昨日・今日・明日
壱カ月昨日明日


2004年09月30日(木) ただ通りすぎていくだけのもの

 朝のうちはまだパラパラ雨が降っていたけれど、昼からはすっきり晴れてきた。
 今日もひょこひょこと会社へ。昼休みにアバンザのジュンク堂へ行って、「ちくま」と「月刊百科」、「図書」の10月号をもらう。
 帰りには、ふと前を通りかかった旭屋で、ジュンクでは出ているのに気づかなかった「en-taxi」を買った。小島信夫の短編を読むのが楽しみ。それと「一冊の本」をもらう。こうして毎月毎月PR誌をもらっていると、本当に季節が早く過ぎる。
 
 日が沈んでから、急に空気がヒンヤリしてきて、何ヶ月ぶりに寒いと感じた。足のつま先や手の指先が冷たくなって縮こまる、この感覚が懐かしい。トレーナーを出して着る。
 膝にブランケットをかけて、傍らにもらってきたPR誌と買ってきた雑誌を積み上げて、上から順番に読んだ。「月刊百科」を読んでいたら、来月に車谷長吉の「反時代的毒虫」というのが平凡社新書から出るという情報を得た。うーん、ステキなタイトル。それから「図書」の『水の悪意』という小池昌代の随筆を読んでいたら、フェリックス・ヴァロットンの油彩画が澁澤龍彦・巌谷国士の『裸婦の中の裸婦』で紹介されていると書いてあって、へえーっ知らんかったと思い、『裸婦の中の裸婦』を読むため本棚探索をしている時、棚の奥に何が収まっているか見ようと手前から出して足元に積んでいた15冊くらいの本の上から、よりによって『岩波国語辞典』が何かのはずみで左足の小指の上に落ちてきて、目から火がバチバチと出るほど痛かった。

 夜にIさんから、夜中に友人Kより電話あり。Iさんとは土曜日に、Kとは来週のどこかで会う約束をする。二人とも、ゆっくり話聞いてねー、と同じようなことを言っていた。話ってどんな話だろ?なんだか今から気が重い。

・購入物:「en-taxi」7号(扶桑社)

・朝食:バタートースト、いちごジャム、目玉焼き、リンゴ、珈琲
 昼食:きつねうどん、ヨーグルト
 夕食:肉じゃが、高野豆腐の煮物、モロッコいんげんのサラダ、わかめと大根の味噌汁、ごはん、麦酒


2004年09月29日(水) コツコツと掘り起こす

 午前6時起床。今朝の音楽はイヴァン・リンスの「モード・リーヴリ」。イヴァン・リンスはCD化された時買うだけは買ったのだが、それだけで満足してろくに聴いていなかった。先日ふと思いたってかけてみたら、どの曲も良くてあらためて感心した。音楽の全てががっちりかみ合っているという感じだ。ここのところ朝はこのアルバムか、または「今宵楽しく」。
 レンコン、ゴボウ、里芋、コンニャク、人参、椎茸、鶏肉を入れた筑前煮を作る。ゴボウと里芋はちゃんと下茹でもした。ゴボウを茹でる匂いはお正月の匂い。大人の頭が2つ入るくらいの大きな鍋にいっぱい作ったのに、2人で朝・昼・晩と食べたらきれいになくなってしまった。なんだかコワイような気がする。

 夕方、阪急3番街を通りかかったら広場で中古レコードセールみたいなのをやっていたのでフラフラと近寄ってみる。会場の隅の隅にポツンと存在している「レーザーディスクコーナー」にひとり張り付いて漁ってみたところ、昔々KBS京都かなんかとにかく、その辺りのU局で放送したのを一度だけ観て、すごく良かった印象のある「パリ、テキサス」のディスクが840円(消費税込)で見つかった。まあ、嬉しい。私はこの映画でロードムービーというものに目覚め、ハリー・ディーン・スタントンのファンになったのだった。ライ・クーダーのサントラも好きだ。

 だんだんお化けみたいになってきたので、雨がびしゃびしゃ降る中、髪を切りに行った。すっきりして美容院から出たらさらに雨足が強くなっていて、やって来たバスに飛び乗って家に帰った。
 バスの中で石田千「月と菓子パン」を読んでしまう。なるほどしみじみとよかった。豆腐、サツマイモ、ビール、居酒屋、美術館、散歩、川原、草野球など、私の好きなものがいっぱい出てきて、心が落ち着いた。昆布と梅干としょうがをいれた「夏風邪スープ」、もし風邪をひいたら私も作ってみよう、とメモ。

 夜は、荒川洋治「夜のある町で」を読み始める。台風がやって来た。雨と少しだけ雷。もうそろそろ秋晴れの良いお天気になってほしいなあ。

・購入物:「パリ、テキサス」のレーザーディスク 

・朝食:筑前煮、ポーチドエッグ、とろろ汁、ごはん
 昼食:お弁当(カツオのおにぎり、筑前煮、長ネギの卵とじ、リンゴ半分)
 夕食:さわらの塩焼き(レモンをかける)、豆腐とえのきだけの味噌汁、筑前煮、オクラ、ごはん


2004年09月28日(火) 食べる歓び

 午前6時起床。起きてすぐ米を研いで朝ごはんの準備をする。典型的な旅館の朝食メニューみたいなのを作ろうと、昨夜から計画を練っていた。朝ごはんが楽しみだと、朝が来るのが待ちどうしくなるし、美味しそうなお弁当を作ると、会社に行くのも(ちょっとだけ)うれしくなる(ような気がする)。

 でも今日は一日中バタバタしてて、お弁当をゆっくり楽しむ時間はあんまりなかった。まあ遠足じゃあるまいし、弁当食べるために会社に来てるんじゃないからしょうがないけれど。いろんなことで気疲れして、次から次へと反省事項ばっかり出てくるし、夜には心身ともにクタリとした。
 終業して会社から外へ出たら、ポツンポツンと細切れに雨が落ちていたけれど、空を見ると雲が切れているようだったのでこれ以上ひどくならないとみて、ちょっと寄り道して帰ろうとTと待ち合わせて、晩ご飯はひさびさに印度屋でステーキカレーを食べた。この春に200円も値上げしただけのことはあって、前は輪ゴムの束ねたヤツをかんでいるみたいだった肉が、ずいぶん柔らかくなって美味しくなっていた。咀嚼する時間が短くなったぶん、いつもより早く食べ終わったのでしばし周りを観察。
 私の右隣に座っていた高見盛みたいなサラリーマン風は、フウフウ言いつつ汗みずくになってカツカレーとサラダを食べ、食べながら左手でメールを打ち、そのかたわらカレー皿の右側に2つ折にして置いた夕刊フジを眺める、という実に忙しい食べっぷりで、お行儀が悪いったらなかった。高見盛の向こうに座った顔中ニキビだらけの高校生男子は、オーダーを聞かれていかにも常連ふうに「いつもの」と答えたのだが店のおばちゃんに、「ウチには『いつもの』というカレーはない」ときっぱり言われていたのがちょっと面白かった。

 カレーを食べる前、Tの買物に付き合って天満橋ジュンクをうろうろしている時、児童書のコーナーで偶然見つけた文庫を2冊買った。石井桃子の「幼ものがたり」は出ているのを知ってはいたが、大道あやのほうは今日初めて目にして、巻末のカラー図版も多さに感激して買った。大道あやの絵はページをめくるとぐわっと押し寄せてくるような迫力があって、色が溢れてて、鮮やかで、それから動物や植物がノビノビ元気なのがとてもいい。

 夜は、石田千「月と菓子パン」を読む。夜中すぎから激しい雨。窓を閉めて、扇風機を回したまま寝てしまった。

・購入物:石井桃子「幼ものがたり」(福音館文庫)
     大道あや「へくそ花も花盛りー大道あやの聞き書き一代記とその絵の世界」(福音館文庫)

・朝食:塩鮭、ネギと揚げの味噌汁、ほうれん草の胡麻和え、梅干、味付け海苔、ごはん
 昼食:お弁当(カツオの俵型おにぎり3つ、キャベツと玉ねぎの辛みそ炒め、卵焼き、ほうれん草の胡麻和え、ミニトマト、梨半分)
 夕食:外食、印度屋(ステーキカレー)


2004年09月27日(月) 罪悪は、近代社会における唯一の鮮明な色彩だ

 今日は代休。
 のはずなんだけれど、出席せねばならない全体会議があって、午前中だけ出勤する。なんでこんな中途半端でブサイクなことになってしまったのだろうか。おかしいなあ。お弁当をぶら下げて、少し不機嫌な気持ちで会社に行く。

 会議はまるでお通夜みたいな感じで特に盛り上がることもなく特に問題もなく終わり、私たちいてもいなくてもどうでもよかったよねえ、なんて文句を言いながらIちゃんとお弁当を食べて、私はどこへも寄らずそのまま家に帰ってきた。
 昼からはしばしの間、家でごろごろ。日記を書いたり、本や洋服の整理をしたり、届いた宅配野菜の処理をしたり、あとは、サガンが亡くなったと知って、本棚から「悲しみよこんにちは」を出してきて読んだりもした。この小説で好きなのは、第3章の冒頭でセシルが階段に腰掛けて珈琲とオレンジの朝食をとるところ。
『…私はコーヒーのカップとオレンジを持って、のんびりと、階段に腰を下ろして朝の楽しみに着手した。私はオレンジに噛みついた。甘い汁が口の中に撥ねかかった。熱いコーヒーをすぐにひと口、それからまた果物の新鮮さを……朝の太陽は私の髪を熱し、私の肌の上のシーツの跡を伸ばした』
 なんかかなり気取った文章だけど、高校生の頃初めて読んだ時はちょっと自堕落な感じが格好いいと思った。個人的には、珈琲とオレンジを一緒に食べるのはあんまり好きではない。

 日暮れ前に、ぶらぶら買い物に出る。スーパーでエリンギとしめじと国産のニンニクと急に食べたくなって何十年ぶりかにポテトチップスを買った。その帰り、ぶらぶらと何の気なしに古本市場に立ち寄って、漫然と棚を眺めていたらなんと野呂邦暢の「諫早菖蒲日記」があって、我と我が目を疑った。グレーの背表紙が光輝いているようだ。こういう時、生きててよかったと思う。それからずっと探していた色川武大の「明日泣く」も発見して、今日は朝からどうも不機嫌だったけれど、思い返してみれば素晴らしい日だったかも知れない。とにかく古本の神様に感謝、なのであった。

