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2002年09月02日(月) スヴィリドフ「吹雪」。ヤグディン。

思えば短い8月だった。夏休みとはいえ、本当に頭の中まで休んでしまったのではないだろうか。時間だけが、ゆっくりと確実に過ぎていった1ヶ月。このペースだと、もう二度と日記を書かなくなる可能性もあるので、今日は9月に突入した(もう2日ほど過ぎたけど)記念に、というよりこの機会に中断していたものを復活させようと思う。学校も始まってないうえ、恐ろしく怠惰な生活をしていたため、あまり話題がないが。いや普段から話題らしいものはなかったか。

アマゾンでCDを買った。「グリンカ&スヴィリドフ名曲集」という。探し当てるまでにかなりの時間がかかってしまい、自分の求めている曲がそこに含まれているかさえも実際に聴くまでは定かではなかったが、ついに手に入れることができたのだ。もちろん、期待通りで、まさに私が探していたものだった。このCDを買ったのも、改めて観た長野五輪で、ヤグディン(この頃のヤグディンが私は好き)がスヴィリドフの「吹雪」を使っているのを聞いて気に入ったから。当時の解説では「プーシキンポエムズの曲」と紹介されたため、プーシキンから「吹雪」に結びつくまで少しばかり苦労した。プーシキンといえばオネーギン、と浮かんでしまうし、「プーシキンの詩によるロマンス」、というのも存在するようで、迷うことが多かったからだ。「吹雪」って言ってくれたらよかったんだけど。おそらく演技の最後の部分だけは「吹雪」以外の曲を使っているからだと思う。ヤグディンのプログラムのリストも「『吹雪』他」とか「トロイカ」とか表現がまちまちだったのも迷った原因だった。


「吹雪」を全曲聞いてみるが、かなり良い。1曲目「トロイカ」の冒頭の迫力に始まり、一転して静かな主旋律(オーボエのソロから始まる)がロシア独特ともいえる哀愁漂う雰囲気を醸し出し、さらに新しい感動を覚えるのは、そこに透明さと強さが重なっているからだといえよう。この部分が一番印象的だ。2曲目のワルツ。これはコンサートでアンコールとしても使われるほど名高い曲であるという。可憐でもあり、ひそかな熱情を思わせる印象深い曲である。私も気に入っている。そして「ロマンス」。ヴァイオリンのソロによる主題は、この上なく美しく、そして切ない。感傷的な魅力に富んだ素晴らしい曲である。「田園」は曲全体から広大さと雄大さが想像できる。きわめて緩やかで甘美に満ちた、美しいメロディである。終曲は「冬の路」。トロイカで印象的だった主旋律から始まる。最初はごく弱く、次第に近づいてくるというイメージ。吹雪の主題によっているが、「トロイカ」で冒頭だった旋律が終盤に用いられ、力強く終わる。

「吹雪」は同名の映画音楽より改編されたものである。全体としては叙事詩的と言え、またロシア民族音楽特有の憂いと哀愁の滲み出た、素晴らしい作品だと思う。

ヤグディンは98年五輪ではフリーで体調を崩し、悔しい思いをした。好調な状態での演技は、もっとスピード感に溢れたものだったと思う。同じ曲を使って優勝した同年の世界選手権の映像が見たい。「ロマンス」の間、彼は2度ジャンプに失敗してしまい、その姿があまりに曲に合いすぎていたのが、見ていてつらかった。選曲が悪かったんじゃないかって思った。そんなことはないとしても、おそらく彼ほどの選手でしか、この曲を表現することはできなかっただろう。


川村 |MAIL