サーモンピンク・フラミンゴ
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2008年01月04日(金) |
そこが問題だったとは |
毎年恒例の、高校時代の部活の新年会に出席いたしまして。 昨年もその様子をご報告しましたが、このメンバーで集まるたびに、高校時代の奔放な自分の行動を悔やむことになるわけでございます。 あの子(女の子です)とつきあってたよね、あの子(女の子です)に飽きたとたんつれなくしたよね、部活内で一番気に入っていたのは○○ちゃん(女の子です)でしょ?から始まり、
「で、結婚する気はあるの?」 「結婚するなら男とするの?女とするの?」 「愚問だろ。女とだよね?」
等々、もう、本当にうるさい。
「あんまりいじめると、じょりぃが来年から来なくなっちゃうから、そのへんにしとこうよ」
という声も毎年出るんですが、その舌の根も乾かぬうちにそう言った本人が「で?」とまた始めるわけです。
彼女たちがつきつめて知りたいのが、ワタシに関する何なのか。
実はそれが、ワタシにもよくわからないんですよね。 おそらく、彼女たちにもわからないんじゃないでしょうか。 なぜわからないのか。 それは。
彼女たちが、ヘテロセクシャル以外のセクシュアリティに、ものすごーーーーーーく疎いからだと思うのです。 知識がないのです。情報がないのです。 なので、ワタシの正体を見極めようにも、何をどう見定めて良いのかわからないのです。 わからないまま、「じょりぃはどうも、なんか、違う」と思っていて、何が違うのかわからないまま、どう違うのかをハッキリさせたいのですね。
ということが、今年の新年会に出席してわかりました。
ワタシ、いつもワタシのそういう話が話題に上るたびに、
「じょりぃはレズビアンなのか、そうでないのか」
ということが問題視されていると思っていたわけですよ。 女子高時代に女の子にちょっかいかけてばかりいたのは事実ですし、あちらもそのことを、毎年毎年よくまあ同じネタでと思うほどネチネチと話題にしてくるわけでして。 気心の知れた仲間ですし、もしワタシがレズビアンだとわかったところでつきあい方を変えるような連中でもありませんし、過去の痛いネタをつついていじめあうのはお互い様ですから
「不愉快である!おまえら人のセクをオモチャにするな!ぷんすか!」
となることはないんですが、とにかくしつこいし、自分では忘れていた自分の極悪非道な行いなどを思い出さねばならないので、まああんまり楽しくはないです。 ひたすらめんどくさいですし。
とっととカムアウトしちゃえば済む話なのかもしれませんが、したらしたで、今度は興味津々でまた根ほり葉ほり聞かれるのは目に見えてますし、連中にこだわりがない分、
「じょりぃってやっぱレズだったらしいよ☆」
というウワサが光の速さで高校時代の学友たちに広まるおそれも十分にあります。 彼女たちの友情は信じていますが、口の堅さは信じていないので、未だにのらりくらりと「それ何の話ー?(´∀`)」という、昼行灯スタイルでかわしているわけでございます。
で、話をもとに戻しまして、ワタシの中では彼女たちにとって問題なのは「じょりぃはレズなのかそうでないのか」だと思っていたわけですが。
この日ですね。またですね。「じょりぃは結婚しないの?」という話が出ましてね。
「相手がいないよー」とおとぼけな愛らしさいっぱいのじょりぃ。しかし今回はおとぼけに加え、
「でもさー、ドレス着てみたいなーとは思うんだー。着物でもいいんだけど。白無垢とか黒引きに角隠しとかさ」
と、日頃から周りの人には話している真実を、ぽつりと言ってみましたら。
すごい反応があったんですよ。
「え! ドレス着たいの?」 「う、うん・・・記念に写真だけでも撮りたいなー、なんて。えへへ(*´∀`*)」 「タキシードじゃなくて?」 「・・・ドレスって言ってるじゃん」 「マジ?」 「うん」 「ちょっとみんな聞いた? じょりぃ、ドレス着たいんだってよ!」