 ごはんを食べながらしょーもない内閣のニュースを見る。バカバカしくなってテレビを消し、ニール・ヤング「渚にて」とかイヴァン・リンス「今宵楽しく」など聞きながら、読書。小池昌代「感光生活」を読了して、Tが買ってきてくれた「クウネル」のバックナンバーを眺めていたら、ものすごく料理がしたくなった。明日は気合いを入れて朝ご飯とお弁当を作ろう。
 午前0時すぎ就寝。


・購入物:野呂邦暢「諫早菖蒲日記」(文春文庫)
     色川武大「明日泣く」(講談社文庫)2冊とも古書

・朝食:ふかしサツマイモ、ヨーグルト、牛乳
 昼食:お弁当(ごはん、ネギ入り卵焼き、千切り大根の煮物、梅干し、味付け海苔)
 夕食:鶏肉とズッキーニのパスタ、キノコスープ、ガーリックトースト、麦酒
     


2004年09月26日(日) スティーヴン・フリアーズな週末

 昨夜は本を読みながら早々に寝てしまったせいか、今朝は6時に目覚めた。カーテンを開けて、金曜日の日記を書いて、珈琲を淹れて、布団の上で新聞を広げて読んだ。新聞を読み終わった後、今日は朝から中央図書館へ行って、自分のための本を借りようとふと思った。思いたったら早く行きたくて、朝ごはんを食べて出かけた。

 図書館で検索モニターの前に座って、次々と本の予約をしていたら(結局合計5冊予約した)、ポンポンと肩を叩かれて、振り向けば前の職場で先輩だったYさんが立っていた。一緒に働いた期間が短いせいか、私とはあまりにかけ離れたタイプの人であるせいか、あんまり喋ることがない。Yというのはこの人の旧姓で、今はたしかKという苗字のはずなのだが、私はつい、「Yさん」と呼んでしまう。その度、Yさんの目尻がキッとつり上がるのがわかる。結婚した人を旧姓で呼ぶのは失礼なことなのかどうか、私にはわからない。どうでもいいことのように思える。
 あの人どうしてる?、この人どうしてる?、とかつての同僚の動向を聞かれたのだが、私は誰についても何も知らなくて、ほとんど答えることができなかった。Yさんは、アナタは人のことに興味がないんやねー、と言って、ため息のようなものをついたので、申し訳ないような気分になった。話の最初のころは、どこかでお茶でも飲まない、などと言っていたYさんが、それじゃ子どもを待たせてるから、とあっさり帰ってくれたので少しホッとした。
 本日借りたもの。荒川洋治「夜のある町で」「忘れられる過去」小池昌代「感光生活」「小池昌代詩集」石田千「月と菓子パン」。どれも読むのが楽しみだ。

 図書館近くの天下一品でラーメンを食べて家に帰る。ビールを一缶飲んで2時間ほど昼寝をしてから、Tが持っていたレーザーディスクの中からで「グリフターズ」を観た。
 アンジェリカ・ヒューストン、アネット・ベニング、ジョン・キューザックが演じる母、息子、その恋人の3人の詐欺師によるサスペンス。軽快なコンゲームものなのかと思っていたけど、案外暗くてジメッとした話だった。ラストもなあ…。ジム・トンプスンが原作なのだから爽やかに終わるわけないか。伏線のはり方も巧いし、役者も巧いんだけれど、どうも山場に欠ける。3人の関係に近親相姦を持ち込むにはちょっと説得力が足らない。
 アンジェリカ・ヒューストンがカッコいいこととアネット・ベニングがまあまあカワイイことは良しとしても、ジョン・キューザックがどうも美空ひばりの息子に見えてしょうがない。

 夜は、小池昌代「感光生活」を読む。
 
・購入物:なし

・朝食:豚汁、梅干、ジャコごはん
 昼食:外食、天下一品(味がさねラーメン、並)
 夕食:きずし(鯖)、千切り大根の煮物、オクラのせ冷奴、豚汁、ごはん


2004年09月25日(土) 堕天使のパスポート

 午前7時起床。お腹がすいた。ゴロンと寝ているだけなのになぜ腹が減るのだろう。ラジオを聴きながら、豚汁を作る。張り切ってやり始めたものの、中に入れる野菜はほとんどがこないだ作った粕汁のあまり物で、味付けを酒粕から味噌に変えただけというものになった。完成してから気がついた。でも具沢山の汁物が好きなのでまあいいか。私ってなんか、「まあいいか」で生きている、という感じがする。

 午前中に掃除、洗濯などすませて、午後から外出。ナビオの8階でスティーヴン・フリアーズ監督の「堕天使のパスポート」を観た。
 大事なことを言葉で説明しすぎる部分があったり、リアリティのない描写があったりしたけれど、全体としてはけっこう面白かった。ロンドンの移民社会がテーマでその過酷な現実をとってみれば充分すぎるほどシリアスな映画。だけど怪しげなホテルのドアボーイや娼婦、免許書をかわりばんこで使うタクシー運転手達や性病で悩むそのボスなど、移民や不法滞在者たちの苦しく貧しいながらもちょっとまぬけな日常がイキイキと描かれていてそれが、うまいこと行き過ぎなように思えるラストよりもずっと救いになっている。
 チラシとかポスターなどでは「アメリ」のオドレイ・トトゥがクローズアップされているが、この映画の主役は彼女ではなく、ロンドンに不法入国しているアフリカ人男性の役を演じているなんとかという難しい名前の人で、この人が「天使」の役をきっちり演じていてよかった。それからホテルに出入りしていて最後に活躍することになる、強く逞しい娼婦も良い。オドレイ・トトゥは貧弱なジュリエット・ビノシュという感じで、私は特にかわいいとは思わない。

 映画の後、どうしてもお好み焼きが食べたくてそこら中のお好み焼き屋を回ってみたが、どこも長蛇の列。みんな考えることは同じなのかな。唯一並ばず入ることができた風月で豚玉と焼きそばを食べた。
 それから旭屋で「暮しの手帖」立ち読み。今月号は立ち読みだけのつもりだったのだが、島尾伸三の写真が載っていたのでやっぱり買ってしまった。それから「本」と「本の話」の10月号をもらう。
 帰り際、成城石井で低温殺菌牛乳と珈琲豆とゴマ油とよつ葉のバターとタカナシのヨーグルトを買って帰る。食材に金をかけすぎだなあ。反省。

・購入物:「暮しの手帖」12号(暮しの手帖社)

・朝食:豚汁(大根、人参、ゴボウ、コンニャク、揚げ、豚肉入り)、カリカリベーコン添え目玉焼き、味付け海苔、ごはん
 昼食:クックハウスの豆のパン、珈琲
 夕食:外食、風月で(豚玉1枚、焼きそば半分、瓶麦酒中1本)


2004年09月24日(金) 後ろ姿を見送る

 雨がザアザア降ったかと思うとすぐ止んで急に日が射してきたり、日が射したまま、またパラパラ降ってきたり、なんか変な天気だ。
 仕事は午前中は何事もなく平和だったのだけれど、午後からは閉塞的な雰囲気の会議があって疲れたり、ちょっとトラブルが起こったり、それを片付けた後のんびり日記など書いていたら突如急ぎの仕事が出てきたりして、なんか時間に追われてずっとバタバタしていた。 

 昼休みに友人から電話で、近鉄のドーム最終戦に行かないかと、誘われて少し迷ったのだが、なんとなく断ってしまった。仕事が残るかも、という予感もあったし、私の近鉄に対する思いというのはホームが藤井寺からドームに移った時点で一旦終わった、という気がするからだ。
 でも、これで本当に近鉄という野球チームはなくなってしまうのだな、と改めて思ってみると、やっぱり寂しい気がした。仕事をしながら、「10.19」のことや3連勝の後4連敗した巨人との日本シリーズのこと、鈴木貴久のことや藤井寺球場でよく観た野茂の背中のことなど、いろいろと思い出して、バカみたいだけど泣きたくなった。そんなわけないのに心のどこかで、永遠に存在するもののように思ってた。どんなことにも終わりはくるのだ。昨日まではあったのに今日はもうない。この境目に立ち会うのはいつも途方に暮れる。

 何とか仕事に形をつけて7時すぎころ退社。街はもうすっかり夜だ。まっすぐ帰るつもりが、つい阪神百貨店に寄り道してしまい、エメラルドカードを駆使していろいろ購入してしまった。レシピエの紅茶に、玉ねぎドレッシング、有機のトマトケチャップ、それからシママースと海の精の焼き塩。塩ばっかり買っちゃって、私は相撲取りか。

 勢いづいて、帰る途中の古本屋さんにも飛び込んでしまい、4冊ほど購入。どれも収穫であった。特に中野重治の書簡集はたった今棚に並べられたところらしく店のおじさんに、ラッキーですねえ、と言われてご満悦。古本買いはやっぱり楽しい。

・購入物:中野重治(澤地久枝・編)「愛しき者へ・上下」(中公文庫)
     阿部昭「未成年と12の短編」(福武文庫)
     竹西寛子「国語の時間」(河出文庫)  すべて古書

・朝食:粕汁、味付け海苔、梅干し、ごはん
 昼食:お弁当(焼鮭、卵焼き、ピーマンのキンピラ、ごはん、巨峰)
 夕食:麻婆豆腐、白菜とツナのサラダ、トマト、粕汁、麦酒、ごはん


2004年09月23日(木) 墓地とコスモスと源氏物語

 8時にガバッと飛び起きて、ああ遅刻だ遅刻だと思ったところで、今日は祝日だと気づくこの幸福感。といっても、母とお墓参りに行く約束をしているのでそうゆっくりもしていられず、朝ごはんを食べて支度をして出かける。

 いったん実家に帰って車に花など積み込んで、母を乗せて南へと向かう。天気はまあまあ、道も比較的空いていた。車内では、家から持ってきた最近すっかりはまっているゲセセをかけていたのだが、母が、なんやのこのややこしい曲、と言うので途中で止めた。母とは音楽の趣味が合わない。
 正午頃、お寺到着。お彼岸だというのに墓地には誰もいなくて、お線香の匂いだけがユラユラ漂っていた。墓地の横には6坪ほどのちいさなコスモス畑があって、白やピンクの花がたくさん咲いていた。コスモスを見るなんてずいぶん久しぶりのような気がする。蝶のようなものがさかんに花の周りを飛んでいたけれど、この季節にもチョウチョなんているんだろうか。
 私がお墓に水をかけて周りの雑草を抜いたり花を生けたりする間、母は風と戦いながら懸命に蝋燭に火をつける。お供え物は母が用意してきたお饅頭とハッピーターン。なんでハッピーターンなのだろうか。

