2004年06月29日(火) |
38分間の実況をありがとう。 |
本屋でテニス雑誌を立ち読みして、 女子テニスのヒンギスの記事を読んでから、 テニスの試合を見るのが楽しくなった。
夕べ電話をしていて、寺島が、 「あ、杉山の試合やってる」 と言い出した。 BSが映るのは、とても羨ましい。 見たい見たいと騒いだら、寺島が実況中継してくれた。 兼、基本講座。兼、解説者。
0時を過ぎると、寺島は眠くなったと言い出した。 一昨日の電話で最後眠ってしまったのを、気にしていたのかもしれない。 正直試合の展開が気になったけれど、 そのまま喋らせ続けるのも酷なので、電話を切った。 38分の実況をありがとう。
以前は電話をなかなか切れなくて、切りたくなくて、 ぐずぐずしていたのに。 いつから簡単に、 「じゃあおやすみ」 と言える様になったのだろう。 そういう自分を確認するたびに、 少しずつ変わっていく自分を実感する。
寝るのが遅くなってしまうけれど、 1:05からのNHK総合でのテニスを見ることにして、お風呂に入った。 上がると、携帯に2件のメール。
残念に思う心の片隅で、 すごく嬉しく思った。
寺島の優しさと、 こうして同じものを楽しめるようになったことに。
無理矢理テニスを見てるわけでもない。 純粋に楽しめるから。 余計に、嬉しい。
夕べ寺島と電話して、落ち込んで、 母と茶原に引っ張り上げてもらった。
深夜の2時にメールを返してくれる茶原に、 いつまで甘えていられるかな、と思う。 あたしがいつも泣きつくから、夕べはついに、 「どうしたんだい?のび太君☆」 なんて言われてしまった。 本当にドラえもんみたいに、助けてくれるけど。
君は焦っているんだよ、って茶原は言った。 そんなことない、って一瞬思ったけど、 そうじゃなきゃ説明がつかないことだった。 答えがすぐに出るものじゃないことは、知っているのに。 出たかのような気になって、調子に乗って、 そして否定されて、落ち込む。 ここに書くと改めて、バカみたいだと思う。 そんな自分に気づかずに、母や茶原に迷惑かけて。 もっとバカ。
茶原が、本当にたくさんたくさん、 ポジティブになれる言葉をくれる。 どうしてこんなに、あたしの欲しい言葉がわかるのだろうと思う。 本人に言ったら、きっと、 「わかるんじゃなくて一般論だ」とかなんとか言うんだろう。 結局あたしの悩みなんて大したことがない、と言いたいらしい。 ちょっと考えればわかること、と。
「ね?ほら安心」って茶原の一言に。 どれだけ癒されたかはかり知れない。 涙がぽとぽと落ちて。 ありがとうは足りなくて。 「ありがとうドラえもん。僕また頑張れるよ」って、送った。
最近。 寺島との仲が、良い。 なんだか、安定している。
「会いたい」と言って以来だ。 私自身、あれ以来素直に接することが出来ている。 多分、理由はそれなのだと思う。
けれど悩めることが、ひとつ。
日記が、書けない。
思うことは、たくさんある。 心に残ったセリフも、ある。 なのに。何でか。 ここに残すことが出来ない。 きっと、怖いのだ。
ここに残すということは、私の中でそれが確立するということ。 そのときの私の精一杯を文章にするから。 私が感じ、考えていること。 そうして出てきた、自分の本音。 それを私の言葉で、綴る。
それが未来に、否定されるのが怖いのだ。 むしろ私の中に、既に否定している私もいる。 その否定の気持ちを考えずに、 今の心境を綴ることは、難しい。
喜びに溢れた日を過ごしても。 パソコンの前に座れば、ネガティブが頭をもたげる。 どうも、喜びのままに綴ることが、出来ない。
「幸子。#4」なんかは、 書きたかったことをやっと書けた気がしていた。 けれど。 それがメインではない。
幸子の話を書きながら、思い出した。 あれはいつだったかな。 高校生のとき。 寺島とまだ付き合ってもなかったとき。
寺島と、帰り道に偶然会って。 分かれ道で、喋っていたとき。 寺島の高校の、同じ中学の男子達の話になった。 私のことを、嫌いな。
その人達は、中身もだろうけど、 私の外見を主に嫌ってる人達だった。 私もその人達の、外見で判断するところが嫌いだったし、 中学3年生のときにその中の1人が、 授業中漫画を読んでいるところを私に見つかって、 先生に告げ口されたことを根に持っているという、 くだらない性質も嫌いだった。
