降り続くばかりの雨がやっとやんで。ほっとするような青い空だった。 雨に打たれてしょんぼりとうなだれていた『雪の下』が咲き始める。 好きなんだこの花。ちっちゃな天使みたいで。すごく可愛いなって思う。
なにかがおわりそうで。なにかをなくしそうで。それでいてなにかが。 またはじまるよかんが。ほろほろとすこしせつなく。てのひらにおちて。
くる。きせつがめぐってきたことを。そっとしらせてくれる花だった。

夕餉。兄と妹がめずらしく同じ時刻に帰宅する。 差し向かいで仲睦まじく語り合いながら食事をしているのを。 母は隣りの部屋にいて。微笑ましく耳を傾けているのだった。
にいちゃん。にいちゃんと。サチコがやたらおっきな声で話している。 聞き納めなのだろう。こんなふうにふたりがいることは最後なのだろう。 そう思うと。ふと淋しくて。母はちょっとオセンチになってしまうのだ。
どうやら食べ終ったようだ。「にいちゃん!流しまでちゃんと運んで!」 サチコがまたおっきな声で叫んでいる。にいちゃんが階段を駆け上がる。 「もう・・そんなんじゃ、ちえさんが困るやんか」しょうがないなあと。 サチコの呟く声が聞こえる。ほんにまあ。にいちゃんはいつもこんなふう。
ふたりがいなくなった台所で。ふたりの食器とお弁当箱を洗う。 ああよかった。お弁当箱はカラカラ音がするくらいきれいに食べてくれている。
にいちゃんのお弁当を作るのは。今日で最後だった。 保育園の頃からなので23年かな。母さんながいこと偉かったよね。 もうお役御免になったんだ。わあいわあい楽ちんになったなあ。
ぷしゅーっと。 母さんの気が抜けていく。
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