 お参りもすんですっかり腹ぺこ。対向車もほとんど通らない田舎道をとことこ走って宇治まで戻る。駅前でごはんを食べた後母が、行ってみましょうよ、と言うので近くの「源氏物語ミュージアム」に入ってみた。行ってみましょうよ、と言う割には受け付けで入場料を払う気が全然なさそうだったのは一体どういうわけだろう。仕方がないので私が出す。
 庭にムラサキシキブが植わっている、小さくて清潔な美術館だったけれど、源氏物語と言われてもなあ…、というのがまず私の中にあって、何を見ても「へええ」という感想以上のものが出てこない。私達のほかには中年の西洋人の団体客が12人ほどいて、わかったようなわからんような顔をして展示物を見ていた。ツアーを率いている女性がなんかの説明のあとしきりに、are you okー?と連発するのが気になる。
 西洋人たちと共に篠田正浩が監督したという「浮舟」という20分間の映画を見る。CGの人形劇みたいなもので、紫式部の声を岩下志麻が、浮舟の声を葉月里緒奈がやっている。映画自体は美術館で見るものとしてはなかなか凝っていてすごく良く出来ていた。
 谷崎潤一郎訳の源氏物語は中公文庫で一応持ってはいるけれど、これから先、自分が身をいれてこれを通読するようなことがあるかどうか考えると、まあきっとおそらくないだろうと思う。思うけれども、展示パネルを見たり光源氏の住んでいたという六条院の模型を見たり映画を見たりして、へええ、と言ってみたりすることはわりと面白かった。
 西洋人たちは映画のあとでもやっぱりわかったようなわからんような顔をしていたが、お土産物のコーナーでは嬉々としていろいろと購入していたようであった。お買い物というのは誰しも嬉しいものなんだな。

 抹茶アイスクリームをなめながら帰途につく。私のいいかげんな唯我独尊運転でも、今日も無事帰って来られたことを母とふたりで喜ぶ。巨峰や梨、北海道の鮭、酒粕などもらって大阪に帰る。帰って早速もらった酒粕を使って野菜をたっぷり入れた粕汁を作った。冬の味がして、とても美味しかった。

・購入物:なし

・朝食:アンデルセンのコーンパン、いちごジャム、オムレツ、珈琲、梨
 昼食:外食、回転寿司(ぼたん海老、数の子、トロ、ヤリイカ、穴子など5皿くらい)
 夕食:大根と鶏手羽先の煮込み、粕汁、キュウリとワカメの酢の物、ごはん、麦酒


2004年09月22日(水) 静謐な時間

 昨夜降った雨のせいか今日はずいぶん涼しい。少し厚めのシャツを出してきて着た。

 朝、自転車を置いて会社までの道を歩いていたら友人より電話があり、聞いてほしいことがあるから今日飲みにいかないか、とのこと。どうせ男の話になるとわかっていたので気が進まぬ。70年代後半から80年代の初頭に流行った少女漫画みたいな話を聞かされるのは、正直言ってウンザリなのだった。そうはいっても暗い声を聞いたら放ってもおけず、いいよ、と返事をする。
 飲みに行くことになった旨Tに連絡し、仕事の段取りをつけ、今日観に行くつもりだった「バレエカンパニー」を諦め、待ち合わせ場所のドトールで「装幀列伝」を読んでいたら友人より、急に彼氏と会うことになったので行けなくなったとメールあり。バカにしとんのか。
 中途半端な時間で映画ももう間に合わないし、とりあえず「装幀列伝」をキリのいいところまで読み、文楽劇場へ宛てて11月公演の座席予約の葉書を書いて、フラフラとブックファーストに寄って帰った。

 ブックファーストで、「牛腸茂雄作品集成」を見つけて、少々高かったけれども躊躇なく買った。飲みにいったと思えば安いものだ。この写真集は東京や山形で開催される写真展にあわせて刊行されたもので、発表されたほとんどの作品を見ることができる。
 牛腸茂雄の写真は静かだ。子供達でも、仲睦まじそうな親子でも、多くの人が集まっているものでも一人のものでも、笑っているものもふざけているものも、音というものが聞こえてこない。聞こえるとすれば、草のゆらぎとか波の音とかどこか遠くで鳴っている踏切の音、という感じだ。そんな風に感じるのは、ちょっと寂しい。
 牛腸茂雄が切り取る世界は静かで寂しいけれど、とても優しい。どこにでもあってどこにでもあるからこそつい見逃してしまう、小さくて穏やかな風景が写し取られていて、見ているとシーンとした気持ちになる。そして、世界が誰の目にもこんなに優しく見えていればいいのに、と思う。
 寝る前に写真集を繰っていたら、ずいぶん夜更かししてしまった。これからも一枚一枚丁寧に見ていきたいと思う。大切に見ていきたいと思う。

・購入物:「牛腸茂雄 作品集成」(共同通信社)

・朝食:胡桃パン、いちごジャム、ベーコンエッグ、珈琲
 昼食:お弁当(枝豆ごはん、焼鮭、ゆで卵、シシトウの炒め煮)
 夕食:ニラと人参の塩焼きそば、鶏ナンコツの唐揚げ、冷奴、麦酒


2004年09月21日(火) 心を鎮める

 午前6時半頃、ボーッと起床。何故か頭がガンガンする。
 朝ご飯のために昨日つくったポトフを温めて食べた。玉ねぎもジャガイモも赤く染まって、何かさらに得体のしれないものとなっている。ビーツは人参から野菜臭さを抜いて甘味をさらに加えたというような味がして、特に美味しいとも不味いとも思わなかった。でもTは旨い旨いと3杯くらいおかわりしていたから、まあ人によるのかもしれない。

 仕事へ行く。今日も蒸し蒸しして湿気がまとわりつく感じ。街を歩きながら、もう9月も末だというのに一体いつまで暑い日が続くのだろうか、と思うと何だかムカムカと腹が立ってくる。暑い中はるばる打ち合わせに出かけてきたけれど、担当者の気まぐれによりなかなか仕事の話は前に進まずイライラして、ぶらぶらと会社に戻ったら戻ったでNさんが、アンタちょっとちょっと、と深刻な顔で手招きするから何事かと思ったら、田代まさしがまた逮捕されたでー、などと言うから心底ガックリした。田代まさしがどうなろうと私の知ったことか。バカらしい。

 帰りに旭屋に寄って、会社で読んだ先週か先々週かの日経新聞の書評で取り上げられていて面白そうだった「装幀列伝」と、野上弥生子の「欧米の旅」上巻を購入した。当分本を買うのはよそうと思っていたけれど、荒んだ心は本屋で慰めなくっちゃね。それから「青春と読書」をもらう。あんまり読むトコないけど。

 夜はアンゲロプロスの「蜂の旅人」を観ながら寝てしまう。セリフも少なくわりと単調なので、寝不足の頭には少々しんどかった。マストロヤンニは、老いてはいてもやっぱりすごくかっこいい。また後日、体調を整えてから再チャレンジしよう、映画を観るのも体力が要る。

・購入物:野上弥生子「欧米の旅・上」(岩波文庫)
     臼田捷治「装幀列伝」(平凡社新書)

・朝食:ビーツ入りポトフ、一昨日作ったチキンカレー、ハイジの白パン、珈琲
 昼食:お弁当(梅と昆布のおにぎり一個づつ、ウィンナー、ニラ入り卵焼き、二十世紀梨半分、リンゴジュース)
 夕食:秋刀魚(大根おろしとすだちをかけて)、カボチャの煮物、水菜のおひたし、キノコのお味噌汁、枝豆ごはん、食後に梨


2004年09月20日(月) アフリカとゴムベラと赤いスープ

 午前8時起床。朝ご飯を食べて、生ゴミをまとめて出し、シーツと布団カバーを洗濯。それから風呂掃除の後、換気扇と台所の床を磨く。作業中はずっと、フェラ・クティとかこないだ買ったゲセセとか、アフリカの音楽を聴いていた。聴きながら下を向いて床を磨いていると、ここがどこなのかわからなくなる瞬間があって、それが妙に気持ちいい。

 昼から地下鉄に乗って心斎橋まで行った。掃除をして台所や部屋の整理をしていたら欲しいものがいろいろ出てきて、東急ハンズで買い物をした。以下、買ったもの。
 檜のソープディッシュ、アルミの風呂桶、アレッポの石鹸(上等なほう)をまとめ買い、スコッチブライトの布巾2枚、パックスのお風呂用洗剤、小さい泡立て器、それから耐熱のゴムベラ。私は西洋料理をほとんど作らないのであんまりゴムベラを使う機会はないのであるが、あれでクリームとかソースとかジャムとか味噌とかをきれいにこそげ取るのがすごく好きで(本当に見事にすくい取れるのだ)、なんでもかんでもにゴムベラを使おうとするので実家では母から「ゴムベラフェチ」と呼ばれていたほどなのだ、自慢じゃないけど。今日はかねてより念願の耐熱のものが手に入って嬉し。
 こうして買ったものをあげ連ねてみると、あってもなくてもいいような、また敢えてこれでなくてもいいようなものばかりだなあ。

 ごはんを食べてから夕方帰宅。宅配野菜が届いていて、中にビーツというドブネズミみたいにずんぐりした野菜が入っていた。得体が知れぬがサラダやシチューにすると美味しいとのこと、明朝のためにポトフを作ることにする。ビーツの皮を剥いてみると中身は赤っぽい紫で、乱切りにしていると包丁もまな板も私の手もみるみるうちに赤黒く染まっていき、本当にドブネズミを調理しているような気がして気味が悪かった。
 ポトフの中にビーツを入れたら、案の定真っ赤のスープが出来た。見た目は非常に悪し。吸血鬼の食事みたい。明日の朝が楽しみだ。

