昨日・今日・明日
壱カ月昨日明日


2004年05月31日(月) 豪雨

 レイトショウで「映画作家ストローブ=ユイレ/あなたの微笑みはどこに隠れたの?」という映画を観た。「ヴァンダの部屋」の前に、ペドロ・コスタの撮るものを一度観てみたかったので、雨が降りつける中テコテコと九条まで出かけた。ストローブとユイレのことは、どうやら映画作家であるらしい、ということしか知らない。まあそれは題名を見たら誰でもわかるか。要するに全然わけがわかってないんだけれども、そんな奴でも充分楽しめるもので、一本の映画を作り上げることの厳しさと喜びが体験できる作品であった。
 ストローブとユイレは夫婦であり、2人がやいのやいのと話し合いながら映画の編集作業をしているところを撮ったドキュメンタリー。まあよう喋ること喋ること、古今東西の映画論、映像論からふたりの昔話まで、ペラペラペラペラ喋りまくる。喧しいんだけれどその話はなかなか示唆に富んでいて、フンフンホウホウと、思わず引き込まれて聞いてしまう。薄暗い編集室や机の上を照らす光、フィルムをまわす音、時折はさまれるちょっとした言い争いなど、心に残るシーンも多かった。特にラストでの、完成した映画が上映されているのを廊下でそっと見守るシーンは胸にせまるものがあった。

 映画館を出たらすっかり雨が上がっていて、かなり涼しくなっていた。帰りの地下鉄で本日入手した「一冊の本」の6月号を読む。私が新聞その他で読んで、例によって例のごとくアホな人がズレたこと言うとるなあ、と常々思っていることを、金井美恵子がズバズバと書いていてくれるので、たいへん嬉しい思いがする。

 寝床では、高野悦子「私のシネマライフ」を飛ばし読み。岩波ホールの支配人による随筆。ホラホラ皆さん知ってますか、私のしてきたことってこんなに意義のあることだったんです、ホラホラホラホラ、というような押し付けがましいところが散見され、少々閉口した。

・購入物:なし

・朝食:トースト、ハムエッグ、ヨーグルト、アイスカフェオレ
 昼食:お弁当(鮭、小松菜とベーコンのソテー、ミニトマト、ごはん)
 夕食:外食、うなぎ丼


2004年05月30日(日) 収穫

 それにしても暑いですな。とても寝ていられないので起きたのが午前7時半。天気予報に反して、今日もよく晴れている。晴れているのはよいのだが、この蒸し暑さはもうちょっとなんとかならんのか。
 
 朝ご飯を食べてから、夏にむけて家中の模様替えをした。と言ってもたいそうなものでもなくて、扇風機を出すとか、クーラーを掃除するとか、ラグやクッションカバーを夏用に取り替えるとか、食器を入れ替えるとか、シーツや毛布を洗濯して押入れに仕舞うとか、まあそういった類のことだ。しかし、この作業はすごく時間がかかり、とても疲れた。
 押入れの奥深くにしまってあったダンボールの中から、昔々の「ユリイカ」「映画芸術」「マリ・クレール」がそれぞれ何冊かと、これまた昔々に観た映画のパンフレット類、「草思」や「一冊の本」「図書」などの約2年分くらいのバックナンバーが出てきたことが、この大掃除の収穫であった。それから何故か、ハリー・ベラフォンテとベンチャーズのレコードも出てきた。特に買ったおぼえもないのだがなあ、押入れというところには不思議なものがあるもんだ。せっかくなので聴いてみようと思う。

 夕方近くになってから散歩に出た。日が傾いてきても蒸し暑さは相変わらずで、たぶんもうすぐ梅雨になるのだろう。
 内環状線沿いのブックオフへ。この店では以前、島尾敏雄の「日の移ろい」や野口冨士男の「わが荷風」を100円で発見しているので決して侮れぬ。目をこらして棚を見ていると、ありましたありました、「辻邦生全短編1」。ずっと読みたかったのだ、うれしーい。歓喜の雄叫び。それから福武の杉浦明平、ちくま文庫の森敦など、何となく探していたものを100円で次々発見、恐るべしブックオフ。
 喜びを胸に千林まで行く。自転車を商店街の入り口に止めて食料を買いつつテコテコと歩いた。歩きながら、「辻邦生全短編」の「1」を入手したのはいいけど「2」を見つけるのがまた至難だなあ、とつらつら考えていたところ、ふと足を踏み入れた千賀書房であっさりと発見。こちらは350円だったけれども贅沢は言うまい。心が満ち足りていくのがわかる。
 その他、80年代後半の「Switch」が200円均一で数冊並んでいたので、カサヴェテスの追悼特集、ハリー・ディーン・スタントンやアンゲロプロスのインタビューやウディ・アレン「ハンナとその姉妹」のシナリオが収録されているものなど、散々迷って3冊選ぶ。「Switch」が面白いのはこのころまでで、これ以降はちとしんどいなあ、と私は思う。
 合計11冊購入。買いすぎの感、なきしにもあらず。

・購入物:辻邦生「辻邦生全短編1・2」(中公文庫)
     杉浦明平「泥芝居」(福武文庫)
     森敦「マンダラ紀行」「意味の変容」(ちくま文庫)
     安岡章太郎「夕陽の河岸」(新潮文庫)
     山口瞳「草競馬流浪記」(新潮文庫)
     石田五郎「星の歳時記」(ちくま文庫)
     「Switch」1986年12月号、1989年6月号、12月号(扶桑社) すべて古書

・朝食:トースト、ツナとトマトのサラダ、オレンジジュース、珈琲
 昼食:親子どんぶり、わかめの味噌汁
 夕食:長芋の短冊サラダ、オクラのカツオ和え、えのきの明太子和え、キュウリの浅漬け、冷たいトマト、キムチをのせた冷奴、麦酒


2004年05月29日(土) 願望

 午前9時起床。寝すぎだ。お休みなので何時までに起きねばならないということもないのだが、なんか寝坊したような気持ちがする。
 雨が降る前に洗濯してしまおうと大急ぎで洗濯機をまわす。空は思いっきり晴れていて雨などいっこうに降る気配がないけれど、今日は雨が降るはずだと、どこかで思い込んでいる自分がいる。午前11時くらいに干した洗濯物は、なんと約1時間でカラッと乾いた。とり込んで出かける。

 会社に寄って少しだけ用事を片付けてから、絵本の会へ。今日は参加する予定ではなかったのだが欠員がでたため急遽呼び出されたのだ。久しぶりにIさんに会って、なんだかんだと話す。
 会が終了した後、5歳くらいのヒョロっとした男の子とタヌキが化粧したみたいな顔の母親がやってきた。母親が、さあ御礼を言いなさい、と促すと、男の子はチョコっと頭を下げて、アリガトウゴザイマシタ、と言った。さらに母親は男の子の背中を押して、ほら面白かったとか楽しかったとか感想を言ってごらん、とせっつく。男の子はモジモジしたように下を向いていて、なかなか言葉がでてこないようだった。どうして何も言わないの、失礼じゃないの、と母親は畳み掛けるように言う。男の子は小さい声でもう一度、アリガトウ、と言った。
 私はこの母親に言ってやりたいことが山ほどあった。喉のすぐそこまで出かかったけれど、要らんことを言うなとばかりにIさんが後ろから私の腕をグッと引っ張るので何とか堪える。怒りがムラムラとこみ上げてくるが、子どもの前で言うべきことではないとは思った。私にもその程度の理性はあったということか。
 Iさんはそれきり黙ってしまった男の子に優しくいろいろ言葉をかけ、ふたりを送り出してから、いろんな人がいるねえ、とため息をついていた。
 あの男の子がまた来てくれるといいな。また来てほしいと心から思う。

 すっきりしない気分のまま、スーパーで食料を調達して帰宅。地下鉄の階段を上がるとムッとした空気が押し寄せてきて、パラパラと雨が降ってきた。憂鬱な気持ちに拍車がかかるようだ。
 こういう時は本を読んでもどうも目が字の上を滑っていくようでダメだ。でも何年かぶりに読んだ長谷川四郎の「阿久正の話」はやっぱり素晴らしかった。余韻を胸に眠る。

・購入物:なし

・朝食:トースト、プレーンオムレツ、トマトサラダ、珈琲
 昼食:ぬき
 夕食:ちらし寿司、しゃぶしゃぶサラダ、みょうがのかき玉汁、キュウリの漬物、麦酒


2004年05月28日(金) 雲丹

 このところイヤに仕事量が増えてきた。面倒くさいったらありゃしない。しかも急ぐ案件ばかりで、尻に火がつかないことには何にも始められないわたくしはもう火だるま状態である。ヤマは越えたと思っていたのだが、その先にはさらに高いヤマがあったのだ、知らんかったなあ。
 というわけで、今日も次から次へとわけのわからんことに振り回されて、頭からウニが出てきそうな一日であった。本当に頭からウニが出てきたら儲かるだろうな。

 少し残業してから会社を出る。今日は『我が故郷の歌』を観に行くつもりだったのだが…、夢破れてトボトボ帰る。もしかしたらこの映画は見逃すかもしれない、残念だ。
 天神橋商店街に寄る。恒例の古本屋さんめぐり。心惹かれる書物ばかりなれども、先立つものがないので我がものにはならず。棚の前でパラパラとページをめくって「目の正月」をさせてもらう。
 天牛書店で長谷川四郎を300円で買った。昔図書館で読んで猛烈に感動した「阿久正の話」を急に再読したくなったのだ。
 その後、近所の八百屋でトマトとスナックエンドウ、小松菜と卵を買って帰った。古本をゆっくり見た後でおいしそうな野菜を買う、この一連の流れが楽しくて止められぬ。

