2002年07月21日(日) |
夕暮れて物語・・水の章 |
せつないと涙が出る・・そして暑いと汗が出る。 拭っても拭っても涙が零れる・・そして汗は額から頬へ首筋へつぅっと流れる。 どちらも私のなかの水。同じなんだと思う。だから泣いてもいいと思う。
いやはや・・どうも最近涙もろくていけません。 おまけにとても汗っかきときている。 このままじゃ私は干からびてしまいそうだ。皺くちゃになるのは嫌だよ。
だから私は水分を補給する。ただの水じゃダメなんだ。 もっと私を刺激するようなそれでいて精神を保護するようなたとえば抱くような水が欲しい。 喉を潤し心を満たし・・いいよこれで・・きみのちからになってあげると言ってくれる水。
頼り過ぎているのかもしれない。そんな不安を打ち消すように私は溺れる。 これ以上沈まないためにこれ以上暴れないためにこれ以上流されないために・・。 そして息を吹き返す。ああ・・生きていると私は思う。酔っている精神が真実の私だ。
ふう・・疲れた。いちいち説明しなくても飲みたければ飲めばいいのさ!
買い物帰りにビールを飲んでしまった。それはとてもいけないことだと思った。 そして何食わぬ顔をしてクルマを飛ばし、帰ってからまたビールを飲んだ。
ふらつく足で川辺を歩いた。誰にも見られたくないな・・と思っていた。 ゆらゆらと静かに川面が揺れている。薄っすらとオレンジ色のさらさらとした水。 一艘の川船が音をたてて通り過ぎた。いきなり水が暴れ出す。 ちゃぽんちゃぽんと私をめがけそれが襲い掛かって来た。 来いよ!ほらもっとこっち!私は挑発している。怖いことなんて何もない。 ただ・・私に構って欲しいのだ。寂しくてたまらないのだ。
サンダルを脱ぎ捨て水を今度は誘惑する。ほら濡らしてごらん!手を伸ばしてごらん! 水はそこまで近くなっているくせにイヤイヤをする。頬を染めているくせに素直にならない。 波だっているくせにまるでそれを気付かれるのが自分の落ち度だと恥じるように・・。
私は足を浸してみる。ひんやりとそれは冷たい水の頬。 その頬を叩いてみる。痛いと言ってごらん・・もっと暴れてごらん。
水は急におとなしくなる。はるか遠くまで薄紅色に染まり流れることを忘れたように。 その静けさが怖くなる。そしてたまらなく寂しくなる。
どうして涙が零れるんだ・・・。 私は酔っていた。もっと欲しいと願った水が・・きっとこれなんだと思っていた。
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