 ポトフを作った後、久々に保坂和志の「残響」と「コーリング」を読み返した。今は辰巳ヨシヒロの「大発見」を読み終えたところで、気持ちは果てしなくローで後ろ向きになっている。今日で連休も終わり、明日から社会復帰せねばならぬという時になって読むのではなかったなあ、と今頃後悔してももう遅い。あーあ。落語でも聴いて寝よう。
 
・購入物:東急ハンズでなんかいろいろ

・朝食:昨日のチキンカレーにふわふわ半熟オムレツをのせて食べる。食後にヨーグルト。
 昼食:外食、とんかつの頑固で(ヒレカツ膳の80グラム。キャベツと冷奴と味噌汁、漬物つき。キャベツをおかわりした)
 夕食:枝豆と麦酒。お昼を食べたのが遅くて、お腹が空かなかったので。


2004年09月19日(日) 観念を追い越せ

 朝6時頃、送別会から朝帰りしたTがリビングでガサガサしたり、シャワーを浴びたりする音で目覚めて、布団に寝転がったまま少し新聞を読んだりしたが、すぐまた寝てしまった。次に起きたのは10時30分。雨になるかと思っていたのに案外いいお天気だったので、洗濯をする。
 Tがもらってきたいくつかの送別のプレゼントの中に本があったので、早速開けてもらう。中からは金子みすずの詩集がでてきた。金子みすずとは…。本と旭屋のプレゼント用包装紙を見つめたまま、お互いしばし沈黙。人に本をあげるって難しいなあ。

 朝食兼昼食用のパンを焼いていたらペリカン便がやってきて、アンゲロプロスのDVDが届いた。早くも3巻目だ。今回は「アレクサンダー大王」(2枚組)と「蜂の旅人」(マストロヤンニ主演)、それから「霧の中の風景」がパッケージされている。
 ごはんを食べた後「霧の中の風景」を早速再生してみた。12歳と5歳の幼い姉弟がドイツにいるという父親に会うためギリシャから列車に乗る。ふたりはお金もないし、ギリシャとドイツの間にどれほどの距離があるか知らないし、国境を越えて行かねばならぬこともそれがどんなことであるかも知らないし、それから「ドイツにいる父親」というのはふたりが私生児であることを隠すための母親の嘘であることも知らない。ただ一途に姉弟は列車に乗るのだ、父親を求めて。
 もうこの設定だけで充分だというのに、姉弟を乗せた列車が発車して駅を離れていくシーンでエレニ・カラインドルーの果てなく哀しい旋律が重なって、無賃乗車が発覚してふたりが警察に連れて行かれてそこから逃げ出すまでの世にも美しい雪のシーン、そのあと夜の街を彷徨う姉弟が出会う小さな結婚式と、ふたりの目の前で死んでいく馬のシーンまで、映画前半のこの一連の流れは、もう片時も平静な気持ちでなんかいられなくて、何か静かにこうべを垂れたくなるような畏敬の念をおぼえる。
 この後も、口をあんぐり開けて観るしかないようなシーンの連続で、それは何度観ても飽きるということがない鮮烈な体験なのだけれども、今日の上映はここまでにする。何故ならば、敬老会の記念品を配りに行かねばならぬので。

 一軒を除いてすべて在宅であった。もらうのが当然という感じの人あり、すごく感激される人あり、配るのが遅いやんか今年はもらえへんのかと思った私はもう人間扱いされてないんかと思たでー、と嫌味を言う人あり、まあいろいろだ。
 嫌味を言ったのは90歳のおばあちゃん。名簿を見たら大正3年の生まれだ。大正3年から今までのおばあちゃんの人生は一体どんなんだったんだろう、と考えてみる。どこでどうしてどうなって、90歳の今現在この大阪の片隅の小さい家にたった独りで住むようになったんだろう。それは私なんかには想像もつかない、膨大で重い時間の流れのように思えた。そしていろんな事を乗り越えて今、おばあちゃんが自分なりのルールで規則正しく静かに暮らしておられることは、本当に奇跡のようだと思った。

 夕方、買い物がてら散歩に出て本屋さんで「クウネル」立ち読み。ミルクと一緒に何を食べる?、というページを熱心に読む。
 晩ご飯を食べてから、またDVDを見たり、昼寝というか夕寝をしたり、のんびり過ごした。明日もお休みなので、今日も夜更かしして本でも読もうと思う。

・購入物:テオ・アンゲロプロスDVD-BOX・第3巻

・朝・昼食:トースト、目玉焼き、ポテトサラダ(昨日の残り)、珈琲、梨(二十世紀)
 夕食:チキンカレー、トマトサラダ、ひじきと大豆の煮物(昨日の残り)、麦酒、バナナのヨーグルト


2004年09月18日(土) 一旦停止

 午前中はボーッとしたり、家事などを適当に片付けて、午後から食料の買い出しついでに、こないだ飲んだ時に借りた1000円を返却するため友人の家に行く。
 
 自転車をこぎだした時は涼しいような気がして快適だったが、途中で長い坂を登ったり下りたりまた登ったりしなければならず、予想以上に体力を消耗した。
 友人宅では、彼女のお母さんが焼いてくれたお好み焼きとビールをご馳走になった。汗をかいた後のビールは本当に旨いですね。ビールをグビグビと飲んで私は上機嫌だったのだが、友人はどうもそうではなさそうで、あーあと溜息ばかりついては、何か面白いことないかなあ、と言ったり、アンタは何が楽しみで毎日生きてんの?、とか聞かれたりして、困った。
 私は何を楽しみに生きているのか。何だろ。昨夜は「草思」を読んで楽しかったけれど、「草思」をもらうのを楽しみに生きている、なんて言っても一般ピープルにわかるわけがないし、それではちょっと変な人みたいだ。でも私の、というか、誰の楽しみも、せいぜいこれくらいの淡くて小さな、言葉にするとこわれてしまうようなことの積み重ねで、それ以上でもそれ以下でもないんじゃないか、と思った。けれど言わなかった。何故言わなかったのかはわからない。
 出かけるという友人を自転車の後ろに立ち乗りさせて最寄り駅まで送っていき、私はそのまま近所で買い物をして家に帰った。夕方になって、少し気温が下がったように感じた。

 帰ったら、2週間ほど前にアマゾンで注文したCDが2枚届いていた。「世界の快適音楽セレクション」の放送が終わった後、エチオピアの歌手Tlahoun Gessesseのアルバムを聴いた。エチオピアの音楽を耳にするのは初めてのはずなのに、何かとても懐かしい。例えば小学生の頃、午後3時頃学校から帰ってきてランドセルをドサと投げ置いてポチッとテレビをつけたら、KBS京都あたりで再々々放送していたような、どこなく怪しげな時代劇なんかのオープニングに使われてた曲という感じがする。 

・購入物:Pyeng Threadgill「Sweet Home the music of robert johnson」(Randam Chance)
     Tlahoun Gessesse「ethiopiques 17」(BUDA MUSIQUE)

・朝食:バタートースト、バナナ、リンゴ半分、珈琲
 昼食:友達の家で(イカと豚肉入りのお好み焼き、麦酒)
 夕食:エビフライ、ポテトサラダ、トマト、ひじきと大豆の煮物、麦酒、ごはん


2004年09月17日(金) 視覚が肥大する

 午前6時30分起床。曇り。今にも雨が降り出しそうであるが、天気予報によれば午後からは晴れてくるという。本当だろうか。疑いつつ、洗濯物を外に干して出かける。

 昼休みは、Nさんと阪急32番街で蕎麦定食を食べる。温かい蕎麦に寿司が3切れと天ぷらがついてきた。天ぷらは揚げてから数分経ったもの、という感じで少しペチャとしていた。
 蕎麦をすすりながら、Nさんの便秘の話。あたし昔さあ、15日間出なかったことあるよ、もうお腹がパンパンになってさあ、ほんでとうとうちょうど16日目、忘れもしないあれは心斎橋大丸やったなあ、バーゲン漁ってる時急にしたくなってん、トイレに駆け込んで、緊急事態なんですって言うて、順番待ってる人に拝んで頼み込んで先に入らせてもらってさ、もう出るわ出るわ水分のないみっちりとつまった凄いのんがもう便器いっぱいに出て止まらへんかった、あれはものすごい快感やったでえ、とのこと。その後は身体が軽ーくなって、歩いていても前のめりになりそうだったそうだ。
 私は便秘というものを経験したことがないのでその快感とやらを知らなくてとても残念だけれど、何にしてもごはんを食べながらする話ではないことだけは申し添えておいた。

 残業して帰り道、フラフラとジュンク堂に行った。今日は見るだけで何も買わず、「草思」と「きらら」をもらう。「きらら」はいつももらうだけもらっていまだにちゃんと読んだことがない。小学館から出ているこの「きらら」という小冊子は、ジュンク堂ではもらえるけれどブックファーストでは100円か200円かで売っていて、このあたりの事情はどうなっているのだろうか。
 閉店間近にジュンク堂を出て自転車で帰る。結局雨は降らなかった。洗濯物をとりこんで、冷蔵庫の残り物で晩ご飯を作った。玉ねぎとピーマンと人参を細かく切ってひき肉と炒めたものを卵にくるんだ野菜オムレツ。ケチャップをかけて食べる。テレビでは「GODZILLA」をやっていた。「ゴジラ」って日本のものもアメリカのものも、どこが面白いのかわからない。

 「草思」を読みながら寝る。たぶん午前1時までには寝てしまったと思う。

・購入物:なし

・朝食:レーズンパン、珈琲、りんご半分、バナナ1本
 昼食:外食、蕎麦定食
 夕食:野菜オムレツ、キャベツの千切り、トマト、ヒラタケのスープ、枝豆、麦酒、ごはん


2004年09月16日(木) まだまだ修行中

 午後、近くまで来たから寄ってみたと言って久しぶりにEさん来社。大学時代は落研にいたというだけあって、扇子片手に身振り手振り付きで、まあペラペラペラペラペラペラペラペラよう喋ること喋ること、自分のことから業界の話から元同僚の噂話まで、聞いてもいないことを一から十までズラーッと話して、珈琲とお茶を数杯おかわりした。いやーもう喉が渇いてねえ、だって。喋りすぎやねん。
 夕方少し手が空いた時、宗教と死刑制度のことをめぐってNさんと大激論した。大阪の隅っこで口角泡飛ばしてギャアギャア言うことでもないような気がするが、どうにも止まらず。上司には、アンタら会社を飲み屋と勘違いしてるんちゃうか、と呆れられ、Iちゃんには、てっきり喧嘩してはるんやと思いました、と泣きそうな顔で言われた。
 そんなこんなで、今日は仕事以外のことでとても疲れた。いやもう、ホントに疲れた。