寺島は、どちらかというと、その人達と仲は良かった。 けど、私とも仲良くしてくれて。 いくら小学生のときからの知り合いだからって。 周りがああだったら。 同じようになってもおかしくないのに。
「寺島は、あの人達みたいにしないね?何で?」
それは、あの人達が嫌うように、 私は外見がよくないのに、という意味だった。
寺島は、少しためらって、
私が今、寺島をはねつけられないのは、 こういった過去が作ってきた寺島への信頼だと思う。 数えてしまえば少ないけれど、 私の中に、深く残るものばかりで。 それこそ、私をそのまま受け入れてくれた人だから。
寺島のその言葉の後、何て答えたか覚えてない。 嬉しくて、泣きながら帰ったことは覚えてる。
もし言ってなかったら困るから、今ここで。 寺島、ありがとう。 あたしを救ってくれて。
今日、今井から聞いた。 今井が、あたしと寺島の関係を幸子に話したとき、 幸子はキレたんだって。 それは、幸子が地元に帰ってくる、少し前のことらしい。
やっぱりなぁ、と思いつつも寂しかったり、 あたしの前では、キレてる様子はなかったのに、と思ったり、 でもそれは、 前川のことを一切言わなかった幸子なんだなぁと思ったり。
今日は雨だったから、家に寺島が来てくれた。 あたしより早く帰って来ていたから、迎えにも来てくれた。
家への道を歩きながら、たくさん話した。 部屋で、たくさんのキスをした。 寺島に電話がかかってきて、それが長くて、 あたしがふてくされると、寺島は慌てて頭を撫でてくれた。 手を握っていてくれた。 会話に出てきた女の子の名前を尋ねると、ちゃんと説明してくれた。
抱いてくれた。 抱き締めてくれた。 「好き」って言ったら、キスしてくれた。 たくさん、甘えさせてくれた。 甘えてもくれた。
帰り道、手をつないでいてくれた。 次の約束も、してくれた。
ごめんね、幸子。 例え、あたしを「彼女」にしてくれなくても。 こんなにも喜びを与えてくれる人に、 今、これ以上のことを要求するなんて出来ない。 ましてや、この人にはあたし以外の女はいない。
そして、夕べの電話で寺島が言ってくれた、 「好きだ」って言葉も、忘れられない。
差別されていたこと。 あだ名をつけられたこと。 そのことも勿論、傷になって残っている。 だけど、だからこそ、 あたしを好きだと言ってくれる寺島が大事だ。 それは今だけのことと言うなら、 続くように努力をしたいと思う。 寺島が好きだから。
「付き合う意味がわからない」なんて、 ただ逃げているだけだと思うかもしれない。 寺島と別れた帰り道、 間違っているのかもしれない、と思った。 だけど、 じゃあ「付き合っている」ならば正しい道? あなたは許してくれる? 祝福してくれる? そうでもないんでしょう。
何度となく同じことを繰り返してきたあたし達。 だけどその度に、傷は広がって。 今はお互いに、その道を選べぬほどに。 繰り返すことが、怖くて。
それでも、一緒にいたい。 だから。
ごめんなさい、幸子。 寺島を捨ててあなたを選ぶなんて、出来ない。 今のあたし達には、これしかない。
でもあたしは努力をする。 決して、これで満足はしない。 ちゃんと歩いてゆくから。 見てて欲しい。
そういう意味では。 私はきっと、男の人に恵まれていたんだろう。 小田も、寺島も。 私の気持ちをちゃんと受け止めてくれたうえで、フッてくれた。
「好き」という気持ちを、 外見という理由で真っ向から否定されたことは、なかった。
だからむしろ、この外見のままでは寺島に申し訳なくて、 茶原にダイエットを勧められたときも、不思議には思わなかった。 寺島が外見で判断する人だとは思っていないけれど、 少しでも、寺島の「可愛い」に近づきたいと思う。
そんな私に、幸子は、 「外見で態度が変わるような人はダメだよ」 と言う。
幸子の頭にはきっと、 前川や、差別をした男子のことが思い浮かぶのだろうと思う。 そうじゃなくても、 外見で判断する男の人というのは、私だって嫌だ。
要するに幸子は、 「外見も含めた、ありのままの自分」 を好きになってくれる人がいいのだと言っているのだと思う。
だけど、 ぶっちゃけた話、今の外見を好きになってくれる誰かがいる、 と思っているところがわからない。 それは結局、自分を可愛いと思っているんじゃないかと思う。 思っていないのなら、努力をするはずだ。
