昨日・今日・明日
壱カ月昨日明日


2003年06月30日(月) マリ・クレールのこと

 あーあ、新聞連載の奥泉光「新地底旅行」終わっちゃった。毎日楽しみにしてきたが、今日で愛する丙三郎さんともお別れ、さみしいわ。でも続編があるような雰囲気なので、希望を失わずにいよう。

 本日届いた野菜、チンゲンサイと小松菜から、また青や黒の虫が2,3匹でてきた。世の中には虫のいる野菜を食べるのがステイタス、という人もいるそうであるが、虫とのご対面にはいまだに慣れない。
 青虫は、しばらくテーブルの上でゴニョゴニョ動いていたが、目を話した隙にどこかへ消えた。どこへ行ってしまったのかしら。

 夜は、古本屋の店先にばさっと置いてあったのを100円で買ってきた「マリ・クレール」を読む。1990年12月号、特集は恋文物語。
 この頃の「マリ・クレール」、すごいなあ。島尾敏雄と島尾ミホの愛の往復書簡(わお!)や池内紀と丸谷才一の対談、藤原新也の写真、武田百合子、金井美恵子、海野弘、荒俣宏、中条省平の連載、など文芸誌の「海」がそのまま女性誌になったみたいだ。
 私が「マリ・クレール」を買って読んでいたのはあと3年くらい後のことで、ここまでの執筆陣ではなかった記憶がある。いったいどんな人が読んでいたのだろう。
 島尾夫妻の往復書簡、濃いなあ。カルピスを原液でゴクゴク飲んだ気分だよ。

・「マリ・クレール」(1990年12月号)古書

・朝食:チーズトースト、珈琲
 昼食:ざるそば
 夕食:豚肉と小松菜の炒め物、チンゲンサイの煮びたし、冷奴、ずんだ豆のかまぼこ、ご飯
 


2003年06月29日(日) 京都で写真をみる

 京都へ行く。なんとか晴れてよかったよかった。

 まず京都伊勢丹の美術館「えき」KYOTOで、「マン・レイ写真展」を観る。今日が最終日のせいか入場者も多い。
 ソラリゼーションとかレイヨグラフとか、ふむふむと思うけれども私にはピンとこず、というかわからず、一番よかったのはスナップのような風景写真だった。それとラテン系の「ジュリエット」。図録を購入した。

 バスで岡崎まで移動。京都国立近代美術館で「東松照明の写真」を観る。今回のテーマは「沖縄マンダラ」。5月に来たときは貸し切り状態だったのに、特別展の影響かご年輩の方々でいっぱい。少々驚く。
 部屋のちょうど真ん中に立って、ぐるっと展示してある写真を見渡すと、際だつのが青と赤。沖縄の青と赤は鮮烈だ。それにおじいちゃん、おばあちゃんのパワーみなぎる眼差し。
 私も沖縄を一人でぶらついた時、写真をバチバチ撮ったんだけど、ロクなもんじゃなかったなあ。まだまだ修行が足りない。

 それから、古道具のお店をのぞいて300円の小皿を2枚買ったりしながら、祇園まで歩き、何必館で「渡辺兼人写真展」を観る。すばらしく良かった。
 「孤島」と題された5枚の写真の、このどうしようもない寂しさをどう表現していいかわからない。しかし、誰にだって世界がこのように見える瞬間があるはずだ。それをくっきり切り取れる、この写真家の力は何だろう。
 何必館という美術館もとても良い感じで、それが『何もないということがある』と言われる渡辺兼人の写真とよくあっていた。

 充実の写真展数珠つなぎ。どれもこれも面白かった。ぶらぶら散歩して、夕飯を食べて帰る。
 夕方、三月書房に行ったら蚊に刺された。かゆいよう。あの本屋はいかにも蚊がいそうな本屋だ。もちろんそういうところも大好き。

・購入物:「マン・レイ写真展」図録
     小皿2枚
     花柄プリントブラウス

・朝、昼食:(電車の中で)うなきゅう巻
 夕食:外食(ハンバーグ、エビフライ、スープ、サラダ、珈琲)
 


2003年06月28日(土) 「エルミタージュ幻想」

 雨です。陰鬱。
 朝から、いただきものの「笹餅」(笹に餅がくるんである。パンダが泣いて喜びそうな餅)をたらふく食べたもんだから、どうも胃が重たく、やる気なくごろごろしていた。

 が、せっかくの休日だこうしてはいられないと、午後から気力をふりしぼり、一人でおでかけ。心斎橋に「エルミタージュ幻想」を観に行く。
 何がそんなに良かったのか自分でもよくわからんのだけど、ものすごく良かった。もしあと3時間あっても、じっと観てたと思うなあ。
 「90分ワンカット」というのがこの映画の一番の話題なのだろうけど、「歴史時間旅行」みたいなもので、部屋ごとに時代が分断されてしまうから、ワンカットを本当に体感できるのは舞踏会のシーンからラストまでだろうか。これがまた素晴らしいんだけども。
 一カ所、思わず笑ってしまうところがあった。誰も笑わなかったけど、あんなとこで笑うのは私だけなんだろうか。

 「明治の文学・広津柳浪」、今日で残りの3編を読んでしまった。
 中でも「変目伝」は、ほうほう、あらどうなるの、えっひどい、ええっそんなことしちゃうのかあ、ともう引き込まれる引き込まれる、あやうく電車を乗り過ごすところだった。「声に出して読むなんとかかんとか」という本があったけど、声に出して読むならこの「変目伝」をぜひどうぞ。リズム感抜群よ。
 広津柳浪、実に面白かったなあ。「エルミタージュ幻想」にしても、こんなものが読めたり観たりできるなら、人生そう捨てたもんでもない。

・購入物:なし

・朝食:卵焼き、冷奴、味噌汁、玄米ご飯、笹餅
 昼食:食べなかった
 夕食:野菜のあんかけうどん、とうもろこし、麦酒 

 


2003年06月27日(金) 「河内屋」と「雨」

 早々に仕事を片づけ、久しぶりに定時に会社を出る。午後からはヒマで、新聞を読んだり、いらない書類でメモ帳をつくったりしていた。やる気なし。

 阪神百貨店に、前から目をつけていたカバンをもう一度見に行く。この前もうちょっとで衝動買いしそうになったのだけど、私の中のもう一人の私が、似タヨウナノガ家ニゴロゴロシテルンジャナイノカ〜、と警告を発してきたので、とりあえずやめた。今日もう一度みて、あのカバンが初めて出会った時の輝きを失っていないようなら購入してもいい。1万5千円のカバンのことでいちいちうるさいけど、これは値段じゃないのだ、私の買い物哲学なのだ。それも大げさか。
 で、行ったらもう売れた後だった。お取り寄せいたしますよう、と店員は言ったが取り寄せてまでは要りません。一人相撲ってこういうことをいうのかしら。