 テロテロと帰宅。留守電にIさんから電話が入っていたのでかけ直す。危惧していたのだが案の定、「絵本の会」のことで長電話になってしまった。Iさんはいろんな人の勝手な言動行動について話し、大人達の都合や楽しみや虚栄心の充足のために子どもを利用するなんて私は絶対に許せないの、と言って静かに怒っていた。
 私は本を読むのが好きだし、本を読んでいる人も好きだから、子どもたちの中から一人でも多く本を読む人が増えてくれたらいいと思うだけだ。本を読むのは楽しいことだし、楽しいことはなるべく多く知っておいたほうがいい。大人になってから子どもの時に読んで面白かった本にもう一度出会うのは、本当に感動的だ。気持ちがしんどい時とか疲れている時は特に。
 私は、子どもに本に出会う機会を与えたい。ただそれだけだ。そう願う心は同じのはずだと思うんだけど。

 「ヨーロッパ思想入門」読了。次は何を読もうかなあ、と考えながら午前1時就寝。

・購入物:なし

・朝食:バタートースト、ハムエッグ、トマト、珈琲、リンゴ半分
 昼食:阪急百貨店で買った巻き寿司
 夕食:鶏肉と長ネギとターサイのすきやき風煮込み、みょうがのかきたま汁、冷奴、コンニャクのピリカラ炒め、麦酒、ごはん


2004年09月15日(水) 捲土重来を期す

 朝、出かけようとしていたら町内会長さんが、敬老の日に我が班のお年寄りに渡す記念品をエイコラと抱えて持ってきた。70歳台の人には石鹸とお菓子、80歳台の人には石鹸とお菓子と洗剤、90歳以上の人には石鹸とお菓子と洗剤と布団を組み合わせてあげるのだそうだ。90歳の人に布団をあげる、ということがどういう意味を持つのか考えると何だか複雑だ。ウチの班にひとりだけいるあの90歳のオバアチャンは、この辺りの塾通いで疲れている小学生よりもよっぽど元気なので、少なく見積もってもあと10年は生きるとして、その間毎年布団をもらい続けたら家中布団だらけになって、そのうち布団屋ができるんではなかろうか。
 これは18日から敬老の日までの間に渡すのだそうで、とりあえず預かっておく。大きい紙袋と布団を置いたら、ただでさえ狭い部屋がいっそう狭くなった。

 昼休みにセール中の器屋さんに行って、砥部焼の多用鉢とこっぽりしたお皿を2枚買った。砥部焼はぷっくりと丸みのある形と少々手荒く扱っても割れたり欠けたりしにくい丈夫なところが大好きだ。料理が少々モンダイアリでも、器が美しいとそれなりのものに見える。これに何を作って盛ろうかなあ、と考えるだけでも楽しみ楽しみ。

 終業後は、会社から家までの帰り道に寄ることの出来うる古本屋を自転車でクルクルとまわった。小川洋子の文庫を100円で買い集めるためだったのだが、うまく見つけられなかった。簡単に手に入ると思っていたのにおかしいな。しかし、竹西寛子や近藤富枝の本がまた見つかったし、まあよかったと思うことにしよう。これでしばらく本を買うのはお休みにしよう。いくらんなんでも買いすぎだ。
 それからブックオフとかあの類の店に行くと、今巷で流行っていると思われるようなわけのわからん妙チクリンでヘタクソな音楽が流れてきて、容赦なく聞かされるのがなんともかんとも公害だ。何とかならんのか。

 夜は、家にあった小川洋子の「シュガータイム」を読み返す。この小説好きだ。好きな理由はいろいろあるが、やっぱり食べ物がいっぱい出てくるところがいいし、食べものも食べるという行為も時にグロテスクなものだなあと、思わせられるところもいい。あと、野球を観に行くシーンがあるのも好きだ、ちょっぴり哀しいけれど。

・購入物:アンリ・ピエール・ロシェ「恋のエチュード」(角川文庫)
     近藤富枝「信濃追分文学譜」(中公文庫)
     竹西寛子「管絃祭」(中公文庫)「続・ひとつとや」(毎日新聞社)全部古書

・朝食:長ネギとハムのチャーハン、カボチャの味噌汁
 昼食:ノリカラサンド、珈琲
 夕食:焼サンマ、白菜と豚肉の重ね蒸し、豆腐と揚げの味噌汁、コンニャクステーキ、麦酒、ごはん


2004年09月14日(火) すばらしいとき

 話せば長いのでもう話さないのだが、まあいろんな経緯があってここんところ、どんどこどんどこと仕事が舞い込んでくる。面倒くさい事はとりあえず棚上げにして、楽しそうで簡単なものから片付けていったら、結局面倒なことばかりが歴然として残り、いくらなんでも今日はもう逃げられず、それを棚から下ろしてきて渋々手をつけたのでとても疲れた。頭の中がだるい。脳みそが筋肉痛だ。

 家に帰っても何にもしたくなくて特に食欲もなかったのだが、ただものすごくビールが飲みたかった。キリキリに冷えた生ビールをゴクゴクもう一気に飲んでしまいたい!、と夕食は手抜きで近所のラーメン屋に行った。
 ビールを飲んでかなり満足したので、近くの古本市場まで夜の散歩をする。普段はあんまり通らない住宅街や路地を選んで歩く。テレビや子どもの声、台所から聞こえる水の音や食器がカチャカチャとぶつかる音、窓からもれる蛍光灯と白熱灯の白とオレンジの色、人の影とカレーの匂い。それぞれの生活の、音や匂いや色に触れると、少し温かい気持ちになる。
 古本市場まで行ってはみたけれど、特に何も買わずそのまま帰ってきた。帰ったらもう10時を回っていた。

 活字の多い本を読む体力知力が落ちているので、絵本を読む。ロバート・マックロスキー「すばらしいとき」。絵はもちろんのこと、文章がまた良いのだ。
 
『ペノプスコット湾の水面に岩勝ちのみぎわをみせる小島のつらなりの上で、みてごらん、世界のときが ゆきすぎるのが、みえるから。一分一分、一時間一時間、一日一日、季節から季節へと。
 湾のかなた、三十マイルさきのカムデンの山の上に、くものかたまりが顔をみせる。
 ほら、こちらにちかづくにつれて、ゆっくりと、ふくれあがってくる。くもは、そのかげで山をくらくし、つぎつぎと島をくらくする。
 アイルボロ島、ウェスタン島、ボンド島、ホッグ島、スペクタル島、トゥー・ブッシュ島ー、山と、湾にうかぶ島じまをくらくしながら、とうとうこの島のおまえたちまでかげのなかに いれてしまう。おまえたちは、湾をよこぎって ふりだした雨をながめてたっている。
 雨は、どんどん ちかづいてくる。ほら百万の雨足の音が聞こえるだろ。もう 雨つぶが おちるのがみえる。水の上に…、年へた岩のみさきの上に…、やまももの上に…、くさの上に…、いきをひそめてごらんー
 おまえたちの上にも 雨が ふりだした!』
 
 ここまでが冒頭3ページ。うーん、かっこええ。

・購入物:なし

・朝食:超熟ロールに卵とかボイルしたソーセージとか塩もみキャベツをサンドして食べる。珈琲と台風で落下した青森のリンゴ。
 昼食:お弁当(梅と高菜のオニギリ1個づつ、ゆで卵、トマト、インスタントの長ネギ味噌汁)
 夕食:外食(九条ネギのラーメン、生麦酒)


2004年09月13日(月) 美しきものを飽かず眺める

 朝からもう熱風が吹いている。すごく蒸し暑い。
 直行で神戸。行きの電車ではぐっすり眠っていたが、帰りは「眼の狩人」の続きを読んだ。やっぱり中平卓馬の章が圧巻だった。
 
 阪急梅田の茶屋町出口のところで、今から取材で京都に行くのだとかいうAさんと偶然会って立ち話。いつ見ても美人だ。ちょっと化粧の濃いのが気になるが。そんなにベタベタとアイシャドウを塗りたくらんでもいいと思うのだが、まあ余計なお世話か。
 Aさんはカバンをごそごそ探り、これ差し上げるわね、と兵庫県立美術館での「ルイ・ヴィトン展」の招待券を2枚くれた。私にルイ・ヴィトンとは馬子に衣装もいいとこだ。でもお礼を述べておく。ここでアナタとお会いした記念よ、と言ってAさんは改札に消えていった。お会いした記念よ、だって。差し上げるわ、とか、私が日常使ったことのない言葉を操る人だ。フシギ。

 残業して帰宅。クタクタゆえ、近所のお肉屋さんでコロッケを買って帰る。店じまい前だからと、オジサンが一個おまけしてくれた。みなさまにいろんなものをもらって生きてます。
 ごはんを作っていたら郵便局の人が、持ち重りのする大きな書籍小包を配達してくれたのでびっくりした。開けてみると「東京物語」の全カットがズラーッと並んでいる写真集。カットの下には全セリフが載っていて、「東京物語」が紙上で体験できる仕組みになっている。なんという美しさ。眺めているとうっとりする。
 これはTが私に黙って注文したものだった。勝手に注文したくせに半額請求されたのは合点がいかぬが、仕方なく2000円払う。これが2000円なら安いものかとも思う。

 疲れてたせいか、0時前に寝てしまう。夜中に、ウワンウワンと耳元でうるさい蚊を一匹始末した。

・購入物:「リブロシネマテーク・小津安二郎 東京物語」(リブロポート)

・朝食:卵焼き、冷奴、味付け海苔、梅干、大根の漬物、ごはん
 昼食:ハムとアスパラガスのサンドイッチ、珈琲
 夕食:コロッケ2個、ピーマンのキンピラ、冷奴、枝豆、カボチャの煮もの、麦酒、ごはん


