あの人と、二度目のキスをした時、苦い煙草の味がした。
それだけしかしなかった。甘いものは何も、吐息も、何も。 あの人の、細い舌の感触を、私は忘れるのかしら?
意味も無く抱きしめてくれた事も。三度だけ、腕に力を入れてくれた事も。 言えばなんでもしてくれるけれど、あの人が自発的にしてくれることは 何ひとつ無い。あの人の乾いたキスを、私は忘れるのかしら?
私を醒ますために言う冷たい言葉。まるで執着のない、無責任な言葉。 未だに私の心を抉る、鈍い刃物のような言葉も。
きっとあの人は、覚えても居ないのでしょう。
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