 今日は広津柳浪の「河内屋」と「雨」を読んだ。
 登場人物の誰一人として幸せにならない小説。
 「河内屋」は一人の女性が亡くなることで、その周りの人々の運命が少しづつ狂いはじめていく話。「雨」は降り続く長雨と強欲な母親に苦しめられる、貧乏長屋の若夫婦の話。
 今日のような雨の夜にひとりで読んでいると、もう気が滅入って滅入って。でもその暗さ加減と文章、特に会話文の流麗さに病みつきになる。広津柳浪って多分、世間一般の幸せとか救いとか美談とか、全然信じてない。それがどうしたこれがほんとの人生だよ、と小説に書いて見せてくれているような気がする。

・購入物:なし

・朝食:チキンサンド、牛乳
 昼食:コーンサラダ、メロンパン、ヨーグルト
 夕食:いわしの煮付け、キュウリのゴマ和え、アスパラのサラダ、玉ねぎの味噌汁、玄米ご飯

 
 
 


2003年06月26日(木) おしまい

 山積みだった仕事の諸問題が、ここにきてようやく片付く兆しが見えはじめ、少し一段落。今日は仕事もヒマだったので早く切り上げ、梅田周辺をうろついて、本屋に寄って帰る。

 夜、マニキュアをペタペタぬっていると、5、6年ぶりくらいに古い友人から電話がある。電話をしながらマニキュアをぬるのは難しい。
 仕事のこと、ダンナのこと、新しい恋人のこと、離婚するかしないか、したらどうなるだろうか、云々。昔からそうだったけど、よくこれだけ自分のことばっかり話せるなあ、と感心してしまう。何のための電話だったのかいまいちよくわからない。近況報告か?
 最後に、そっちはどう、元気でやってる?と聞いてきたから、うん変わりないよ、とこたえて私の近況報告は終わる。きっと「元気でやってる私」のことには興味がないのだろう。
 関西へ行ったらまたお酒でも、と言って彼女は電話を切ったけど、多分もう会うことはない。会っても話すことがない。友達関係もいつかは終わるのだ。今日その終わりを見た。

 寝る前、Tの買ってきた「エンタクシー」2号を読む。この雑誌あってもなくてもどっちでもいいけど、あると読んでしまう。それが雑誌というものか。

・購入物:柳宗理「柳宗理エッセイ」(平凡社)
     「エンタクシー」2号
     
・朝食:チーズトースト、珈琲
 昼食:梅うどん、ヨーグルトドリンク
 夕食:肉じゃが、シシトウ炒め、冷奴、玄米ご飯

 


2003年06月25日(水) 映画を観に行けなかったので、そのかわりにしたこと

 ベルイマン映画祭の一本を観に行くつもりだったけど、仕事がおして間に合わなかった。予想はしてたけどやっぱりね。ことは思い通り運ばないもんだ。

 Tが休みだったので、ふたりで近所のラーメン屋に冷麺を食べに行く。近所をぶらっと散歩してから家に帰り、スルメイカをさっと焼いてマヨネーズを添えたものと、トマトを切って青しそとオリーブオイルと塩で和えたサラダを作り、麦酒を飲んだ。え、アンタ今冷麺食べてきたとこなんじゃないの、という天の声も聞こえたが、いいのです。ささやかな楽しみなんだから。

 昨日買った曽我部恵一のアルバムを聴く。一曲をのぞいて歌詞が載っていない。ナタリーワイズも歌詞は載ってはいたが、見えなかった。私は日本語でも英語でもなんでも、歌詞をみながら音楽を聴くということはほとんどしないので、これはこれでよいと思う。「何にも見ないで」聴くほうが、言葉が立ち上がってくる。

 それから川崎長太郎の「抹香町・路傍」を3分の2くらいまで読んだ。この中の「無題」という短編、すごい。普段私がぼんやり考えていることがぴたりと書いてある。この夏は「ふっつ・とみうら」のようなぶらり旅がしてみたいと思ったり。
 それにしてもなんでこう私小説が好きなのだろうか。自分でもなんだか不思議。

・購入物:「太陽」1971年6月号 特集:永井荷風(古書)

・朝食:梅かつお、枝豆、豆腐の味噌汁、玄米ご飯
 昼食:クロワッサン、ゆで卵、バナナ、ヨーグルト
 夕食:外食(冷麺、おにぎり)


 


2003年06月24日(火) 私はひねる人

 一晩寝たら風邪はウソのように治った。この回復の速さには自分でも恐れ入る。

 今日のお昼は打ち合わせを兼ねてホテルで会食。フランス料理(みたいなもの)を食べた。凝ってはいるが、特にどうということはない。冷えた麦酒が一番おいしかった。私のようなものには、フランス料理など食べさせる甲斐がないだろうなあ。

 割引券を使って、曽我部恵一の「瞬間と永遠」を買って帰る。欲しいから買うのか、割引券があるから買うのかいまいち判然としないけど。
 帰りのバスでは文芸春秋の「本の話」をパラパラ読む。
 先月号から中野翠の「世の中には2種類の人間がいる」(だったかな?)という連載が始まっていて、今月号は「(短歌を)うたう人と(俳句を)ひねる人」というテーマ。中野翠は、自分は「ひねる人」だ、と書いている。ふむふむ私も「ひねる人」だな、と思う。あんまりうまくひねれないけど。短歌は長くてめんどくさい。
 あと「平井堅の大きな古時計の歌い上げぶりに酔える人と酔えない人」というのもあって、中野翠は酔えない、と言っている。そりゃそうだろう、酔えるわけないわ。

 夜からすごい雨が降る。もう少し風があったら羅生門のような雨になっただろう。蚊取り線香をたいて、寝た。

・購入物:山田稔「太陽の門をくぐって」(編集工房ノア)
     池澤夏樹「新世紀へようこそ2 世界のために涙せよ」(光文社)
     中条省平「フランス映画史の誘惑」(集英社新書)
     高見澤潤子「のらくろひとりぼっち」(光人社NF文庫)
     曽我部恵一「瞬間と永遠」=CD

・朝食:トースト、オムレツ、珈琲
 昼食:外食(野菜の冷製スープ、鯛のなんとか風、パン、麦酒、珈琲)
 夕食:豚とチンゲンサイのキムチ炒め、豆腐とキノコの味噌汁、高野豆腐の含め煮、玄米ご飯

 


