部屋にあった二枚の版画(シリアルナンバーは一桁?)。 煙草の銘柄。 冬のジャケットのファー(取り外し出来るって言ってたよね)。 滅多に外さない眼鏡。 一本だけ伸ばしてる小指の爪。 本棚に並ぶ本(けっこう鋭い趣味だと思った。あと、とても計画的だとも。)。 潔癖なまでに清潔なバスルーム(アクタスの吸盤付きホルダーが可愛かった)。
あと、話す時、貴方は相手の眼を凝視しない。
もしかしたら、大切に思う人には違うのかも知れないけれど、 私が知る人と話す時はいつもそんな感じ。どうして、眼をいつもそらして 核心に触れられないようにしているんだろう?って、よく思ったわ。
今は、全部どうだっていいことに感じる。
私の中の「私」が、貴方の中の「貴方」に、何も出来なかったなら。 何の意味もないから。ただのゲームじゃない。
賭けをするなら、レートを上げた方が刺激的。しかも、のめり込むうちに 加速度的に上げて行くのが。一緒に倒錯し合えれば幸せだったのかな。
誰かに、影響される事。誰かに、心を操作される事。誰かに、動かされる事。
貴方が、「消えたい」と、私の眼を見ずに言ったこの一言は、多分本心でしょう。 他の言葉は「様式」だと。…もし同じ言葉を、私の眼を見て言ってくれたら いつか必ず私が消し去ってあげたのに。真っ白に。…思い出せることの全ても、 何もなくなってしまえるように。
きっと貴方は人を捨てられない。どんなに消去を願っても、人を信用しなくても、 他人に「接触」せずにいられない、でしょう。
私の角度から見えた。これだけ。それが私の持つ想像の全て。 今は、貴方の顔も思い出せない。…貴方の顔を、思い出さない。 生きていても。死んでいても。思い出さない。思い出さない。…生きて、いても。
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