「ねぇ陽ちゃん。
あたしあなたのこと、すっぱり諦める。
ないものねだりって言葉がしっくりくるし。
これからも好きだけど、
あなたを手に入れようって思うことは。
あなたの1番になろうってすることは。
あなたに愛されようって思うのは。やめる。
それが無理だって、今までもずっと言われてたのに、
何とかなるかも、 だってこんなに好きなんだし、 未来なんてわかんないしって。
足掻いて、しがみついてただけだから」
そう言おうとかけた電話。 寺島の話を聞いてたら、言う気がなくなってきた。
寺島のテニスの話は、 以前より大分理解しやすくなっている。 それは話を聞き続けたことと、 あたしがテニスを始めたことがあるんだろう。 もっと上達したらもっとわかるよ、と寺島は言った。
他の誰のどんな話より、安心する。 どうしてだろう。
聞きながら。 わけのわかんない宣言なんてやめようと思った。 こんなこと。 わざわざ言わなきゃいけないことでもない。
心が敏感になってるのか、 寺島の毒舌に鋭く突かれる。 いつも以上に痛くて、 あぁ、今は病気だなぁと思う。
でも笑い合えたから。 寺島の笑い声を確認できたから。 そのうち癒えるでしょう。 それだけで。
そうしてひとまず。 傘は寺島にあげて。 自分の傘を取りに行こうと思います。
相合傘できるほど、あたし細くないしね。
傘のある場所までは、雨だけど。 濡れても歩き続ければ、タオルと傘のある場所まで、 いつか辿り着けるでしょう。 どんな柄の傘か、わかりませんが。
辿り着いたら、戻ってきます。 ここはあたしの、再出発の場所。
ここは、あたしの特別な場所だから。 その場限りの感情を流す場所には出来ません。 だから休止。
大事に残したい想いが芽生えるまで。
では皆様。 ご愛読、本当にありがとうございました。 必ず、必ず戻ってきますから。 そのときまた。よろしくお願いします。
まりあ
2005年05月08日(日) |
果たして *追記・告知あり |
昨日、テニスで寺島と会って、 感じた距離は、別に不愉快ではなく。 当然だし、むしろ楽で。 寂しくはあったけれど。
未来を変えたいと思ったり、 このままでいいと思ったり。いろいろ。
寺島の笑顔がそこにあるなら、 あたしに触れる手がなくてもいい。
果たして、未来を変える意味はあるんだろうか。 あたしの勝手な片想いのためだけに。
だからこのままでいいかもしれない。 更に全部無くしてしまってもいいかもしれない。 テニスだけの間柄で。
もし、あたしに寺島との未来が許されるなら。 それが始まるのは今じゃなくていい。 今はまだ変わり始めたばかりで、自己中なままだから。 心も体も変わってから。 成長してからまた出逢いたい。 あくまでもし。許されるなら、だ。
寺島は、俺より先にまりあに彼氏が出来るだろうと言ったけど。 彼氏って何ですか? そう聞いたら、暇つぶしだと寺島は言ったけど。 あたしに、つぶさなきゃいけない程の暇はない。
あのときあたしがもっと頑張って、 寺島との未来を手にしていたらどうなっただろう、 って考える未来の自分は、リアルすぎて笑えない。 そのときあたしが幸せでいられればいいけれど。
浮き沈みが激しいと言うのはこういうことを言うんだな。
**
追記が多いのも、不安定だからだろう。
本を読んでいたら、 要するに今のあたしは麻薬中毒者なのだと書いてあった。
別れたら、心が空っぽになるだろうけど。 それは「ないものねだり」をしてるから。
成る程ねー。ないものねだりか。 そんな格好悪いことしてるのか、あたし。
愛することはやめないけど、 追いかけることはすっぱりやめようかな。 大人になりたいから。
辛さや、涙は。 きっと一時期だ。 もう何度も経験したろ?
もっと自分が好きになれたら。 もっと自信が持てたら。 そうしてまだ追いかけたいと思ったら。
また戻ってこよう。 ここに。 あなたに。
きっとあたしは、 これからも「陽ちゃん」と呼ぶだろうし。 あなたも「まりあ」と呼ぶだろう。
愛してることは変わらない。 それは死ぬまでと言い切ってみせる。
だけどそのことと。 追いかけることは違うよね。
唐突ですが。 ここは「次」まで、休止になると思います。 あくまで「ここ」だけですが。
本当に久しぶりに。 失恋気分と言うか。 敗北気分と言うか。
ふと湧いた、でも怖い疑問を口に出した。 それは、後悔していない。 いや、別に後悔は一つもしていないけれど。
どうして、お互いがお互いの未来にいなくて、 そしてそれが当たり前なんだろうね?
