ケイケイの映画日記
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2015年10月29日(木) |
「マイ・インターン」 |
ロバート・デ・ニーロのアイドル映画かと思いました(笑)。それくらい御年72歳の大俳優が、とてもチャーミングなんです。働く女性の応援歌としては、楽しくは観られますが、結局問題点は、はぐらかされて終わってしまい、少し残念な出来。しかしこれからの高齢者は、社会の中でかくあるべきと言う理想像を具体的に示してくれて、そこは満点の作品です。監督はナンシー・マイヤーズ。
一年半前、ファッションサイトを起業したジュールズ(アン・ハサウェイ)。会社や時代の波にのり、今では従業員200人以上です。しかし、分刻みで行動する猪突猛進の彼女のスタイルに疲弊した部下たちは、ジュールズに少し休養が取れるよう、会社にCEOを迎えようと提案します。今までの頑張りは何だったのか?と、複雑な胸中の彼女の元に、会社の福祉事業の一環として雇われたシニア・インターンのベン(ロバート・デ・ニーロ)が、直属としてやってきます。
冒頭の自己PRするベンの描写が秀逸。瞬時で彼の社会人としての経歴や教養、人柄の良さなど、豊かな人生を送ってきた男性だと観客にわかるよう、手際よく描かれています。
その豊かな経験値で、若者ばかりの会社に新風を吹き込むベン。若い社員たちは温故知新の意味をおぼろげながら体感し、ベンに感化される様子が微笑ましい。もう出世欲などないので、手柄は若い子に譲り、自分は縁の下の力持ちに徹しています。過去の功績にしがみ付かず、ひけらかさない様子は、人としてとても品格があります。一言で言えば、紳士なのです。今の時代、紳士って絶滅種なのだと痛感しました。
「あなたはどうして、言って欲しい言葉が言えるの?」とは、落ち込んで酔っ払ったジュールズの言葉。それは自分が踏んできた轍だから。でもそれを糧に、若い人に説教出は来ても、励ませる人は少ないです。相手は共感や肯定を求めているのですね。嘘でない言葉で、真実の部分で相手を励ます。大人になった子供たちを持つ身として、とても感じ入りました。
この役にアン・ハサウェイを持ってこられては、どうしたって 「プラダを着た悪魔」のアンディの後日談的に観てしまいます。私が「プラダ〜」で一番心打たれたのは、寸分の隙なく生きているようなミランダが見せた、たった一度の涙。それから10年近く経ち、ジュールズには自ら職を辞して、妻を支える良き夫と可愛い娘がいました。しかし、忙し過ぎるジュールズの毎日は、客席で観ているだけの私でさえ、悲鳴を上げそうなくらい、周りの人もしんどくさせます。そしてお決まりの展開。
ここなんですが、始末の付け方がなぁ。能力ある夫が妻のために家を守るだけの生活は、結局男女が入れ替わっただけで、問題の解決にはならないと思います。本当の対等とは言えません。ここは企業家として才ありのジュールズなのですから、会社に子連れ出勤するなり、新型のベビーシッター会社を設立して、夫に任せるなど、もっと建設的な展開に持って行って欲しかったです。
その他、誤送信のプロットなどいらない話だし、無理にコミカルに作らなくても良いです。不仲と語る実母とのやり取りも、あれだけでは娘がわがままなだけです。自社工場で包装の工夫を丁寧に指導するのジュールズの行動など、急成長の一端はわかりますが、でもあれだけでは、会社の急成長を納得するのは難しいかなぁ。とにかく忙しし忙しいばっかりで、何が忙しいのか、わからないのです。上記の事がきちんと描けていれば、「プラダ」のように語り継がれる作品になったのにと、残念でした。
と、色々悶々としていると、その気持ちを絶妙に救ってくれる素敵なデ・ニーロおじさん。大昔、来日時に「ニュースステーション」に出演した彼に、キャスターの久米宏は、「意外と言っては失礼なのですが、とてもハンサムでいらして、びっくりした」と言っていました。私も画面に映る素の彼を観て、同じことを思っていました。カメレオンのように役になり切り、卓抜した演技力を見せていたため、美貌が霞んでしまっていたんでしょうね。う〜ん、すごい!