2004年09月12日(日) 城とラジオと般若心経

 穏やかに晴れて、のんびりした日曜日。
 掃除をして、久々に布団を干す。それから、向かいのオバチャンが朗々と唱えている般若心経を聞きながら、本を読みつつ書棚の整理をした。窓を開けっ放しにしているせいか線香の香りまでがユラユラと漂ってきて、なんか妙に落ち着く。
 般若心経の後、たまたまラジオのスイッチを入れたら「日曜喫茶室」が流れてきて、ゲストが小川洋子だったので、晩ご飯の下ごしらえをしたり日記を書いたりしながら、つい最後まで聞いてしまった。晴れた日曜日、陽だまりのある台所で、玉ねぎなど刻みながら一人で聴く「日曜喫茶室」。このシチュエーションも、この上なく落ち着き和む。
 小川洋子の声を聞くのは初めてだったが、しっかりしてよく響き、理知的でそれでいて優しくて、なんていうかすごく「いい感じ」だった。言葉の使い方が好きだ。安心できる。誰かの話を聞いて安心できるかどうかは、すごく重要なことだと思う。小川洋子は初期作品が好きで(というかそれしか読んでない)、近作はとんとご無沙汰だったのだが、これを機会にまたいろいろ読んでみよう。

 番組が終わってから外出。買物をしに京橋まで出たついでになんとなくIMPのあたりまで行ってみたら、「古本市開催中」というのぼりがパタパタはためいているのが見えて、吸い寄せられるように会場に迷い込んだ。1時間ほどめぐってみて収穫は一冊。まあこんなもんか。
 館内にあるグロリアジーンズという大阪城を眺められるカフェで、珈琲を飲みながら大竹昭子「眼の狩人」を半分まで読んだ。
 日が暮れかかった頃、モールとスーパーその他で食料を調達。スーパーでふと立ち読みした週刊文春で坪内祐三がカルヴィン・トムキンズの文庫を紹介していて、なんとなんとこんな本が出ていたとは知らなんだ、とあわてて近所の書店に駆け込んで購入して帰る。たまには週刊誌も立ち読みしないとな。

 夜は、「眼の狩人」に影響されて、いろいろ写真集をひもとく。中平卓馬の「まずたしからしさの世界をすてろ」が読みたい。もうずいぶん前から探しているのだが、図書館にもないようだし、どうしたらいいのだろう。
 午前1時頃就寝。

・購入物:嶺隆「帝国劇場開幕」(中公新書) 古書
     カルヴィン・トムキンズ「優雅な生活が最高の復讐である」(新潮文庫)

・朝食:野菜ラーメン(卵入り)、梨
 昼食:バナナマフィン、フレーバーコーヒー
 夕食:肉団子と野菜の甘酢あんかけ、冷奴、コールスローサラダ、トマト、枝豆、麦酒、大根の漬物、ごはん


2004年09月11日(土) 幸福を記憶する

 ダラダラとやる気なく起床。何故土曜日の朝からダラダラしているのかというと、午後から会社でWさんと打ち合わせをせねばならないはめになったからなのだった。面倒くさいが仕方ない。
 「ウィークエンドサンシャイン」を聴いてから、台所の片づけと洗濯をし日記を書いてお風呂に入って、お昼前に出かける。曇り空で、わりと涼しい。

 通りがかりのスーパーでお昼ごはんのために五目そばを買って会社に行って、ひとりでお茶を淹れて食べ、どうせ誰もいないんだしいいや、と思い、客の座るソファーに寝そべって「ヨーロッパ思想入門」を読んでいたら、急にWさんが部屋に入ってきたのでビックリした。
 打ち合わせはスイスイと進んで予想外に早く終わり、Wさんが持ってきてくれた千鳥屋の抹茶プリンを食べながら、映画の話などした。Wさんの今年のベストは今のところ『誰も知らない』だとか。すごく良いですよボク泣きました、とのこと。機会があったら観てみよう。今度金井美恵子の小説を貸してあげる約束をして、Wさんは帰っていった。
 その後、1時間ほど仕事をしてから私も会社を出る。ブックファーストに行ってみたら、今日はちゃんと文芸文庫が発売されていた。一冊買う。雲行きがどうもあやしいのでこれ以上寄り道するのはとりあえず止めて、夕方には家に帰った。

 夜は、昨日借りてきたイオセリアーニの「素敵な歌と船はゆく」を観た。
 人間と動物、富める者と貧しい者、街と自然、それぞれがそれぞれの場所でそれぞれのやり方でもって生き生きと描かれているのが面白い。身の丈を知るとはこのことだ。リストラや不倫、それから強盗や殺人もバタバタ起こるし、人も実にあっけなく死んだりするんだけれど、どれもシャラッと流されてしまうから、とても楽しい映画を観た、という幸せな気分は全然消えない。時間の経過とともにいろんなことがあったり起こったり、その中に出会いがあり別れがあって、そしてまあ何となく人生はつづく。
 パリの街並み、子どもたちの洋服や積み木やワインの美しい赤の色、それからグルグルグルグル回り続ける模型の列車を観ているだけでも楽しく、映画を観る喜びに溢れた作品であった。

 映画の後は、眠気でボケボケの頭を奮い立たせて2通のメールの返事を書いて、午前1時すぎ頃就寝。
 
・購入物:色川武大「狂人日記」(講談社文芸文庫)

・朝食:トースト、目玉焼き、トマト、珈琲
 昼食:五目焼きそば
 夕食:鶏もも肉の塩焼き、ズッキーニと玉ねぎのサラダ、オクラ冷奴、高野豆腐の卵とじ、麦酒、ごはん


2004年09月10日(金) 救いを求めているのかも

 腹が立つこと多々ありで気持ちがムカムカするので、定時にサッサと帰る。
 このイライラを鎮めるためにも、ホンワカと楽しい映画を見に行こう、そして映画の前には本を買って、珈琲を飲みながら読むとしよう、と決めたら俄然元気になってきて、旭屋とブックファーストに行った。今月のちくま文庫は、財布の中身の関係上今日のところは一冊だけ。文芸文庫の新刊が見当たらないので店員さんに聞いたら、ちょろちょろっとパソコンを触って調べた後、アレは毎月発売されないので今月はきっと出ないのです、と言うので、そんなバカなことがあるかいな、と思ったが、映画の時間もあるし、この後古本も見に行きたかったので黙って引き下がった。たぶん明日出るのだろう。
 
 映画のチケットを買って、第3ビルとくろふねビルの古本屋さんに行って、安い本を物色。こないだから集め始めた竹西寛子の文庫を今日もまた見つけることができたし、その他、何となく探していた文庫新書類を拾うことができてすっかりご満悦、本選びに時間がかかって喫茶店で珈琲を飲むことはできなかったけれど、その代わりWAVEでポイントカードを使ってCDを買ったので、まあよいということにしておく。

 そんなこんなで、テアトルにてオタール・イオセリアーニの「四月」を観た。セリフなしの48分間の映画。
 イオセリアーニといえば、タルコフスキーの日記の中にも度々出てくる名前で、ずっと気になっていたのだが近年公開された作品はことごとく見逃してしまっていて、本日やっとこさ観ることができたのだが、予想通り、というか予想よりずっと、幸せで楽しい時間であった。『生きていくことは小さな遊びなんだ』という、チラシにもあったイオセリアーニの言葉がひしひしと伝わってくる。この人もちょっと地から足が浮いてるね。そういうところもすごく好きだ。
 映画の前と後に、スターリンも愛飲したというグルジアワインの試飲をすることが出来て、2種類のワインを飲んでみたのだが、これがとても美味しかった。特にサペラヴィという白ワインは少し甘めながらキリッとした味わいで、私はワインはあんまり好きではないのだけれど、映画の幸福感といい具合に交わって、なんかクセになりそうな感じ。
 映画の後、早速TSUTAYAで「素敵な歌と船はゆく」のDVDを借りて帰った。できたらスクリーンで観たいけれど。

 寝る前に「極東戦線異状なし!?」を聴く。うーん、ストレートだ。
 このCDのジャケット、ラマ検問所での写真を見ていたら、エリア・スレイマンの「D.I.」のことを思い出した。もう一度観てみたいものだ。
 
・購入物:野坂昭如「乱離骨灰鬼胎草」(福武文庫)
     竹西寛子「兵隊宿」(講談社文芸文庫)
     開高健「過去と未来の国々」(岩波文庫)
     海野弘「黄金の五〇年代アメリカ」(講談社現代新書) 以上古書
     内田百けん「百鬼園写真帖」(ちくま文庫)
     SOUL FLOWER UNION「極東戦線異状なし!?」

・朝食:楽童のレーズンプチパン、オムレツ、梨、珈琲
 昼食:鰻の押し寿司
 夕食:映画の前に、クックハウスの黒豆パンと珈琲。帰宅してから、レタスとトマトのサラダ、モッツアレラチーズとバジルのピッツア、麦酒


2004年09月09日(木) ハッと我が身を振り返れば

 6時半起床。目覚めると、ああまた朝がめぐってきたか、と溜息をついてしまう。これはあんまり調子が良くない証拠だ。会社に行きたくないよう、と家の柱にしがみつきたい。思いっきりジタバタしたい。

 友人と飲みに行くことになっていたのだが、彼女も私も思うように仕事が捗らず、居酒屋のテーブルについたのはもう9時をまわっていた。疲れていたせいか今日は今ひとつ意気が上がらなくて、妙にしんみりしたお酒になってしまった。
 友人の仕事の話や彼氏とその周辺の話、夏休みに行った旅行や将来のためにと続けているらしい語学の話を聞いたりしているうちに、私には「情熱」というものが徹底的に欠けているなあ、と今更ながらしみじみ思った。何かに没頭するというか、なりふり構わず熱くなるというか、とことん追いかけるというか、そういった真っ直ぐな情熱というものが全くといっていいほどない。何に対しても距離を置こうとして、懸命になれなくて、冷めていて、だからいつまでも何者にもなれないんだよな、と思い、では一体私は何者になりたいと思っているのだろうと考え、何が何だかよくわからなくなった。

 0時前くらいに友人と別れて、すっきりしない気分のまま夜道を自転車で帰った。自分をつくづくつまらない人間だと感じる。空は雲が出ているのか、月も星も全く見えなかった。

 帰宅してお風呂に入ってから、旭屋でもらってきた「遊歩人」を読む。小谷野敦が巻頭エッセイで、『「ドライブ」廃絶運動』という題で無意味にクルマを走らせることのバカバカしさについて書いていて、これが私の意見とピッタンコだったため、少し嬉しくなった。その後、マッカラーズの続きを読む。相変わらず脈略のない読書。  