あぁ、まりあはいないよ、と断言した寺島の声を、 あたしはどう受け止めたか。 よく覚えていない。 多分思考が止まってた。 わかってたのにね。
ねぇ、じゃあ陽ちゃん。 今、一緒にいる意味って何だろう?
ひまつぶし。 次までの中継ぎ。
あ、あ、あ、そっかぁ。 成る程ねぇー。 驚くほどあたしはいつものように、相槌を打ってた。 …つもりだったんだけれど、どうやらそれは頭の中だけで、 口は動いていなかった。
まりあにはね、足りないものがあるからね。 だから絶対いない。
何が足りないの?と聞く勇気はそのとき、あたしにはなくて、 言わなくていいよと笑うのが精一杯で。
あぁもうここには。 何度書いたかわからないけど。
もうこの人に本当に抱き締められることはないのかなって。 キスすることもないんだろうって。
思うんだから仕方ない。 感じるんだから仕方ない。
だから書かせてください。 書かないとあたしが壊れそうで。
必ず離れる日が来る。 そう書きながら、どこかで小さく、 来ないことを祈るあたしがいた。 でももういない。あたしが殺した。
離れる日は、こんなにも確実で、 遠くて、近い。
あたしは、 この恋愛が終わったら、 軽い恋愛しかきっと出来ない。 元々、そんな恋しかしてなかった。 こんなに愛する恋愛なんて出来ない。 次は、果てしなく愛されることを望むだろう。
いや、待て。 もう終わっているのか?
あなたの未来にあたしがいないことを知ってるから、 あたしの未来にはあなたがいない。
別の人の胸に、あたしが収まる? 別の人と手をつなぐ? 別の人に抱かれる? 別の人に愛を囁く?
ありえない、なんて思うけど。 何年かすればそうなるんだ。 たった、何年か。 たった。
こんなに胸は苦しいのに、 いつか薄らいで。 寂しくもなくなって。 涙も乾いて。 その儚さが、悲しい。
気がつけば5月。 2年前の今頃、どろどろで。 …思い出さないほうがいい。 また歩けなくなる。
もう考えない。 あたしは歩かなければ。 明日がある。 未来がある。 「あたし」にならなければ。
笑わなければ。 動かなければ。 何も。何もやってこない。
わかってる。 そろそろ現実を見る。 まだ離れない。 だって周りには誰もいないもの。
どうすればいいかなんて一つだけ。 あたしはあたしでいるしかない。 他のものになんてなれない。 「あたし」を変えることは出来るけど。
変わればきっとまた、何かが見えるね? 別の光も見つけられるね? 希望も持てるね? 優しくなれるね?あなたに。
くるくるっとあたしを回して。 笑おう。
**
こういう場合。 こっちがキレるって手もありかなと思うけれど。 もうそんな、「手」とか「作戦」とか、 そのへんを通り越してる気がする。
あたしがいなくなったらどうするのかなぁとか、 考えても無意味すぎる。 だっていなくなったことは、何度もあったもの。 それでも一緒にいたんだもの。 繰り返すなんて馬鹿らしい。
でも、過去と今は違うから。 もしかしたら繰り返さないかも。
あたしはどうしたいだろう。
家に帰る道、飼い猫があたしを出迎えた。 じっと座っていて、 「帰ろうか」 とあたしが言って撫でると、にゃぁと応えた。 あんたはきっと、 あたし達を読めるようになったのね、と思う。
あたし達がいつもどおりに歩くとき、 猫はあたし達にどこまでもついてくる。 ついてくるね、可愛いねって言いながら歩く。 あたし達がずれているとき、 猫はあたしの帰りを待っている。
あんたはいつもあたしを迎えてくれるのね。 あたしが帰る場所はここなのね、って。 思いながら、頭を撫でて、一緒に家に入る。
今日も寺島を思いやってやれなかった。 最低だな。 自分しか見てないからそうなる。
謝り方を、よく知らない。 それは多分、あたしがまだ自分に自信がないから。
でもそれなら。 持ってみよう、少しだけ。 困らない程度に。
それがなくて寺島を失うだなんて。 バカバカしいにも程があるじゃない。 簡単に手に入るものなのに。 考え方一つで。