 家に帰って、晩ご飯の支度をしながら日記を書く。
 ご飯を食べてからビデオで成瀬巳喜男の「乱れ雲」を観ていたら強烈な眠気が襲ってきてそのまま沈没、気がついたら午前1時半になっていた。呆然。お風呂に入って目が冴えたもんだからまたこうして日記を書いているというわけで、なんか日記ばっかり書いてるなあ。もう寝よ、おやすみなさい。 

・購入物:ちくま日本文学全集「長谷川四郎」(筑摩書房) 古書

・朝食:楽童のプチパン一個、レーズンパン一切れ、ヨーグルト、バナナ、珈琲
 昼食;いなり寿司五個、リンゴ半分
 夕食:タコのガーリックいため、コスレタスと薩摩揚げの煮物、トマトとスナックエンドウのサラダ、麦酒、ごはん


2004年05月27日(木) 佳日

 午後から健康診断。会社指定の病院へ行く。病院など普段全く縁がないので、そのハイテクぶりにびっくりした。こういうシステマティックな社会に、この先私はついていけるのだろうか。まあ特についていく気もないのだが。
 血液検査などの結果はまだ出ないけれど、今日のところは異常なし。問診で、煙草はやめるようにとか、規則正しい生活をするようにとか、バランスのよい食事をとるようにとか、いろいろと当たり前なことを言われてつまらなかった。これならみのもんたのアレを熱心に見たりしているような、そのへんを歩いているおばちゃんの方が斬新なことを言ってくれそうな気がする。

 帰りに髪を切りに行く。
 予約時間まで少し間があったので、近所の本屋さんで雑誌など立ち読み。ぼちぼち店を出ようとしたところ、FMからつじあやのと奥田民生のデュエットによる「シャララ」が流れてきた。あまりの懐かしさに感激して、曲が終わるまで店内にとどまることにした。ほとんど原曲そのままなアレンジだったけれど、この曲を聴くことでまざまざと思い出す風景があって、それがとても寂しくて懐かしいものだったのでたいへんしんみりしてしまった。
 髪を切ってもらっている間中ずっと、頭の中で「シャララ」がまわっていた。

 帰って簡単な夕食を作り、ホソボソと食べた後、キャンディ・ステイトンを聴きながら、布巾を殺菌消毒したり、麦茶をお茶パックに入れたり、古本をウェットティッシュで拭いたり、なんだか地味で陰気な作業を黙々と行う。
 その後、本棚の前にペタリと座ってワイエスの図録を眺めていたら、父親から電話あり。阪神戦のチケット手配を頼まれる。私のことを完全にチケットぴあだと思っておるようだ。良い席で頼むで、と念をおされる。贅沢は言わないでほしいものだ。

 今日もなんということもない一日ではあったが、鳥谷がホームランを打ったので、素晴らしい日であったということにしておく。

・購入物:なし

・朝食:抜き
 昼食:外食、ごはんや(煮魚定食)
 夕食:揚げいりカレーうどん、ほうれん草とニラのおひたし、しめじごはん


2004年05月26日(水) 太平楽

 朝から直行で神戸に行く。
 昨日ベルンハルトを読んでいる人を見かけてから、他人の読んでいる本がちょっと気にかかるようになった。でもだいたいみんなブックカバーをかけているから覗き込まないと何の本かわからない。行きの電車で隣になった、青瓢箪みたいな顔をしたあまり営業成績の良くなさそうな会社員風オニイサンが読んでいたのはハードカバーで、この男はもしかして元文学青年というやつかしらと思ったけれど、「歌舞伎町」「抗争」「署」などという単語が散見される何やら物騒な本だった。うーん、人は見かけによらんなあ。
 帰りの電車で、西宮北口から乗ってきた女の子が読んでいたのはナンシー関だった。消しゴム版画ですぐわかった。わかりやすくてよろしい。

 午後からは取引先のAさんが来社、Nさんと3人で打ち合わせ。Aさんは私より2つくらい年上のバランス感覚のある穏やかな人で、この人と仕事をするのは好きだ。おまけに美人だし。どことなくフランソワーズ・ドルレアックに似ているのだ。美人が一人でもいると会社の景色が良くなっていいなあ、などとオヤジのようなことを思う。
 Aさんを見送った後Nさんが、Aさんってあんなにキレイやのになんで結婚でけへんねやと思う?、とまた難しいことを聞いてきた。キレイだから結婚できる不細工だから結婚できない、というもんでもなく、きっとそこには複雑にからまった事情、問題、理屈、屁理屈、その他が横たわっているのだ、たぶん、知らんけど。
 難しい質問には答えずに、それはそうとAさんってフランソワーズ・ドルレアックに似てません?とNさんに言ってみたところ、誰やねんそれ、と一言で片付けられて、この会話は終了した。

 夜は「テオレマ」を観る。
 ひとりの男の出現によって、あるひとつのブルジョア家庭が崩壊していく話。政治的にとか、宗教的にとか、きっといろいろに解釈できるのだろうけど、そういったことには興味がないのでどうでもよい。なんかヘンなの、と思うこの映画の「ヘンさ具合」が好きなのだ。おいおいガス管口にくわえたで、とか、急に宙に浮いたけど、とか、突っ込みながら観て最後に、パゾリーニってヘンな人、でもオモロイな、また観てみたい、と思ってしまうのだ。たぶんヘンなものが好きなのだ。
 以前観た時はテレンス・スタンプのカッコよさがよくわからず、なんでこの程度の男に家族全員がトチ狂ってしまうのか理解に苦しむなあ、と思っていたのだが、今日はこの人の周りから立ち上るフェロモンにはっきりと気付いた。時が経つとわかることもあるのだ。
 
・購入物:なし

・朝食:ごはん、青梗菜と卵の炒め物、トマト、冷奴、りんご
 昼食:お弁当(ウィンナー、卵焼き、トマト、塩昆布、ごはん)
 夕食:アジの干物、キノコ汁、レタスと大根のサラダにクルミ入りドレッシングをかけて食べた、冷奴(明けても暮れても豆腐ばっかり食べているような)、キュウリの浅漬け、麦酒、ごはん


2004年05月25日(火) 脱力

 イベントのため、終日外出。
 準備段階ではいろいろと問題が噴出し楽天的性格のこの私でさえ、一体どうなっちゃうのかなあ、と不安に思っていたのであるが、開き直りというか、火事場の馬鹿力というか、まあ何とか滞りなく終了した。要するに、どんなことも何とか成る、ってことだ。くよくよ悩むなんて時間の無駄だ。

 少しだけ取れた休憩時間に一人で蕎麦屋へ行った。相席でお願いします、と案内された席には120キロくらいはあるかと思われる巨漢の女性が座っており、ざるそばを啜りながら本を読んでいた。何の本を読んでいるのか偵察してみたところ、何とトーマス・ベルンハルト「消去」であった。んまあ、貸して欲しい!蕎麦屋でみすず書房の本を読んでいる人なんて初めて見た、と思う、たぶん。

 ややこしい仕事も終わったことだしお祝いとして今日は映画でも観よう、と張り切っていたのだが、帰り際に仕事を言いつけられて計画はパーになってしまった。腹が立つので旭屋に寄る。
 「本」と「本の話」をもらう。「本の話」はほとんど読むところなし。はっきり言って面白くありません。
 二階に上がってまた岩波の品切れ本コーナーをとっくりと眺め、先日は気がつかなかった文庫本を一冊と、「暮しの手帖」を買って帰った。

 夜は「犀星王朝小品集」を半分くらいまで読む。

・購入物:「暮しの手帖」10号(暮しの手帖社)
     青木正児「酒の肴・抱樽酒話」(岩波文庫)

・朝食:トースト、オムレツ、トマト、はちみつヨーグルト、珈琲
 昼食:外食、月山そば(冷やしたぬき)
 夕食:牛丼(卵とじ)、豆腐とネギの味噌汁、小松菜と干し海老のおひたし、大根の浅漬け、麦酒


2004年05月24日(月) 念仏

 月曜日。天気は上々、洗濯物を干して出かける。
 
 午前中はみっちりと会議、その後ごはんを食べてすぐ外出した。大阪市内をぐるぐると外回り。日差しは強いけれどもカラッとしていて、木陰で信号待ちしている時にふいてくる風が気持ちいい。
 途中で天牛堺書店に寄り道して、少しだけ古本を見る。今日は550円均一とちょっと高めで、よっぽどの本でない限り買わないなあ、と思いながらワゴンの底から本を掘り出してみると思わぬ収穫があった。大原富枝「彼もまた神の愛でし子か」、『洲之内徹の生涯』という副題に目を奪われる。おおこれは「よっぽどの」本だ。スムースによると洲之内徹について書かれた最初の評伝だとか。読むのが楽しみではあるが、読んでしまうのはもったいないような気がする。
 それから湯村輝彦による装丁が素晴らしい、後藤明生のエッセイ集を買った。よい買物ができて余は満足じゃ。

