ケイケイの映画日記
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2016年12月24日(土) |
2016年 年間ベスト10 |
12月は母の27回忌、結婚記念日の旅行、友人や会社の忘年会に、突発的アクシデントが2つと、てんやわんやの日々でした。さぁやっと映画!と思ったら、今度は風邪をひき、今月はまだ1本しか観ていない体たらく(トホホ)。今日もこれから病院なんので(朝8時予約開始にメールしたら、64番目!)多分今日も映画は無理なので、今年のベスト10に入らさせてもらいます。
今年は今日までで劇場鑑賞数は旧作二本(「ポセイドン・アドベンチャー」「七人の侍」)を入れて、79本鑑賞。後一本は絶対死守するつもりなので、多分切りよく80本です。少々物足りませんが、昨年62本だった事を思えば、良くぞ盛り返したと、満足しています。
1 トランボ ハリウッドに最も嫌われた男
2 ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります
3 オマールの壁
4 孤独のススメ
5 キャロル
6 スポットライト 世紀のスクープ
7 シング・ストリート
8 最愛の子
9 ズートピア
10 オデッセイ
次は邦画。例年あまり見られないのですが、今年は邦画だけで23本観ていて、ほとんど楽しめました。通常通り5本に絞るのが心苦しい限りです。
1 セト・ウツミ
2 SCOOP!
3 団地
4 淵に立つ
5 シン・ゴジラ
例年ベスト10にはミニシアター作品がズラッと並ぶのですが、今年はシネコン作品も多かったです。例年より好んで、明るい作風、元気になる作品を選んでいたような気がします。そう言いながら、苦手だったアート系やフランス映画が意外と肌に合いました。
特にオンデマンドで鑑賞のオゾンの「17歳」が、とっても肌に合いました。いつもなら、何も感じないか、怒りで終わる内容ですが、とにかく隅々まで面白く、売春する17歳の女の子の不道徳なお話が、オゾンの狙い通り(多分)、女子の青春物の秀作と感じた事に、自分でもびっくり。それはアート系の「淵に立つ」でも、同じ事が言えます。
老境が目前となり、人として成長したんでしょうか?(笑)。体力の衰え以外年齢の事は感じる事がなく、増してや年相応の円熟とはほど遠い私にとっては、これは嬉しい兆候でした。来年は積極的にヨーロッパの作品、邦画を観たいと思います。
邦画の一位は、えっ?って感じでしょう?これは池松壮亮が良かったから(笑)。今年は彼がすごーく気に入って、あれこれ観ましたが、彼だけ全部良かったです。やっとジャニーズや韓流スターに入れ込むオバサマ方の気持ちがわかりました。あっ、これは老化現象かも?(笑)。池松君には来年も期待しています!他にも「セト・ウツミ」は、このシチュエーションでちゃんと映画になるんだぁと、感心したのも、一位に選んだ理由です。
洋画・邦画とも、作品の出来とか格とか関係なく、好きな作品を選びました。 とは言え、邦画は選ぶのに苦慮しましたが、やっぱりゴジラは日本の宝だよと、今回実感したので、入れさせて貰います。一応順位はつけてありますが、邦画はほとんど順不同です。
今までシネコン系は、近所のラインシネマで観ていましたが、今年は会社の福利厚生で安く観られる事、定期で梅田もなんばも電車賃がいらなくなった事で、来年は初めてTOHOシネマズのマイレージが、ゲット出来そうです。そしたら「壁ドン」映画も挑戦したいな(笑)。
今年は2月に夫が交通事故に遭い、もうこのままほとんど観られないかも?と覚悟していたのですが、その後何とか仕事にも復帰してくれ、私も9月から水曜日が固定で仕事休みとなり、鑑賞数もアップした次第です。年齢が行けば、それなりにゆったり暮らせるのかと想像していましたが、これが全然(笑)
まぁこれも生きている証拠。来年も引き続き、プライベートはちょびっと波乱の予感ですが、今まで生きてきて、絶対絶命のピンチも、不思議と助けられる事が起って、何とか潜り抜けてきました。なので、根拠もないですが、これからも何とかなるだろうと思っています。年が行って余裕が出てきたとしたら、そういう風に思える事かしら?人生に四面楚歌なし、と思っています。
皆様、今年も一年、私の拙い感想を読んでいただき、ありがとうございます。今年の〆は「ミス・シェパードをお手本に」、年初めは「ヒットラーの忘れもの」としたいのですが、これも変動するかも?(笑)。自分を縛ることなく流れに任せて、来年も自由に映画を観て、マイペースで書いて行きたいと思っています。引き続き来年もよろしくお付き合いお願い致します。どうぞ良いお年を。
2016年12月10日(土) |
「マダム・フローレンス!夢見るふたり」 |
この昨品の予告編を最初観た時、こんな手があったとは・・・おぉ〜おぉ〜!と膝を打ったもんです。ロマコメキングのヒュー・グラントですが、容姿の劣化が囁かれて久しく(御年56歳)、最近は手を変え品を変え、スパイ組織アンクルの偉いさんを演じたり、ロマコメは、相手役を同年齢の芸達者の美熟女、マリサ・トメイを選んだり、何とか踏ん張っていました。でも今回は皺もシミもぜんっぜん隠さなくてOK。だって相手は70近い「オバアサン」だもん。でもこのオバアサン、そんじょそこらのオバアサンじゃござんせん。映画史に燦然と輝く大女優メリル・ストりープ!彼女相手に脇役ではなく、堂々のツートップです。何でも監督のスティーブン・フリアーズは、直々にヒューに出演をオファーしたとか。なるほど、観れば納得。この作品の成功の鍵は、夫役でした(メリルは失敗するわけない)。風変りな、でも真摯な夫婦愛を描いた素敵な作品です。
1940年代のニューヨーク。社交界の花形マダム・フローレンス(メリル・ストりープ)は、莫大な財力を、様々な音楽活動のパトロンとなりつぎこんでいました。重篤な病を抱える彼女にとって、音楽は生き甲斐。それを知る夫のシンクレア(ヒュー・グラント)は、彼女を温かく見守ります。だがしかし!声楽家としてレッスンに精を出す彼女ですが、実は驚異的な音痴。シンクレアが、必死の賄賂で周囲を買収しているものだから、軽コンサートはいつも大評判。彼女は音痴であることを全く知りません。伴走者として、ピアニストのコズメ(サイモン・ヘルバーグ)も見つけたフローレンスは、次はカーネギーホールで歌いたいと言い出したから、さぁ大変!
