冷たい雨が。静かにずっと降り続いていた。 言葉を失った空の。ためいきのような雨だった。
職場の前の小道を。お遍路さんが通る。 それはとても鮮やかな色の雨合羽を着ていて。 私にはそれがすごくあたたかな陽のように見えた。
オババの髪の毛がボサボサで。なんだかしょぼくれていて。 明日美容院へ行くように勧める。仕事は大丈夫だからと言って。 すっきりするよ。髪が綺麗になるとすごくいい気持ちだよって。 そしたら素直に「うん、、」と言う。なんだかほっと嬉しかった。
それからトイレに行った私は。ふっと母のことを想った。 嫌いだって思う気持ちがずっと付き纏っていたのに違いない。 尊敬できないと。もしかしたらそう決め付けているだけかもしれないと。
母を頼って。母に会いたくて。元夫から逃げ出して来た私を。 駅まで迎えに来てくれた母は。涙ひとつ見せずに。きりりっと立っていた。
20歳になったばかりだった私を。そうして母はまた育ててくれたのだ。 その恩を。どうして私は忘れてしまっていたのだろうか・・。
恨んでいたのは13歳の私だった。だってあの朝は私の誕生日だったから。 目が覚めたら母はもうどこにもいなかった。あの時の悲しみが恨みだった。
赦してあげなくてはいけない。そんな恨みを抱いた13歳の私のことを。 それができたら。きっと母を。心から愛することが出来るだろう。
オババ。いいえ。私のお母さん。
明日は。すっきりといい気持ちになってね。そしたら私もすごく嬉しいよ。
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