守護神 - 2004年08月01日(日) 巡業公演のようなサッカーがあると思えば、ガチンコ勝負のサッカーもある。 テレビ朝日の「絶対に負けられない・・・」というコピーはいただけないが、昨夜は文字通り負けたらそれまでのトーナメント戦、アジアカップのヨルダン戦が中継された。 試合開始早々に先制点を取られ、すぐに取り返したものの、中盤を支配するヨルダンの選手のフィジカルの強さ、スピード、球際の巧さ、どれをとっても日本チームを上回っている。 さらに反日感情全開の観衆を味方につけて、レフェリーのジャッジも怪しい雰囲気で、ワールドカップの韓国戦を思い出させる展開だ。 延長戦までをどうにかしのいでPK戦に持ち込んだが、そこでいきなり俊輔とアレックスが失敗。 運までもヨルダンに味方しているとしか思えない。 何をどう見てもヨルダンの方に分があったのだ。 ・・・・・・ 守護神降臨。 たぶん、中継を見ていた人の誰もがそう思ったに違いない。 崖っぷちに追い込まれた日本チームにあって、川口能活は異様なオーラを発してゴールマウスに立ちはだかっていた。 「こりゃドラゴンボールだ・・」 私の目には川口がスーパーサイヤ人に変化したべジータに見えたのだ。 アニメでもCGでもない現実の世界で、気迫とか、精神力といわれるものが目に見えるものとして立ち現れた稀有な瞬間だったように思う。 以前、何かの番組で川口のドキュメンタリーをやっていた。 若くして日本代表GKに選ばれ、その地位を不動のものとしていたにもかかわらず、海外に挑戦する決意をしてイングランドへ渡る。 しかし、イングランドではほとんど試合に出られず、不遇な日々を送るうちに、代表GKの座は楢崎に奪われ、寒いデンマークで日々ストイックなトレーニングを自分に課す姿は、まるで修行僧のようだった。 ちなみに、昨夜の試合で同点ゴールを決めた鈴木も、あまり環境に恵まれた選手ではない。 ワールドカップでの「気合の爪先」は印象的だが、中田のように華のあるプレーヤーではないのだ。 不器用だが黙々と、あたられても削られても前線で身体を張って頑張る。 何度となく倒されては起き上がる姿を見ていると、どんな形でもいいから鈴木にゴールを決めさせてくれ、と、代表の試合を見るたびに思うのだった。 地道に練習を積み、苦労してきた人が報われる瞬間を見るのは本当に嬉しい。 余談だが、弟は小学校から大学までずっとサッカーをやっていた。 ポジションはゴールキーパーだ。 その弟に言わせれば、PK戦はゴールキーパーの方が精神的に有利なのだそうだ。 「そもそもPKは入って当然、1本でも止めればヒーローだからね」 そう言われればそんな気もするが、昨夜の川口はそんな精神的な駆け引きとは違う次元に立っていたように見えたぞ。 ...
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