 帰って宅配野菜の整理。今週のレタスは虫だらけだった。テントウムシとマルムシ、蛾から羽をもぎとったようなグロテスクなやつ、それからゼリーみたいなナメクジの親子。血が繋がっているのかどうか知らないが(そもそもナメクジに血があるのかどうかも知らない)、大小くっついて葉にはりついていたので親子かなと。2匹ともお亡くなりになった、って私が手を下したんだけど。申し訳ないと思う。しかし生きとし生けるものみないずれ死ぬのだ。生者必衰の理だ。アーメン。

 夜は室生犀星の「或る少女の死まで」を最後まで読んでしまう。せつない。詩人の書く小説はせつないなあ。
 
・購入物:後藤明生「分別ざかりの無分別」(立風書房)
     大原富枝「彼もまた神の愛でし子か」(講談社) 古書

・朝食:ごはん、ちりめん山椒、塩昆布、梅干し、レタスと卵のスープ
 昼食:メロンパン、照り焼きチキン、珈琲
 夕食:ニラと豚肉の炒め物、ベビーリーフとレタスとトマトのオリーブオイルサラダ、ほうれん草のゴマ和え、ごはん


2004年05月23日(日) 無為

 思い返せば、何をしたということもない一日であった。

 本日行ったことなど。
 洗濯。布団干し。ちょっと念入りに掃除など。フローリングの雑巾がけなどして、腰が痛くなった。
 シャツのボタンが取れかけていたので付け替えた。久しぶりに針仕事をして、気が狂いそうになった。不器用なもんで。昔、家庭科での裁縫の時間はいつも気が狂いそうになっていたことを思い出した。中学の家庭科の先生は、昔三田寛子を教えたことがあるという人で、三田は本当にいい生徒でした、といつもあてつけのように言っていた、ことも思い出した。
 日記を2日分書いた。金曜日に起こったことはもうほとんど覚えていなかった。
 時間の無駄だと知りつつ、本棚の整理をした。やはり無駄であった。
 昼頃、アマゾンからメール便が来て「テオレマ」のDVDが届いた。当時のパンフレットの復刻版が封入されており、しばし読む。読めば読むほどけったいな映画だ。わけがわからん。
 買物にいって、台所で得体の知れぬ焼きそばを作っていたら再びメール便が来て、「スムース」12号が送られてきた。不味い焼きそばを食べながらパラパラ読む。杉山平一が織田作に書いた手紙を読んで、胸がジンジンした。
 テレビで野球を観た。鳥谷がわたくしの目の前でタイムリーを打ってくれた瞬間は、もう死んでもいいと思った(というのはちと大げさか)。
 夜は「テオレマ」を観よう、と思ったけれど、教育テレビで文楽「冥土の飛脚」をやっていたのでそっちを観る。テレビで文楽を見るのは苦手だ。舞台全体を見せてくれないのですごく疲れる。案の定、途中で寝てしまう。気がついたら、0時をまわっていた。
 お風呂に入って、就寝。
 
・購入物:なし

・朝食:黒糖パン、オムレツ、ヨーグルト、イチゴ、珈琲
 昼食:トマトソース焼きそば(ヘンな味。失敗である)
 夕食:肉じゃが、中華風冷奴、レタスと卵のスープ、トマト、ごはん、麦酒
 


2004年05月22日(土) 時間

 姫路市立美術館で「アンドリュー・ワイエス水彩素描展」を観た。姫路はちと遠いしなあ、などど行くか行かぬか直前まで迷っていたのだが、とても素晴らしい企画展だった。行って良かった。とても感動した。
 ワイエスの生涯の友人、クリスティーナとアルヴァロの姉弟をモデルとした「オルソン・シリーズ」。メイン州の小さな家で、質素でありながら慎ましく誠実に生きたふたりの毎日が描かれている。展示してある絵の最初から最後までが移ろいゆく時間の物語になっており、その強い静けさにただただ心を打たれた。
 
 風でゆれるカーテン、重ねたバケツ、摘みたてのブルーベリー、無造作に置かれた穀物袋、納屋の牛、飛び交うツバメ、光がもれる屋根裏窓、開かれたドア、クリスティーナの墓、誰もいない寝室、煙の上がらない煙突、使われていたままに置いてあるアルヴァロの桶。
 確かにこの手の中にあったのに、今はもうなくなってしまったものたち。

 洲之内徹がワイエスについて書いていたこと。
 『過ぎて行く時間のある瞬間をまざまざと感じさせる光線が、ワイエスのどの絵の中にもさしている。時間という無限なものが私たちに触知させる一瞬ー。移ろい行くもの、そこはかとないもの、過ぎて行く、あるいは過ぎて行った人間の日々の営み、それを、その光線は感じさせないではおかない。』

 阪神電車にとろとろと揺られて、図録をめくっては眠り、めくっては眠りしながら大阪に戻る。堂島地下の中華料理屋さんで腹ごしらえしてから、サンケイホールで「桂吉朝独演会」へ。サンケイホールでの独演会はこれで最後とか。
 
 会場は満員。ひとつおいて隣に座った人が、取引先で受付をしている女性だったので全く驚いた。ちゃんと話したことはないけれど落語を聞きにくるような人だとは思わなかった。もしかして気が合うかもしれないなあ。
 あと、後席のおじいちゃんが、松鶴はいったい誰が継ぐんだろうねえ、としきりに心配していたのがちと面白かった。そう心配せずとも、いつか誰かが継ぐだろう。
 大ネタ『百年目』はもっと「枯れ」が加わってからでないと本当の味は出ないのかもしれないが、品格は充分だと思った。
 その他、『犬の目』と『浮かれの屑より』。『犬の目』で、研修医が「先生、えらいことができました、干しといた目玉があれしませんのです」と言い、医者が「お前、医者にでもなろうちゅうもんが、あれしませんのです、なんて言うなよ」と諭すところがすごく好きだ。「あれしませんのです」、っていい言葉だなあ、私も来週から使おう。

・購入物:図録「アンドリュー・ワイエス 水彩素描展」

・朝食:ごはん、豚汁、梅干し、海苔、ちりめん山椒
 昼食:ヘンゼルのパン、ツナオニオン、豆乳ドーナツ、ミルクティ
 夕食:外食、つぼや(生麦酒、餃子、春巻き、キムチ、枝豆)


2004年05月21日(金) 現実

 久々に晴れたので、早起きして洗濯をする。寝不足のため少々頭がぼんやりしていたが、自転車をこいでいるうちにさっぱりしてきた。

 昼休みはIちゃんの恋愛相談を受ける。「仕事が趣味」というような男をおとすにはどうすればよいか、というような内容。仕事が趣味、なんていう男とはとんと縁がないのでわからぬ。そんな奴やめとけば、と答えておく。Iちゃんは相談する人を間違えたのだ、気の毒に。
 
 太陽が沈むころまで働いて、帰る。
 旭屋に行ってみたところ、二階正面のところに岩波の古くさい本がズラリと並べてられてあった。何も書いていなかったからわからないけれど、書店在庫本なのかもしれない。とっくに品切れになっているものもあって、ちょっと三月書房のようなコーナーになっていた。私の大好きな広津柳浪も三冊ほどあった。広津柳浪ファンの人がいれば(そんな人いるかなあ)、旭屋に行けば今なら買えますよ。
 そこでは何も買わず、新刊を二冊と「田端文士村」を読んで俄に気になってきた室生犀星を一冊購入した。

 夜は早速、室生犀星を読む。静謐、というのはこういう文章のことをいうのだろうか、とうっとりしていたところ、外でバン!という大きい音がした。近所で事故があったらしい。野次馬の声と救急車のサイレンがけたたましく鳴り響き、うっとり気分もどこへやら、現実世界に引き戻された。

・購入物:加藤郁乎編「吉田一穂詩集」(岩波文庫)
     室生犀星「或る少女の死まで」(岩波文庫)
     関礼子「樋口一葉」(岩波ジュニア新書)

・朝食:ロールパン、珈琲、バナナヨーグルト
 昼食:ミックスサンドイッチ、珈琲
 夕食:野菜かきあげどんぶり、冷奴、豚汁、ちりめん山椒、ごはん


2004年05月20日(木) 沈殿

 また雨だ。地下鉄で出勤。昨夜、車谷長吉を読んでいたら、何だか血液のめぐりが少々悪くなったような気がしたのでちょっとお休みして、車内では田村俊子の「あきらめ」を読み始めた。しかしこれもまあ同じようなもんだった。澱む。
 会社に到着。車谷長吉が、巨人が負けた翌日の読売新聞を読むのはとても楽しい、と書いていたのを思い出して、そうだそうだ私も楽しいことをしようと新聞をめくった。19日の新聞。ボロボロ負けでもヘンに前向きなところが笑える。
 
 夜は友人と飲みに行った。午後7時すぎくらいに会って飲みながら途切れることなく喋り続けて、終電で帰った。まあよく喋ることがあるもんだ。世の中に話のネタは尽きまじ。
 友人は今、競艇にはまっていて、今度蒲郡まで行くのだとか言って張り切っていた。この人は確か今年から小鳥のような可愛い女の子を目指すと宣言していたはずで、そのような女の子はあんまり競艇場には出入りしないように思うけれどもいいのだろうか。多分無駄な努力はやめたのだろう、深く追求しないことにする。