ざわざわどよどよ。 って、そんなにびっくりするほどのことかいな。
「あたしはさー、てっきりじょりぃは、タキシードの側になりたいのかと思っていたのよ」と、友人A。
まあ、ワタシ、高校時代は男の子みたいでしたから、そう思われても無理はないんですが。 でも当時から「精神的にはけっこう女の子っぽいよねー」とか言われていたんですよ。 ルックスは、髪短かったし色も黒かったし服装もボーイッシュ一本槍でしたし猿みたいな動きしてましたから、かなり男の子テイストでしたけども。 でも今は、スカートこそ履きませんが、あたちったらかわいらしい女性にしか見えないと思うんですよ。 一部期待が込められた表現しちゃってますが。
「てことはさー、やっぱあのときつきあってたW君て、本命だったわけー?」と、友人B。 「さあ? 本命って、よくわかんないし」おとぼけじょりぃ。 「でも、結婚するならドレス着たいんだ?」 「うん。てか、着物でもいいんだけどさ」
「なーんだ、そうだったのか。なら話は簡単だ。じょりぃ、早く男と結婚しろ」
(・_・)
話のつながりが、よくわからない。
「流れがよくわからない」とワタシ。 「だってドレス着たいんだろ?」 「うん」 「なら相手は男だろ?」
(・o・)
目からうろこ。 そういう発想になるのねーーーーーーーーー。
「そうなんだ(笑)」とワタシ。 「そうだろーよ。 ならすぐにでも結婚できるじゃん。しろ」 このへんもよくわからん。 「相手がいなきゃできないでしょ(笑)」 「おまえならすぐ見つかるって! おまえさえその気になればいいだけの話だ」
そう言ってくれるのはありがたいですが。 そういう問題ではないだろう。
よくよくみんなの話を聞きながら、じょりぃの桃色の脳細胞でみんなの言ってることをまとめてみましたら。
どうやら、性同一性障害方面とレズビアンがごっちゃになっているんですね。 レズビアン イコール 心が男の人、 ってことになってるみたいです。 だから、「ドレスが着たい」=「心が女性」=「ヘテロセクシュアルである」ということらしく。
へえええええええええええええ。 と、感心してしまいました。ある意味。
そもそも心が男性ならば、その人にとって女性が恋愛対象である、ということはレズビアンではないわけですよね。 そして心が女性でも「いや、ドレスはちょっと・・・」というかたはたくさんいらっしゃると思いますが、彼女たちの思考に基づけば、 たとえヘテロであろうとも、「あたしがタキシード着る結婚式ならしてもいい」とひとことつぶやいてしまえば、 「じゃああんたは心が男で、そして女が好きなのね」となってしまう可能性がなきにしもあらずってことでございますよ。 そこで「いや、あたしもタキシードで、相手もタキシード」とか「あたしはタキシードで、相手(男)はドレスでもいいかな」とかフリーダムな人の場合、おそらく彼女たちのセクシュアリティの処理能力は追いつかなくなるのでありましょう。
実際世の中には、「体:男/心:女/恋愛対象/女」という、男性の体を持ちながらレズビアン、という人もいるでしょうし、その逆もありだったりするわけですが、たぶん、そんなのって、彼女たちにしてみれば深海の生物くらいわけわからないんだろうなと。
念のためことわっておきますが、彼女たち、偏見とかあるわけではないんですよ。 ただただ、「知らない」んだと思うんです。 知らないことがそもそも偏見だ、知らなきゃ相手を傷つけていいんかいなという考え方もあるかもしれませんが、ワタシ個人は知らないということに罪はないという考え方です。 例えばワタシが「実はレズビアンなのだ」と告白してからも、大事な(たぶん)友達だというのにそれからも無知を決め込んで無神経な発言をされたりしたら「おまえもっと勉強してからモノ言いやがれ」とにこやかに言い渡すと思いますが。 ワタシが隠していて、彼女たちの生活にセクマイが関係なくて、その上で知らないのでモノの考えようがない、ということはしかたがないことなのではないかと。