2003年06月23日(月) 狂乱と霜凍る宵

 なぜか知らないけど喉が痛くて、鼻水がズルズルでる。今週末から旅行に行く職場のNさんに、うつされたくないから早く帰ってくれ、と言われ仕事を残してまっすぐ帰る。
 
 地味でやる気のない夕食を食べてから、じっとりと近松秋江の「狂乱」「霜凍る宵」を読む。「黒髪」の続編。
 『何の因果であの女を諦められないのであろう』と泣きながら、引き続き女の後を追っかけている。女の老獪な母親に騙されて、こっちの町をうろうろ、あっちの山でよろよろ、あてもなく歩き続ける主人公。だんだん気の毒になってくる。
 ようやく居所をつきとめると、夜毎通いつめ、窓の外に立って女の様子をうかがう。大正のストーカーである。でも結局はプライドと自己愛が邪魔して、女に対して強引になれないところが、私自身をみているようでなんだか身につまされる。
 終わり方がなんだか中途半端だなあ、と思っていたらなんと「続・霜凍る宵」があるらしい。まだあんの。
 でも文章は滅法うまい。ぐんぐん読ませる。この話の内容でここまで読んでこられたのも、文章の美しさにあると思うなあ。すっかりファンになったかも。近松秋江なんて今は忘れ去られた作家なのだろうけど、いいじゃん私がちゃんと覚えていてあげるからねえ。

・購入物:なし

・朝食:レーズンパン、珈琲
 昼食:ベーコンチーズサンド、牛乳
 夕食:鮭の塩焼き、レタスサラダ、枝豆、とろろ玄米ご飯


2003年06月22日(日) 映画と焼肉

 朝7時頃はわりと晴れていたので洗濯物を外に干したのに、本を読みながらうとうと寝ている間に雨が降ってきて、慌てて取り入れる。気づくのが遅かったので少しぬれた。雨も降るなら降るで、もう少し派手な音をたてて降ってほしい。

 傘をさして出かける。テアトル梅田にて「神に選ばれし無敵の男」を観た。
 ヘルツォーク監督の映画を観るのは初めて。なんとなく難解なイメージがあったのだけど、すごくわかりやすい。これまでの作品もこんな感じなのかな。
 主人公であるジシェがポーランドに戻ってからが長すぎる。これ必要か?というようなカットも多い。それからピアニストがオーケストラをバックにベートーベンを弾く場面は、回想というかたちにして一番ラストにもってきたほうがよかったんじゃないか。ならお前やってみろ、とヘルツォークに言われたら困るんだけども。
 でも、ティム・ロスが出ていれば大抵ことは気にならないのだ。インチキ超能力者の役がちゃんとはまっていた。

 映画の後、Tが奢ってくれるというので、焼肉を食べに行った。牛肉を食べるなんて久しぶり。特上カルビ、おいしかった。奢ってもらったからおいしいんだろうか。多分両方だな。ビビンバも食べたかったが、お腹いっぱいで入らなかった。残念、また今度。
 
・購入物:野口富士男「私のなかの東京」(中公文庫)
     戸板康二「夜ふけのカルタ」(旺文社文庫)
     川西政明「文士と姦通」(集英社新書)   すべて古書

・朝食:梅干、ジャコ、豆腐の味噌汁、玄米ご飯
 昼食:豆のパン、はちみつレモン
 夕食:外食、焼肉、キムチ、ワカメスープ、麦酒


2003年06月21日(土) 「黒髪」

 午後から所用でおでかけ。久しぶりに会ったIさんやMさんに、痩せたねえ、と言われたから嬉しくなって、帰って体重をはかってみたら500グラムたりとも減っていなかったのはいったいどういうわけだ。せっかく楽しみにしていたのになあ。

 3時頃には無事終了、帰りにちょこっと図書館に寄る。また6冊借りた。坪内祐三「シブい本」、ロジェ・グルニエ「チェーホフの感じ」、川崎長太郎「抹香町・路傍」、近松秋江「黒髪、他二編」「黒髪、別れたる妻に送る手紙」「小山清全集」。「小山清全集」は2回目。前回あんまり読めなかったので。

 北上次郎の「情痴小説の研究」を読んでいたら、またあの「ダメ男小説」読みたい熱がわいてきた。あのダメダメ感、なんか癖になるのよね。

 で、早速近松秋江の「黒髪」を読む。『命を投げ出して彼女を愛しても厭はない』とまで想う女の後を追いかけ回す話。でも女の方は男の気持ちを手玉にとって、どうも金品を巻き上げているようだ。
 僕のこんなに苦しい想いがわからないのか、みたいなことを言っているのだが、女はそれがわかるからこそうまく利用してるんじやないか。バカですな。

 そして本日も楽しい楽しい阪神の試合を観て、おいしい麦酒を飲ませていただきました。ありがとうございました。

・購入物:なし

・朝、昼食:鯖の煮付け、冷や奴、梅干し、玄米ご飯
 夕食;豚シャブサラダ、豆腐とネギのスープ、麦酒、玄米ご飯


2003年06月20日(金) 今戸心中

 久しぶりに洗濯物がパリッと乾いた。シミジミうれしい。
 
 夕食の支度をしながらサンテレビの「虎辞書なる」を観る。今日は1983年4月15日の巨人戦。小林繁が力投しているが、試合内容自体はそれほど面白くはなかったような。ショートを守る真弓を見ることができただけでも眼福。
 ここから1985年までが、私が最もしっかり野球を観ていた時期だ。初めて甲子園に行ったのもたしか1983年だったと思う。あれから20年もたったとはなあ。

 「明治の文学・広津柳浪」より代表作といわれる「今戸心中」を読んだ。いや〜良いです。はっきり言ってハマったね。
 ストーリーは題名のとおり心中もの。吉原の花魁が心から愛した男との別れに耐えかね、かねてから言い寄られていた客との死を選ぶ、という話。最愛の男との別れで身も心も傷ついて初めて、惚れられても邪険に扱ってきた客との間に、男と女を越えた何かが生まれるのだ。
 情景描写、人物描写の素晴らしさもさることながら会話文がめちゃめちゃ上手い。明治の文学者ってなんでこう会話文が上手いのか。
 それから男と別れた花魁が、こうすれば良かったああ言えばよかったと後悔する場面、迎えに来てくれる男の姿を妄想してみたり、別の女と結婚している姿を想像して涙にくれるところのたたみかけるような描写が、花魁の気持ちがビンビン伝わってきて切ない。

 喫茶店でこの小説を読み終え、いろいろ考えをめぐらせていたせいか、今週末から始まる映画の前売り券を買うのを忘れて、Tに怒られる。スビバセンネ。

・購入物:森田たま「もめん随筆」(新潮文庫)古書

・朝食:スナックパン、野菜スープ、珈琲
 昼食:梅おにぎり、コロッケ
 夕食:和風キムチ焼きそば、カニとキュウリのサラダ、麦酒
 


2003年06月19日(木) 助かった

 仕事関係の人を集めて飲みに行こう、と言い出した人がいて、うっとおしいこと言うなあと思っていたのだが、何人かに声をかけてみたところ、大抵が先約があったり仕事が片付かなかったりで結局成立せず、とても助かった。
 お酒を飲むのは大好きだけど、どうでもいい話を聞くのは大嫌いだ。仕事中演じている「明るく元気な標準的な私」を延長上演するのも疲れるし。飲み会用に引き上げ準備していたテンションを、元通りしゅるしゅるしゅると下げて帰る。

