読書記録

2017年02月08日(水) 君も雛罌粟われも雛罌粟 上下/渡辺 淳一


 与謝野鉄幹・晶子夫妻の生涯

雛罌粟(コクリコ)とはフランス語でひなげしのこと。

パリへ旅立った鉄幹を追ってパリに行った晶子が、二人で行ったツール郊外の一面ひなげしの花の中で詠んだ歌からこのタイトルは付けられた。

  ああ皐月仏蘭西の野は火の色す君の雛罌粟われも雛罌粟 晶子




初めは圧倒的に夫の鉄幹が優位にいるが、途中から徐々に妻の晶子が伸びてきて、最後は完全に立場が逆転し、鉄幹は、いわゆる濡れ落ち葉的な存在になる。歌の才能もその成果も、すべて逆転するなかで、夫婦は激しく憎み合い、ときには殺意を覚えるほど争うが、それでも二人は別れない、というより愛は一層深まっていく。
その中で二人は五男六女、十一人の子の親になっていた。
三十五年の夫婦生活だった。


それにしても晶子のバイタリティというか、生活力には感嘆する。
大阪の小林天眠らスポンサーがいたとはいえ、寛が主宰した『明星』への協力はおろか、生活力のない寛に変わってお金の苦労に家事、育児どれをとってもスーパーウーマンそれにつきる。
山川登美子や前妻、その他女性歌人との関係もあるし、何より寛をパリへ遊学させるための費用、そして晶子自身が寛を追ってパリに赴く費用、どれをとっても何大抵ではない。
今の何かにつけて便利な社会でもこれほどに女性力を持つ人はなかなかいないであろう。

著者のことは『失楽園』に代表されるようなちょっとエロい小説しか想像できなかったが、この物語は相当な資料の読み込みと理解がなければ到底書けなかったであろうと、いいものを読ませてもらったと感謝したい。














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fuu [MAIL]