「寺島と結婚したら、
お義母さんから一生睨まれながら暮らすんだね」
藤原が、笑いながらそう言ったので、 こちらも笑いながらさらりと言った。
「それと引き換えにして、
寺島と一生暮らせるんなら、別に構わないわ」
惨め。 未だにこんなことを言うのが苦ではない。 藤原は感嘆して、すごいね、と言ってくれたけれど、 口に出したくはなかったのだ。
寺島とユミちゃんは、順調に交際を続けている。 結婚の話も出ているし、 寺島は真面目にペアリングを着けているし、 何にも問題はない。
惚気たくなったとき、 喧嘩をしたとき、 ウチに来て解消されるのには、閉口するけどね。 大抵藤原が一緒にいてくれるから、 なんとか怒鳴り出さずに済んでいる。
「ユミと付き合ってね。
“付き合う”ってこういうことなんだ、って、実感してるんだ。
お前には何もしてやれなかったから、
次の男に変な男は嫌だし、
幸せになって欲しい」
そんな、デリカシーゼロのセリフを吐くのも相変わらず。 あなたにはいとも簡単に、 4年間を全否定することが出来るのね。
だから私も、ときたま、 いとも簡単に現実を壊してやりたくなる。 私が、たった一言発すれば、 彼女はあなたから逃げていく。
そんな惨めなことはしたくない。 プライドが許さない。 でも、この次に私を無碍にしたらわからない。 時限爆弾みたいな日々。
知らずに、 未だに私が自分だけのものだと思ってる彼には、 ちょっとだけ気の毒だけど。
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