フローレンスとシンクレアは、夫婦と認識されていますが、多分内縁だったのでしょう。実は最初の結婚で、当時の夫から梅毒を映されたフローレンスは、今もってその後遺症に悩まされ、死と隣り合わせの日常なのです。音楽と夫の献身が、彼女の生を持ちこたえていました。
シンクレアにも秘密があり、ホテル住まいのフローレンスが眠りにつくと、彼は自宅へ。そこには愛人のキャサリン(レベッカ・ファーガソン)が。早朝、フローレンスが目を覚ますと、そこにはシンクレアが。なるほど、彼は夫であり執事であるわけです。妻の梅毒の為、「夫婦」として20年過ごしながら、一度も性交渉がない二人。キャサリンにとったら、仕事に出かけた夫が、帰宅するようなもんです。
シンクレアはお金目当てなの?これ、夫婦愛を謳いあげる作品なんじゃなかったっけ?と訝しく思って観ていたら、段々とヒューをキャスティングした意味がわかってきました。
寄付を懇願する人々に大盤振舞いのフローレンスですが、周囲の人々は、本当にお金目当てだけで、彼女に近寄ってきたんでしょうか?私は違うと思います。天真爛漫で、年齢に似つかわしくない童女のような愛らしさ。梅毒と言う当時は不治の病を得ながら、純真で汚れのない魂を持つ彼女と接すると、自分まで明るく元気づけられたから、彼女の周囲には、いつも人だかりだったんじゃないかな?
小心者でお人好しのコズメは最初、こんな音痴の伴奏をしたら、自分のキャリアは終わってしまうと思い悩みます。でも彼女の人となりを深く知るようになると、「”二人で”頑張りましょう!」と、彼女を激励するまでになるのです。キャリアの終焉よりも、憧れのカーネギーで、一度でも演奏できたことを心底喜べるようになる。視点を変えると、喜びも哀しみも、別物になるのよね。
成金富豪の後妻のアグネス(ニナ・アリアンダ)は、最初フローレンスを歌を聞いて、爆笑で床を転げまわる失礼千万な奴ですが、彼女の歌に罵詈雑言の輩に、「一生懸命歌ってるんだよ!彼女に敬意を払いな!」と一喝するのです。品はないけど、この気風の良さに、年の離れた成金氏は惚れたのでしょうね。決してお尻やおっぱいじゃないと思うわ(笑)。アグネスの啖呵は、胸がすく思いでした。
そして誰よりフローレンスの素晴らしさに、説得力を持たせたのは、献身的に支える夫のシンクレアです。貴族の生まれながら、妾腹のため、爵位は貰えず。生い立ちは複雑で、生きる上で辛酸も舐めたでしょう。知り合った当時は大根役者で、悪い記事はフローレンスが隠していました。あー、妻が自分を「守って」くれた事を、ただお返ししただけなんだな。
最初はシンクレアも、お金目当てでフローレンスと付きあっていたのでしょう。しかし、段々と彼女の人柄に魅せられ、人としての誇りも回復したのでしょうね。男妾のような状態なのに、彼には微塵も卑屈さはない。二人といない素晴らしい女性である妻の人生を、自分が支えていると言う自負です。
これを誰が演じるか?女好きで軽くて愛嬌があって、最初は下心があっても改心する・・・。この役、今までのヒューの集大成じゃないですか。妻と愛人と行ったり来たり、両方にご機嫌取る様子は、大変ねぇと、誰が同情させる?ここれを品よく演じるのは、ヒュー・グラント以外には考えられません。
本当は歌がすごーく上手いメリルですが、今回絶妙に音程を外して、私もクスクス笑っちゃうレベルの音痴な歌声を披露。いや〜、歌が上手い人が下手に歌うのって、難しいと思うぞ。こんな大女優になっても、毎回色んな役柄に挑戦して、本当に尊敬します。今回も完璧な役作りで、またオスカーノミニーなるか?
同年代のコリン・ファースも大好きなんですが、コリンは国王でオスカー俳優になり、通好みの作品や文芸もの、娯楽作など、何でもござれ。片やヒューは未だロマコメに出演しつづけ、超のつく大衆作ばかり。すっかり水を開けられた感がありましたが、この作品を観て、私はやっぱりヒューが好き!と、再確認しました。加齢でますます目が垂れちゃったけど、しわくちゃになって、老人ホームが舞台でも、女性を口説いて下さい。
シンクレアは、ある意味立派な男の一生です。男尊女卑が大手を振って蔓延る時代、こういう形で、男の本懐を遂げた人がいたと知ったのは、喜ばしい限り。私はフェミニズム的作品だと思います。
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