中身が外見をつくる。 そんな風にも思う。 だから、努力をしたい。
寺島に甘えたままは嫌なのだ。 本当の意味で「可愛い」と思われたいと思う。
でもそんなにまで寺島を好きだということを、どう伝えればいいのだろう? 好きなことはわかってる、と言われればそれまでで。 今まで散々勝手を言ってきた寺島をどうして、と聞かれることもわかっていて。 それは、いつも繰り返していたことだったけれど。 もうここまでくると、意味が無い応酬に思えた。
経験や、育ってきた環境や、友達が違うから。 考え方が違うのは、どうしようもないことで。 他人だから、その更に他人を想う気持ちが判るわけもなくて。
私と幸子はこれまでだな、と思った。 好きな人に好きと言ってもらえるように、と思う私と、 ありのままの自分を好きになってもらおうとする幸子。 どっちもどっちだと思うから。
寺島との関係を聞いて、幸子は、 私との間に壁が出来た、と言った。 寺島への気持ちは、どうしても判ってもらえないらしい。 判れ、というんじゃなく、 好きなんだねー、と、認めてもらえたら、と思っていたんだけれど。
親友である資格などない。 所詮は、そんな女だ。
幸子とのすれ違いを感じたことは、もう一つあった。 それは、「外見」のこと。
ぶっちゃけた話、私も幸子も、外見がよくない。 中学校の頃、男子に差別されたりしていた。 中には、女子もいた。 変なあだ名もつけられてた。
私には、寺島がいた。茶原がいた。 部活の友達や、クラスの女友達がいたから、 ほっとけた。
幸子にいなかったわけじゃない。 友達は私より多かったと思うし、男友達も、いた。 でも、私より傷が深かった。
多分、彼女にあって私にない、体験があるからだと思う。
中学2年のとき。 幸子には、3年想った人がいた。 名前を前川という。
前川は背が小さくて、「可愛い」タイプの男だった。 バカだけど、それをしゃべりの面白さでカバーしていた。 いつも周りに人がいて、笑い声を響かせていた。
幸子は、小学生の頃から彼を好きだった。 同じクラスで、仲が良かったと言っていた。
チビなのにバスケ部で、毎日学校の周りを走っていた。 それを楽器片手に、4階の窓から2人で見下ろしていた。 「可愛い♪」 と幸子は、笑顔だった。
けれど私は、心から応援することは出来なかった。 前川を含む男子のグループが、幸子にあだ名をつけていることを知っていたから。 だから前川を、人間的に好きになれなかった。
私が前川を好まないのを、幸子は知っていたのかもしれない。 バレンタインに告白することを、教えてくれなかった。 その結果も、教えてくれなかった。 友達が教えてくれるまで、私は知らなかった。
前川のことは、今でも許せない。
幸子は、私に何も言わなかった。 泣きもしなかった。
泣けもしなかったのかも、しれない。
幸子の話を、少し。
幸子の大学が開学記念日だとかで3連休になるので、 幸子が地元に帰ってきた。 うちに遊びに来た幸子に、日記を見せてと言われて、 寺島のことを言えるわけが無いので嫌だと言ったら、 「私に言えないことを書いているんでしょう」 とずばり言われ、顔に出てしまった。
結局見せはしなかったものの、 寺島のことを、大体言わされた。 案の定、いい顔はしなかった。
それは構わない。 幸子に限らず、誰でも、こんな関係にいい顔はしないだろう。 どんなに主張しても、所詮はセフレだ。 少なからず、私と寺島の間でしか理解出来ない部分がある。 私と寺島のやり取りを、一言一句話すわけにはいかないのだから。
けれど、
「私はもう、何も言わない。 あんたは結局、茶原の意見を採るから」
というセリフに、固まってしまった。
確かに。 彼女はずっと、私に、寺島と別れろと言っていた。 もっと自分を大事にしてくれと言っていた。 付き合ってもいないのに、そういうことをしてはいけないとも言っていた。
彼女の意見を、シカトしてきたわけじゃない。 元々が、一般的な意見であるから。 私の理性だって同じ意見だし、理解は十分に出来る。
ただ、「理性」と逆の言葉として使うならば、 「本能」が寺島を選んだという話だ。
「彼女」という称号も、周囲の祝福も、周囲の理解も、 私は要らなかった。 寺島といられればよかった。 いつでも、私は。
寺島が好きだ。 理由なんか無い。 後付の理由なら、いくらでも喋れるけれど。