この日みんなに確認してみて驚いたのですが、パソコンやらネットやら楽しんでいる人間はワタシのほかにたった一人。(本日の出席者8名) 様々な情報の入手経路は、おもにテレビ(であろう)という人たちであります。 なので、偏見はないが、非常に情報量としては乏しく偏っていると思われます。 そして、ネットの世界があたりまえだと思っている最近のワタシだったりしたわけですが、おそらく彼女たちのような情報難民(という言い方も失礼ですが)のほうが、この世の中ずっと多いんだろうなーーーなんてことも思って、自戒してみたり。
ドレス×ドレスで結婚式ごっこしたーい、というレズビアンの図、というのは、ワタシの中ではまったく違和感がなかったのですが、彼女たちにしてみたらそっちの方が想像しづらいのかもしれませんね。 考えてみれば、ワタシだってネットで同じようなセクやら気持ちやらの方々とたくさんお話をさせていただいたり考えに触れたりして、随分とアタマの中が自由になりましたからねえ。 ということは、ネットしてなければ、ワタシだって今のようにのびのびと「ドレス×ドレスで結婚式ごっこしてみたーい」とか、思わなかったかもですよ。
まあ、ワタシの高校時代が可憐ななでしこのような乙女ルックスだったら、もしかしたら彼女たちも「ドレス×ドレス」の想像もアリだったかもしれませんが。 んー・・・・どうかしら。それもビミョウかな。
で、その後は「じょりぃは女が好き」「女と結婚したいはず」という説はなりを潜め
「じゃあ早く結婚しなよ!応援するよ!」
と、いらぬエールを送られる始末。 じょりぃのレズビアン疑惑はいったん解除されてしまったのであります。
ぽかーーーーーーん( °o °)
しかしその後さらに 「いや、やっぱり(男も女も)どっちも好きそうだよな」 「でもドレスだよー?」 と、彼女たちも彼女たちで、ささやかに混乱していたようですが。
そもそもレズビアンの定義のようなものが彼女たちの中に確固としてないのですから、ワタシが思いこんでいた冒頭の 「じょりぃはレズビアンなのか、そうでないのか」 というギモンすら、甚だ心許なかったわけでございますね。
こいつらに、ワタシの正体をきっちりと説明するためには、丸一日かけて最初の一歩からレクチャーせねばなるまい。
とてつもなくめんどくさいけど、賢い人たちではありますので、ちゃんと説明すれば「なるほどー!」と、新しい知識を歓迎して受け入れてくれるとは思うんですが。 そして、そういうことをマジメにコツコツと行うのが、セクシュアルマイノリティとしての正しいアクティビティなのではという気持ちもあるのですが。
ものすごく、ものすごく、めんどくさい。 というのが、現在のワタシの正直な気持ちであります。 上記でえらそうなことをさんざん言っておきながらアレですが。
それにしても、「ドレス着たい」と言っただけで「やっぱり男と結婚したかったのか!」という展開になるとは。 本当に驚きました。 驚いたけど、楽しかったです。 何か、古くて新しいものを知った、という感じで。 いつかちゃんと説明できて、みんなが「へーーーー」って驚いて、一皮剥ける顔が見てみたいなあ。 や、めんどくさいんですけど。めんどくさいけど、見てみたい。
追記: この話を聞いたきょんの感想です。
「まあ、セクマイに関わってない人とか関心ない人ならそんなもんかもねー、と、セクに関してはその程度の感想かな。 ただ、なんでそんなに結婚させたがるのかわからん。 セクのことわかってないのは横に置いておいても『なんだ、男が好きなんだ』で終わりにしてもいい話じゃん。 そんなに結婚ていいもんかあ? 結婚至上主義なところが、あたしにはすごく気持ちが悪い」
だそうです。 なるほど。 アンテナが違うと「んん?」と引っかかって問題になるところも違ってくるものなんですね。
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