2008年07月31日(木)
悪戯

導かれるようにして

僕らは出会ったのだと思う

そうでなければあの数分で

運命を感じることは

なかったのだから


と笑いあっていた

二人に神様は嫉妬した


なんて勝手に

運命と名づけたのだろうか

なんて勝手に

未来を信用したのだろうか


この足で歩ける

この手で掴める

途方もなくちっぽけな世界が

神様の小指で押しつぶされる

二人の空気が押しつぶされる


やがて未来も押しつぶされる


ただ いたずらに

ただ いたずらに





2008年07月30日(水)
ガソリンスタンド

本気出したらすごいんだぜって

口で言うのはカンタンで

そんなこと言ったら世の中の

ほとんどの人が本気じゃない

だけになる


人は

全力で人生を駆け抜ける

エネルギーを持って

生まれてはこない


だから

ガソリンスタンドみたいな

ドライブインみたいな

あなたがそばにいてくれたなら


頑張れるって思えるのです

あなたのための全力ならば

疲れを忘れられると思うのです


ただほんのすこしの

優しさを求めています

ただほんのすこしの

束縛を求めています





2008年07月29日(火)
真っ当

真っ当なことだけが

この世界のすべてではないと

教えてくれたのがあなたでした


真っ当なことなんて

感情論で論破されて

粉々に砕け散ってしまうのです


正論を吐いたあと

君の笑顔を傷つけた

正論は吐いたけど

君の涙で取り消した


真っ当すぎた僕は

どんどんどんどん

つまらなくなっています


つまらなくなるほどに

言い訳ばかりが

増えています





2008年07月28日(月)
泥臭く 馬鹿みたく

願わくば

毎日を追いかけながら

生きていたい

そう思う僕は

毎日に追われている


猛ダッシュの日々だ

駆け抜けた先に

望んだ未来がないとしても


泥臭く 馬鹿みたく

全力疾走で笑ってる


そんな生き方なら

なんとか今日も

乗り越えていける





2008年07月27日(日)
ヤモリ

深い深い海の底で

生まれた最初の命は

恋も愛もなく

ただ命をつないだ


そしてつながれた命が

また命をつないで

広がって交わって重なって

今が生まれた


恋を知り

愛を知り

命をつなぐ本能に

意味が生まれた


そんな高尚な歴史に

組み込まれた僕はひとり

窓を這うヤモリのような

小さな世界で満足しながら


やっぱり愛を求めている


それは

生を実感するためか

それは

死を準備するためか





2008年07月25日(金)
道路工事

胸を揺さぶるこの感情は

遠い昔に置いてきた

置いてきたはずのものだった


たしかに覚えている

痛みと喜びが混ざり合ったような


たしかに覚えている

淡い期待に埋め尽くされたような


こんにちは

で始まる関係


道路工事が始まりました





2008年07月24日(木)
笑顔のままで泣きながら

笑顔のままで泣きながら

最後の言葉を君は言う

泣かなかったらよかったのに

泣かなかったら諦めたのに


笑顔のままで泣きながら

二人の距離が遠くなる

突き放したらよかったのに

突き放したら諦めたのに


君の涙は僕の中

乾かないまま流れています

ぐるぐるぐるぐる流れたままで

僕は涙に縛られて


何かを期待しているのです

涙のわけを知るまでは

何かを期待してしまうのです





2008年07月23日(水)
在地希空

高いところから

コトリと落ちた

ガラスでできた感情が

もう元に戻ることはない


舞い上がっていたんだ

飛び続けられるって

信じていたんだ

君の気持ちも考えないで

無鉄砲さを武器にして


地を這いながら

愚かさに気付いたら

もう一度


拾い集めようと思う

元に戻らなくても

前とは違う別の二人が

空を舞う日を夢見ているから




2008年07月22日(火)
あなた色

あなた色に染め上げた

私の身体が自慢でした


あなた色に染め上げた

私の心が自慢でした


若かったあのころの

若すぎた衝動


あなた色は強いから

タトゥーみたいで

消えることなく


それは喜びでした

それは悦びでした


でも

私は大人になりました

あなた色は消えないままで


私は大人になりました

あなたは私を忘れたけれど






2008年07月21日(月)
デッドライン

つながりとは

いつ切れてもおかしくない

そんな覚悟を必要とする


いまひとつ

またひとつ

皮一枚でつながった

頼りないこのつながりを

きりたくないから僕はあがく


深夜3時のコンビニの

明滅を繰り返す蛍光灯の下

鳴らない電話を握り締め

ただ待つ最後の

希望の光