 生ヌルイ強風の中、閉館間際の図書館へ飛び込んで筑摩書房の「明治の文学・広津柳浪」を借りる。今日の夜からこれを読むのだ、楽しみ楽しみ。

 NHK教育の「きょうの料理」で平野レミが「料理ってさあ、ままごとのようなもんで、すごく楽しいよお」と言っていた。
 平野レミが料理をしているところは本当に楽しそう。昔はなんてうるさい人だろう、と思っていたけれど、今はとても好きだ。料理でもなんでも、楽しそうに何かを作っている人ってとてもいいと思う。

・購入物:なし

・朝食:トースト、レタスと卵の炒め物、珈琲
 昼食:メロンパン、ゴマとチーズのパン
 夕食:焼き魚(鮭)、水菜の辛子醤油和え、レタスとにんじんときのこのスープ、玄米ご飯

 


2003年06月18日(水) 本日の収穫

 心斎橋で仕事が終わり、雨も小降りになったことだし、と梅田へ向かって寄り道しながらテクテク歩く。
 途中の古本屋さんで、1冊150〜200円位の気になる文庫本を何冊か購入。中でも山田稔の「スカトロジア」を発見できたことは大きな喜び。ずっと探していたのです。古本の神様、ありがとう。
 梅田にもどってから割引券を使ってCDを3枚買い、回転寿司を食べて帰る。

 オリジナルラブの新譜「踊る太陽」を聴く。えらいジャケット。
 オリジナルラブのアルバムを聴くと、田島貴男が現在どんなことに興味をもっているのかわかる。今は多分、宇宙とボクシングかな。
 1回ざっと聴いたところでは、マーヴィン・ゲイの「I want you」を友部正人が訳詞した曲と、町田康が詩を書いた最後の曲がかっこいいと思った。あと矢野顕子のピアノはどこで聴いても「矢野顕子」であることがやっぱりすごい。

 今日から広津和郎の「年月のあしおと」を読んでいる。
 にわかに広津和郎の父である広津柳浪が気になってきた。妻が亡くなると、まだ幼い息子たちを家に残し放蕩する広津柳浪とはどのような小説を書く人だろう。
 本を読むことでイモヅル式につながる関心と興味は尽きることがない。

・購入物:山田稔「スカトロジア」(福武文庫)
     石川淳「夷齋小識」「文学大概」(中公文庫)
     岩満重孝「百魚歳時記」(中公文庫)
     つかこうへい編「日記名作選・書くに値する毎日」(集英社文庫)すべて古書
     オリジナルラブ「踊る太陽」
     LITTLE TEMPO「Musical brain food!」
     サントラ「トリュフォー作品集」  以上CD

・朝食:チキンサンド、オムレツ、珈琲
 昼食:梅うどん、焼きあなごのおにぎり
 夕食:外食、回転寿司5皿、赤だし



 


2003年06月17日(火) 喫茶店のおしぼり

 蒸し暑い一日。阪神百貨店に寄ってサンダルを少し物色してから、地下で牛肉とちりめんじゃこを買って帰った。

 帰りのバスでおばあちゃんに席を譲ったら、
 「あれ!ありがとごめんねあんたも疲れたはるやろにすんませんおおきに助かりましたありがとごめんねすんませんおおきに」と言われた。永遠に続くのではないかと思った。
 その後、おばあちゃんは隣の席のおばさんとしゃべり続け、仏壇の掃除の仕方で盛り上がっていた。
 「ほれ喫茶店でね、袋に入ったおしぼり出て来ますやろ、持って帰ってためてますねん。あれでね位牌やら拭きますねん。ものすごきれいになりますわ」ああ、あのおしぼりね。なるほど、私も今度からそうしよう。位牌は拭かないけど。

 テレビでやっていた「アメリカンビューティ」を見ながら夕食。前にビデオを借りて一回観ている。空想シーンの演出がくどかったような記憶がある。私としてはケビン・スペイシーさえ出ていればなんでもいいのだが。今日はコマーシャルの多さと吹き替えにどうもなじめず、早々と脱落。

 夜は半分読んで置いていたチェーホフ短編集の「ともしび」と「六号室」を読む。
 もし印象に残った箇所に付箋をつけていったとしたら、この本付箋だらけになると思う。特に「六号室」はすごい。丹念な描写に圧倒された。チェーホフの短編小説をもっと読もうと思う。

・購入物:なし

・朝食:カレースパゲティ、メロン
 昼食:サツマイモパン、牛乳
 夕食:牛肉とターサイの炒めもの、キュウリとジャコの酢の物、モロヘイヤのおひたし、玄米ご飯

 
 


2003年06月16日(月) どいつもこいつも

 会社に得意先のO部長が来た。この人エラそうなところが苦手。今日も、雨の中わざわざ来た、おかげでずぶぬれだ、みたいなことを言う。誰も呼んでない、勝手に来たんじゃんか。
 この人はパリに何年か住んでいたらしく、ふたことめには、パリではねえ、が口癖だ。
「パリではねえ、傘をさす習慣がなかったの。レインコートを羽織って帽子を被っていれば大抵の雨はカバーできたよ。だから帰ってきてもどうも傘は億劫でねえ」だってさ。アホや。ここはパリではなく、大阪の端っこやっちゅうねん。そんなこと言ってるからずぶぬれになるのだよ。

 夜は、ビル・エヴァンスを聴く。ビル・エヴァンスってものすごく賢い人なんだろうなあ。なんか演奏から知性がビシビシ出ている気がする。

 11時すぎ頃、年下の友人から電話。彼女はまだ新婚さん。ダンナがまだ帰ってこない、携帯電話もつながらないという。半泣き状態。
 帰らないといってもまだ11時だ。中学生じゃあるまいし。飲みに行ってるんでしょ、と言うと、月曜日から飲みになんか行きません、と否定される。そんなことわかるかよ。
 うだうだなぐさめていると、「あ、帰ってきました!じゃ」とガチャンと電話を切られた。何だあ。
 あと半年もすればダンナの帰る時刻など最もどうでもよいことの一つになるのだろうが、私が男だったらこんな女はちとしんどいな。

・購入物:多木浩二「写真論集成」(岩波現代文庫)

