ジョー・ライト監督 キーラ・ナイトレイ、マシュー・マクファディン出演
イギリス文学の名作といわれる「高慢と偏見(邦訳題)」の映画化。 とはいっても過去に何度もドラマ化、映画化されているらしい。 特にBBC製作のものは名作との呼び声が高いらしい。 そんなわけでイギリスではかなりポピュラーな作品らしい。 しかも「ブリジット・ジョーンズの日記」はこの作品を現代に置き換えて書かれたものらしい。 いやはやそんなことはちっとも知らずに観に行ってきましたよ。
イントロダクションから美しい映像に引き込まれました。 18世紀末のイギリスの片田舎の屋敷に住む老いた両親と若い姉妹たちの生活。 私達日本人の未知なる世界です。 この時代のイギリスのファッションがとても素敵です。 襟が大きくスクエアに開いた胸下で切り替えの細身のエンパイアドレスに 髪の毛をゆるく結い上げたスタイルは真似したくなります。 登場人物たちの視線が行き交う舞踏会の流麗なカメラワークが見事。 撮影を行った屋敷もすべてセットではなく実在の建造物だというから凄い。 ダービーシャーの雄大な景色も壮観。 (嵐が丘や秘密の花園の舞台はこんな感じ?) ライティングも非常に自然の光を感じられるものでした。
そんな素晴らしいイングランドの景色の中での物語は まぁはっきりいって少女漫画的メロドラマなのですが 聡明なエリザベスと無口なダーシーの会話のやり取りに ロマンチックさとかエロチシズムの香りは無く 非常にソフィスケイトされていて しかもこの時代においてマウス・トゥ・マウスのキスシーンはおろか抱擁シーンすらないという ああもうこれが本当の大人の恋愛劇ですよ。 ダーシーの不器用さ、切ない表情が返ってセクシーなのです。 そして我々女性はエリザベスの自己に対する正直さ強さ賢さ可愛さを学ばなければならないよ。
もっと深く物語の背景を知りたく、原作小説をamazonで発注してみました。
2006年01月16日(月) |
ユーリ・ノルシュテイン作品集 |
目さんからお借りしていたDVD ユーリ・ノルシュテイン作品集を観ました。 それはそれは美しい世界でした。
「25日・最初の日」 人生で最も輝かしいのは生まれて最初の25日。 ソ連の共産主義の始まりを描いた作品。 ノルシュテインの生まれた1941年はドイツとの開戦年だそうだ。 暗くてて硬いモノクローム画面に交錯する燃えるような兵隊の赤が印象的。 この時代がロシアの人々にもたらしたものはとてつもなく大きなものだろう。 私たち多くの日本人は世界史でほんの少し触れるだけ。 ロシアの映画や文学作品を観る度にもっとこの国のことを知りたいなぁと思う。
「ケルジェネツの戦い」 ロシアの史実に基づいた作品だそうだ。 ロシア正教のイコン画がアニメーションとなって動く。 こんなに美しい戦争映画は初めて観た。 ロシアの宗教画はヨーロッパのそれとは違って華やかさ柔らかさは無いが、荘厳で鈍い金の輝きは厳粛さを放っている。 こういったロシア特有の美意識はノルシュテインの他の作品でも大きな影響を感じる。
「狐と兎」 いかにもロシア民芸装飾に溢れた可愛らしいアニメーション。 動物達の造形、描写も見事だが、画面構成の創意工夫が素晴らしい! 物語的には強いとされる動物たちがさっぱり狐に敵わないのが何故なのかが気になる。 そして狐がメスなのも気になる。 バラライカを弾く兎がとても可愛い。
「あおさぎと鶴」 ユーモラスなあおさぎと鶴の動きと表情がまるで人間のように情感豊かに描かれている。 いわゆる”ツンデレ”ってやつだよね!? アホで面白い。
「霧につつまれたハリネズミ」 これは機会があったら是非大きな画面で観たい! ハリネズミと一緒に霧の中に迷いこんでしまいたい。 まるで夢を見ているかのような幻想的なお話。 最後のこぐまとハリネズミのやり取りが凄く好きだなぁ。
「話の話」 いくつかの夢のようなモチーフが絡まっていく作品。 作り手側にはすべて意味があって製作しているんだろう。 ひとつひとつの場面が物凄く思わせぶりなんだけれどもサッパリ解らない。 気にはなるけれども、まぁわからないままでもいいのかな。 でも不可解なことは怖さにも繋がるなぁ。 なんだか怖い作品です。 オオカミの子が可愛いだけに怖い。 しかし”映像詩”とはまさにこういう作品のことをいうのだろう。 不可解さがなんとなくつげ義春に通じるなぁと思った。
