薄く曇った空のした。今日は久しぶりに海の道を通った。 真っ青じゃなくて。なんというか薄絹を纏ったような海。
曇り日の海が好きだった。遠い日の記憶がさらさらと波にとける。 あの日誰を想って。あの日何をそれほどに思い詰めていたのかと。
問うことを躊躇ってしまうほど。それはとても儚くて脆い過ぎし日。

『海猿』を観に行った。片道2時間半もかかる道のりを二人で。 昔からあった映画館とかそういうところがみんな閉館になってしまって。 今はとあるショッピングセンター内のシネマホールでしか観られなくなった。 田舎者のおんちゃんとおばちゃんには。ちときついではないかと思われる場所。 案の定。ふたりはそのおっきなイオン高知の店内で迷った。あっちだこっちだ。
でもそういうのがちょっと楽しくて。やっと辿り着いた時には笑い合って。 おまけに夫婦割引というのがあって。どちらかが50歳過ぎてると半額なんだ。 おんちゃんが得意顔で免許証を見せる。私は夫婦ってお得だなって嬉しかった。
でもしかし。次の上映まで2時間近くあった。 そんでちょっと早いけど昼食にして。レストラン街で天ざるセットを食べる。 それから。すごくこれは私的に素敵な時間を頂くことになったんだけど。 とにかくすべてのお店をゆっくりと見たいと言ったら。おんちゃんはお手上げで。 俺はクルマで寝る!と言ってくれたのだ。うんそうしなよそれがいいと妻は言う。
何を買うでもなく。手にとってみたり。ほんとうにいろんなものを眺めた。 こんなにゆっくりウィンドショッピングしたのは初めてではないかと思う。
そしてやっと『海猿』それはそれでとてもよかった。 となりにおんちゃんが座っていることを忘れるくらいよかった。
観終って。おんちゃんの50センチ後ろを歩きながら思う。 肩並べて歩こうとしないおばちゃんを許してねとか思った。
一緒なんだけど一緒じゃない。
すごくそれは言葉に出来ない。きみょうな違和感がそこにあった。
|