天使に恋をしたら・・・ ...angel

 

 

痛い封筒 - 2007年05月19日(土)

封筒が届いた。ICUのスペシャリストの試験結果の通知。

封を開けられない。やっと少し癒えてきた失恋みたいな傷がまた痛む。

「日本で大学受験したときもそうだったもん。ああダメだった、って思った。お母さんは『開けなさいよ、受かってるかもしれないじゃないの?』ってそわそわしながら言ったけど、うすっぺらい封筒は不合格に決まってるんだから。で、きっちりそうだったもん」「ぐちゃぐちゃ言わずに、ほら開けなってば」。電話の向こうのジェイソンが促すけど、うすっぺらい封筒は不合格に決まってるんだから。「勝手に決めつけるなよ、開けなってば」「『ほら、ダメだったじゃん。そう言ったじゃん』ってあたしが言うのを聞きたいの?」「違うよ。不合格って決めつけてるきみが『合格』の文字を見てどんなふうにショックを受けるのかを聞きたいんだよ」。

ダメ。開けられない。痛い。胸が痛いよ。

あたしね、デイビッドとブレイクアップしたとき悲しくなかった。泣かなかった。もうこれでやなケンカばっかしなくていいんだって、ほっとさえした。この試験はね、終わった直後にあたしの胸を壊したの。ひどい失恋だよ。あれからずっと痛くてやっと立ち直りかけてるんだから、もういいんだって。

チキンって笑われちゃった。いいんだ、チキンで。


ここ二日、冬が戻ったみたいに寒くてお天気が悪い。仕事でもやなことばっか。

でも昨日はいいことあった。
ジェニーが教会友だちたちとサルサ踊りに行くからって誘ってくれた。ジェニーはちょっと前から教会のサルサ仲間とときどき踊りに行ってる。「パートナーダンスは苦手」って、わたしがダンスに誘っても、「見るのは好きなんだ」って来ることは来るけど、ほんとに座って見てるだけだったのに。

ジェニーはボーのリードで、ちゃんとビート外さずにちゃんとボーの顔を見てちゃんと自然にフォローしてる。ステップもちゃんとしっかりしてる。ジェニーのレベルに合わせたボーのリードは的確で、ジェニーはくるくるターンさえする。わたしはそんなジェニーを見て嬉しくて嬉しくて手を叩いて歓声を上げる。1曲終わるたんびにわたしのとこに来て、「目が回っちゃった」って笑うジェニーがかわいい。それに、ジェニーとボーはお似合いだ。すごくキュートなカップルのスイートなダンス。わたしはずっと笑顔が止まらなかった。「ボーとならすごくコンフォタブルに踊れるんだ」って、踊りに行った話をするときジェニーはいつも言ってた。

ジェニー、ボーとつき合えばいいのに。あれ? つき合ってるのかな? 聞いてないけど。でも、以前は教会仲間と出掛けるの嫌いだったくせに、最近はダンスだけじゃなくていろいろ参加してる。そこにボーがいつもいる。先週のアルーバの旅行にも、ボーがいた。

ジェニー、ボーと結婚すればいいのに。

ジェニーの結婚式には、わたしはピアノを弾く約束をしてる。ピアノ弾きたいって言ったら、「うん、素敵。でも、じゃああたしのブライズメイドになってくれないの?」って拗ねてたけど、わたしブライズメイドになるより、ずっとピアノを弾いてあげたい。そしたらせっかくジェイソンと二人でおしゃれ決め込んで出席しても、ジェイソンの隣に座れないのか。それは困ったな。


なんてな。


今、外で撮影してるジェイソンが電話をくれた。「封筒開けた?」って、まだ言ってる。開けないんだってば。でもちょっと痛みが和らいだかな。写真を取るのが好きなジェイソンが好きだから。


うん、ほんとだ。和らいだ。でも封筒開けない。


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結婚式 - 2007年05月13日(日)

クラリスの結婚式はものすごく素敵だった。 

花婿のパパの腕を取って入って来たクラリスはお日様みたいないっぱいいっぱいの笑顔で輝いてて、わたしはもうそれだけで涙がこぼれてしまった。結婚式はフォーマルなところはきちんとフォーマルだけどあとはジョークだらけで笑って笑って、それはあの明るいクラリスそのものだった。

クラリスが住んでた街はわたしたちの教会から車で5分ほどのとこだったけど、クラリスが選んだ教会はクラリスの街の小さな教会で、ミニスターにクラリスが選んだのはわたしたちの友だちパスターのドゥリューだった。わたしたちのあのだだっ広い教会とパスター・ピートのミニスターじゃあんなふうにほのぼのあったかい笑いでいっぱいの結婚式になんなかったかもしれない。わかんないけどな。パスター・ピートもジョークばっか飛ばすパスターだから。

あの教会はとてもかわいくて、地下のお部屋で開かれたブライダル・パーティもとてもコージーでなごやかで、クラリスはみんなを笑わせてばかりいて、何もかもクラリスらしかった。


ジェイソンが選んだわたしのドレスは、わたしの第三候補のバーガーンディーのタイトなドレスだった。裾がアシメントリーに少しフレアーになってて、細い肩ひもとV字の胸のラインが首の線を綺麗に見せるんだってさ。足の骨を折る直前に買って以来、一度だけタンゴ踊りに行ったとき着ただけのドレス。唯一持ってる「高級ジュエリー」の母が昔買ってくれた真珠のネックレスをつけたら、「ダメダメ。せっかくのシンプルさが台無しになる。Less is more。知ってる?」って却下された。髪もアップにしたかったのに、シンプルにただ降ろしただけがいいんだってさ。靴は黒のシルクのを履きたかったのに、「いい靴だけどバツ。バーガーンディーの靴持ってないの?」って却下された。「ある。持ってる」って取り出した、ちょっと前に衝動買いした20ドルの安物。フェイクのスエードのバーガーンディーが不思議とドレスの色にぴったり。スタイルもぴったり。スキニー・ジーンズに合わせて履こうと思って買ったのに。買っててよかった。