・朝食:トースト、珈琲、メロン
 昼食:お弁当(昨日の夕食と同じ)
 夕食:チキン野菜カレー、小松菜とトマトのサラダ、麦酒


2003年06月15日(日) オムレツ

 先日観た「特別な一日」の影響でオムレツに凝っている。
 卵料理と言えばゆで卵か目玉焼き、たまにスクランブルエッグを作るくらいだったけれど、マストロヤンニがプレーンオムレツを焼いているのを見て、真似してみたらすごくおいしかったのだ。今日の夕食は、野菜をたっぷり入れたオムレツを作った。
 
 食べることには情熱を注いだけれど他には特に何もせず、一日中、本を読んでは寝たり、音楽を聴いては寝たりしていた。
 本棚を漫然とながめていると、「少年カフカ」と書いたマンガ本みたいな雑誌がある。なんじゃこりゃ。開くと読者の質問に対して村上春樹が答えたメールがズラズラズラと載っている。なんでこんなものがウチにあるんだろTが買ってきたのかな、と思いながらペラペラめくっているとあっという間に1時間くらい経つ。たいしておもしろくないのに、思わず読んでしまうのだ。しかし村上春樹は「海辺のカフカ」に関して、なんでこう商売っ気たっぷりなんだろう。

 夜は昨日届いた「ARUNE」の4号を読む。今年の夏は久しぶりに四国へ行こうかなあ。

・購入物:なし

・朝、昼食:和風焼きそば、豆腐と揚げの味噌汁、リンゴヨーグルト
 夕食:野菜オムレツ、コスレタスと平天の煮物、キュウリの漬物、麦酒、玄米ご飯

 
 


2003年06月14日(土) 梅シロップをつくる

 一日中、雨。
 朝はNHKFMで「ウィークエンドサンシャイン」を聴いてから、桂米朝「阿弥陀池」と桂枝雀「代書」を聴く。『儲かった日も代書屋の同じ顔』

 落語を聴きながら梅シロップをつくる。青梅を洗って凍らせたものに、砂糖かハチミツを入れて3週間くらい置いておくと出来る。これを焼酎またはペリエとかミネラルウォーターに入れて飲むとおいしいの!
 暑い夏の夜更けに、この梅入り焼酎をちびちびやりながらウチワを片手に薄田泣菫の「茶話」などをペラペラ読む、とういうのが私の提案するシブい夏の夜の過ごし方です。

 なぜ薄田泣菫なのかというと、今日から読み始めた山田稔の「あ・ぷろぽ」に出てきたから。一気に読んでしまうともったいないからゆっくり味わっているところ。
 一番最初の「時の栞」という随筆に私の大好きな薄田泣菫の名がちょこっと出てくる。古本に挟まった新聞の切り抜きにまつわる随筆なのだが、その登場のさせ方が絶妙でホントにうれしくなる。
  
 それから八方手をつくして確保した(ちょいと大げさ)、甲子園のチケットを持って実家へ帰る。
 パソコンの調子が悪い、と父親に相談を受けるが何一つ確証を持って応えられず、私のパソコンの先生である東京在住のO君に電話をして指示を仰ぎ、事なきをえる。よかったよかった。私にパソコンのことを聞くくらいならそこら辺を歩いてる犬に聞いたほうがましなんじゃないかと思う今日このごろなのである。

・購入物:なし

・朝、昼食:トースト、オムレツ、ツナサラダ、珈琲
 夕食:実家で。鶏と茄子のトマト煮込み、ちらし寿司、タコのマリネ、麦酒


2003年06月13日(金) 疲れた

 雨。すごい蒸し暑い。梅雨だから仕方ないよね、って思えるほど私は人間が出来ていない。不快。
  
 会社に着いた途端、客から電話でものすごく怒られる。約20分間怒鳴られ続けて、受話器にあてた耳が痛い。
 やっと終わったかと思ったら、今度はビルの掃除のおばちゃんにゴミの出し方が悪い、と怒られる。新聞と折り込みの広告は分けて出さないといけないんだって。知らんかった。
 朝から気分はグレーでどろどろ。13日の金曜日だからなあ、とNさん。まだそんなこと言う人いるんだなあ。

 客の怒りを静めるため右往左往して一日が終わった。堂島の紅茶専門店でいっぷく。ロイヤルミルクティを飲みながら、福武文庫の「チェーホフ短編集」を読む。
 ここに収録されている「恋について」や「犬をつれた奥さん」や「かわいい女」を読むと、世の中に恋愛小説といわれるものは多分たくさんあるだろうけれど、もうチェーホフが全部書いてしまってるじゃないか、と思う。漱石を読んでいる時も同じようなことを思う。ここに書いてあることが恋愛の快楽と苦悩のほとんどだ。

 Tと待ち合わせて、天神橋筋商店街でうどんをすすって帰る。
 帰り道、後ろを歩いていた大学生と思しき女の子が、「私のパパ達なんかがいわゆるダンコンの世代でえ〜」なんてしゃべっていた。
 ダンコンの世代。どんな世代だろ。

・購入物:内田樹「映画の構造分析」(晶文社)
     アユーラで口紅(BE02)

・朝食:梅かつお、冷や奴、漬物、玄米ご飯
 昼食:チーズカレーパン、牛乳
 夕食:外食(かけうどん中、野菜かきあげ、いなり寿司)
  

 


2003年06月12日(木) 雨のせい

 夕方から雨。自転車は置いてバスで帰ろうとバス停に行ったら長蛇の列で、一本やりすごすつもりで本屋さんに入ったのが運のつき、また本を買ってしまった。雨さえ降らなけりゃ大人しく家路についたものを、人の人生ってどこでどうなるかわからないなあ。

 近所のレンタルビデオ屋で「特別な一日」と「デカローグ1」を借りて、夕食もそこそこに夜中までかかって2本とも観た。「デカローグ」の2話め‘ある選択に関する物語’の時はもう眠くて眠くて、なんとか最後まで観たけれど、映画鑑賞が苦行のように感じた。

 エットーレ・スコラ監督の「特別な一日」、やっぱりものすごく良かった。山田稔にこの映画にまつわる随筆があって、それもまた本当に素晴らしく、読んだ時からずっと観ようと思っていたのだ。
 これもまた細部が丁寧に描かれた映画だと思う。

 正宗白鳥「何処へ」と「泥人形」を読んだ。なにこれ。
 2編とも、生きることに全く情熱を感じていない男の話。とにかくおそろしくさめていて、厭世観ここに極まれりというような小説だ。特に「何処へ」は筋らしい筋が全くなく、しかも途中で終わっている。いいのか、これで。
 
 ここ何日間で自然主義文学を何編か読んだけれど、なんか疲れた、もう当分けっこうです。明日からはもうちょっと血湧き肉躍るようなものが読みたいと思う。しかし、そんな本が家にあるのかそれが問題だ。

