月が、空に滲む瞬間が好き。
ほんのり青白い、蒼黒い、二つの色が、雲を虹色に滲ませるのが。
なんだって、こんなに空は澄んでるんだろう。
そう思い出すと止まらなくて、何もかもが冷たい空気に溶け出して
しまいそうだ。
昔、高校から帰る道の途中で、坂を下った所に自分の家の屋根が見えて、
そのままトンと脚先を蹴ったら、空気中を跳んで家にすぐにでも
着けるんじゃないかと思った事がある。あの時と同じように、自分の個体が
全てに消え入りそうな、あの瞬間だ。
そんな時は、自分が此処にいても、いなくても、どちらでもいいと、思う。
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