他にはレネ・ルッソ!このアラカン美女のエレガントで包容力たっぷりな事と言ったら、もぉ〜。憧れの年上女性がまた増えて、嬉しい限り。この二人の熟年のせいで、私的にはアンちゃんが霞んでしまいました(笑)。
女性がキャリアを築くことに対しての提言は、ほわんほわんとしたものでしたが、高齢者の姿勢としては、見習うべきものが満載の作品。これこそ老人力ですね。これから老人になっても、若い人に慕われ、世の中に貢献できる人でありたいと、切に思った作品です。人生って一生修業ですねぇ。
2015年10月24日(土) |
「マジック・マイク XXL」 |
淑女の皆様、観て参りました!前作では、ドラマ部分なんかすっ飛ばし、もっと舞台の場面をとの感想を記していたワタクシですが、今回その通りになっております(笑)。もう〜、超楽しい!楽し過ぎ!女性向けだけではなく、少年ジャンプ的な爽快感もあります。監督はグレゴリー・フェイコブス。
念願の家具屋になったものの、経営は厳しく恋人にもフラれて、行き詰っているマイク(チャニング・テイタム)。そんな時、昔のストリッパー仲間であるターザン(ケヴィン・ナッシュ)からの誘いがあり出向くと、元の仲間たちのケン(マット・ボマー)、リッチー(ジョー・マンガニエロ)、ティト(アダム・ロドリゲス)などが集まっています。ダラスと別れた彼らは、引退を決意。その前にもうひと花咲かせようと、遠く離れた東海岸で開かれる男性ストリップの大会に出るといいます。最初誘いを断ったマイクですが、ダンスへの情熱経ち難く、参加することに。しかし彼らには幾多の困難が待ち受けていて・・・。
なんですがぁ〜、要は彼らのキャラと踊りをメインに見せたいので、ストーリーはあってないようなもん。行き当たりばったりも程々にしろよですが、場面場面で面白いので、全然気になりません。この展開は望むところよ(笑)。
前作ではその他大勢扱いだったターザン、リッチー、ケン、ティト、みんなに均等に見せ場があるのが嬉しいです。全員がストリッパーは男として日陰の稼業だと認識しているけど、ダンサーとしてのプライドも持っている。踊りだけではない、その矜持や如何に?
それは「女性を喜ばすこと」。「100$紙幣にまみれたい」と彼らは言うけど、それって金額の大きさ=女性が喜んでくれた証しだから。自分たちのダンスで幸せになって欲しいのよね。どんなに女性と舞台で接近しても、ハグ以上はしないし、キスなし股間に触れるもなし。自分たちは脱いでも、女性の肌を見せる事もせず。陰でブスだデブだババァだとも言わない(笑)。もちろん枕営業一切なし(私生活では酒池肉林あり)。彼らのプロ根性は、女性への敬意に満ちていて、その気持ちに嘘がないと作ってあるので、観ていて清潔感があります。年取ってくると、人として尊重しては貰えますが、女性としての尊重は難しくなってくるので、余計身に沁みちゃうわ。
そんな、こちらの気分絶好調になっている時に、ドカン!ドカン!と、セクシーな狂乱の宴のストリップシーンが出てくるんですから、あなた。私も一緒に叫んでいる気分になっちゃって、心なしか実際に声が枯れてしまったわい(笑)。ほんとね、女性にはあのストリップ観て欲しいわぁ〜。日頃の憂さもストレスも吹き飛びますよ。私はホストクラブは行きたいと思った事ないけど、男性ストリップは行きたいわ。私のような貞淑な女性(オホホ)にそう思わせたら、この作品は成功のはず。
マイクも含み、夢はあるけど先行き不透明な彼ら。大会の成功目指して絆を深めていく様は、正に「友情・努力・勝利」。「俺たちはエンタティナーだ!」と円陣まで組む様子は、まるで体育会系男子です。と言うか、体育会系愛すべきバカです(笑)。この面子で私のタイプは、マット・ボマー一択だったんですが、このカラダ・ギリシャ彫刻のような顔なのに、イマイチ自分に自信のないリッチー役のジョー・マンガニエロが今回可愛くて、ちょっと萌えてしまいました。
大物オーナー役ジェイダ・ピンケット・スミス、地味なカメラマンの卵役アンバー・ハード、欲求不満のセレブ美熟女アンディ・マクダウェルなど、今回女優陣も豪華です。みんなみんな出色の存在感で、彼女たちが同性の共感を得ているのも、作品の好感度をアップしています。ジェイダは小柄な体に圧倒的な貫録とセクシーさで、とっても見直しちゃった。アンバーもジョニデの添え物の時のゴージャスさより、今回の素朴なファッションとメイクの方がお似合いでした。アンディは久しぶりに観たけど、相変わらず上品で美しいので、あからさまなはしたなさも、楽しく観られました。
今回は五人が主役のようなもん。女性の皆様、お気に入りの男性を見つけに、劇場までどうぞ。どうぞ日頃の憂さを晴らして下さい。
2015年10月22日(木) |
「さ行」 2016年4月〜 |
さ行 2016年4月〜
さざなみ ズートピア スポットライト 世紀のスクープ
