JERRY BEANS!!

2001年11月27日(火) 言葉の威力

人の心を最も傷つけるのは、言葉だと思う。

人の心を一番動かす事のできる物。


彼の言葉は、私の精神的に敏感な部分をざらざらした舌のように逆なでする。

同じように、私の言葉も、彼の心を細く、それでいて重厚に締め上げるのだ。

それは、一番エロティックで残酷な仕打ちだと思う。


幸いなのか不幸なのか、私と彼は、あんまり言葉を掛け合わない。

お酒を飲んで酔った時に、お互いの友人や知り合いを間に置きながら

少しの会話をするくらいで。…だから、電話をしてもあんまり話すこともない。


普段は一緒にいても、必要事項を話したりするだけで、大事な事なんか

何も言わない。私と彼の間にある、大事なものと言うのは、言葉の

キャッチボールや、意味のある会話ではなくて、それによる心の動かし合い

なんかでも無くて、何も言わないでお互いの身体に触れることだ。

あとは、少量の意味の無いギャグの行き来や、くだらないテレビゲームの

進み具合を話すくらいで。


それだけで、充分だ。だって、他に欲しい物なんてないんだもの。

言葉の威力をかりて、心を動かさなきゃいけないふたりなんて、

なんだか悲しいようにも思えてくる。



私は、クマのプーさんの一番最後の章で、クリストファー・ロビンが

プーに話す内容が、とても印象的で、好き。


「あのね、プー。これから僕がここに来なくなっても、君は“何もしない”

ってことをしていてくれる?」

「一番好きなのはね、誰か大人に、今日は何をするの?って聞かれて、

“何にも”って答えて外に出ることなんだ」


確かそんな事を言っていた。小学校にあがったら、“何もしない”でなんて

居られないからなんだよね。それは、大人になることでもあるし、

子供でなくなっちゃう、子供の自由さから離れて暮らすことでもある。


よく、子供の心を失わない人が好き、なんて言う人が居るけど、ずっと

子供でいられる人なんて、普通居ない。だれでも、いつかは大人に成るし、

大人になったら、色々な事に制約されて生きて行かなくちゃならない。



人はそのうち、感動したり、心動かすものですら、自分で作為的にこなさなきゃ、

涙もでないし、感動もしないようになって行っちゃうんだ。


それが嫌だから、せめて、言葉の威力をもってして、心を作為的に動かす

事はしないで置こうと思う。


とりわけ、一番側に居て欲しい、愛する人には。


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nana [HOMEPAGE]

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