…人生は暗闇だ。まるで雑踏の中の小さな溜息のような人生だ。それは、小さくか細い声で鳴く、雨に濡れた小鳥のように、私は闇夜を歩いている。…振り返れば、ふと、自分の歩いた道すじに、ぼんやりと心もとない薄明かりが燈っているのに気が付く。人生は闇。行く先も常に闇で、先を照らす光もない。ただとぼとぼと、歩いている。…だから、闇に向かって走る。薄白く光る粉を撒き散らして先へ進む。ただ、それだけのために。