それが結果的に、茶原の意見を採るカタチになっているだけだ。 茶原は、私達を応援してくれているから。 同じ方向性なわけだ。
幸子と茶原をランク付けしているわけじゃない。 私の頭の中には、ちゃんと2つの意見が存在している。 それはどちらも、本当の気持ちだけれど、 選ぶなら、私は寺島への気持ちを選ぶのだ。 だから、幸子のセリフがショックだった。
すれ違ってしまっている。 はっきり、そう感じた。
2004年06月18日(金) |
本当に馬鹿だったけど。 |
3日ぶりの、メール。
「生きてる〜?」
返事は意外にも、早かった。
「死んでる〜」
いつも通りの応えが返ってきて、改めてホッとした。 全部私の思い込みで。心配しすぎで。
本当に馬鹿だったけど。 その分。 いろんな想いを、再確認して。 大事にしようと思えて。 素直になろうと思えた。 それはとても、今の私にとって、収穫だったように思う。
いつからなのか、よく覚えていないけれど、 寺島と自分の間にワンクッション置こうとしてきた。 寺島の前で、いい女を演じようとしてきた。
けれど、 経験も何もない私に、そんなことが達成できるはずもなく。 所々のほころびから、自分が零れて。 ギャップに、苦しんでいた。
今は、多分、寺島を信じているのだと思うけれども、 必要が無いと感じている。 それと、この2年間を経た「今」を通して感じるのだと思う。
寺島は少なくとも、私に演技なんかしていなくて。 しなくていいから、私の部屋に来るのに。 私がしたら、意味がない。 していたから。 寺島もワンクッション置いていたのかなぁ、と思った。
素直になること。 2年前の私は、そうだったはず。 素直な私が好きだと、寺島が言っていたことを、私はまだ覚えている。
それは、案外簡単で。 何も迷うことなく、寺島へのメールに書くことが出来た。 「会いたい」
私からこんなことを言い出すなんて、本当に初めてだよね。 今までは、ひねくれた甘え方しか出来なかった。 けどこのときは。 この言葉しか、思いつかなかった。
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リンクページ、作成が止まっておりましたが、やっと一段落。 とりあえずは、お世話になっているサイト様のみですが。 これから勿論増やしていきます。 ハートのアイコンからどうぞ。
『無理だ。』 その一言だけの、メールが。 ずしりと、2日間を背負って。
もし、あの4月2日の夜、寺島の口から知らされていたなら。 こんなに怖いわけが無かった。 あたしはあの夜のように、普通に聞き返しただろう。 「なぁに?気になる!早く言ってよ」と。
そして何よりも、 寺島の名前すら出ていないのに、こんなに思い込むこともなかったろう。
何の類の話なのか、市丸からは聞いていない。 ただあたしが、寺島のことかもと思ってるだけ。 いくらそう言い聞かせても。
この2日間の寺島をあたしは知らなかったし、 市丸から寺島の想いを聞いた、 4月2日の夜を思い出さずには、いられなくて。 不安は、消せなくて。
思い切って、聞いてみる。
『無理、って…。寺島の、こと?』
涙がにじむほどに、あたしは。 本当の意味で、安心をした。
そうしてやっぱり。 寺島への気持ちはなくならないと実感する。 やめると決めたはずの、独占欲も。
寺島に、会いたくなった。
2004年06月16日(水) |
きっと今も、これからも |
市丸の、「重大発表」。
メールを返すのが、怖い。
ついさっき、大丈夫だって思ったばかりなのに。 本当に信じられなくて信じていないのなら、何も怖くないはずなのに。 あたしの悲劇のヒロイン癖は。 まだ直っていない。
何も知らない友達の前だっていうのに。 あたしの顔はひきつっていた。 いつもだったら笑う話題だったのに。心から笑えなかった。
なんだかんだ言いながらも、寺島を信じていて。 だからこその笑いだったと、思った。 そんなあたしは、きっと今も、これからも、居る。
怖い。 けれど気になった。 同じ思いをするなら、早くてもそれはかまわない。
返信:『何?気になるから、今言ってよ』
市丸からの返信を待つ間、2日前を思い出していた。 その直前の会話も、4月2日の夜も、思い出した。 ちょっと前の、ここには書けなかったことも思い出した。
どくりと、心臓が鳴った。 あたしの顔は、かなりのものだったと思う。
やっぱり? 軽く言えるようなことじゃないの?
