サーモンピンク・フラミンゴ
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2003年06月23日(月) |
ものすごく青い恋のハナシ |
5年生のときに、バスケチームのひとつ先輩の女の子に猛烈に恋しました。 華奢で、背はそれほど高くなくて、やわらかそうな茶色い髪で、いつも笑っているかわいい人。 外見に似合わない、低めの声も好きでした。 もう好きで好きで、その人に会えるかどうかが、一日の最大の関心事で。
5〜6年生になると、性的に目覚めてくるのか、そのバスケチーム内では先輩がご寵愛の後輩をつくってヘンな風にかわいがっておりました。 もちろんそうしない人もいましたが、まあ、氷を口移しにあげたり(まあ!おませさん)、キスしたり(なんてことでしょう!)、マットの上でいちゃいちゃしていたりしました。
今思うと、ヘンな学校の、ヘンなチームですね。 エロエロ小学生です。 小学生をお持ちのお母様方、意外と娘さんは、ませてるかもしれませんよ。 と脅してみたりして。
で、ワタシは当然、M子先輩にあんなことやこんなことをされてみたいものだ、なんて心の奥底で考えているわけです。 考えてないよーそんなことー、と、自分に言い訳しながらちゃっかり考えてるわけです。 しかしM子先輩は清純派なので、誰ともそんなことしません。 まだ幼かったワタシの心では、M子先輩が自分以外の誰かにそんなことしたら、キモチがコントロールできなくてどうなっていたかわからなかったので、ああよかった。と、今になると思いますね。 とにかく好きでですね。 ミーティングの時も、コーチの顔なんか見ないで、ひたすらM子先輩の顔を見つめる純情一直線じょりぃ。
そんなじょりぃにやさしくしてくれる先輩がおりました。 Y先輩です。 M子先輩に対するキモチとは少し違いましたが、その先輩のこともワタシは大好きでした。 で、なんとそのY先輩が、ワタシにご寵愛のシグナルを送ってきたのです。 何かとかわいがってくれ、ふたりになろうとしてくれまして。 ミーティング時にM子先輩の顔をぼーーーっと見て、ふっとY先輩を見ると、Y先輩はワタシをじーーーーっと見ている、ということがよくあるようになり。
なんか、Y先輩に悪いのかな、なんて思ったりしまして。 子供ゴコロに。
「じょりぃ、M子のことが好きなの?」 ある日、すごく単刀直入にY先輩がワタシに訊いてきました。 「え、はい。 好きですよ。 先輩ですから」 ドキドキ緊張しながら答えるじょりぃ。 ヘンな風に仲の良いチームでしたが、上下関係は絶対でした。 先輩に無礼なことをすれば、一ヶ月口をきいてもらえないくらいの制裁は覚悟しなければなりません。
「あたしとどっちが好き?」
ぎょぎょ。
こういう場合、どうしたらいいんだろう。 どうしよう。どうしよう。どうしよう。 どちらの先輩の顔も立てなくてはいけない。 それに女の子同士こういう話してるのって、ヘンなんじゃないかな。後で困ったことにならないかな。 Y先輩の方が好きって言わないと悪いんだろうか。 でも、ワタシがそう言ったことがM子先輩の耳に入ったらどうしよう(どうもなんないと思いますが今考えれば)。
「ふたりとも好きです。尊敬してます」
模範解答を選択。 よしよし。 いいぞ、11歳のじょりぃ。
「ホントはM子の方が好きなんでしょ」
ぎょぎょ。 ど、どうしよう・・・。
「そんなことないです」
緊張して、手が震えるじょりぃ。 様々なプレッシャーがワタシを襲います。
「じゃ、あたしのこと好き?」
・・・・先輩に、ここまで言わせてしまった。 実際のところ、先輩がどういうキモチで言っているのかはわからないけど、ここは「好いてもらった後輩」としての筋を通さなければ、と幼いアタマなりに判断をしたじょりぃ。
「はい。好きです」
どっちのが、どっちより、って言ってないし。 いいよね。 うん。しょーがないよ。うん。
Y先輩は嬉しそうでした。 かわいいな、と思いました。 そして、今までよりも、というか、今度は「先輩として」でなく気になり始めました。 手をつないだりした気がします。仲良しになりました。
そしてそのうち、「マットの上でいちゃいちゃ」に誘われます。というか、「じょりぃ。こっち来て」と呼ばれるわけです。 先輩の命令は絶対です。
たかだか小学生の気まぐれな遊びですが、こう書くとなんだかいやらしいですね。 ワタシの書き方がいけないんでしょうか。おそらくそうなんでしょうね。すみませんね。
あれ?何の話でしたっけ? 忘れちゃったな。
続きが思い出せなくなってしまった。
というのはちょっと根性の曲がった冗談でした。覚えています。
Y先輩はたぶん、「じょりぃはあたしのものになったの」とアピールしたかったのだと思います。 子供らしい、「見て見て!」という、あれです。 先輩の命令は絶対ですから、ワタシはY先輩のところに行きました。 でもでも。 M子先輩がいるし。 いちゃいちゃしたくない。 「あ、じょりぃとYは、そうだったんだ」(どうなんだ)と思われたくない。 どうしよう。 もう、「どうしよう」ばっかりでかわいらしいじょりぃですが。