 午前0時半頃帰宅。お風呂に入ってからミルクティを飲む。外はまだ雨。「ウフ」のバックナンバーを本棚から出してきて、柴崎友香の連載「フルタイムライフ」を初回から読んだ。ようやくここにきて血液の澱みが緩和されたという気がする。よかったよかった。

・購入物:なし

・朝食:トースト、目玉焼き、ソーセージ、珈琲
 昼食:サラダ巻き
 夕食:梅田周辺3軒はしご(韓国風サラダ、チヂミ、カルビの煮込み、春雨サラダ、ニラ饅頭、生中麦酒5杯くらい、焼酎お湯割何杯か忘れた。韓国料理は旨し。辛いもの大好きだ。)


2004年05月19日(水) 感謝

 早目に出勤して、明日で退職される掃除のおばちゃんに、先日阪神百貨店で購入した日傘を渡す。お世話になった御礼。おばちゃんは喜んでくれたようだった。それから、
 「アンタな、これかもな、イヤなこととかしょうもないことがあってもな、ナニクソ!、と思て、やるんやで。負けるんやないで。」
 と言ってくれた。うんそうする、と答えた途端泣けてきた。おばちゃんも泣いていた。ふたりともハンカチを持ち合わせていなかったので、トイレに設置してある手を拭くペーパーで涙をぬぐった。私はこれからもいろんなことに負けると思うが、おばちゃんの言葉は忘れないと思う。

 帰りにタワーに寄って、「ミュゼ」をもらう。このところ毎日タワーに行ってるような。バスを待ちながら「ミュゼ」を熟読。5月22日に「テオレマ」のDVDが発売されるそうではないか、なんということだ、知らんかったなあ。「テオレマ」は以前パゾリーニ映画祭で一度観ただけであるが、どこがどうとは上手く言えないながらなんと面白い映画であろうかと感嘆した記憶があり、一体この映画のどこに惹かれるものがあるのか機会があれば再見して確かめたいものだと思いつづけて幾年月、今月その願いが叶うとは、まあなんと良かったことでしょう。なんかごちゃごちゃ前口上が長いけれど、帰ったら早速アマゾンで予約するとしようと決心、バスではグウと居眠りをする。

 夜は、車谷長吉「銭金について」を読む。心がいい具合に荒んでいく。

・購入物:なし

・朝食:野菜カレーライス(昨夜の残り)
 昼食:キンピラゴボウのパン、クロワッサン、珈琲
 夕食:ベーコンとエリンギと玉ねぎとピーマンのガーリック炒め、スナップエンドウのサラダ、冷奴、かきたま汁、ごはん

 


2004年05月18日(火) 気晴

 昨夜は失意のまま寝たというのに、朝起きたらまた三橋達也の訃報に遭遇してがっくり。三橋達也と言えば「洲崎パラダイス赤信号」だ、あの映画での三橋達也のダメ男ぶりは本当によくできていた。芝木好子の原作がこれまた良くて、再読してみたいなあと思ったけれど、本棚を探索するのがどうも億劫でまたの機会に先送りすることして家を出た。

 土曜日にピーター・バラカンのラジオでかかってたボビー・チャールズ格好良かったなあ、とふと思い出し、ちょっくらCDを買って帰ろうとタワーへ行った。ついでに第3ビルの古本屋さんも何軒かぶらぶら。谷中安規の挿画がなんとも素晴らしい百鬼園先生のお伽噺集と、本当に発売されたのかと疑うくらい滅多に見かけない、とどこかに誰かが書いていた(岡崎武志だったかな?)色川武大の文庫を200円で発見し、ほくほく気分で自転車に乗って家に帰った。

 今日はTが休みのため、夕食の支度は免れた。帰ってすぐごはんが食べられるっていいなあ。献立はピーマンやらカボチャやらが入った野菜カレー。カレーにカボチャ、というのはまあ何と言うか独創的でいいかもしれぬが、カボチャの種まで入っているのはどうかと思った。全部取るのが面倒くさくてさあ、食べながら口から出したらいいやん、とTは言うけれど、そのほうが面倒くさいわ。種は最初から取っておいてください。

 買ってきた「王様の背中」を読んで、その中の「桃太郎」に感動した。桃太郎が出てきた後の桃をめぐる話。そうだそうだ、私も昔から気になってたのだ、桃太郎が生まれた後の桃のこと。鬼退治なんかどうでもいいやバカバカしい、あの桃どうしたの、食べたのか捨てたのか誰かに持っていかれたのか、知りたいよう、と思っていたのだ、これで積年の疑問が晴れたわ、よかったよかった。

・購入物:内田百けん「王様の背中」(六興出版)
     色川武大「唄えば天国ジャズソング」(ちくま文庫)古書
     Bobby Charles「Bobby Charles+2」

・朝食:黒糖パン、スクランブルエッグ、ヨーグルト、珈琲
 昼食:お弁当(おにぎり(梅、カツオ、昆布)、ソーセージ、小松菜のおひたし、ピーマンのキンピラ、ミニトマト)
 夕食:野菜カレーライス、トマトサラダ、シューマイ、麦酒


2004年05月17日(月) 彷徨

 また雨だ。雨もいいけど、もうそろそろ飽きた。
 朝からレコードをひっぱり出してきて、浅川マキの「MAKI」というアルバムを聴く。陰気で良い感じだ。雨の月曜日にぴったりだ。

 会社帰りに旭屋に寄って、「ウフ」「遊歩人」「草思」の最新号をもらう。それからジュンク堂まで行って、気になっていたのに買いそびれていた文庫本を2冊買った。
 堂島地下の喫茶店で、「遊歩人」の群ようこと鷺沢萠の対談と『初夏は自転車に乗って』という特集を読んだ。漱石の「自転車日記」と長田弘の「ゲッティング・アラウンド」という文章に、やっぱり自転車っていいよなあ、としみじみ感じ入ってしまった。今夜はデクスター・ゴードンを聴いて寝ようと思った。
 それから「草思」を熟読。今月の特集『食卓の「危機」』から『「人格障害」の冒険』、山田宏一の連載まで、隅から隅まで興味深い。
 第一ビルの一階にオープンしたワルツ堂に行ってみた。クラシックとジャズの専門店で、さすがの品揃えだ。これにワールドが加わってくれたら完璧なんだけど。
 レシピエで紅茶を買って、バスで家へ帰る。

 車内では「巴里芸術家放浪記」を読んでいたのだが、「それはそうと奥さんとこの娘さん、帰ってきてはるってホンマ?」「そうやねん(困ったふうに)、これで2回目やで」「もう別れはったん」「ちょっともめてたけどこないだ正式に別れましてん。結婚式でも大分要りましてんで(たぶん金のことと思われる)、腹立つわ」「なんでやのん、縁がないねんやろか」「縁もクソもありますかいな、あの娘はホンマにどうしようもない子ですねん、(声をひそめて)もう新しいのをつくってますのやで」(バシッと隣の奥さんの肩を叩く音)「ええっ、ホンマに!どんな人」「それが何やらいう水商売のけったいな男でなあ、毎晩毎晩…、いやすんまへん、もう降りなあかんわ、ほな奥さんまた来週」「はあ、さいなら」という、後席のおばさん2人組のひそひそ声での会話に引き込まれ、全く集中できなんだ。これからええとこやったのに、降りるなよ。

 夜は、近鉄の鈴木コーチの訃報にショックを受け、早々に寝る。

・購入物:カルコ「巴里芸術家放浪記」(講談社文芸文庫)
     ヴァレリー「ムッシュー・テスト」(岩波文庫)

・朝食:バケット、プレーンオムレツ、グレープフルーツ、珈琲
 昼食:サラダ冷麺
 夕食:チンジャオロース(みたいなもの)、トマトとベビーリーフとキュウリに塩と黒胡椒とオリーブオイルかけたもの、エノキダケと豆腐の味噌汁、卯の花の煮物、ちりめん山椒、麦酒、ごはん


2004年05月16日(日) 日曜

 午前10時起床。モーニングショウで「ゲームの規則」を観に行くつもりだったのに、昨夜の夜更かしのせいで寝坊してしまった。一日の計画丸つぶれだ。くそー、でも終わったことはもういい、速やかに忘れる。
 お腹が空いたので朝ご飯のオカズをいろいろ作る。玉ねぎの味噌汁は味噌が残り少なくなっていたせいで、刑務所で出されるような薄味になって失敗だった。刑務所にはまだ入ったことがないけれど、たぶんこんな味の味噌汁を食べさせられるんだろうと思う。
 
 町内会長より電話あり。集めた町内会費を持ってくるよう催促される。こないだから言われていたのだが、つい面倒くさくて延び延びになっていたのだ。
 買物のついでに出かける。昨夜からずっと雨がザブザブ降っていて、少し歩いただけでも足元がずいぶんぬれた。
 会長の家に行ったのは初めてだったが、えらく立派な豪邸であった。庭には大きくて鬼みたいな形相の犬がおり、ギャンギャンと吠え立てられた。見事な番犬である。しかし拙者決して怪しいものではないのだがなあ、だってお金を持ってきたんだよ。誠に心外である。
 その後、スーパーに寄って食材を調達して帰宅。本日の外出はこれだけで、後は家でゴロゴロしていた。