・購入物:なし

・朝食:トースト、ズッキーニとトマトのサラダ、珈琲、りんご
 昼食:街角で買ったお弁当(カボチャの煮物、大根と人参のサラダ、キンピラゴボウ、ゼンマイと揚げの煮物、豚のショウガ焼き、だし巻き、高野豆腐の煮物、茄子の煮びたし、がそれぞれ少しづつ。これに、ごはんとウーロン茶付きで500円也。安い?)
 夕食:居酒屋で。枝豆、中華風春雨サラダ、蛸のカルパッチョ、刺身盛り合わせ、トマト、冷奴などなど。生麦酒2杯の後、芋焼酎のお湯割りをチビチビ飲む。 


2004年09月08日(水) みんながしゃべってる

 ひさびさに爽やかなお天気。
 会社に行く前に、「敬老会のお知らせ」入りの封筒を近所のお年寄りに配って歩く。私が一番よく話をするおばあちゃんは、昨夜の暴風に備えて家の中に避難させておいたという植木や盆栽を、庭先に丁寧に並べなおしていた。植木を出したり入れたりするこの作業は面倒くさいけれど台風自体は好きなのだ、とおばあちゃんは言う。「わたし小さい時から台風と火事が好きやねんー、なんかホレ、ワクワクするやろ!」などとワイルドなことを言ってガハガハと笑った。笑った時口の中を見たら、歯が1,2本しかなかった。

 午後、会社にMさんが来て打ち合わせ。仕事の話からどういう流れだったのか忘れたけれども、キミもね、一発ホームランを狙うんじゃなく、コツコツ当てて打率向上に努めたほうがいいね、ひとつでも多く打点をあげるのは会社のためはもちろんキミの人間力アップにもつながるからね、というような野球に例えた人生訓のようなものをとうとうと述べられて、もうどうしていいもんやら、とにかく呆気にとられた。「人間力アップ」だってさ。どこからパクってきたのか知らないが、実に気持ちの悪い言葉だ。

 帰り道、TSUTAYAに寄って半額クーポンを使って桂枝雀のCDを借りた。録音しておいたカセットテープを処分してしまったので、新たにMDにおとしなおすのだ。今日は『寝床・くやみ』『崇徳院・兵庫船』『口入屋・阿弥陀池』の3枚を借りる。『崇徳院』は大好きな噺。
 帰宅したら、こないだネットで注文した竹西寛子の文庫が届いていた。嬉。

 枝雀をMDにおとしながら、カーソン・マッカラーズの「悲しき酒場の唄」を読む。マッカラーズはすごく良い。長編を読んでみたいけれど、絶版なのが悔しい。時折サッカーもチェック。インドって暗いところでサッカーするんだなあ、と思ってたら停電だった。
 午前1時頃就寝。

・購入物:竹西寛子「鶴」(中公文庫) 古書

・朝食:ごはん、卵焼き、梅干、味付け海苔、ワカメの味噌汁(インスタント)
 昼食:コロッケサンド、津軽リンゴ一個、珈琲
 夕食:豚肉とエリンギの塩焼きそば、オクラ冷奴、山芋と海苔の短冊サラダ、麦酒


2004年09月07日(火) 風もないのに方舟がゆれている

 朝の8時半頃台所で、沸かした麦茶をポットに注いでいたらまたガタガタと地震がおこって、手元がくるってお茶が少しこぼれた。くそー。今日は昼から台風もやってくるというし、上から下からいろんなものが襲来して、もうしっちゃかめっちゃかだ。

 午後3時頃、台風で電車が止まるといけないので仕事のキリがついたら帰るように上司に言われた。電車のことは私には直接関係ないけれど、言われなくてももうそろそろ帰るつもりで支度をしていたので、誰よりも早く会社を出た。中津に寄って書類を届けてから、天六あたりをまわって帰ることにした。台風は鬱陶しいけれど、いつもよりうんと早く自由の身になれてこんな嬉しいことはない。嫌な授業が突然休講になったような気分だ。と、いつまでも学生気分が抜けないのは困ったことだ。
 
 せっかく時間ができたのだからと、天六の交差点を少し入ったところにある古本屋さんにフラフラ入って、前から読みたかった、素晴らしいと評判の「ヨーロッパ思想入門」を200円で購入。気を良くして商店街のお豆腐屋さんで一丁300円の豆腐を買って、天満橋のジュンク堂にも行ってみた。
 村上春樹の『アフターダーク』が発売されたらしく、店頭に堆く積まれていた。どんなんかな、と好奇心でページをめくってみたところ例の調子で「アルファビル」がどうたらこうたら、と書いてあったので、ふうん、と思った。きっとTが買ってくるだろうから、それを横取りして読もう。
 ここではフッと目に飛び込んできてひとめぼれした、ささめやゆきの絵本を買った。ささめやゆきさんの絵は、いい具合にとぼけていて温もりがあって面白くて、どことなく寂しさがただようところがとても好きだ。暗い色づかいも良い。今日買った『幻燈サーカス』は紙質や帯など、本の造り自体がとても凝っていてステキな一冊。

 本屋さんにいるうちに外は暴風になっていた。吹き付けてくる追い風でこがなくても勝手に自転車が前へ前へと進んで、楽チンだった。スーパーで買物をして、夜はずっと家にこもって音楽と読書。暴風が吹き荒れている間は、結局雨は一滴も降らず、台風が遠ざかった夜中すぎにバラバラと降ってきた。天気のことって、何だかやっぱりよくわからない。それから明け方前にまた地震。自然に翻弄される日々。

・購入物:ささめやゆき・絵、中澤晶子・文「幻燈サーカス」(BL出版)
     岩田靖夫「ヨーロッパ思想入門」(岩波ジュニア新書)これは古書

・朝食:たまごごはん、味付け海苔、しじみの味噌汁、梅干
 昼食:トマトバジルサンド、グリーンサラダ、珈琲
 夕食:焼きサンマ(大根おろしとスダチ)、冬瓜と鶏団子の煮物、レタスのキムチ風サラダ、冷奴、麦酒、ごはん


2004年09月06日(月) 簡単に諦めてはならない

 午前7時起床。昨日の地震のせいか何だか寝不足で前頭葉がズキズキ痛い。あんまり時間がなかったけれど、デタラメなお弁当をこしらえていく。
 昼休みに芋を囓りながら日記を書いていたらNさんに、アンタ一体何食べてんの、と聞かれ、サツマイモですけど、と答えたら、カワイソウニ、とか何とか言って情けなさそうな顔をされ、巨峰を5粒ほどくれた。昼ご飯にサツマイモを食べるのはカワイソウなことなのかな?

 仕事は一難去ってまた一難、という感じで、トラブルや問題に事欠くことがなく、実にスリリングだ。刺激的でいいけれど、精神的に疲れる。今日も映画を見に行く予定を変更して残業し、日が暮れてからトボトボ帰った。
 まっすぐ帰るのも何だかなあ、と自転車をこぎながら思いだしたのが竹西寛子のこと。先日、岩波文庫の「野上弥生子随筆集」を堪能した後で、編者である竹西寛子による解説を読んだ。キリッとかっこいい竹西寛子の文章がもっと読みたくなり、確か天牛書店に文庫が数冊残っていたはずと思い出し、嬉々として閉店間際の店に行ってみた。が、もう売れてしまった後であった。がっくり。人生うまくいかないネ。
 しかし、単行本の棚のところで吉行淳之介が編んでいる十返肇の文壇についての随筆集を発見、目次を繰ってみると『織田作之助の死』という章が目に止まり、値段も確認せずに買った。装幀は風間完。

 夜はサリフ・ケイタをMDにおとしながら、「ブダペスト日記」を読む。寝る前に、台所で死にかけていた(何故死にかけていたのかわからないのだが)ゴキブリと遭遇し、掴んで始末する勇気がなく掃除機で吸い上げてやった。また無駄な殺生をしてしまった。アーメン。
  
・購入物:吉行淳之介編「十返肇著作集より昭和文学よもやま話」(潮出版社)

・朝食:アンデルセンのうぐいす豆のパン(うぐいす豆が甘くて半分しか食べられず)、梨、珈琲、ヨーグルト
 昼食:いちおうお弁当(マカロニとキュウリのサラダ、ふかしサツマイモ、ブドウ)
 夕食:豚肉のしょうが焼き、小松菜としめじのソテー、レタスと赤玉ねぎのサラダ、しじみの味噌汁、ごはん


2004年09月05日(日) 逃げる用意はできている

 地味な休日。観に行きたい映画もたくさんあるのだが、今日はどうも人ごみに出る気がせず、家とその周辺で過ごした。
 
 本日主に行ったこと。
 玄関の掃除。洗濯。曇りがちなので洗濯物の乾きっぷりはイマイチ。洋服の入れ替えのため、秋物を押入れから出す。昨日から押入ればかり漁っているようだ。それからアイロンかけと恒例の本棚の整理。
 今日は主にカサンドラ・ウィルソンを聴いていた。それから昨日の「ウィークエンドサンシャイン」でかかった曲で、ちょっと真剣に聴いてみたいと思ったものをチェックして、早速アマゾンで購入してしまった。このラジオを聴いては何かしらCDを買っているというような状態で、何だかろくなことがないような気がする。
 日暮れ時の夕立が止んでから、食料を調達するためスーパーに行って、帰りに近所のレンタルビデオ屋とその隣のブックオフにも行ってみたが、借りたいものも買いたいものも、見事になあんにもなかった。一抹の寂しさを感じる。
 
 夜7時頃と夜中の12時頃に、けっこう強い地震があった。1度目より2度目のほうがユラユラユラユラと長く揺れて、本棚の中ほどに置いていた、新潮文庫のシールを30枚集めてもらったYONDA人形が、スローモーションで前のめりに倒れて落ちてきた。地震の最中に窓を開けて外を見たら、アスファルトの地面全体が前後左右に回るように揺れていて、今この瞬間まさに世界が動いているのだ、と感じ、確かに怖かったけれど、自然の力とはなんて神秘的なんだろうと思って感激した。圧倒的で偉大だ。すごい。

 本日読んだもの。「お菓子と麦酒」と「となりのカフカ」を読了。それから写真集「self and others」を見る。写真を撮ることで距離をはかる、自分と他人と、人と人との。「未来」の10月号が牛腸茂雄の特集だということで、それが今から楽しみだ。
 
