私達は松屋を出て並木通り沿いのイタリアンレストランに向かった。昼は何度か行ったことがあるが夜は初めてだった。昼もいる若いホール店員が「夜にも来てくれたんですね」という目で迎えてくれた。
予約はしてなかったのだが待たずに席に案内された。といっても、客が入っていなかった訳ではなく8割の席は埋まっていた。いい込み具合だなと思った。
単品で頼んでいくと結局コースぐらいの値段になっちゃうよねという議論の元、私たちはコースを注文した。コースの種類は一番リーズナブルな物にした。パスタとピザは取り分けて食べるために2人が食べたい物を2人で相談して決めた。前菜は各々が決め、ドリンクは2人ともビールにした。料理の種にかかわらず、ドリンクはまずはビールだというのが私の考えだ。もしシャンパンがあればそれを優先するかもしれないが、その選択肢がなければ何も言わなくともとりあえずビールを持って来ても文句はない。
ビールが来て乾杯した。続いて前菜も来て食べながら飲んだ。彼はフォークを伸ばし、私の前菜をとって食べ「やはりそっちだった」と言った。やりとりも結果もいつものことだ。
彼は、写真展のこと、最近買ったデジカメのこと、渡瀬のことを話をした。私は、夏休みの旅行のこと、上司の悪口のこと、職場の伊藤さんのことを話をした。彼は続いて、選挙についての話をした。
「もう少しで選挙だよね。でさ、昨日夜3年ぶり位に親戚の叔母から電話が掛かってきたんだ。その叔母さん筋金入りのY党員で選挙事務所とかでも色々手伝ったりしてる人なんだけど、『どう元気にしてる?』とか『どんな仕事してるの?』とかいう世間話を結構とりとめなくするから解ってはいるんだけど、『で、要件は何ですか?』って聞いたら、『そうそう。あのね。もう少しで選挙じゃない。だからY党に入れて欲しいんだよね』って切り出されたから、自分の考えはこうでこうだという説明をしても『でも、それはそうで・・・だからY党だよ』と平行線。もう面倒だから『解りました。Y党に入れます』と言うと、『ありがとう。よろしくね。絶対だよ』と電話を切られたんだ」 と彼は話した。
「それは強烈だね。。」 と私は答えた。そして、そんな叔母が私には居ないことをホッとした。
「もちろんY党には入れないんだけど、そもそも政策説明抜きで『とりあえず入れて欲しい』というような党に政権を任せられる訳はないんだよね。もちろん、ここに任せたいと思う正党なんて無いけどね」 と彼は言った。
「そうだね。でも、電話のやり方自体も嫌だね。前段の世間話って、結局興味無いんでしょって思っちゃうよね。せめて、逆にして欲しいよね。本題を言った後に、世間話をして、穏便に終わらせるというか。なんで、そういう当り前のことが解らないんだろうね。。」 と私は言った。
確かにそうだねと彼は言った。
料理はメインが終わり、ピザとパスタが出てきていた。店員が適度に動き、店内も適度にざわついていた。外を見るとすっかり日は落ち、夜の銀座は、夜の仕事の人が縦横無尽に駈けていた。昼から夜に変わって、昼の選手と夜の選手の一斉の選手交代がなされていた。
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