 その他、行ったこと。
 掃除機かけと拭き掃除。それと料理。ロールキャベツなどというわたくしにしてはわりと凝ったものを作った。各所でもらってきたPR誌、フリーペーパー、チラシ類などの整理。我が家は実に紙だらけだ。どう整理していいかわからなくなって途中でやめた。それから積読本の中から車谷長吉の「武蔵丸」と「ゴーリキー短編集」を読了して、マニキュアを塗ってから寝た。
 ゴーリキー好きだ。ロシアの作家は大抵好きだが、今日はゴーリキーを特別に好きだと思った。わお!、と思ったページに付箋をつけながら読んだ。次は「追憶」を読むとしよう。

・購入物:なし

・朝食:ごはん、卯の花の煮物、ちりめん山椒、アスパラガスのサラダ、玉ねぎの味噌汁、塩昆布
 昼食:ぬき
 夕食:ロールキャベツ、たたきキュウリ、ニンジンサラダ、ガーリックトースト、麦酒


2004年05月15日(土) 積読

 午前7時起床。ラジオを聴きながら、朝ご飯を食べる。朝のうちは休むつもりでいたけれど、やはり少し仕事を片づけておいたほうがいいような気がして、午後から会社へ行った。 

 ひとり、ほそぼそと働く。いろいろ問題が山積していて憂鬱なこと極まりないけれど、出来る限り明るく振る舞おうと思っている。振りだけでもいいから、陽気にしていよう。私から明るさを取ったら、何にも残らないからな。本当に何にも残らないわ、ちょっと愕然とするくらいに。

 夕方頃、会社を出て梅田の地下をぶらぶら。成城石井でゴマ油を買って、第3ビルの古本屋さんで本を2冊購入。それぞれ100円也。「馬喰の果て」は上林暁の解説目当てで買った。

 夜になって雨が降る。ここのところ雨の日が多い。テレビをつけたら「トゥルーライズ」をやっていた。またこれか。ついこないだもやってたように思うけど。何度観ても(って一回観ただけだが)退屈でアホらしい映画だ。呆れるばかり。10時から「ETVスペシャル」を観た後寝るまでずっと、高田渡のCDを聞いていた。

 途中まで読んで放り出している本を集めてみたところ10冊くらいになった。これではいかんなあ、と思いつつ、まず「追憶の作家たち」を読了した。埴谷雄高と島尾敏雄、それから日野啓三の章が哀切さに満ちていてよかった。島尾敏雄は「尼僧ヨアンナ」が好きで数回観ていたというエピソードは、ああそうか、そうだろうなあ、きっと好きだろうなあ、と大きく頷けるものがあった。
 それにしてもよくこれだけ男前の作家を揃えたなあ。感心。

・購入物:野坂昭如「マリリン・モンロー・ノー・リターン」(文春文庫)
     伊藤整「馬喰の果て」(新潮文庫)  いずれも古書

・朝食:ベーコンチーズトースト、プレーンオムレツ、珈琲
 昼食:おにぎり2個(梅とカツオ)
 夕食:おろしトンカツ、春キャベツとピーマンのサラダ、トマト、タコとキュウリの酢の物、麦酒、ごはん


2004年05月14日(金) 艱難

 午前6時起床。爽やかな陽気ゆえ洗濯などして、ニンニクとバジルを入れたトマトソースを作る。旨し。

 仕事。トラブル多し。よくこれだけ次から次へと問題が起こるなあ、たいしたもんだ。感心している場合でもないのだが、この期におよんでもうバタバタしてもしょうがない。成るように成るだろう。もし成るように成らなければ、「成るように成らなかった」という形で、やっぱりなんとか成るだろう。
 と悟りをひらいたところで、今日は帰ることにする。

 タワーに寄って「レココレ」を買う。「永遠のモータウン」、早く観たいなあ。それからキコキコ自転車をこいで天神橋筋商店街まで行き、八百屋でキャベツと大葉、豆腐屋で青大豆の豆腐を買った。一丁300円。ちと高いな。でも世の中上には上があるもんで、店のおじさんに、これは美味しいでえ!、と勧められた豆腐は一丁1500円だった。1500円も出せばそりゃあ美味しかろう。将来、億万長者になったら食べてみよう。

 帰宅後、バレーボールを観る。「プリンセスメグ」などとまだ言ってるんだなあ、センスというものが全く感じられぬ。中田久美は解説をしていてもあいかわらず男前な人だと思う。

 夜は、小林カツ代の「実践料理のへそ!」と「暮しの手帖」を読んで、料理の研究。それから寝るまでは「ゴーリキー短編集」をゆるゆると読んだ。

・購入物:「レコードコレクターズ」6月号

・朝食:楽童の山食パン、トマトソースのオムレツ、ヨーグルト、珈琲
 昼食:外食、ベンガルカレーで(シーフードカレー)
 夕食:キャベツとモヤシの焼きそば、大葉をのせた冷奴、麦酒、焼きおにぎり半分


2004年05月13日(木) 雨降

 午後からドシャドシャと音を立てて雨が降った。すさまじい勢いだった。
 ちょうど打ち合わせに来ていたMさんが、いやあこの降り方ではちょっと帰れませんなあ少しここで雨宿りして行きます、などと言って、約1時間ほど居座られてしまい、その間に連休中に行ったという家族旅行での写真をいろいろ見せてもらった。Mさんの嫁も、その子どもたちも、みんなピースサインをしている。写真を撮るというと何故みんなこの格好をするのだろう。ピースをして写真におさまるのは実にダサい、と私は思う。それ以外は別にこれといった感慨もなく、へえ、と気持ちのこもっていない返事をしていたら、もうちょっと感動してよー、などと不満顔をされた。感動してよ、と言われてもなあ。こういう写真を見て感動するということがどういうことなのかよくわからない。

 雨は、夜になってからやっと小降りになった。
 テレビでやっていた「ジョーズ」を観た。幼少の頃観た時は、その後琵琶湖で泳ぐのも怖かった。それだけよく出来ていたということか。あらためて見てみると、なるほど鮫はヌイグルミだ。もうヌイグルミにしか見えない。しかしそれなりに怖いのは、やっぱり撮り方と音楽の効果かなあ。

 寝る前に花田清輝の「乱世今昔談」という本を偶然本棚に見つけてパラパラとめくっていたところ、織田作についてたいへん興味深いことが記してあるエッセイに遭遇し、夜中に大興奮であった。多分昔古本屋で買ってそのまま放ったらかしにしていたんだろうけれども、やっぱり何でも買っておくものだ。
 これからはちょっと身を入れて井原西鶴を読もうと思っているけれど、さてどうなることやら。
 
・購入物:なし

・朝食:カボチャとレーズンのパン、プレーンオムレツ、珈琲
 昼食:サラダ巻き4切れ、ワカメの味噌汁
 夕食:いわしのしょうが煮、さやいんげんの胡麻和え、ワンタンとネギのスープ、レタスとトマトのサラダ、麦酒、ごはん


2004年05月12日(水) 羨望

 終日、外出。会社の車にIちゃんを乗せて、ふたりで姫路近辺まで行く。仕事であるにはあるけれども、ちょっとしたドライブ気分だ。
 
 お昼ごはんは先方のおごり。田舎のカフェレストランみたいなところでいただく。みんなビールを頼んでいるのに、アナタは車だからダメね、などと言われて私だけウーロン茶を飲まされたのは蛇の生殺しであった。ビールの2杯や3杯や4杯くらい大丈夫だけどなあ、お茶と同じじゃないか、と思うけれど、まあそういう問題でもないか。人間涙をのんで諦めねばならぬこともあるのだ。くやしい。

 日の暮れかかる頃大阪に帰ってきた。今日はとにかく暑い一日であった。今からこれでは夏が思いやられる。
 
 夜は自宅でTが会社からもらってきた水羊羹を食べながらのんびり読書。ケーキなど洋菓子は苦手中の苦手だけれど、水羊羹くらいならまだ食べられる。
 
 近藤富枝の「田端文士村」を読んで、また芥川龍之介のあれこれについていろいろと考えさせられた。芥川は文学者に対して友情を押し売りするような付き合いかたをした。特に室生犀星と萩原朔太郎、佐藤春夫と谷崎潤一郎、宇野浩二と広津和郎など、他人の友情の中に臆面もなく割り込むような性癖を持っており、またこの時最も張り切って自分の親切を示した、というエピソードには、その複雑な内面の一端をみたような気がした。この眉目秀麗な天才的文学者の根底には、何ものかへの暗い嫉妬の影があるのかもしれない。
 「田端文士村」を読んだ後、本棚から芥川の本を引っ張り出してきて「田端人」や「田端日記」など、近藤富枝が文中に引用していた随筆を読んでみたりしているうち、いつの間にやら寝てしまった。
 
・購入物:なし

・朝食:トースト、リンゴ、ヨーグルト、珈琲
 昼食:豆腐ステーキ、ざる豆腐、豆腐サラダなど豆腐料理、ポテトのパリパリサラダ、蛸のカルパッチョ、ホタテのクリームソースなど
 夕食:鶏ナンコツの唐揚げ、塩とレモンをかけたレタスとキュウリとトマトのサラダ、コンニャクステーキ、中華風冷奴、キュウリの浅漬け、麦酒、ご飯


