今まで、ただ存在するだけでここまで私を壊滅的に壊してくれたのは、 貴方が初めてでした。そして、理由も解らずに好きになって、 こんなに我慢をしていたのも貴方が初めてでした。
いつの間にか、胸の寂しさからくる諦めと惰性に捕まっていた私を 壊してくれてありがとう。相手にしてくれてありがとう。
その惰性を「それが幸せでもある」と言う貴方のやさしさと、 きっと自分の事なら絶対にそんな状況で納得できる筈も無い貴方の本心の 冷たさも、目の鋭さや指の温かさや、汗と香水の混じった匂いも、 私の思い出せる全ての範囲で、貴方がとても好きでした。
きっと、あの日の数時間さえなければ、こんな思いを知る事もなかったので しょうけれども、知らずに過ごすはずだった先の未来よりも、私はどれだけ 迷惑だろうが、傷つこうが、人を不幸にするとしても、この苦しさの方を 取った事を後悔しないと思います。
もう二度と会えなかったら、死んだ人と同じですね。
私は、死んだ人を想うことだけは得意です。だからきっと、私が 貴方を忘れる事はないでしょう。いつか私が誰かと惰性の末に安らぎを 求めてしまっても、きっと。
絶対に核心に触れられない貴方がとても好きです。捕まえられない自由さが 好きです。そんなあなたに、ほんの少しでも、相手にされてとても 本当に嬉しかったのです。この、救われない道を、ありがとう。本当に。
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