・購入物:山田稔「あ・ぷろぽーそれはさておき」(平凡社)
     「すてきなあなたに4」(暮しの手帖社)
     島尾ミホ・石牟礼道子「ヤポネシアの海辺から」(弦書房)
     桂米朝コレクション7「芸道百般」(ちくま文庫)
     
・朝食:トースト、オムレツ、ミニトマト
 昼食:野菜サンドウィッチ、牛乳
 夕食:豚と白菜の重ね蒸し、エビワンタンと水菜のスープ、玄米ご飯 


2003年06月11日(水) 「シネマのある風景」

 山田稔著「シネマのある風景」を読んだ。
 1989年から1991年にかけて、主に京都や大阪の映画館で上映された映画についての随筆集。京都朝日シネマ、シネマヴェリテ、国名小劇、三越劇場などなど文章中に出てくる映画館のほとんどが今はもうない。さみしいなあ。
 私はここに書かれている映画の半分くらいしかみていないし、中でも映画館で観たとなると「コックと泥棒、その妻と愛人」「死の棘」「いまを生きる」くらいしかない。
 
 「いまを生きる」は題名が嫌だったので観たくなかったのだが、誘われて仕方なく観た。一緒に行った人はやたらと感動していたが、私は何がいいのかさっぱりわからなかった。
 山田稔は『なんだか調子がよすぎるぞ』として、特にラストが甘いと指摘し、『いまなお「詩人の魂」を失っていないキーティング先生が学校を追われる日、連帯のしるしに生徒達が机の上に立つのではなく、心では「すまない」と思いながらじっとうなだれて席に座ったままでいる、というのが私好みのシネマの風景である。詩人は殺されるのだ。』と書いている。なるほど!私もそのラストシーンに一票。

 また別の章では、
 『どうやら芸術では「力をこめる」のではなく「力をぬく」こつをおぼえることが大切なようだ。無駄な力のぬけたひっそりとした作風ながら、丁寧に描かれた細部がやわらかな光を放っているといった作品がいい。「神は細部に宿り給う」という言葉があるが、映画の神様も細部に宿り給うのではあるまいか。』
 と書いている。映画は細部だ。大げさなストーリーは邪魔なだけ。
 山田稔は素晴らしい。一生ついていきます。

・購入物:なし

・朝食:チキンサンド、牛乳
 昼食:たらこおにぎり
 夕食:外食、居酒屋にて。焼き魚、根菜煮、牛肉すじ煮込み、麦酒など
 
 


2003年06月10日(火) ダメ男2

 取引先の女の子がディズニーランドのお土産を持ってきた。
 「フクダさんはディズニー嫌いでしたよね」とか言ってなかなか渡さない。ディズニーは嫌いだがお土産は好きだ。頂戴よ、と手を出すと「でもこのミッキーの缶捨てちゃうでしょ」そりゃ捨てるさ、邪魔だもん。「じゃ中身だけあげます」と中のチョコレートだけくれた。

 そのチョコレートを食べながら読んだ小説。
 岩野泡鳴「耽溺」。なんともかんとも。
 海辺の町で芸者にトチ狂ってしまう作家の話。つまらない女だとわかっているのにどうしても別れられない。妻の着物など売って芸者を落籍し東京に連れてくるが、女が病に倒れるとあっさり捨ててしまう。僕は冷淡で残酷だ、しかしこれから先もこういうことを繰り返して生きて行くのだろう、とかなんとか言って終わる。自分勝手もここまでくれば呆れるわ。

 近松秋江「伊作の屏風」。これはおもしろかったぞ。
 父の遺した屏風のことで一喜一憂する男の話。この男というのが、
 『近い内にはまたあの塵埃の立つ東京に帰って恐ろしい現実に接触せねばならぬ。ああ、厭だ厭だ。どうかして自分は人間を避け世間を隠れ、凡ての競争の環外に立って生活したい。(略)ああ!自分にも何処からか持参金をウンと持って細君に来てくれるものはないかなあ。と言った処で、既う自分には古ぼけた女房が一人ある。ああ、何処かに金がないかなあ。』
 などと言っているダメ男なのである。いっこうに冴えない。
 でもこの気持ちすごくわかるなあ。私だけか?

・購入物:なし

・朝食:梅かつお、冷や奴、肉団子、玄米ご飯
 昼食:サツマイモパン、牛乳
 夕食:鶏肉とチンゲンサイの炒め物、小松菜と薩摩揚げの煮物、味噌汁(コンニャクとしめじ)、玄米ご飯 


2003年06月09日(月) ダメ男

 難波の古書店でテオ・アンゲロプロス「霧の中の風景」のパンフレットを見つけた。大好きな映画。「かもめさん」との別れのシーン、雪のシーン、サンドウィッチを食べるところ、海から大きな手の彫刻が引き上げられる場面やラストの木のシーンなど、心に残る場面がいっぱいある。
 弟役の男の子に似ていると言われたことがあって、パンフであらためて見てみたら、なるほど似てるかも。子どもに似ているというのもなあ。

 近松秋江「別れた妻に送る手紙」を読んだ。ヘンな小説。
 最初は出ていった妻への未練を書いているのだけど、新しい女が出来たら明けても暮れてもその女のことで頭がいっぱい、最後近くはもう手紙の態をなしていない。「拝啓」で始めておいてこの終わり方はないだろう、書いていておかしいと思わないのかな、この人変わってる。
 でも、この小説面白かった。妻のいない淋しさをまぎらわすため女と懇意になるのだが、逆にその女にいれあげてしまって、気がまぎれるどころかヤキモキしっぱなしなのがまずおかしい。大切な本を売って女に会う金を作ったり、昔の男のことを問いつめて余計嫉妬に苦しんだり、女の気持ちは商売の域を出ていないのに友だち(正宗白鳥がモデルらしい)と寝た寝ないでもめたり、要するにバカなんである。
 私はバカでろくでもない男が好きなのだ。ダメ男とつき合うとしんどいけど、他では得られない面白さが味わえる。この小説にはその趣がある気がする。

・購入物:パンフレット「霧の中の風景」(古書)
     ポラリス「深呼吸」

・朝食:トースト、珈琲
 昼食:梅うどん、いかなごおにぎり
 夕食:茄子とピーマンの味噌いため、ほうれん草のゴマ和え、トマトとキュウリとラディッシュのサラダ、麦酒、玄米ご飯 


2003年06月08日(日) チェーホフの手紙

 朝、Tのお母さんが送ってくれた荷物が届く。
 手作りの紫蘇ジュースや野菜などとともに、麦酒1ケースも。ありがとうございます。麦酒は私がほとんど飲んでしまいそうですが。

 午後から自転車をチャリチャリとこいで、陶器市に行く。暑い。6月からこれじゃ先が思いやられるなあ。
 会場内を3周して、有田焼のカップ&ソーサーを2客と、何焼かしらないけど青の縞柄が気に入ったお皿を2枚、値切って買った。それぞれ100円づつまけてくれた。
 