2004年05月11日(火) 散策

 午前6時半起床。風邪も随分ましになってきた様子で何よりである。今日はなんとか晴れそうなので、たまりにたまった洗濯物を干してでかける。

 どうにかこうにか仕事を終わらせてから、何となくふと思い立って難波方面へ行った。まず夜の法善寺でお参りをして、オダサクのことを少し考えてみたりする。その後、天地書房へ行ってみたら表のショウウィンドウに「織田作之助全集」が並べられてあった。大切に読んでくれる誰かに買ってもらえるといいと思う。
 天地書房では、田村俊子の文庫と田中小実昌訳のポケットミステリを買った。

 ゆるゆる千日前通りを歩いて、ジュンク堂へ。今日は料理本の前でいろいろ立ち読み。気になるレシピを頭の中に覚えこませる。どうせ分量も量らないし、本に書いてあるとおりには絶対作らないのだから大体の材料と出来上がり写真だけ見ておけばいいのだ。
 それから3階に上がって、10冊くらいの絵本を座り読み。夜のせいか絵本のコーナーにはもう子どもも親子連れもいなくて、実に快適だ。そんなこんなで今日はいつになく女の子っぽい本と戯れたわけであるが、実際に買った本はまあいつものごとくオジサン(オジイサンか?)が書いたものばかりなのだった。

 それからタワーへ移動して、6階のワールドとジャズのフロアで片っ端から試聴をする。カエターノ・ヴェローゾの新譜は、ブラジル盤とアメリカ盤では収録曲に若干の違いがあり、持っていないアメリカ盤を買うか否か十数分思い悩み、だんだんアホらしくなってきて買うのを止めた。頼むから私を悩ませるようなややこしいことをしてくれるなよ。
 シカラムータなど欲しいディスクもあったけれど、今日のところは全て見送り、さすがに疲れてきたので地下鉄に乗って家に帰った。

 帰宅して着替えていたらTが、阪神勝ったよ、と教えてくれたのでお祝いとしてビールなど数本飲み、茹でた空豆をムシムシと食べる。うまーい、勝利の美酒だ。勝利の美酒はシーズン中にあと何回飲めるかわからないんだから、飲めるうちに飲んでおこう。
 それから庄野潤三の「ピアノの音」を途中まで読む。究極のマンネリだ。だいたい同じことの繰り返しなんだけど、これはこれでいいのだ。繰り返さない毎日なんてあるか?日常はいつもマンネリだ。庄野潤三の文章を読んでいると丁寧に日々を暮らす大切さにいつも気づかされる。

・購入物:田村俊子「あきらめ・木乃伊の口紅」(岩波文庫)
     A.A.フェア「カラスは数をかぞえない」(ハヤカワポケットミステリ)ここまで古書
     内田百けん「百鬼園日記帖」(ちくま文庫)
     尾崎放哉「尾崎放哉随筆集」(講談社文芸文庫)
     庄野潤三「ピアノの音」(講談社文芸文庫)

・朝食:バターロール、ニラとしめじのスープ、珈琲、バナナ
 昼食:お弁当(ねぎ入り卵焼き、ちくわとピーマンのキンピラ風、たらこ、ごはん)
 夕食:外食、中央軒で(長崎チャンポン)
    


2004年05月10日(月) 空虚

 今日も雨だ。どこまでも暗い空。体調不良も手伝って、なかなか陰鬱な心持ちから抜け出せない一日であった。

 地下鉄で出勤。車内では「新潮」の小島信夫の小説(たぶん小説だと思う)を読んだ。今の小島信夫の頭の中は、どうやら保坂和志のことでいっぱいのようだ。それから、またチェーホフの小説をたくさん読みたくなってきた。坪内祐三と谷沢永一の対談も読む。これは対談というよりも、自分が知っていることの言い合い合戦のような雰囲気だった、まあいいんだけど。

 終日、会社にて労働する。不愉快なこと多々あり。腹が立つとか、落ち込むとかいうことはあまりなくて、多くの人のあまりの利己主義ぶりにただ唖然とするばかりだ。感情を抑えてとりあえずやり過ごすことにすっかり慣れてしまったけれど、それがいいことなのか悪いことなのかわからない。
 帰り道、気持ちを回復するために本屋さんへ行こうとしたら、梅田新道の交差点の西側で知人が信号待ちをしているのを見かけて、咄嗟に回れ右をして逃げた。逃げることもないんだが、足が勝手に動いてしまったのだ。今日はもう誰とも話したくなかった。人の話を聞くのも嫌だったし、笑うのも怒るのも嫌だった。本屋さんはあきらめて、そのままバスに乗った。
 バスでは高校生のカップルの隣に座った。女の子が男の子に向かってしきりに、なあなんか面白い話してよ、なんでもいいから面白い話してよ、とせがんでいた。男の子は少し困りながら何か話し始めたけれど、その内容までは聞こえてこなかった。今もし誰かに、面白い話してよ、と言われたとしても、私には話せることが何にもないと思った。それはなんだかとても寂しいことのように感じた。

 夜。晩ご飯を食べた後、ようやく雨が上がったようなので洗濯をした。それから寝るまではロー・ボルジェスの「ア・ヴィア・ラクテア」というアルバムを聴いて、引き続き「新潮」を読んだ。ロー・ボルジェスを聴くと、ちと元気が出てきたかもしれない、と思う。明日こそ晴れてほしいなあ。

・購入物:なし

・朝食:トースト、ブルーベリージャム、ヨーグルト、珈琲
 昼食:お弁当(塩鮭、小松菜のおひたし、ミニトマト、塩昆布、ごはん)
 夕食:豚ひき肉とニンニクの芽のピリカラ炒め、ニラとしめじの中華スープ、水菜のゴマ和え、麦酒、ごはん


2004年05月09日(日) 風邪

 しとしと雨降り。ちょっと蒸し暑くてまるで梅雨みたい。
 昨夜から喉が痛くて少し熱もありけだるくて、何をする気も起こらないので朝からボーッとテレビを見る。
 「新・日曜美術館」。今日は秋山庄太郎の特集。淡島千影も出ている。秋山庄太郎といえば今は『正論』の表紙だ。『正論』はいつも本屋で眺めたことがあるだけで中味は読んだことがないけれど、表紙の言葉の羅列を見るだけでもうお腹がいっぱいなる雑誌だと思う。
 チャンネルを民放に変えたところ、氷川きよしが子どもと一緒に何やらわけのわからん歌を歌っているコマーシャルを何度か観た。顔はニコニコ笑っているけれど腹の中では一体何を考えているのかわからんなあ、という人がたまにいるけれど、私にとって氷川きよしはその典型だ。この人は歳をとったら、「愛想のいい川端康成」みたいになるだろう。

 テレビを見ていたらいよいよ頭がボーッとしてきたので、昼すぎまで眠る。昼ご飯はTがモスバーガーに行って調達してきてくれた。ファーストフードのハンバーガーを食べるのはずいぶん久しぶりだけれど、たまに食べるとなんだかしみじみ美味しいなあ。でもモスバーガーはファーストフードとは言わないのかな。

 昼寝をしたらかなり復活したので、午後からは掃除や整理整頓など家事仕事に勤しみ、夜には肴をいくつか作って酒盛りをした。風邪の時に酒を飲むべきか否かはよくわからないが、少なくとも良い気持ちにはなった。
 晩ご飯の後、DVDで「河内山宗峻」を観た。15歳の原節子が出ている。原節子は確かに美しいのだけれど、上手いのか下手なのかすぐには判断のつき難い一種独特の演技をする。哀しい場面で微笑む顔がまたイヤに鬼気迫るものがあって、怖い女優さんだと思う。この人も何を考えているのかようわからん人であるなあ。
 土曜日の日記を書いて、寝た。

・購入物:なし

・朝食:珈琲
 昼食:モスバーガー(フレッシュバーガー、グリーンサラダ)珈琲は自分で淹れた
 夕食:牛蒡と人参のキンピラ、鶏のササミを酒蒸ししてレタス、キュウリ、キャベツの千切りと和えたサラダ、冷奴、もずく、バターピーナッツ、麦酒


2004年05月08日(土) 心痛

 朝、バタバタと掃除機をかけていた時、母から電話あり。明日は母の日ね、などと言う。しまった、そのようなことはキレイさっぱり忘れていた。ああなんかそうらしいねえ、とごまかしておく。
 母は、今日と明日は友人のなんとかかんとかさんと温泉に行くことになってて留守にするので何か計画してくれてたら悪いと思って電話をしたのだ、と嬉しそうに言った。どこまでも嫌味な人だ。どこへでも行ってきたらいいとは思うが、毎週毎週よくそこまで遊べるものだと感心する。

 午後からは絵本の会に行く。恐竜の絵本などを読む。恐竜が出てくるとみんな大興奮する。サッと目に光が入るのがわかる。子どもたちは恐竜が好きだなあ。でかくて強そうで得体のしれないところが好きなのだろうか。

 帰りに閉店してしまった松坂屋のジュンク堂へ行って、100周年記念号だというので久しぶりに「新潮」を買った。谷町筋沿いのドトールに入って絲山秋子「袋小路の男」を読んだ。
 女性が10年以上も続けている片想いの話。本当に「袋小路」なのは「男」ではなくて二人の関係のことだ。10年間キスのひとつもせず気持ちを確認することすら出来ないまま、しかし奇妙なバランスを保って淡々と続くふたりのつき合いが丁寧に描かれてて、とてもよい作品だと思った。
 特に語り手の女性が、この「袋小路」の関係を絶って男を諦めるためには、どこにでもいるいやらしく生々しい男だと思い切るためには、もうセックスするしかないと考えて『最後に一度だけでいいから一緒に寝てください』とメールするところは、何ともかんとも切実だ。いっそのこと嫌いになりたい、嫌いになるまでいかなくてもいいからせめて、もうどうでもいいなこんな奴、くらいまでは思えるようになりたい、しかしその境地に至るまでのこの遠き道のりよ。
 そんなこんなをつらつらと思い出して、何かと心の痛む小説であった。