先週の火曜日、寺島に会ってから。 その後2日間、何の連絡もとらなかった。
別に、話したいことがなかった。 くっついたからしばらく間を空ける、という感覚でもあった。
寂しくは無かった。 何をしてるのかなぁ、と何度か思ったけれど、 メールでそう聞いたところで、すぐ話が終わることは目に見えた。
3日目の金曜日、 それ以上期間を空けたことが無かったから、さすがにちょっと不安になって、 暇なときにメールをしようかなぁと思っていた。
火曜に会う直前の、会話は。 あの人のことだったっけ。 そう思うと、この2日間の寺島を知りたくなった。
でも今、あの人を追いかけるからと言われても。 そう落ち込まないだろうと思った。 いつも考えてることだからだ。 やっぱり、って思うだけだし。 泣けないだろう、とも思っていた。
金曜の4限は授業がないので、 学食で、友達3人で語り合う時間になっている。 いつも盛り上がって、大声で笑ってしまう。 大好きな時間。
そこへ、市丸からメールが入った。 『重大発表がある。』
寺島の、あの人への想いが復活したこと。 あの人をまた追いかけることを、決めたこと。 それを市丸が教えてくれた。
もしかして、また? また君が持ってきたの? 私への報告を。
もう、いつものこと。 寺島が、 「彼女欲しい」 ってあたしに言うのは。
けど。 何で今日はこんなに、こたえるんだろう。 全て捨ててしまいたくなる程に。
今日の寺島は、不機嫌だった。 ネガティブなことも言ってた。 だから、それなりのメール返して。 少しでも、元気になってくれたらって。
でも。 最後の締めはそのセリフ。 いつもそう。 あたしが書いたメールは、一体何。
セフレの言うことなんて、信用ないってことね。
求め出したらきりがないことは、わかってる。 だから、しない。 寂しいと口に出せば、たちまちリアルになるように、だ。
寺島は、(笑)をつけれるようになっていたから、 少しは機嫌も直ったのだろう。 それだけでいいよ。
あたしが、市丸や竜崎君や有田君に求めることを。 君があたしに求めてくれるということ。 そして、それを少しでも満たせているなら。 十分だね。 自信はないけれど。
いつか、 寺島を100%満たせる人が現れたら。 ちゃんと彼女にするんだろうね。
寺島のために努力することは、決して嫌いじゃない。 幸子にそう言ったら、嫌われるだろうけど。
やってきた寺島は、妙にご機嫌だった。
その日は教授のおごりでご飯を食べてきたとかで、 きっと楽しかったんだろうと思う。
竜崎君のことを気にしていたのか、よくわからないけど、 いつになくキスが多かった。 頬にもしてた。 笑いながらしてくれたから、嬉しかった。
寝っ転がって、しゃべっていた。 寺島の携帯のデータを見ながら。 その中に、 宇多田ヒカルの「誰かの願いが叶う頃」があって。 寺島が、ああこれこれ、と話し始めた。
あの人の、着メロだって。
だからあの人からメールが来るたびに、余計切なくなって、 「そうなんだよな、皆の願いは同時には叶わないんだよなって、思うんだ」
最近。 感情をそのまま出すことに、慣れてきた。 不快とか。
「あ、そう」 不機嫌な顔で起き上がると、 寺島がひっぱった。
「怒るなよ」 「怒ってない」 「悲しむな」 それは無理。
キスが繰り返される。 でも心だけ泣きっぱなし。
5月のゴールデンウイークに、 竜崎君と、市丸と、もう1人男友達と、カラオケに行って。 その後、竜崎君と市丸と3人で、飲んだ。
