カフェの住人...

 

 

〜カフェの住人・・・その後・・・〜  - 2004年12月28日(火)



2004年師走
これまで26人の物語を書いてきました。


2005年
27人目の物語を書く前に、住人のその後をほんのちょっと。。。






【第一話】
花番人の女性は、相変わらず足を運んでくれる。
少し変わったのは、‘頑張り過ぎなくなった’ ということ。
「来年はもっとお花の番しなきゃね」
なんて言っていましたけれど・・・

【第二話】
天使はあれから一本の連絡もきません。
どこか遠くへ行ってしまったのかもしれませんね。

【第三話】
べーシストの青年は、音楽、仕事、自立、と
様々な成長の過程を過ごしていたようです。
時には大事なベースから離れた時期もあったという。
けれど 「やっぱり僕にはこれしかないですから」 だそうです。

【第四話】
来年、二人の結婚式の司会を頼まれました。
私が人前に出るのが苦手だとは知らないようです。
それでも、私が二人に出来る事があるならば
是非喜んで引き受けるつもりです。

【第五話】
毛布の様な彼女は、今年大きな決断をしました。
そんな彼女を怒ったり、一緒に泣いたりもしました。
今は新しい生活を始め、また初めの一歩を歩んでいます。

【第六話】
若旦那さんは、相変わらず頑張っています。
そして相変わらず、そんな素振りが見えません。
私はこれからもあの穏やかさに安心し続けるでしょう。

【第七話】
生みの親は、今年また新たな命をこの世に産み落としました。
ますます忙しくて、なかなか顔は見れないけれど。
もう一人の最初の住人は素敵なお兄ちゃんとして成長をしています。

【第八話】
土の彼は、作品でどんな感じで過ごしているのか分かる。
あれから、徐々に自分らしさを探していっていたり
違った形での表現をし始めているようです。
少し男らしくなった気が・・・?

【第九話】
年に一度の営業に今年も来てくれた豆の伝道師は
今回少し長くお喋りをしていってくれました。
出合ってからもう7年近く。話せば話すほど面白く
やっぱり出会う運命だったのだと、改めて知りました。

【第十話】
ひねくれ者は、やっぱりひねくれ者ではあるけれど
この1〜2年で、どれだけ変わったかというのを
本人は気が付いているだろうか。 あの秘めていた優しさが
笑顔と共に表面へと現れてきたのですから。

【第十一話】
彼女の心の硬い部分にヒビは入った今年も終わりの頃。
守る事が大事だったはずなのに
その重さに耐えられなくなった彼女は、大きな涙を流した。
この前聞いた歌声がとても柔らかくなっていたのは気のせいだろうか。

【第十二話】
東京で頑張ると言っていた彼は、今年故郷である土地へと帰った。
挫折と言ってしまえば、そうなのかもしれない。
けれど、きっとそうではないと言える日も近いだろう。

【第十三話】
あれほど意表を放っていた彼は、ここ数ヶ月の間に
なんだかいい感じで、落ち着いた様に見えました。
けれど、あの心を魅了する音は健在だけれど。

【第十四話】
あのお医者さんに、もう一度会いたいものです。
もう元の病院へと戻り、あれからここへは訪れていません。
でも、彼が残した物はまだこっそりあるのですけど。

【第十五話】
あの絵を描く彼女も、どれ位来ていないだろう。
近くだった職場は辞めたらしい、と風の噂で聞いた。
あの力強い生き方、生き様にふれたい今日この頃です。

【第十六話】
この彼女もまた、姿を見なくなった。
少し寂しい気持ちもあるけれど、またいつか来るのを待っています。

【第十七話】
今年ようやく進み始めた彼女。 辛い事を認めるまでの長さは
人ぞれぞれであり、時として逃げるしかない時もある。
それでも彼女はもう止まる事はないでしょう。
亡き人の願いが届く日も間近。

【第十八話】
この天使もまた、本当に存在していたとは未だにやはり思えません。
あれは本当に夢だったのかもしれない。

【第十九話】
少しの間寝込んでいたのだと、あの彼が教えてくれました。
実はあの時に書いた話を叶える為にハイクラスな部署に移ったらしいのです
ところがそのプレッシャーで倒れてしまったという。
来年も頑張ってほしいものです。

【第二十話】
電車は、住家になってもうすぐ4年が経つ。
ほんのちょっぴりボロになってきた。
まだまだ頑張ってもらわないとね。来年もよろしく。

【第二十一話】
小鳥は本当の歌を歌う為に、少しの間歌うことをやめていた。
何故自分は歌うのか、何が伝えたいのか。
そんな事を問い始めた今年。きっと来年また彼女の声が聞ける。

【第二十二話】
パッションはまだまだはじけている。
シンパシーも相変わらずとろりと流れては人々を包んでいる。
あふれ出すその想いは形を変えて、私達の中へと今も尚
流れ続けている。

【第二十三話】
今年知り合った彼女といつも顔を出すあの自然体な彼。
なんだかゆったりとした雰囲気になってきた。
自分の風を掴んだのだろうか。

【第二十四話】
女優の彼女は、のんびりとこう言った。
「自然に・・・」と。早くもなく、遅くもない流れの中で
じっくり自分を見つめる強さを噛み締めているようだった。
また来年、新たな舞台が楽しみです。