よし。 ちゃんと、話をしよう。
**
ちょっと悲劇のヒロインぶってましたので。削除と訂正。
あなたが目覚ましにとくれた、 額へのキスの余韻がまだ残っている。
もしこんなところをあなたのお母様に見られたら、 あたしは社会的な生活が出来なくなるんじゃないだろうか、 とひっそり心配している。
本当にもしだけれど、家庭を作ることになったなら、 嫁姑の確執は半端無いだろう…と予想する。 書きながら、あまりにもリアリティがなくて笑える。
表面化していないだけで、 確執はきっと、高校生のときからあっているのだろう。 当時、あたしは「悪女」と呼ばれていたらしいしね。
今は、先日寺島の部屋に入るのを目撃されたので、 「あの太った人」 って呼ばれてるらしい。 事実なので別に気にしないけど、 敵視されてることは気になる。
おお怖い。 だからやっぱり、寺島の元には嫁ぎたくない。 と本気で思ったりする。
そうなると、 寺島以外の結婚相手をつかまえなければならないわけで。 そのためにはダイエットが必須。
…そういう意味でも頑張らなきゃいけないのか。 発見。
茶原には、
「“将を射んとすればまず馬を射よ”
だから父親をおとせ!」
とか言われたことがあったな。 懐かしい。
まさかここまでとは思っていなかったのだが、 今日寺島は、 何もなかったように接してきていた。
最初はちょっと不機嫌気味のようだったけれど、 笑顔が増えればそれも消える。 そういう点では、わかりやすい人だ。
あたしがひきずるわけにはいかない。 多分、以前からそういう学習をしたのだろう、 あたしの頭は切り替わっている。 横で笑うのは、まるっきりいつものあたし、だ。
そう、いつも思うのだ。
あぁ、もう修復不可能かと。
別に自分達の絆が脆いものだとか、 危うい関係だとか、思ってるわけでもないのだけど、 2人の空気が大きくずれるとき、 そんなことを考えてしまうのだ。
最終的には、 いやいや、そんなに簡単な関係じゃない、 っと信じて、行動して、 平穏が戻り、あぁよかったと胸を撫で下ろす。
最近忘れ気味だけれど、 寺島との今までで、 あたしはいくつもそんな経験をしたのだろう。 ある意味、 だからこそ今回も信じられたのだろう。
切り替えこそ早くなくて、 信じられなくて苦しかった夜は無駄じゃないと、 今は思える幸せ。
一方で、 終わっていいとも思った。 終わっても、歩き続けられる自分を知っていた。 それは寺島がどうでもいいわけじゃなく、 寺島に依存せずに生きている自分の部分が、 ちゃんとあると思えるから。
それらは、少しでも早くあたしの心の平穏を取り戻すのに、 役立っている。 いつもの自分に戻りさえすれば、何でも出来る気がする。
寺島と夜を散歩しながら。 自然に絡んだ指が嬉しかった。 寺島の歩調に合わせられる自分が嬉しかった。
何よりも何よりも。
もう、 あたしの携帯に残るムービーでしか見られないかと思った、 寺島の笑顔が嬉しかった。
今は、 それを最優先に考えても許されると思う。
恐怖で涙が零れるなんて久しぶりだ。 何度経験しても慣れない、 寺島を失うかもしれない、という恐怖。
藤原は、 「機嫌が悪かっただけだよ」 と、涙を流すだけのあたしを宥めてくれたけれど、 それを見落としていたあたしが悪かったのだ。 いろんな要因から、もう機嫌は直った、と判断した、 あたしが甘かったのだ。
陽ちゃんと何度呼びかけても、 寺島はこっちを向いてくれなかった。 ただ、部屋に向かって歩くだけだった。 呼び続けながら、 どこの昼メロだよっ!!!!!!!! と嫌気が刺していたが、 呼ばなければ沈黙になるわけで、 その沈黙には耐えられそうにもなかった。
寺島が家への道に消えてゆくのを見て、 あたしはどこへともなく歩いた。 気がついたら、藤原の家の前にいて、 藤原に「泣くなよ」と笑われた。 ごめん。 でも1人じゃ。壊れてしまう気がしたの。 ありがとう。