当初、そんなに期待はしてなかった。 カラオケで、皆疲れてて。 次の日、竜崎君は県外へ帰る予定だったから、 次は会えるのは遠いんだし、せっかくだからーみたいな感じだった。
それが、お酒のせいだか何だかわからないけど、 異常に盛り上がった。 買ってたお酒はすぐになくなって、あたしは買いに行かされた。
あたしの部屋で飲んでいたのだけど、 宴会だった父がえらく早く帰ってきて、何となくお開きの雰囲気になり、 それでもずるずるとしゃべりながら、 午前1時44分に、彼らは帰っていった。
何の話をしたのか、もうあまり覚えてない。 けれど、あの夜は。 ずっと最近まで、あたしの癒しだった。
竜崎君とは、実はあんまり喋ったこと無かった。 あの夜に、初めて打ち解けて話せたのだと思う。 他愛も無い話題だったけれど、一緒に笑い合えたことは、 あたしにとって、大きかった。
カラオケで、竜崎君が歌って盛り上がった、大塚愛の「さくらんぼ」。 聴くとよみがえる、あの盛り上がった雰囲気も、竜崎君の声も。 いつもあたしを元気にしてくれた。 もっとも最近は、あの歌自体のパワーにも癒されていたけど。
元々、竜崎君は歌が上手くて。 彼のポルノグラフィティを聴くのが、あたしは大好き。 野球の専門的な話が出来るとこもすごいって思うし。 好きなチーム一緒だから。 話してて、聞いてて、楽しい。
何となく機会がなくて、アドレスを教えてない。 市丸から教えてもらえるし、多分送っても大丈夫だと思うけど、 いざ送ろうとすると緊張して、手が止まる。 それで何度、市丸に笑われたことか。
自分でも、そんな感覚が久しぶりで。 自然にそうなってしまうというよりも。 楽しくて、それを選んでいる。
本当はわかっている。 竜崎君に逃げているだけなんだと。 だって彼とは。悪い思い出がないから。 いつも楽しい思いさせてもらってるから。
けど現実。 人間関係にそれだけってありえないし。 だから本当は。彼とは何も始まっちゃいない。
悪い思い出。 寺島とのそれは、もう数え切れない。 いい思い出の数を、越してしまっている気もする。
なのに、選んでるのは寺島。 そんなことは、あたしが一番わかっている。 だから、竜崎君のことを考えるたびに。 寺島への想いを再確認するというバカなことを、 あたしは最近、繰り返していた。
そんな、何でもない彼のことを。 寺島に対するあてつけになんて、使えるわけなかったのだけど。 あのときあたしはとにかく嫌で、 何でもいいからぶつけて、 これ以上寺島の口からあの人の話を聞きたくなかったのだと思う。
案の定あの人は、機嫌を悪くして。 「俺は妥協の産物か?!」って。 このあたしに言った。
妥協して選んでるんだったら。 こんなに、我慢するわけないのに。
前日の日記の会話は全て、チャット。 寺島とは、初めてのチャットだった。
あたしは、ビール片手だった。 寺島も、市丸も、竜崎君も、ビール好きになりかけていて。 あたしだけ飲めないなんて、嫌だったから。
そのせいかもしれない。 寺島に、感情ぶつけてしまったり。 話しちゃいけなかったこと、話してしまったり。
あの人の話題が、続いてた。 正直、しんどかった。 個人的に、あの人を嫌いじゃないから、余計に。
同じ高校生活を送ったうえでの、気持ち。 寺島に関しては、いろいろ複雑な思いがあるけれど。 それ以外は、面白いし、よく気がつくし、 顔もスタイルもいいし。
寺島に「嫌いでしょ?」って言われてそう答えたら、 「気持ちが再燃するようなこと言わないでくれる?」だって。 そう言われてあたしが辛いって、何でわかってくれないの?