【第二十五話】
あれからまた大きな手術をしなければならなくなりました。
やっぱり自分はダメなのだと、弱気になって逃げ腰になった彼女に
これが本当の最後の課題、そう伝えた。
奇跡的なほどの回復力で今彼女は笑顔でコーヒーを啜っている。

【第二十六話】
沢山のお土産。沢山のお話。沢山の想い。
こうも一年近く、熱い想いを投げかけてくたあの人。
今年は色んなことしたね。いっぱいありがとう。






今年、これまでにまだ書いていない人々にも大きな変化があった。

人とは変化し続ける生き物だ。

コロコロ変わったっていいのだ。

けれど、確実にみんな一歩一歩進んでいったり

優しさが増していったりしているのが、手に取るように分かる。



そうぞまた素晴しいストーリーを刻んでいってください・・・・



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第二十六話 〜少女に返った魔法使い〜 - 2004年12月07日(火)




ほうきを捨てた魔法使いがいた。

もう飛ぶのはやめたらしい。




マントのようなコートを着て、冬の陽だまりの中

小柄なおばさまが一人で訪れた。

入ってきて早々いきなり

「スコーンくださいな」

そう言ったので、私は些か驚いた。

だって、このお年でスコーンを知ってる方は少ないし

私のお得意はスコーンだって

まるで知ってるかのような口ぶりに聞こえたからだ。



あれ?この方は只者ではないな?

そんな印象だった。



誰もいない平日の午後・・・

私はそのおばさまとお喋りを楽しんだ。

その会話の節々に、そのおばさまは心を見透かしたように

私が想う事と同じ話をしてくれた。




なんだかそんな出会いにワクワクしたのを覚えている。

それから勝手に私の中で‘魔法使いのおばさま’と呼び始めた。







魔法使いのおばさまが、二回目に訪れた時だっただろうか。

丁度行なわれる住人のライブのチラシを手に取り、それに行きたいと言う。

何やらその日は自分の誕生日だとか。





ライブ当日。

みんなで車に乗り込むと、会場である少し遠くの小さなレストランへ車を走らせる。

店の中はもうワインを片手に、ライブを楽しみに待っている人々で一杯だ。

私は始まる寸前、ライブをやる住人達に、とあるお願いをした。

ライブの途中で

「ハッピーバースデーの歌を内緒で歌って欲しい」 と。






数曲が終わり休憩、そして会場が暗くなると

ざわざわとした中、さり気なくその日のヴォーカルが歌い出した。


♪ハッピーバースデートゥーユー・・・


お店の人に頼んで飾っておいてもらった、お花とキャンドル付きの

仄かに火を灯した小さなケーキを運ぶ。

そのうち会場のみんなも一緒に歌ったり手拍子をしたり。


こうして魔法使い69歳の誕生日が祝われた。



おばさまは驚きで呆然としていたようだった。


そして涙をためて、ありがとう、ありがとう、と何度も言った。







その涙の訳を、後で聞くこととなった。

彼女はずっと一人で生きてきた。

戦後、女性が自由を唱えるのは相当の勇気がないと出来ない時代である。

なかなかの気性で、それなら寂しさより自由を選ぼうと決めたという。


東京生まれ東京育ちの江戸っ子が、4年前この地に移り住んだ。

もうゆっくり過ごそうと決めたのだろう。

けれど、寂しくなかった訳ではない違いない。



体調もあまりよくない日々を送り

『もう私死んじゃうのかな』

そう思っていたらしい。
  


そんな年も明けたとある日、ふらりと近所を歩いていると

今までは気が付かなかった看板が眼に入ったそうだ。


そこには ‘スコーン’ の文字が。

吸い寄せられる様に階段を登ると、そこには古ぼけた電車。

暖かな陽だまりは、彼女を優しく迎えた。




本当は寂しくて恐かった。

そんな思いの最中、いきなり誕生日を祝われたのだ。



彼女の心の変化は、きっと誰もが想像できるだろう。



あれからもうすぐ一年が経つ。

私達は一緒に、泣いて、笑って、怒って、大忙しである。

「まだまだ元気よ」と、色々と張り切っている彼女。

まるでその顔は少女のようにキラキラ輝いているのだ。

そして、つくづく言う。

「奇跡が起こったの。
 
 あの時もう一人の私は死んでいたのだと思う。

 でもね、神様だか何だかが『もう少し何かを残しなさい』

 そう言って、ここに出会わせてくれたのね。。」
 


生きる事の素晴しさ、そして大変さを

私は彼女を通じて知った。

残りの人生で足跡を残す。

今までの人生を見せてくれながら。




魔法使いはもう空を飛ぶことをやめて、ただの少女に還った。


もう頑張る必要は無いのだと知ったから。

ただ、精一杯生きてきた事が魔法だった。




少女はもうすぐ70歳。


またみんなでお誕生日祝いしようね。




出会ってくれてありがとう。







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