くもり時々雨の予報だったが。雨はほんのつかの間。 冬の名残のような時雨だった。そして西風が強くなる。 いよいよ彼岸なのだなと思う。去年の今頃に雪が降ったことを思い出す。
季が裂ける。あちらがわとこちらがわがまざりあって。ついに別れるのだろう。 冬は痛いのだろうか。春は真っ直ぐに空に立っている。花は咲き香るばかりだった。
海が鳴る音をききながら。風に吹かれ。川の中で海苔を摘んでいる時。 すぐ近くに何かが落ちてきたような気配を感じ。ふと顔を上げて見ると。 一羽の白鷺が舞い下りて来たところだった。こんなに近くで見るのは初めて。 なんて美しい姿なのだろうとしばし手を休めて見入る。そしたらきょとんと。 その純白の鳥も私を見つめてくれたのだ。目が合った。とても優しい目をしていた。
ずっと見ていてねと声をかけて。また俯いてせっせと海苔を摘む。 気恥ずかしいような照れくささ。そしてちょっと得意顔の私がいた。
どのくらいそうしていたのか。今度ふっと顔を上げたら。もう見えなくて。 いつ飛び立ったのか気づかなかった。ただただ吹く風に小粒の雨が降るばかり。
そんなひと時のありがたさ。こころはそうしていつも温められていく。
お父ちゃん?なんだかその鳥が死んだお父ちゃんだったような気がした。
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