残暑厳しい日かと思えば。風がよく吹いて。なんだかその風が。 夏の背中を押そうとしているように思えた。午後は。河鹿の声。 るるるると聞こえるのがほんとうらしい。そう思って耳を澄ませば。 るるしゃあるるしゃあと聞こえるのだ。ほうとうに不思議な鳴き声。
お昼休みに古い友人に電話をする。 かつては恋人だったのかもしれないひとだったが。 あまりにもながい歳月が流れてしまって。ただただ懐かしい声だった。
会社のことで。いまいちばん緊迫している問題とか聞いてもらい。 いろいろアドバイスをしてもらう。職業柄、法律にも詳しくて助かった。 頼りになる人。彼以外にはどうしても思い浮かばなかったけれど。 最後の最後まで頼りたくはなかった。だけどとうとうその時が来たのか。
おかげで。また強く立ち向かう勇気が生まれてくる。 矢でも鉄砲でも持ってこいと思えるようになれた。
どのような縁なのかわからない。ただ切れることのないありがいたい縁。
彼の生まれ育った山里に。るるしゃあるるしゃあ。
河鹿の声を。彼は憶えているのだろうか。
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