けつけることも出来た。 だけど。救ってあげることが出来なかった。あと2分早ければもしやと悔まれてならない。
ましてそのはかり知れない苦悩や。とことん追い詰められていたであろう心痛を思うと。 ただただいつも笑顔だったこと。気さくで明るくて朗らかだったことばかりが浮かんでくるのだ。
お棺にたくさんの花に埋れて。決して安らかとはいえない死顔はとても遣りきれなかったが。
とうとう永久の別れ。「お父さんほんとにありがとう。今までお世話になりました」と。 残された奥さんが涙声で告げたのだった・・・。
悲しみに勝ること。それが感謝でなくてなんだろうとつくづくと思ったことだった。
「ありがとう」「ありがとう」とふたり手をあわせて。私たちも彼と別れた。
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