朝方。どしゃぶりの雨が降る。 空にぶたれているみたいな。なんか悪いことしたかなって。 思うほど。それは容赦なく。痛みを感じるほど大粒のあめ。
夕暮れて。湿っぽいけれど。心地良い風が吹く。 何かが終って。何かが始まるみたいな。生き生きとした風。
わたしはよこたわってみたくなる。 すべてをなげだしてすべてをわすれて。 じぶんだけをおぼえていたいなとおもう。
忘れられないこと。それは思い出。
あの頃。教室の机のなかに。そっと日記ノートを置いて帰った。 確かに誰かが読んでいる。支離滅裂でどうしようもなかった。 わたしのことを知ってしまったひとがいた。
紙切れに丁寧な字で「自分を大切に」と書いてあった。 誰なのかわからない。定時制で勉強している誰かであるらしい。
胸が熱くてたまらなくて。 明くる日もまたノートを残して帰る。 期待していた。すがりつくような思いだったかもしれない。
でも。それっきりだった。 だけど。その時いただいた言葉が。なんてありがたかったことか。
誰なのかわからないひと。ほんとうに顔も知らない誰かに。 わたしは頬を打たれたのかもしれなかった。 痛みよりも。もっとあたたかな何かが。そこにあったように思う。
そしておとなになる。いまもまだせいちょうしている。 すくっとしている日もあれば。うなだれている日もある。
わたしは書きながら発信している。 きっと誰かの胸に。この信号が届くことを信じて。
頬を打つことはしない。かわりに。ぎゅっと抱きしめてあげたい。
|