朝の陽射しにほっとしたのもつかのま。黒雲が立ち込めてきて時雨れてしまう。 冷たい雨だった。冬があがいているような。とうとう最後だと知らせに来たような。
だけど春なのにちがいない。今日を花冷えの頃と記しておくことにしよう。
わたしは。少しずつあることから吹っ切れている。 もしかしたら。もうとらわれてはいないのかも。 しれないのだ。よくわからないけどそう感じられる。
むかし書いたことがある。「その後ろ指を折ってあげる」と。 あの頃は若かったのだろう。はむかうことなどなんでもなかった。 あたしはあたしなんだと胸をはって。どうどうと生きていられた。
希望も夢もいっぱいあった。いつか世に出てやろうという欲さえもあった。 毎日書いて書いて満たされていたし。誰にも書けない『わたし』だと信じてもいた。
いつかきっと。そう思っていた。まだまだこれからだと思っていたのだ。
なのに。とうとうわたしは老いてしまったらしい。
歩めば歩むほど時が重い。その重さに押し潰されそうになってしまう。
それでもわたしは歩みたい。目標は。ただただ存在するということのみ。
書かなければ。『わたし』は死んでしまうのだから。
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