あぁ本当に。 あたしは彼女に敵わない。 そう実感させられる。
だからね、我慢、できなかった。 これを言ったら、寺島は機嫌悪くなるって、わかってたけど。 お酒の勢いもあったんだろうけど。
憧れている人の存在を、話してしまった。 …それも名前も。 寺島がよく知ってる人だったから、絶対話さないようにと思ってた。
ごめんね、陽ちゃん。 今考えたら、ものすごく自己中だった。 あなたは、昔を忘れられないきつさを、あたしに話してただけだったのに。 勝手に嫉妬して、勝手にキレて、ごめんね。
あたしが、憧れる気持ちを聞いて欲しいのと一緒だったのに。
「心が痛む」 と寺島が言う。
画面の向こうで。
どうしてあげたらいい? 私じゃあの人に、敵わない。
寺島の好きなバンドの新曲。 100%別れの歌。 寺島がすっごくイイってずっと言ってて、 歌詞検索で私も見てみた。 私が寺島に言いたかったセリフ、そのままだった。 それだけ、私の思考回路がありがちって話だけれど。
それを聴くだけで、心が痛いって言ってた。 ただ、歌がイイのかなぁって思ってたけど。 あの人のこと、考えてたからなんだね。
そんなに、あの人のこと好きだったんだ。 ごめんね。ちょっと意外だよ。 だって昔聞いたときは、本気じゃなかった、みたいなこと言ってたじゃない? ってことは、本気だったってことだったんだね。
曲聴きながらメールしたら、もうやばかったって。 忘れられなくて。 心が痛くて。 だから私を抱きたいって。 私の慰めの言葉なんて、シカトで。
言葉通り、 寺島は次の日、やってきた。
寺島に言われちゃった。
「お前って結局、セフレだよね」
って。
考えないようにしてた、けど。 無理矢理ポジティブに持っていってたけど。 否定なんか出来ない。
だよねだよね。 それ以外の何物でもないよね。 いくら気持ちがあるからって、決してそれ以上の何かではない。
わかってたよ。 それ以上の何かに出来るほど、君に気持ちはないって。 あったら。 先延ばしにする必要ないもんね。
ほらね。 だから、信じなくてよかった。 前みたいに立ち上がれなくなったりしなかった。 よかったよ。 今倒れたりしたら、将来に響く。
でもさ。 こんなぶっきらぼうな日記が、傷ついてる証拠だったりするの? 「信じなくてよかった」って言葉は、 どこかで信じてたからこそ出るものなの?
無神経なセリフには、慣れたつもりなのに。 ぽろぽろぽろぽろ。バカみたいに。隠せもせずに。
涙を、飲み込めきれなくて。 誰かに、受け止めて欲しくて。
あの人に、逃げてばかり。
「幸せになって欲しい」って、 寺島からも言われたことがあったな。 何回か言われた気がするけど、一番最近は、 いつだかの電話で、これからのことを話していたとき。
どうしたい?って。 俺は、セックスしない友達でもいいよって。 我慢できるよ。 お前には、幸せになって欲しい。
あたしの初めての人になってしまってから、そんなことを言う。 正直、あのときは泣きたかったよ。 そんなのが全然ない友達にはもう戻れない、なんて。 言いたくなかった。
幸せになって欲しいと、本当にあなたが思うのなら。 何の決意もなしに、うちのチャイムを鳴らしちゃいけなかった。 あたしはあんなに。 醜いほどに、すがったのに。
あたしは今、あなたがいて幸せだけれど。 あなたがいなくってもきっと、それなりに生きていただろう。 あなたに代わる幸せが、見つかっていなくても。
だから、 「幸せになって欲しい」なんて言わないで。 どんなときだって、あたしは幸せだから。 あなたがいてくれたら尚更、という話。
あのね。 あたしだって、初めての人があなたで、よかったから。 そう思うことは、びくびくものではあるけど。 確かに、思うから。
大丈夫。 幸せ。
ここに書けないことが、多くなってきた。 ここを「Make My Day」にして、 新しく日記を作ろうかと思っているのだけど。
また、寺島への信頼が減った。 今の私は保身ばかり、考えている。
信じて傷つくのが、怖い。 過去が、信じるなと私に言う。 傷つくからと。
傷ついてもいい、私は信じたい。 と言える強さは、もうない。
友達と、憧れの人と、 少しだけ寺島を信じる気持ちに、 少しずつ癒されながら。 何とか毎日を送っている。
全部信じきれたら。 きっと、ここに全てを書くけれど。
好きだから。 信じた分傷つくんだろうけどね。 それは大事にしたいけれどね。
今、これ以上傷ついたら。 立ち直れる自信、ないんだ。
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