「愛しの青いワニ」 人形を使ったクラフト感溢れるカラフルな作品。 切なくて皮肉なお話だなぁ。 人間でやったら救いようの無い悲劇だよね、これ。
「四季」 チャイコフスキーの「四季」に合わせて一組のカップルが季節を駆け巡る美しいアニメーション。 美しいレースや糸、キラキラ光るビーズのような素材を使って美しい自然を描いています。 「四季」というとヴィヴァルディの曲しか知らなかったのですがヴィヴァルディのドラマチックな「四季」と違ってチャイコフスキーの「四季」は繊細でロマンチックな印象。なかなか良い曲だなぁ。
とても美しい作品集でした。 幻想的で夢みたいな世界。何度も繰り返して観てみたい作品ばかり。 でも大きな画面でこの世界に浸ってみたいとも思う。 とりあえず「狐と兎」「霧につつまれたハリネズミ」の絵本をamazonで発注してみた。 このDVDもいつか手に入れたいな。
監督・脚本 三谷幸喜
三谷さんといえば私は「王様のレストラン」というドラマが大好きでした。 丁度ドラマの放映当時ホテルのレストランで働いていたのです。 職場の皆が自分達となぞらえて楽しみに観ていた思い出があります。 短い間でしたけれどもホテルではフロント係の仕事もしていたことがあり、今回のこの作品はまたホテルの従業員達に共感したり、懐かしい気持ちになったりしました。 三谷さんてホテルで働いた経験あるのしら?と思うくらいホテルの裏側のバタバタが見事に描かれていました。
ホテルの大晦日というのは一種独特の空気感があります。 お客様は勿論、ホテルという特別の場所で過ごす年末年始に高揚気味だし、そんなお客様を迎える従業員達は忙しさとおめでたい気分で妙なハイテンションだったりします。 当時は忙しくててんてこ舞いになっていたけれども、振り返ると楽しい思い出ばかりです。 レストランの営業終了後に厨房の人達が作ってくれた美味しいものを食べたり、元旦にお客様にふるまう樽酒をこっそり飲んだりとか、おとその用意も楽しかった。イベントの挨拶の為に振袖を着せてもらったことも嬉しかったなぁ。
「お客様第一」の役所さんと「ホテルだって商売」という生瀬さんの副支配人の対立も実際のホテルでもよくあるジレンマだと思います。 あひるが駆け回ったりすることは流石にないですけれども、毎日色んなお客様が来て、色んなトラブルが起こって裏ではみんな走り回ってる・・・という日常でした。 そんなホテルでの日々を懐かしく思い出しながら観ていました。
それにしても豪華な出演者ばかり。 でも登場人物それぞれがきちんと背景を持っていてそれでいて物語がちゃんとまとまっているのは流石でした。 ドタバタコメディなのにちゃんと感動しますしね。 三谷さんの趣味でもある古きよき時代のハリウッドコメディの精神がいくらドタバタになってもコールガールが出てきても不倫カップルが出てきても下品にならずチャーミングな方向に向いてます。 ホテルのセットも衣装もとても趣味が良いです。 スチュワーデスや客室係の制服が可愛い!
それと歌手YOUのファンとしてはちゃんとしたYOUの歌を久々に聴けたのもとても嬉しかったです。
デュドク・ドゥ・ヴィット監督
2006年最初の映画鑑賞です。 1月2日 シネマテーク高崎で観ました。 なかなか良い映画館です。
作品はたった8分間のアニメーション。 シンプルだけれどもとても繊細な動画。 台詞はなく、哀愁のあるアコーディオンの音が流れるだけ。 その中にある一人の女性の人生が描かれています。
生きていく上で失うもの、得るもの 転がる車輪のように廻る年月の中 胸の中に抱えた糧は人生をどのような結末に導いてくれるのでしょうか?
向かい風に逆らって力強くペダルをこいでいた少女が 帰り道、転がるように風に煽られる描写が素晴らしい。
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