藤原と、少しだけ話して別れた。 別の話もして、そのときは笑える自分が不思議だった。 頭を切り替える術を、あたしは身に付けたらしい。 便利だ。
泣いてその場にしゃがむのは簡単だ。 後ろ向きに歩いてみるのも、そう難しくない。 だけどあたしは嫌だ。 前を向かなければ何もないのだ。 歩かなければ始まらないのだ。 動かなければ、ゼロのままなのだ。
溢れる涙はそのままにしておけ。 怖くないはずがない。 愛する人を失うかもしれない不安が、 涙を必要としないわけがない。 その感情を拒否していいことはきっとない。
歩かなければ、涙も乾かないから。 とりあえず歩こう。 帰ろう、あたしの場所へ。
先のない道なんてない。 明けない夜と上がらない雨もない。 歩けばそこが道。 光が指せば未来が見える。
歩くことを怖がるな。 傷つくことを恐れるな。 守りぬけ。信じる気持ち。
多分、今までで1番酔っていた。 1人で歩いて帰れなかったのは初めてだ。 大体、酔うのが早すぎた。 皆、ボーリングで疲れていたのだろう。
寺島は…相変わらずずるくて。 優しくて。温い。
「なぁ藤原。
こいつ酔っ払ってるから、送ってってくれよ」
心配なら自分が送ればいいじゃない。 何で人任せなの? 結局、あたしを優先させることは出来ないってことだよ。 そう思ったから。 藤原に送らせたりは、しなかった。 悪すぎるよ。 ちゃんと藤原の家の前でさよならした。
「ねぇ、大丈夫?
帰れる?」
そう言わせたのは、きっとあたし。 言って欲しいオーラを出してたことだろう。 言わせたくせに、
「うん。大丈夫」
と、少しだけからめた指を離したのもあたしだ。 酔っぱらいというのは意味不明である。
意味不明な酔っぱらいは、直後に電話をかけてみたりする。
「どうしたの?」
って電話に出る寺島は、優しいんだと思う。
「ねぇ、帰れないって言ったら、
ついてきてくれた?」
「うん。帰れないの?」
「帰れないかも。だって今歩けてないよ。
でも大丈夫」
「本当に?じゃ帰れたら電話してよ」
「んー」
1人になると、すっと理性が戻ってきたりするのに、 昨日はその感覚が全然なかった。 とろんとしたままで、 あれーおかしいなぁ、酔ってるなと自覚したくらいだから、 まだ吹っ飛んではいないのだろう。 この日記の半分くらいは、昨日書いているし。
食卓で、寺島に電話をした。 「着いたよー」
「今家の中?」
「ん」
「よかった」
「何で?」
「何でって。何かあったら嫌じゃんか」
「嘘ばっかし」
「嘘じゃないよ」
酔っぱらいというのは卑屈である。 それとも、あたしの元々が卑屈なのか。
阿比留さんだったらきっと送ってくれてたね? 二宮さんだったらどうだろ?
結局あたしは、根本的な部分で勝つことが出来てない。 これからも勝てない気がする…彼女らはあたしが持ってないものを持ってる。
「嘘吐き…」
そんな感情を勝手に声ににじませるあたしも、 相当ずるいんだと思う。
寺島が、 「いや、お前の気持ちもわからんではないから」 っていきなり言い出した。 想像してなかったセリフにきょとんとなる。
「何のこと?」
「ん、お前のいろいろな気持ち」
「え?気持ちって?どれよ?」
「だからいろいろだよ」
このあたしの何をわかってるって言うんだろう。 くるくるくるくる変わってるのに。 初めてそんなことを思った。 でも一種の被害妄想だとも思った。 多分あたしは、自分で思ってる以上にわかりやすいし、 寺島はそういうのを汲み取るのが得意な人だ。
「わかってもらえなくても大丈夫」
そのセリフが酔っぱらいの戯言だというのも。 きっと、バレバレだったんだろう。寺島には。
これから先寺島の心をつかむのは、他の人しかありえないって知ってるのに。 あたしのことを1番わかってるのは、寺島であってほしい。 そんな矛盾を、 あたしはいつまで抱えていくんだろう。 一種の馬鹿である。
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