・購入物:「新潮」6月号(新潮社)

・朝食:楽童のゴマプチパン、りんご、カフェオレ
 昼食:ぬき
 夕食:豚ヒレに片栗粉をまぶして焼き、酒とみりんとしょうゆとニンニクを一煮立ちさせたところに梅干しを入れたタレをかけたもの。上に大葉をふりかけて食べる(料理名はえーと、「豚ヒレ肉の梅ソース」?)、キャベツとトマトのサラダ、大根とグリンピースの煮物、塩昆布、麦酒、ごはん


2004年05月07日(金) 買物

 快晴。今日もお仕事に行く。
 帰り際、Iちゃんから飲みに誘われるも、総勢8人くらいの飲み会になると聞いて嫌気がさし、おまけにIちゃんが、みんなで盛り上がりましょうよ!、なんて言うから余計イヤになって断った。私は「みんなで」「盛り上がる」のが何より苦手なのだ。

 その後ぶらぶらとかっぱ横町の古書街をのぞいてみた。たまたま何となく足が向いたのだったが、ちょうど今日は第一金曜日で店頭ワゴンセールの日に当たっていた。まあよくぞ茶屋町に足が向いたもんだ、古本の神様ありがとう。
 と感謝したもののあまり欲しい本がなくて、これを見たら帰ろ、とのぞいた100円ワゴンの中に「面白半分」を数冊発見した。とりあえず全部買い占めることにする。野坂昭如編集分が2冊、金子光晴編集分が3冊、田辺聖子編集分が2冊で、計7冊。それから同じ「レコードコレクターズ」を3冊確保して、これだけ買っても税込み1000円。古本って素晴らしい。

 ちょっと喫茶店に寄り道して買ってきた「面白半分」をパラパラひもとく。ざっと見たところ、金子光晴の編集号が一番魅力的なように思う。滝田ゆうの表紙絵もステキだ!ページをくっていたら思わず時間を忘れてしまった、慌てて帰宅。
 
 帰って晩ご飯の支度。ふきの下ごしらえをする。ふきはあんまり好きじゃないのだが(どこが美味しいのかわからない)、宅配の野菜セットに入ってくるから仕方なく食べている。
 ふきを板ずりしていたら宅配便が届いた。中身は先日アマゾンで注文した山中貞雄のDVDで「百萬両の壺」と「河内山宗峻」の2本組。しばし感涙にむせんだ後、夜中に早速「百萬両の壺」を観た。
 確かスクリーンで2度ほど観ているはずなのだが、何度みても新鮮だ。大笑いして楽しんだ後で、映画の細部にあふれる豊かさと温かさにいつも感動する。そして幻の17秒、これまで欠落していた丹下左膳の鋭い剣さばきのシーンは、陰影のあるシャープな画面で実にカッコいい。
 それにしても大河内傳次郎の顔のデカさは尋常でないなあ。

・購入物:DVD-BOX「山中貞雄日活作品集」(日活株式会社)
     「面白半分」vol8・10・34・38・39・70・74
     「レコードコレクターズ」13・14・15号
     (すべて古書。当たり前だけど)

・朝食:楽童のプチパン、ウィンナー、ふかしジャガイモ、珈琲
 昼食:お弁当(葉ごぼうのキンピラ、煮たまご、プチトマト、ごはん)
 夕食:豚の冷しゃぶ、ふきとたけのこの炊き合わせ、葉ごぼうのキンピラ、冷奴、ふきと厚揚げの味噌汁、麦酒、ごはん


2004年05月06日(木) 日常

 一週間ぶりに会社へ行く。
 さあ今日からまた働きましょう、働こう、働くんだが、その前にちょっと新聞でも読みましょう、と思い、読売新聞を読む。この連休中に渡辺淳一の連載が最終回を迎えていた。全部通して読んでいたわけではないけれど、近年稀にみるメチャメチャな小説であった。特にこの終わりかたはひどすぎる、開いた口がふさがらぬわ。

 少しだけ残業して帰宅。町内会費をもらいに行く。先日は留守だった一人暮らしのおばあちゃんのところへ行ってみる。おばあちゃんは、ご苦労さんやねえ、とがま口からお金を出しながら、医者へ行ったり買物に行ったりして自分も留守が多いけれど一年よろしく頼みます、というようなことを言ってからちょっと声をひそめて「私ね、もう来年で90歳よ」、ここでもう少し声を低くして、「主人は戦争で亡くしてますねん」、と言った。
 あ長くなる、これは話が長くなる、と思ったがもう遅かった、そこから約30分ほどおばあさんの身の上話を聞く。日は暮れてくる、お腹は空いてくる、立ってるのがしんどくなってくる、くるくるくる、でも帰れない。話の内容が内容だけに切り上げるのが難しく、かなり引っ張られてしまった。町内会費を集めるのは半年に1回なので、おばあさんの話の続きはまた半年後に聞こう。今日のところは30分で勘弁してもらう。

 夜は棚からレコードをガサゴソと持ち出してきて、本を読みながらとっかえひっかえ聴いた。 

・購入物:なし

・朝食:お粥、梅干、塩昆布、豆腐と長ネギと揚げの味噌汁
 昼食:ベーコンサンドパン、グリーンサラダ、珈琲
 夕食:鶏手羽元と玉ねぎの煮込み、ネギとカツオと海苔としょうがをのせた冷奴、葉ごぼうのキンピラ、スナックエンドウの塩茹で、麦酒、ご飯


2004年05月05日(水) 休日6

 こどもの日。天気は晴れたり曇ったり。引き続き家でぼんやりする。
 
 本日主に行ったこと。
 洗濯。お風呂とトイレの掃除。鍋磨きと包丁研ぎ。お料理いろいろ。
 スーパーへ食料の買い出しに行ったついでに図書館にも寄ったが閉まってた。和菓子屋さんでちまきを買ったが晩ご飯を食べ過ぎてお腹に入らなかった。買い物から帰ってきたら阪神がサヨナラ負けしていたのでガックリ落ち込んだ。でもすぐに忘れた。
 ビデオでヒッチコックの「見知らぬ乗客」とビリー・ワイルダー「深夜の告白」を観た。ビリー・ワイルダーは葉巻やマッチなど小道具を取り入れるのが本当に上手い。
 それから、柴田翔「されどわれらが日々」を読了して「タルコフスキー日記」とソロー「森の生活」をところどころ読んだ。

 「タルコフスキー日記」より。
 『自分が正しく生きていないということをいつも意識している。何をしてもすべて嘘だ。良い行いをしたいと思うときでさえ、自分を良く見せるためにそうしているみたいなのだ。』
 タルコフスキーの日記を読んでいると、ハッとする文章にいつもめぐりあう。
 
 今日で連休も終わり。明日からまたはりきってバリバリ働くぞう、と、思ってもいないことをちょっと書いてみた。

・購入物:なし

・朝食:トースト、オムレツ、ソーセージ、グレープフルーツ、珈琲
 昼食:きつねうどん(卵いり)
 夕食:ハマチのお刺身、山ふきの土佐煮、トマトの輪切りに大葉と塩とオリーブオイルをかけたサラダ、豆腐と揚げと長ネギの味噌汁、麦酒、ごはん


2004年05月04日(火) 休日5

 雨。一日家に引きこもってぼんやりしていた。まあいつもぼんやりとしているんだけど、それに二、三重の輪をかけてただひたすらぼんやりしていた。

 普段はあんまりテレビは観ないのだが、今日は珍しくUAの「ドレミノテレビ」を最初から最後まで観た。菊池成孔がアレンジした「一週間」が格好良くてびっくりした。
 『日曜日は市場へ出かけ糸と麻を買ってきた月曜日はお風呂をたいて火曜日はお風呂に入る水曜日にアナタと会って木曜日に送って行った金曜日はいとまきもせず土曜日はおしゃべりばかり恋人よこれがわたしの一週間の仕事です』
 あらためて聞いてみるとなんていい唄だろう。日々はいつも、何となく過ぎる。何となく生きて、何となく死ぬのだ。

 それから「28歳社長夫人マダムの豪邸訪問」とかいうのも観た。目黒にある白亜の大豪邸で、お風呂が三つもある。実に酔狂だ。風呂は一つでいいと思うけど。掃除が一苦労だし。昨日から掃除の心配ばっかりしているが。マダムは子育ての合間にジムやヨガ、フレンチのお料理教室に通っているんだって。よっぽどヒマなんだろう。お金持ちもいろいろ大変なんだな。

 テレビの他には、掃除と料理をした。雨のため洗濯は明日に見送り。それから落語を聞きながら本棚の整理をした。今まで何とかごまかしてきたが、もうどれをどのように考えても本棚に本が収まりきらない。途中で断念して、寝ころんで読書にいそしんだ。青山光二の「われらが風狂の師」を途中まで。「風狂の師」とは、京都三高の名物教授で哲学者でありドイツ語も教える土岐数馬のこと。ううむ、これまた奇妙奇天烈な人だ、読んでいるとアタマがクラクラしてきた。
 雨は、夜中までしとしと降っていた。