さすが写真家だな、ジェイソン。スタイリストにもうるさく注文つけるんだろうな。バッグもジャケットもうるさく選んでもらった。なんかそういうの、すっごく嬉しかった。

バーガンジーの細い3インチのハイヒールは80’s踊ってるときもヒップホップ踊ってるときも、クラリスにベリーダンス踊らせて自分も一緒に踊ってるときも、リックとサルサ踊ってくるくるターンしてるときも全然平気だったのに、クラリスとグルームのミックをお見送りして自分の車に向かってる途中突然足がジンジン痛み出した。

今日はスニーカーを履いて教会に行く。

ジェニーはアルーバに旅行に行ってていない。母の日だからみんな教会終わってからすぐうちに帰っちゃうし、わたしはひとりでランチも食べずにお決まりの教会のあとのグローサリー・ショッピング。ジェイソンの好きなアリゾナ・アイスティーの1ガロン入りをふたつも買って帰ったら、うちにまだふたつあった。

またジェイソンにうるさくドレスと小物を選んでもらって、おしゃれなスーツを決め込んだジェイソンとふたりで高級レストランとかに行きたいな。問題はふたりとも高級レストランなんかに興味ないこと。やっぱジェニーの結婚式待つしかないか。





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ジェイソンのアパート - 2007年05月08日(火)

日本に行く予定だった2週間の休暇も今日でおしまい。ICUスペシャリストの国家試験、金曜日に受けて来た。だめだ。絶対。80パーセント取らなきゃ受からないのに、60パーセントくらいしかカンペキに正解出来なかったと思う。絶対だめ。休暇を犠牲にして勉強したのにサイテイ。試験が終わってから2、3日、失恋したみたいに痛かった。初夏みたいな日差しのなかラテンミュージックと人ごみにごったがえしたこの街を歩いても、プエルトリカンのレストランで大好きなサフランごはんとチキンをテイクアウトして食べても、ピアノを弾いても教会に行ってもジェニーとショッピングに行っても、胃の奥の方がずっと痛くてほっぺたの内側の筋肉が麻痺したみたいで、夜になると泣きそうになった。

「失恋したみたいな気分だよ」って言ったら「試験くらいでそんなこと言うなよ」ってジェイソンに言われた。

昨日はクラリスのブライダル・シャワーに行って楽しかった。7日だったし休暇が今日でおしまいだからそのあとジェイソンが来てくれるかなって思ってたのに、来てくれなかった。それでまた鬱いでたら、今日ジェイソンがジェイソンちに誘ってくれた。

買い物を済ませてジェイソンちに着いたときには、初めて履いた超ハイヒールの白いつっかけがわたしの足を殺してた。「These shoes are killing me」って、わたしは裸足になって靴を手も持ってアパートの階段を登る。「見るからに心地悪そうだよ」「でもかわいくない? 試着したときにすでに履き心地悪かったけど、かわいいから買ったの。かわいくない?」「かわいくない。僕のタイプじゃない」って笑われた。

ジェイソンのアパートは仕事用のポスターのロールが山のようにいっぱいでまるで倉庫みたいだけど、好き。とてもくつろげるような場所じゃないからって招いてくれたことなくて、ずうっと前にお手洗い借りに行ったことがあるだけ。「こんなとこだよ。狭くてごちゃごちゃしてて、とても人が住むようなとこと思えないだろ?」ってジェイソンは言ったけど、あのときも好きだと思った。キッチンもバスルームもとてもニートで、山のようなポスターのロールも無造作じゃなくきちんとオーガナイズされてて、ジェイソンらしいと思った。

今日はそこでいっぱいおしゃべりして、たくさんポスターを見せてくれて、いっぱい抱き合ってたくさんイッて、またいっぱいおしゃべりして、わたしはまた苦しい靴を履いて、バスに乗って帰った。階段をたくさん上り下りする地下鉄より、バスの方が楽だから。

休暇の最後の日がその日らしくなった。

明日からまた仕事。やだけどしょうがない。

でも明日の夜、ジェイソンが来てくれる。夏物の靴の箱と夏物のスカートの箱を、クローゼットの上の棚から降ろしてくれるって。このあいだ自分でしようとしたけど、あまりにも重たくて出来なかったから。あんなもの抱えて梯子を登ってよく自分で棚に上げられたなと思う。「近いうちに」って言ってたけど、明日来てくれるなんて期待してなかった。嬉しくて「ほんと?」って叫ぶ。「ねえ、じゃあそれからクラリスの結婚式に来てくドレス選んでくれる?」。新しいドレス買わないことにしたから、持ってる中から選ぶことにしたけど決められなくて困ってた。センスのいいジェイソンに選んで欲しいって思ってた。「いいよ」ってジェイソンは嬉しそうに答えてくれた。ジェイソンは写真家だからきっとそういうの好きだと思った。クラリスの結婚式が一段楽しみになった。

いつか誰かの結婚式に、ジェイソンと一緒に行きたい。ジェニーの結婚式かな。いつのことだかわかんないな、それ。

それから、またジェイソンのアパートに行きたい。







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