ゆらゆら日記
風に吹かれてゆらゆらと気の向くままに生きていきたいもんです。

2005年07月17日(日) うたをうたえば

その町はアンパンマンの町だった。
酒屋さんの店先に彼はいつも笑顔で立っている。
それからすぐ斜め前のタクシー会社の扉の横に。
仲間のカツドンマンがいるのだ。小さな田舎町。
そこが彼らの生まれ故郷なのを。知っているだろうか?


愛ちゃんは。ついこのまえ88歳になったばかり。
夏風邪をこじらせて。今は病院で点滴の毎日なのだ。

広くんは。9月になったら92歳になる。
愛ちゃんが老人ホームへ入居してからも。
ずっと一人でご飯を作って。頑張っていたけれど。
転んで腰を痛めてしまって。とうとう老人ホームへ。

4年前に会ったきりだった。
その日。愛ちゃんはいっぱい泣いたのだった。
「すぐに帰るのやったら、もう来んとって」と言って。

その言葉を真に受けてなどいなかったはずなのに。
私は。それ以来会いに行くことをしなかった。


愛ちゃんは。すごくちっちゃくなって。か弱くて。
でも。ちゃんと私を覚えていてくれたから。とても嬉しかった。
手を握って。いろんな話しをした。子供の頃の夏休みのこととか。
一緒に寝ていたら。愛ちゃんの入れ歯が外れて、私の手を噛んでしまった。
こととか。愛ちゃんも思い出してくれて。懐かしそうにケラケラと笑った。

それから。急に愛ちゃんが歌をうたいはじめて。
「お〜て〜てつないで の〜みちをいけば み〜んなか〜わい こ〜とりぃ
 になって う〜たをう〜たえば く〜つがなる」

咳き込んで苦しそうになって。止めたのに最後まで歌い続けるのだった。

私はいっぱいいっぱい反省した。もっとたくさん会いに来てあげるべきだった。
私の4年と。愛ちゃんの4年は。決しておなじ長さではなかったと思う。


老いることは。すごく勇敢に命と向かいあっていくことではないか。
終わることを知りながら。ただただ進んでいく勇気そのものではないか。


愛ちゃんは泣かなかった。

                 私は  ちょっと  泣いた。




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