もうサイコーに良かったです!全20巻のコミックが原作だそうですが、原作未読の私には違和感なく、テンポよく元気よく、青春の感傷も葛藤もたっぷり。そして何より面白い!最近では出色の青春映画です。監督は大根仁。
人気漫画家だった亡き叔父(宮藤官九郎)を持つ高校生の最高(佐藤健)。ひょんな事から、その高い画力を同級生の秋人(神木隆之介)が知る所となります。秋人は小さい時から漫画家志望なのですが、絶望的に絵が下手。しかしストーリーテリングの腕には自信があり、自分の夢を実現する相棒を探していました。最高が恋する同級生の亜豆(小松菜奈)が絡み、勢いでコンビを組むことを承諾した最高。夏休み、一心に描いた漫画を、少年ジャンプ編集部に持ち込んだ彼ら。編集者服部(山田孝之)は、二人の将来性を見抜き、手直しした物を持ってきてくれと告げます。
とにかく熱いです。躍動感が素晴らしい!クラブ活動もせず、さりとて勉強にも励まなかったと自嘲する二人の、それこそ青春を賭けて漫画を描く姿に、拳を握って声援を送りたくなります。寝食忘れてお風呂も入らず、あちこちインクだらけの二人。特に私が感じ入ったのは、秋人のスマホがインクまみれで汚れていた事。今どきの子は、スマホ命でトイレでもお風呂でも持って入るそうですが、この二人に取っては、ただの通信手段。逆説的に、友人との繋がりだけを必死で追い求め、人の評価をとにかく気にする今の子たちの心情も、お蔭でわかる気がしました。
実在の少年ジャンプの編集室が描かれ、どうやってデビューするのか、編集者と漫画家との間柄、非情なアンケート至上主義の現実など、どうやって少年誌NO・1のジャンプが出来上がるのか?を知る事が出来ます。漫画の描き方も丁寧に教えて貰い、私は面白く観ました。
時々息子ご推薦の漫画が廻って来ることがあるのですが、面白かったのに、どうしてみんな最後は天下一武道会になっちゃうの?と不思議でしたが、それは編集者の助言や「王道」の名の元、読者の人気を取るためと知ります。しかしその助言とて、当たるとは限らない。叔父の「漫画は読者に読まれてこそ漫画」、編集長(リリー・フランキー)の「しっかり作ってある。でも面白くないからダメ」の言葉は、そっくり映画にも当てはまり、ハッとしました。
「理解出来ないようなもんなら、同人誌にでも書け」の言葉もそう。映画なら自主制作ですね。人気至上主義の裏側には、読まれてなんぼと言う概念があるのですね。これだけ入魂の漫画バカっぷりを見せられては、きちんと読まなきゃと言う読み手の責任も考えました。(もちろん映画もね。考えているから、真剣に感想書いているんだが)
ジャンプのテーマは「友情・努力・勝利」である事は、よく知られた話。映画でも同じ事が描かれ、同期の新人漫画家たち(桐谷健太・新井浩文・皆川猿時)と切磋琢磨したり、協力する様子は、やはり私の心も熱くします。全編貫くこのクサいテーマを、爽やかに感じさせる語り口が抜群に上手い。
最高たちと同じ高校生の天才漫画家・新妻エイジ(染谷将太)とのランキング一位争いも、難攻不落の孤高の天才VS精鋭軍団の図式です。ここも最高たちに肩入れしたくなるよう作ってあり、始末の付け方も原作通りなのでしょうが、現実的で上手いです。ライバルとは、長いスパンで決着をつけるものです。火事場のバカ力的打ち上げ花火のような力も、私は本物だと思う。秋人が言った「俺たちすごいよ」を、そっくり二人にも同期たちにも、言いたくなります。
当初こそ、最高と秋人のキャストは反対じゃないのか?と感じましたが、相手を射るようなストイックな眼力を発する佐藤健、原作作りと言う重責を果たしながら、広報的な役割も如才なく果たす秋人を、神木隆之介が好演するのを観て、これで良かったんだなと納得。キャストはみんなそれぞれ上手かったのですが、最近の邦画は、主役・脇役入り乱れて、全部この人たちの使い回しの感があります。良かったですけど、主役二人くらいの新鮮さが欲しかったかな?これは贅沢な注文かもしれません。
この年代の子を描くのに、親が出てこないのは不思議なシーンがあります。出す余裕が時間的になかったのが実の所でしょうが、私は別の感慨に浸りました。この作品、最高と秋人の視線で描かれています。この年頃は、自分の夢があればそれに一生懸命で、親なんか目に入らないと思います。逆を言えば、常に親が気になるのは、親が子供に心配をかけているから。画面に親が出てこない事で、この子たちの親は、子供に心配かけない、子供を信じて見守れる親なのだと、思いたいです。全ての子供たちがそういう環境で、夢を追って貰いたいな。
原作もここで完結でしょうか?創作で良いので、是非二人のその後も観たい!漫画書いてなくていいし、芽が出なくてもいい。もちろん人気漫画になっていれば、尚嬉しい。だってあのラストは、希望と未来がいっぱいだったもの。
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