・購入物:なし

・朝食:レーズントースト、ルッコラとベビーリーフとトマトのサラダ、珈琲、りんご、ヨーグルト
 昼食:ぬき
 夕食:豚肉で茹でたインゲンと人参をクルクルと巻いて酒と醤油と砂糖をからめて焼いたやつ、中華風冷奴、ジャガイモを茹でて塩と粗挽きこしょうとレモンとオリーブオイルをかけたもの、麦酒、ごはん


2004年05月03日(月) 休日4

 昨日に引き続き、今日も京都へ。京都国立博物館に行くため、お昼前に七条駅で母と待ち合わせた。
 甘春堂で三口くらいで食べられちゃうお上品な茶そばをすすりながら、母の近況報告などを聞く。土曜日はデパートに買い物へ、昨日は奈良に遊びに行ってきたという母は、道も電車も混んでるしどこへ行っても人だらけでホントに疲れるねえ、と不平タラタラだったけれど、自分もその混雑の一構成員であることにはどうやら気づいていないようだった。私は黙ってフンフンと調子を合わせておく。

 腹がくちたら、博物館の「南禅寺展」へ。母も私も南禅寺についてなーんにも知らない。だけど招待券があるのでとりあえず入ってみる。
 南禅寺に納められた数々の水墨画、詩画軸、禅僧の肖像画、それから起草文や諸法度などの古文書類、ありがたい坊さんの墨跡や袈裟などを、ボーッと眺めはしたけれども、何が何やらさっぱりわからず。円山応挙や長谷川等伯の水墨画など、へー上手いこと描いてあるわなあ、とは思うけれどもそれ以上の感慨はない。どうもこういうものに対する私の感性は無いに等しいようだった。
 母に、どうだった、と聞くと、まあ人がすくなくてよかったわ、とのこと、空いてりゃいいのか。

 せっかくだから三十三間堂も見ていこう、と母が言うので、行ってみる。前は何度も通っていても中に入るのは初めてだ。
 千体の観音立像がズラリと並ぶ姿はさすがに壮観で、その一体一体の顔姿が微妙に違うのが全くすごい。よくぞここまで微細な仕事ができたものだ。お線香をあげて拝む。つらつらと考えてみるに、こんな重要文化財だらけのお堂の掃除は並大抵の苦労ではないと思う。帰り際に観音さまの足下をみたら随分と埃がたまっておったが、一体誰がいつ掃除をするのだろう。
 観光客にせっせと説明していたタクシー運転手の話を盗み聞きしたところによると、千体のうち三体は東京と奈良と京都の博物館に出張中らしい。出張というからにはいつか帰って来られるのだろうか。それにしても商売とはいえ、タクシー運転手の博学ぶりには恐れ入った。こんな観光地ではただ目的地に連れていくというだけでは運転手はつとまらないんだなあ。

 いったん実家に帰って晩ご飯をご馳走になってから、大阪に帰る。
 夜は、実家でもらってきた「夜のお菓子うなぎパイ」を食べながら、いろいろと読書する。なぜうなぎパイは夜のお菓子というのだろう。

・購入物:なし

・朝食:トースト、珈琲、バナナ
 昼食:外食、甘春堂(茶そば、白玉ぜんざい)
 夕食:実家で、すきやき、水菜のサラダ、タケノコの煮物、麦酒、ごはん


2004年05月02日(日) 休日3

 京阪電車で京都に行く。三条で降りて岡崎までぶらぶら散歩。午前中でも日差しがけっこうきつくて、日傘を持って出てくればよかったと早くも後悔した。日陰を選びながら勧業会館まで歩いた。

 勧業会館での古本市。ここで例によって例のごとく古い本にまみれること約2時間、本日の収穫は計6冊で2,000円とちょっと支払った。これでも葛西善蔵や広津和郎を何冊か諦めたんだけど、予算をオーバーしてしまったなあ(予算は2,000円だった)。
 美術館で絵でも見ていこうかと思ったが、古本探しに体力を使い果たして絵どころではなくなり、本を抱えて西へと向かい鴨川まで歩く。川縁にシートをひいて、今朝作ってきたサンドイッチをパクパク食べてビールを飲んだ。青空の下で飲むビールはなんと美味しいんでしょう。ビールはどこで飲んでも美味しいんだが、まあ気持ちの問題だ。食べ終わったら寝ころんで買ってきた本を読み、眠たくなったら眠り、また起きて本を読み、また眠り、それをバカみたいにくり返しているうちに午後2時をまわったのでシートをたたんでまた歩き始めた。お昼からは少し雲が出てきた。明日は雨になるのかもしれない。

 久しぶりに河原町より西側の四条通を歩いてみる。人の多さは相変わらずで特に錦通りの混み合いぶりには辟易した。オダサクも通ったフランソワで珈琲を飲みたかったけれど、怖い顔のおばちゃん店員が出てきて、今あいにく満席です、と言うので諦めて烏丸から御池をまわってまた三条に帰ってきた。
 この界隈を歩いていると浪人していた頃を思い出していろいろと懐かしい。あれからいろんなことが変わってしまったのに、京都には他の思い出もあるはずなのに、歩いていて胸に浮かぶのは何故か浪人時代のことばかりなのだ。あの頃はこの街のことを何でも知っているような気がしていた、自分の街のように感じていた。でも今はもう知っているとは言えなくて、私も街もあの頃を離れてしまったことを実感する。それは案外寂しいことでもなくて、時間が経つとはこういうことなんだ、と思う。
 
 三月書房で小沢書店の古山高麗雄を半額で購入。レジのところに一冊だけ置いてあった編集工房ノアの「海鳴り」の最新号を物欲しそうに眺めていたら、店のおじさんがどうぞと言ってくれたので喜んでもらって帰った。

・購入物:「ゴーリキー短編集」(岩波文庫)
     日影丈吉「名探偵WHO'S WHO」(中公文庫)
     古山高麗雄「片乞い紀行」(中公文庫)
     阿部昭「エッセーの楽しみ」(岩波書店)
     「長谷川四郎全集・第一巻」(晶文社)
     スタジオボイス1991年8月号 特集:昭和の肉体(INFUS) ここまで古書
     古山高麗雄「袖すりあうも」(小沢書店)
    
・朝食:バナナ、リンゴ、ヨーグルト、珈琲
 昼食:お弁当(ハムとチーズ、トマトとキュウリ、ツナとキュウリのサンドイッチ、リンゴ、二条大橋の近くで買ったコロッケ、麦酒)
 夕食:梅わかめうどん
 


2004年05月01日(土) 休日2

 午前中にサササと掃除と洗濯をすませてから一人でお出かけ。今日は風も爽やか、すこぶるよい天気で、朝8時頃に干した洗濯物がお昼すぎにはもう乾いた。

 旭屋に行って「一冊の本」「図書」「未来」をもらう。それからOS劇場で「スクール・オブ・ロック」を観た。
 上映時間の30分前くらいに行ったのに、映画の日のせいかもうたくさんの人が並んでいた。列に並ぶのは大嫌いで出来れば並ばぬように生きていきたいと常々願ってはいるけれど、この際仕方がないので大人しく並ぶ。その間に「一冊の本」を全部読んでしまった。金井美恵子の連載が再開されたのは何より喜ばしい。
 「スクール・オブ・ロック」は、予告編だけ観たら話の筋が全部わかってしまうような単純な映画だけど、主演のジャック・ブラックが何か変な人で好きなので観に行った。ラストの展開はもうちょっと何とかならんかったのかと思うけど、ジャック・ブラックがロックスピリットを語る場面でちょっと感動してしまった。確かにロックは生き方だ。

 その後、梅田ブルクへ移動してレイトショウで観るつもりの「キル・ビルvol.2」の座席券を買いに行った。係の女の子が、席はたんまり空いているからどこでもお前の好きなところを選べ、と言うので前方の下手の席を指定してから、時間になるまで近くのタリーズに籠もって延々と「吾輩は猫である」を読んでいた。やっぱり迷亭さんが一番好きだ。迷亭さんは何度読んでも何よって生計を立てているのかよくわからん人だけど、そういうところもたいへん好きだ。

 「キル・ビル」について。全体としてはvol.1よりvol.2の方がキュッと締まっていて出来はいいんじゃないかと思うけど、ちょっとストーリーを追いすぎているというか、説明しすぎの感あり。辻褄なんか別にあってなくてもいいのに。まあバカバカしくはあるけれど、タランティーノがキーキーと喜んですごく楽しんで作った作品だということはよくわかる。作り手の愛がこもっているものは観ていて楽しい。
 マイケル・マドセンがミキサーでマルガリータを作るシーンと、デヴィッド・キャラダインが金魚の死因について喋りながらサンドイッチを作るシーンが好き。早速真似して、明日サンドイッチを作ってみよう。
 映画が終わったのは午前0時前。自転車で帰る。 

・購入物:なし

・朝食:トースト、目玉焼き、人参サラダ、珈琲、ヨーグルト
 昼食:外食、ごはん屋(煮魚、千切大根の煮物、冷奴、いんげんのゴマ和え、ごはん、味噌汁)
 夕食:ベーコンフランス(フランスパンにベーコンとチーズが挟んであるやつ)、麦酒 映画を観ながら食べた


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