たった一枚、この夏に恋人と撮った写真があって、それを友人に 焼き増しして送ってもらった。10月から3ヶ月ほどイギリスに留学する 都合もあって、恋人の部屋に飾ってもらおうと思ったのでした。
…普段まったくそういう目に見える形で「好き」という気持ちを確認しない 性格の二人だから、写真など大事にした試しがない。
彼の部屋でひとり留守番をしていたとき、初めて、その写真を 飾ってみたけれど、なんだか恥ずかしくて、直ぐに引き出しに仕舞った。 まだ本物の私がいるのに飾ってしまうなんて、消えたいくらい恥ずかしい。
でもそれ以上に、目に見える形で自分の存在を残して置いておくことが、 怖くて怖くて、仕方が無かった。
もし私が居なくなって、後で彼が残った写真だけ見るとしたら、どれだけ悲しくて 淋しいか知れない。写真も、本体の私が消えたら消えてしまえば良いのに。 そう思った。私は飛行機に乗るのが、とても怖い。死ぬのも怖い。けれど、 目に見えない物の代替品である、目に見える「証」が、ただの紙に変わる瞬間が 私には一番怖い。そしてその次に、彼が淋しくなかったら良いなと思う。
写真は怖いから、引出しに仕舞ったまま。臆病者は、私。
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