 Tが行きたいというので、少しだけ図書館にも寄る。今日は4冊借りる。
 山田稔「シネマのある風景」、日野啓三「流砂の声」、町田康「テースト・オブ・苦虫」、明治の文学「近松秋江・正宗白鳥・岩野泡鳴」。
 一旦家に収穫を置きに帰り、昼寝をしてから、晩ご飯を食べにでかけた。

 佐藤春夫の「退屈読本」を読んでいたら、チェーホフの手紙を引用している箇所があり、それがとてもよい。どうしてもチェーホフの手紙がまとめて読みたい。新刊ででているのは有名な戯曲ばかりだし、小説や手紙など少ししか読めないじゃないか。
 立腹しながら古本屋さんの棚をみていたら、中央公論社から出ている「チェーホフ全集16書簡」が一冊、私を待っていたかのように見つかった。佐藤春夫の引用箇所(ゴーリキイへの手紙)もきっちり収録されている。すばらしい。

・購入物:陶器市にて、カップ&ソーサー、お皿
     J・Gバラード「夢幻会社」(創元SF文庫)
     森銑三「明治人物閑話」(中公文庫)
     「チェーホフ全集16巻 書簡」(中央公論社)
     保坂和志「プレーンソング」「草の上の朝食」(中公文庫) すべて古書

・朝、昼食:トースト、コロッケ、珈琲
 夕食:外食、特製ランチ(ハンバーグ、エビフライ、サラダ)、麦酒


2003年06月07日(土) 勘弁してください

 はっきりしないお天気。夕方、遠くで雷が鳴った。ゴロゴロがはじまると、近所の犬がキューンキューンと鳴く。

 朝からお家の掃除と本、CDの整理。一生これから逃れられないのかしら。
 スカタライツを流しながら玄関の拭き掃除をしていると、なんとかかんとかという会社から布団を売りに来た。布団なんかいらん。いりません、と断ってるのになんだかんだとまだ説明する。
 「いい音楽ですね、これなんですか?レゲエ?」などと言う。いらんこと言わずにアンタは布団だけ売ってりゃいいの。

 午後遅くから図書館へ。角田光代の「エコノミカルパレス」を読了。
 お金のないフリーターカップルの話。この設定で書かせたら、多分この人日本一だ。普通に狂っていく人の物語。角田光代の本はここ最近の新作とエッセイ以外は図書館で借りてほとんど読んでいる。若手の女性作家では一番肌があう。今日は読んでしまったので借りなかった。

 夜は先日読んだ里見とんの影響で、「彼岸花」のビデオを観る。
 田中絹代が佐分利信に、まだ小さかった娘を抱えた防空壕の中でもうダメかもしれないと身を寄せ合ったことをあなたは覚えているか、私は戦争は嫌だったけれどあの時ほど一家四人がひとつになったことはないと思うとなんだか懐かしいのよ、と話している良い場面で父親から電話がかかってくる。電話線抜くのを忘れてた。
 甲子園の一塁側の入場券4枚取ってくれ、だと。今から取れるかなあ。私をチケットぴあと思ってるんじゃないかしらん、勘弁してくれよ。

・購入物:ASYLUM STREET SPANKERS「SPANKER MADNESS」

・朝、昼食:トースト、珈琲
 夕食:茄子のごまだれづけ、キュウリとハムのサラダ、豚キムチ、麦酒、玄米ご飯


2003年06月06日(金) 「暮しの手帖」のこと

 ブックセラーアムズで開催中の「花森安治と暮しの手帖展」に行ってみた。
 展示は去年ロイヤルホテルやジュンク堂で見たものより目新しさはなく、販売されている第1世紀の「暮しの手帖」をぱらりぱらりと立ち読みした。
 
 3,4年ほど前親戚の家に行った折、トイレの横(田舎なのでもちろんボットン便所)の「古紙回収行き」が決定している新聞や雑誌などが置いてある場所で、ビニール紐でしばられ埋もれている「暮しの手帖」を発見した。しかもどう見ても第1世紀だ。
 伯母に問いただしてみると、「ああ、あれな、押入の掃除したら出てきてん、ゴミや、ゴミゴミ!」と信じられないお答え。
 もちろん私は「第1世紀暮しの手帖」10数冊を「ゴミ」の中から救い出し、「埃だらけやのに」とか「変わってんなあ」とか「アホちゃうか」となどと言われながら車に積んで持ち帰った。
 
 便所の横にうち捨てられてあった「暮しの手帖」が、「取り扱いには十分ご注意ください」という但し書きのもとにディスプレイされ、1200円から1500円もの高値をつけて売られているのを見ると、複雑な思いがする。欲しいけれど、買う気にはなれなかった。

 帰り道、ふとのぞいた古本屋さんで「相生橋煙雨」を発見、即購入した。図書館で借りはしたが、箱入りの状態で見るのは初めて。この箱の絵がまた美しい。1000円したけど、この箱のために1000円出したと思っても惜しくない、かな。

 夜は「マトリックス」を見た。
 この映画はどのように楽しめばいいのでしょう。
 10時すぎに脱落、テレビを消して、ジャンゴラインハルトを聴いた。

・購入物:野口富士男「相生橋煙雨」(文芸春秋=古書)
     Jackie Mitto「Champion in the Arena」
     「THE BEST OF SKAtALITES」

・朝食:チキンサンド、珈琲
 昼食:お弁当(野菜炒め、ゆで卵、ちりめん山椒、玄米ご飯)
 夕食:キャベツの豆板醤炒め、冷や奴、玉ねぎの味噌汁、麦酒、ご飯)
 

 


2003年06月05日(木) ごまだれ2

 チンゲン菜を洗っていたら、ナメクジがでてきた。
 有機野菜の宿命とはいえ、ちょいとびっくりした。塩をかけたら、蠢いて、溶けて、昇天した。チンゲン菜は茹でて「エバラのごまだれ」をかけて食べた。

 「エバラのごまだれ」は店をまわって3軒目で見つけた。自分でもバカだと思うけど、実際バカなんだからしようがない。
 予想していた通り、おいしいけれども3軒もまわって買うというほどのことでもない。自分で作れるわ。それがわかっただけでもいいか。

 今日はソウルセットの「young guys,gifted and slack!」を聴きながらお料理。いつ聴いてもかっこいい。ビッケの声が若い。このアルバムは今でも売っているのかな。

 里見とんの「初舞台・彼岸花」を読んだ。短編集。
 里見とんは初めて読んだのだが、こんなに艶っぽい小説を書く人とは知らなんだ。「俄あれ」の草、木、風、雨など自然への丁寧な描写と、上品な色っぽさに驚き。これを名人芸というのだろうか。これは和辻哲郎が絶賛したらしい。
 「彼岸花」は小津安二郎の映画の原作。佐分利信のやる気のなさげな演技と、浪速千栄子の機関銃しゃべりが大好きな映画。

