| 2025年12月10日(水) |
ゆっくり歩く / 小川 公代 |
ウルフ、ギリガン、芥川、ハン・ガン、日蓮、カフカ…。 ゆっくり歩けない娘と、ゆっくりしか歩けない母。ふたりが一緒に歩くと、喜怒哀楽がくっきりとやってくる! 文学を通じて縦横無尽に「ケア」を語ってきた著者 (イギリスロマン主義文学・および医学史 が専攻)パーキンソン病と診断された母に導かれて到達した新ケア論を綴る。 件名 パーキンソン病−闘病記
「ゆっくり歩く」というのは、もちろん自立した人間が一人で散歩するときにもふさわしい表現なのかもしれないが、愛する誰かと歩調を合わせるため、その人に力を貸すため、「ゆっくり歩く」というのもアリだと思った。
母を介護できたおかげで、病気を抱える人間の経験とはどういうものなのか、それを実存的に思い知った。正直いうと、最初の頃は介護に明け暮れた一日を振り返って「今日一日何もできなかった」と悔しがることのほうが多かった。しかし、それは自分がまだゆっくり歩けていなかったからだ。
|