2008年07月20日(日)
旅に出よう

君のかけらを探しています

あの日の

あの笑顔を焼き付けた

この瞳で


君のかけらを探しています

笑いあって

転げあって

失ってしまった大切な


かけがえのないものほど

消えてゆく

それを現実と呼ぶのなら

待ち続けることはない

探し求めて

旅に出ようと思います



2008年07月19日(土)
飛翔

傷ついた小鳥は言った

理不尽であふれる

この世界を恨んでやると


長老鴉は笑い飛ばす

理不尽であふれる

この世界だから生きていると


子守唄は聞こえたかい

その先の想いが届いたかい

果てしなく大きな木々の

木漏れ日もない奥の奥


それが世界のすべてだと

飛べない羽は嘆く

光が見えない焦りか

希望が見えない憤りか


高く飛ぶ

ただそのときを待って





2008年07月18日(金)
決断

答えを出す

ということは

いつだってすこし

残酷だ


霧が晴れたよ

悲しみが笑顔で待っていたんだ


霧は晴れたよ

また次の霧が

西の空からやってきたけれど





2008年07月17日(木)
狭間

僕らは

常識と非常識のあいだで

悩み彷徨い

進むことも戻ることも

できないでいたのですね


つないだ手に

笑った口元に

抑え込んだ心に

鈍い痛みが残っている


すべてが終わってしまったのだ

と気付けない

気付かないふりをする

僕の弱さが心に沁みて


さよならの日

無理に笑った

あなたの涙が

僕をまた

あなたのもとへと

向かわせるのです





2008年07月16日(水)
心地よい痛み

君のその小さな手に

僕が残せるものがあるなら

すべてを投げ出してでも

手に入れたいと想っている


君のその小さな手に

僕が残したものがあるなら

何も望むことはない

ただそれを守り続てゆく


世界はこんなにも

美しいものだったのですね

はかなくて せつなくて


世界はこんなにも

壊れやすいものだったのですね

夕立に似た 突然の幕切れに


最後の刹那

消えゆこうとするこの感情を

心地よい痛み

と呼ぶことにします





2008年07月15日(火)
あなたが溢れて

胸の奥がチクリと痛む

憂いに満ちた君の笑顔に

追いかけて抱きしめる

その勇気が僕にはなかった


さぞかし悩んだことでしょう

さぞかし泣いたことでしょう


すべてわかったうえでなお

別れを受け入れられない僕の

カッコ悪さを許してください


それほどまでに

あなたが溢れてしまったのです





2008年07月14日(月)
さよなら以上のさよならを

さよなら以上のさよならを

多分僕らは探していた


好きだったということは

もうウソにはならないから

さよならと言う君の言葉に

酔いしれながら泣いた夜


さよなら以上のさよならを

多分僕らは探していた


美しく散りゆく花に

憧れていた

のかもしれません





2008年07月13日(日)
切なさに恋した

切なさに恋した僕は

報われないものほど

追いかけてしまう


たとえば君の

優しい言葉が

僕を傷つけて

いく瞬間とか





2008年07月10日(木)
絶対防壁

優しい言葉の裏側に

一枚の大きな壁を感じる

乗り越えることのできない

それは絶対防壁


矛盾してるってわかってる

その矛盾が解けないかぎり

鍵は開かないってわかってる


ただ一人

そびえる壁にもたれかかって

そのむこうのあなたに

届かない声で叫んでいます





2008年07月08日(火)
自己制御システム

自分が思うほど

自分の心は抑えられない


膨らみはじめた感情は

あと一歩のところで

自己制御システムを

飛び越えようとしています




2008年07月06日(日)
楽になった

これは恋だ

そう思ったら楽になった


恋なんてもう

遠い昔の思い出話だって

決めつけていた自分に


恋なんてもう

遥か彼方の御伽噺だって

決めつけていた自分に


決別のときが来たね


これは恋だ

そう思ったら楽になった




2008年07月02日(水)
理由

進んでは立ち止まり

振り返っては我に返る

行ったり来たりの二人は

今日も自問自答する


未来なんてわからない

ただそれだけが

僕らが手をつなぐ

たったひとつの理由

理由と言う名の言い訳




2008年07月01日(火)
綺麗な記憶

ときどき

ぶり返す痛みは

思い出という棘のせいだ


一歩ずつ近づいて

あっという間に離れていった

記憶がどんどん綺麗になって


記憶が僕を動けなくする




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