・購入物:なし

・朝食:キノコソースのパスタ、巨峰
 昼食:ふかしさつまいも、梨
 夕食:ミンチボール、鶏ナンコツのから揚げ、枝豆、レタスと赤玉ねぎのサラダ、ワカメとキュウリとジャコの酢の物、麦酒、ちょっとだけごはん


2004年09月04日(土) 誰かにとってはゴミのようなものでも

 昨日からの鬱々気分をズルズルと引きずっていて、気がつけば何かしら考え込んでいる。いつまでもしつこくクヨクヨするのは私が一番嫌いなタイプのやり方なので、実に鬱陶しい。この状況を打開するべく、朝の7時くらいから一心不乱に掃除を始めた。思い煩う時は掃除をするのがいいと思っているのだ、なんとなく。

 動いたらお腹が空いたので冷蔵庫の残り物でオムライスを作って食べ、昼から実家へ帰った。京橋の紀伊国屋で「未来」の9月号をもらって、車内ではそれを読む。加藤幹郎「映画的省察・台湾、日本、アメリカ」、それから新連載の書店員のリレーエッセイなど、興味深い文章が多々あり。

 実家では懸案の押入れ探索をした。子どもの頃読んでいた絵本や童話、童謡のレコード、漫画、雑誌などに混じって、中学や高校の頃使っていた問題集やノート、日記帳が数冊出てきて、懐かしくて涙が出そうになった。それに教科書やノートの隙間から、友達とか当時のボーイフレンドからもらった手紙なども出てきて、それをおそるおそる読んでみたところ、もうあまりの可愛らしさと恥ずかしさに頭の中が真っ白になったりした。
 驚くべき事は高校生当時の日記で、買ったり読んだりした本の題名と感想、聴いた音楽やら見たテレビのタイトルと感想(テレビ、特にドラマの感想はなかなか面白かった)、それから誰々ちゃんがこんな相談をしてきた、そんな事で悩むなんてバカみたい、だとか、帰りに誰々ちゃんと四条の某でケーキセットを食べたが実にひどい味だった金かえせ、だとか、バイト先で客に怒られて落ち込んだ、だとか、それから毎日最後に朝昼晩に食べたものを事細かく記してあって、はっきり言って今現在ここにつらつら書き連ねていることと寸分変わらぬ内容だったことには、唖然呆然とした。

 とにかく、「ラチとらいおん」「かもさんおとおり」「まりーちゃんとひつじ」「ぐりとぐら」「ジルベルトとかぜ」などなど、絵本を数冊と、つげ義春漫画集「必殺するめ固め」を持って帰ることにした。これに加えて母から梨やらブドウをもらったため、帰りの荷物はものすごく重いものになってしまった。

 今日は少々蒸し暑いので、夜少しエアコンをつける。昔の日記を読んだりして気分はけっこう回復していたのに、寝しなにつげ義春の漫画を読んだら少しまたブルーになってしまった。いかんなあ。

・購入物:なし

・朝食:ガーリックトースト、冬瓜のスープ、梨、珈琲
 昼食:野菜オムライス
 夕食:実家にて(鶏ささみのシソ巻き揚げ、サツマイモの素揚げ、冷やし中華そば、オクラのおひたし、麦酒)


2004年09月03日(金) 知って知らぬふりをする

 寝坊する、仕事がたてこむ、会議は退屈、財布に入っていると思っていた一万円札がいつの間にかなくなっていた(おそらく使ったのだろうがその覚えがないので納得できない)、ひょんなことから友人の出来れば知りたくなかった秘密を知ってしまった(詳しくは書けないのだけれど、何だかとても落ち込んだ)、サンマを少し焼きすぎる、種村季弘さんが亡くなっていたことを今日知った、ロシアのニュウスをテレビで観た、Tが転職すると言い出した(びっくりした)、……などなど大きいことからどうでもいいような小さいことまで、いろいろとショックなことがあり、今日はあんまり良い日じゃなかった。ノロノロと生きているようでも日々いろいろあるなあ、と溜息。

 残業してすっかりくたびれてしまい、自転車を転がして帰宅の途についたのだが、どうもまっすぐ帰る気力がなくて、通りがかりの本屋さんで「東京人」を買って、家の近所の喫茶店に寄り道して「東京人」をペラペラ読みながら珈琲を飲んだ。
 「東京人」(特集:神田神保町の歩き方)は中身をじっくり読むというよりも、こないだ青空書房のおじさんが言ってたヤマモトイチリキってこの人かあ、とか、堀江敏幸は袖をたくし上げる山城新伍みたいなジャケットの着方は止めたほうがいいと思う、とか、坪内祐三が着ている水玉のシャツはセンスがいいのか悪いのかどうなんだろう、とか、今の日本映画界とその周辺は浅野忠信を使わねば映画を撮れないとでも思っているのだろうか、とか、そんなことばっかり考えてしまった。
 この前神保町に行ったのはいつのことだっただろう、もうすっかり忘れてしまった。木村伊兵衛のけっこう高価な写真集を買ったっけ。いつのことになるかわからないけどまた行ってみたいなあ、と思ったり。

 日中はそれなりに暑かったけれど、夜になるとぐっと涼しくなった。9月になってからは家ではまだ一度もエアコンをつけていない。簾が揺れる窓の傍で、読みさしで放っておいた(そんな本ばっかりだけど)モームの「お菓子と麦酒」を読んだ。 

・購入物:「東京人」10月号

・朝食:牛乳、バナナ、ミレービスケット、ヨーグルト
 昼食:おにぎり(カツオ)、春雨スープ
 夕食:焼きサンマ、青梗菜のおひたし、冬瓜とベーコンのスープ、麦酒、ごはん


2004年09月02日(木) アナタは(なるべく)姦淫してはならない

 今日は随分涼しい。夜になってからビルの谷間を歩いていたら、少し肌寒いくらいであった。心なしか、鈴虫の声が大きくなった気がする。
 
 終業後、ジュンク堂に行って、毎日新聞の書評欄でチェックしていた徳永康元の「ブダペスト日記」を買った。徳永康元は私にとって、マレーク・ベロニカの「ラチとらいおん」の翻訳をした人、という知識しかなかったけれど、こんな楽しい『ブダペスト・エッセイ』を書いているとは、書評を読むまで全く知らなんだ。迂闊であった。「ラチとらいおん」は好きな絵本のひとつで、これも多分実家の押入におさまっているはず。この週末に帰って探索してこようと思う。

 それから、ブルーノートでカサンドラ・ウィルソンのライブを観た。
 カサンドラ・ウィルソンの「New Moon Doughter」と「Traveling miles」が好きで、繰り返し繰り返しよく聴いたものだけれどそれも最近はご無沙汰で、しかもアルバムはこの2枚しか持っていなくて、去年発売された新作もまだ聴いていないというような状態で、まあとてもファンとは言えないかもしれないけれど、いつか目の前でその歌を聴いてみたいと思っていた。
 ライブはもちろん素晴らしかったし、とても満足した。カサンドラ・ウィルソンにはなんか豊穣な余裕がある。余裕があるから、心を委ねられるのだ、という気がする。それから彼女の手がとても好きだ。すごく美しい手だった。身体のわりには小さい手のひらで、細くて器用そうな指がスッと伸びていて、褐色の肌に血管が幾筋も幾筋も浮いてて、それがびっくりするほど綺麗で、その手がギターを撫でるように弾く時、私は手ばかりを見ていたような気がする。
 バックも男前ばかりで、特にギターのブランドン・ロスは、パフォーマンスからルックスまで、ばっちり私の好みであった。ステキでしたわ、もう言うことなし。

・購入物:徳永康元「ブダペスト日記」(新宿書房)

・朝食:ひよこ豆と野菜のカレー(昨夜の残り)、ヨーグルト
 昼食:クロワッサン、ポテトサラダ、珈琲
 夕食:ライブ前に、フライドポテトとバスペールエール2本。家に帰ってから、梅干し茶漬け


2004年09月01日(水) よく確かめずに行動してはならない

 午前6時起床。今日はとある会合に出席せねばならぬため、スーツを引っ張り出してきたり、スーツに合うそれらしい靴を探したりしていたので、早起きしたのにもかかわらず妙にバタバタした朝になってしまった。昨夜からでも前もって準備しておけばいいようなものだけど、どうもそういうことが出来ない性質なのだ。今日のことは今日になってからでないと、決められないしわからない。バカなのだろうか。
 夕食のためにひよこ豆を水に浸し、パッとしないお天気だけれどいちかばちか洗濯物を外に干して出かける。

 午前中は会合で人々と談笑などしてくたびれ、午後は会社で客に怒られくたびれ、お八つにもらった饅頭に蕎麦粉が入っていると知らずに蕎麦アレルギーのIちゃんにあげて、それを一口食べたIちゃんが呼吸困難に陥る、という事件が起きてその看病でくたびれ、何かと神経が疲労した日であった。

 映画の日であるが何を観る気も起こらないし、雲行きがいよいよあやしくなってきたので帰ることにする。帰りに旭屋に寄って久々に面白そうな特集の「大阪人」を購入、「ちくま」の9月号をもらう。「ちくま」の表紙のブタさんを見ていると、荒んだ心が和むようだ。旭屋の前には魔女みたいな格好をした二人組が突っ立って、ハリーポッターの最新刊を売っていた。ご苦労さまなことだ。

 なんとか雨が降り出す前に帰ることができた。洗濯物も無事。夕食にはひよこ豆のカレーを作る。ひよこ豆は初めて料理に使ったのだけれど、ジャガイモみたいな食感でなかなか美味しかった。カレーのようにあれこれ調味料の配合を考えながらつくる料理は、まるで理科の実験みたいで楽しい。
 
 本日読んだもの。岩波文庫の「野上弥生子随筆集」と「デカローグ」を何篇か。それから「ちくま」と「大阪人」をパラパラと。
 野呂邦暢の「諫早菖蒲日記」を読みたいのだが、そして読むだけでなく所有したいのだが、そのためにはどうしたらいいだろう、と考えながら寝てしまう。

・購入物:「大阪人」特集=掘り出し大阪本

・朝食:茄子と鰊の煮物(昨夜の残り)、卵焼き、明太子、ごはん
 昼食:チーズソーセージドック、珈琲
 夕食:ひよこ豆と野菜のカレー、空心菜とベーコンのサラダ、トマト、麦酒


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