 夜は久しぶりに購入したスタジオボイスを読む。相変わらず読みにくい。
 今回の特集はスカ・レゲエ。これまた深い森に分け入る気分だ。

・購入物:スタジオボイス「特集:スカ・レゲエ、ジャマイカンミュージックのブラッドライン」

・朝食:お好み焼きの残り
 昼食:レーズンとチーズのパン、グレープフルーツ、牛乳
 夕食:豚しゃぶサラダ、豆腐と九条ねぎのスープ、高野豆腐の卵とじ、麦酒、玄米ご飯


2003年06月04日(水) ごまだれ

 打ち合わせのため、会社にMさんが来た。
 1ヶ月ぶりくらいに会うが、また髪の毛が増えている。会うたびに増えている気がする。誰にも言ってないからみんなどう思っているのかわからないけど、1年前サッカーの話題で顔を真っ赤にして熱弁をふるっていた時は、こんなに髪の毛なかったもん。確実に若返っている。
 私は増える前の方がよかったと思う。シブくていい顔つきだったのに。でも本人は気にしていたのだろう、だからこれでよかったのだ。他人がどのように思おうと、本人が我慢できないことは仕方がないのだ。
 打ち合わせの間、ぼんやりそんなことを考えていた。

 スーパーで買い物をしていると、おばさんが店員に「エバラのごまだれ、ある?」と聞いている。ごめん売り切れやねん〜、と店員。また全然別のおばさんが「エバラのごまだれどこにある?」と聞いている。売り切れー、安売りもしてないのによく売れてるねん、と店員が謝っていた。
 エバラのごまだれってどんなタレだ?!明日別の店でチェックしよ。

・購入物:なし

・朝食:トースト、目玉焼き、珈琲
 昼食:マヨネーズコーンのパン、牛乳
 夕食:お好み焼き(エビ、イカ、豚肉入り)、キムチしょうゆ焼きそば、麦酒
 
 


2003年06月03日(火) 「一冊の本」

 このところ毎日ナタリーワイズの新譜を聴いている。1曲目と最後の、雨の曲がすごく好き。聴いていて映像がありありと目の前に浮かぶようだ。9月のライブは絶対行こうと思う。  

 朝日新聞社「一冊の本」6月号、金井美恵子の「目白雑録」の中で、石原慎太郎に票を入れたのはどんな人か、というくだりがあって、そこをTに朗読して聞かせてやり、ふたりでギャハハと大笑いする。ここにも引用したいけど、そんなことをしていたら夜が明けてしまいそうなのでやめておく。
 橋本治や杉本秀太郎、小倉千加子の連載もおもしろい「一冊の本」、毎月初めのお楽しみなのだ。

・購入物:ナット・ヘントフ「アメリカ、自由の名のもとに」(岩波書店)
     CD=サントラ「ジャック・タチ スタイル」

・朝食:トースト、バナナ、グレープフルーツ、珈琲
 昼食:お弁当(肉だんご、ちりめん山椒、ゴマ高菜、玄米ご飯)
 夕食:チキンステーキ、水菜のソテー、キュウリのゴマ酢和え、トマトとアスパラガスのサラダ、玄米ご飯、麦酒


2003年06月02日(月) ハーレクインロマンス

 仕事で使用する本を探しに図書館に行く。仕事の本を探すのは楽しくない。
 貸し出しの窓口で、小学生と見られる男子がハーレクインロマンスを4,5冊借りようとしていて、これは大人が読む本よもっと子ども向きのにしたら、と図書館員にたしなめられていた。
 いいじゃないか、小学生がハーレクインロマンスを読んでも。面白いかどうかは疑問だけど。
 私も小学生の時、母親の持っていた渡辺淳一の「野わけ」を読んで怒られたことがあったことを思い出した。内容を把握していたかどうかはあやしいが、大きくなったら必ず不倫というものをしてみよう、と思ったことは覚えている。大抵の子どもは大人っぽいものが好きなのだ。

 「コーヒーと恋愛」読了。なんとも言えんな、この小説。
 40代、50代の人をおじいちゃんおばあちゃんなどと書くかと思ったら、結婚は通俗的なものだと言わせたり、とてもドライな親子関係を描いたりする。古いのか新しいのかよくわからない。これは獅子文六がフランスと関係が深いことも影響しているのかな。
 ストーリー云々よりも、この本全体の気分とか雰囲気を楽しむ小説なのだと思う。

・購入物:黒のカーディガン、半袖のボタンダウンシャツ(無印良品)
     岡茂雄「本屋風情」(中公文庫)
     加藤周一・中村真一郎・福永武彦「1946・文学的考察」(冨山房百科文庫)
     パトリシア・ハイスミス「アメリカの友人」(河出文庫)すべて古書

・朝食:フランスパン、りんごジャム、珈琲
 昼食:かやくごはんのおにぎり、巻きずし
 夕食:青梗菜の中華風炒め、レタスとトマトのサラダ、きのこと豆腐の味噌汁、玄米ご飯 


2003年06月01日(日) 「家宝」と「めぐりあう時間たち」

 早起きして映画を観に行く。映画の日だから欲張って、2本観た。

 まずモーニングショーで「家宝」を観た。
 オリヴェイラ監督と言えば「現役最高齢監督」ということなのだが、その肩書きにしてこういうファムファタールものを撮るというのは、まあすごい95歳もあったもんだ。
 財産目当ての結婚、夫の親友からの求婚、不倫、麻薬、殺人、などなど、これだけドラマティックな素材がありながら、よくぞここまで退屈な映画に仕上げたなと、本当に感心する。これは誉めているのです。すごいね。
 主人公が何度か列車で移動するのだが、それは窓の外に流れる景色を映し出すことで表現される。このカットは美しかった。

 2本目は「めぐりあう時間たち」。
 ジュリアン・ムーアが好きで、彼女目当てに見に行ったのだが、結果的にはヴァージニア・ウルフ役のニコール・キッドマンが一番よかった。映画の後しばらくは眉間にしわが寄ったもん。
 3人の時間がおりかさなるように描いてあるけれど、オムニバスにしてもよかったのではないかしら。少し演出が思わせぶりすぎな感あり。

 早い夕食は「はなまるうどん」でしょうゆうどんを。こういうチェーン店にしては珍しく店内音楽が洋楽で、今日はアイズレーとかマーヴィンゲイが流れていた。スライを聴きながらさぬきうどんをズルズル。ちょっとオモロイ。

・購入物:小島信夫「うるわしき日々」(講談社文芸文庫=古書)

・朝食:お茶漬け
 昼食:豆のパン、レモンティ
 夕食;しょうゆうどん
 
 
 


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