なにかこう、ごろごろいちゃいちゃしているうちはおとなしくしておりました。 というか楽しんでいたかも。ドキドキしたし。 子供らしいけど、ちょっとこう、なんていうんですか、あれな、いちゃいちゃですよ。
そのうちキスされそうになって。
どうしよう。 という気持ちと M子先輩の方が全然好きなのに、それでもY先輩とキスはしてみたい、と思ってる自分と 一瞬のうちにものすごい勢いの葛藤がありまして。
かわしました。
かわしました、だけだと「キスを交わしたのか」「キスをよけたのか」わかりませんね。 日本語って難しい。
よけたんです。
Y先輩の目が、すごく傷ついたのが、子供ゴコロにわかりました。 しかも子供だったので「スミマセン」と謝ってしまいました。
「やっぱりM子の方が好きなんだ」 「違います」 「いいよもう」 「スミマセン」
スミマセン。
Y先輩はそれから口をきいてくれなくなりました。 他の先輩にも無視されるのかなとビビッたじょりぃだったのですが、そんなこともなく。
その後Y先輩とはどうなったんだったかな。 どうもよく覚えていないのですが。
ただ、Y先輩のある意味ストレートな態度に、じょりぃも影響を受けたのか、今までずっと躊躇していたことをきちんと実行に移す決心をしました。
それはですね。なにかというとですね。
ワタシ、3ヶ月ほどずっと指輪を持っていたのですよ。 どこかに家族と出掛けたときにおみやげもの屋さんで買った、当時流行っていた、名前がアルファベットでくり抜いてある、おもちゃに毛が生えたような指輪です。1000円也。 子供のワタシには大出費でしたが「M子」と名前の入った物をM子先輩にと思って買ってしまったんです。 しかし、ものが指輪なだけに、意味深ぽくて渡しづらくてですね。 ドキドキしながらもいつでも渡せるように、買ってしばらくはかばんに入れて持ち歩いていたのですが。
やっぱりダメ。渡せないや。
とあきらめてですね。ずっと自分の部屋の引き出しに入れておいたのですが。 たまに眺めてふうとためいきをついてですね。ぎゅっと握りしめてみたりですね。 こう書いてみると、すごく好きだったんですね。M子先輩のこと。
11歳の3ヶ月間といったら、けっこう長いんです。 つらかった。
で、Y先輩に影響されまして、せっかく買ったんだから、ちゃんと渡そう、と思ったのです。 確かもうすぐ誕生日だし。 そのときに渡せばいいや。 決心。
そして誕生日。
6年生の校舎にはるばる向かいまして。 ただでさえドキドキなのに、上級生にむかって「M子先輩いますか」と呼び出し依頼。 M子先輩登場。
「どしたの?じょりぃ」
いつもどおりニコニコ迎えてくれるM子先輩。 この人はいつもニコニコしていました。
「あの、先輩、誕生日おめでとうございます」 差し出す紙袋を受け取って「ありがとう!」と中身を取り出す先輩。
ドキドキドキドキドキドキドキ。
「わあ! かわいい!ありがとね」
M子先輩はハンカチを見て言ってくれました。
そうです。
意気地なしのじょりぃは、結局指輪をやめて、オシャレさんのマイ妹に選んでもらったハンカチをプレゼントしたのです。
「妹が選んでくれたんです」 言わなくてもいいことを言うじょりぃ。
「ありがとう」
もう一度言った後、M子先輩はワタシの頬に
キス。
え。
チャイムが鳴って、たぶんワタシは教室に戻りました。
その後、M子先輩とは特になんにもないのですが。 小5と小6ですしね。当然です。 M子先輩にしても、ホントに「ありがと。ちゅ」くらいの意味しかなかったでしょうし。絶対。 それでもワタシは、先輩が卒業してからも、ずっと好きでした。 中学は別々になってしまったので、だんだんキモチもなくなっていき。 中1で運命の出会いをしてしまいますしね。
それでも指輪はずっと持っていたんです。 あのときの、11歳のときの自分の一途な(と自分で言うのもなんなんですが)キモチを思うと、捨てるに捨てられなかった。 一度妹に見つけられてしまい「なんで自分の名前じゃない物持ってるの?」と訊かれ「拾った」と答えたことがありましたそういえば。
そして月日は流れ、たまたま同じ高校に。 M子先輩を見つけたときは嬉しくて嬉しくて・・・・となるはずだったのに、そこにいたのは、ただのひとつ上の先輩。 ああ、あんなに好きだったのに、終わったんだな。 安心したようなさびしいような、泣きたいようなキモチになって、指輪をやっと捨てました。
なんて、過去に想いを馳せていたら、ナナから電話。 「ねえ、温泉、どこ行くか決めた?」 いつもより甘えモード。 機嫌も良くて。
この人のことはいつまで好きなんだろうなワタシ。 気持ちと一緒に「何か」を捨てるようなときが来るんだろうか。
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