1990年09月23日(日) |
棚卸 −精神科入院− |
約1ヶ月の入院。 たまに当時付き合っていた彼が面会に来てくれた。 私が眠っているので、起さずに暫く居て帰ってしまったこともあった。 そんな日は泣きながら彼に電話していた。
入院の事は、兄にだけ話した。 祖母には絶対に言わないで欲しいと言うと、兄も十分分かってくれていて、祖母には黙ってくれていた。
医師は、「おばあさんに言わないと治らないよ。」と言う。 結局の所、祖母の期待に応えようとして頑張って頑張って自分を追い詰めて壊れてしまったからだ。 看護学校での出来事は、きっかけに過ぎなかったのだ。
私は、それだけはどうしても拒んだ。 祖母には絶対に言えない。 成績優秀で良い子な私に失望してしまう。 私が失望されるのが怖かった訳ではない。 失望してしまった祖母はどうなってしまうだろう?という不安だった。
私は、声にして思いを伝える事が出来なかった。 私は外出自由だったので、落書き帳を買って来て、とにかく心の叫びを書きなぐった。
さみしい さみしいの 私、いい子なんかじゃない 消えたい 消えたい じいちゃんの夢も叶えてあげたい けれど、私にはもうムリ 消えたい 消えたい 私だって、正看取りたい 国家試験に受かるだけの学力は十分ある でもムリなんだ 消えたい 消えたい さみしい さみしい いい大人がこんな事、甘えてるって分かってる でもさみしい こわい 消えたい 私の存在を消して
そんな事を毎日の様に書きなぐりながら、ついに看護婦さんにそれを見せた。 医師は、「やっぱりおばあさんに話さないといけないよ。」と言ってきた。
嫌がる私を余所目に、医師は祖母に連絡し、祖母に話をした。 「お前だけは真面目にやってくれてると思ったのに。」 やはり、祖母の口からはそんな言葉が出てきた。
入院生活、やはり不安で堪らなかった私は、空いているカウンセリングルームを借りて、特別に消灯時間が過ぎてもそこで勉強させてもらった。 まだ、実習に復帰するつもりでいた。 なんとか正看だけはとりたい。そう思って。
偶然にも、そこの病院に准看の学校時代の同級生の男の子が夜勤のバイトをしていた。 働きながらでなくていい昼間の正看の学校に通っていたのだ。 ほとんど話した事もなかった子だったけれど、彼には本当に救われた。
私がカウンセリングルームで勉強している時、トイレに行っている隙に、マグカップにアイスコーヒーを入れたりしてくれていた。 眠れなくて、ナースステーションのすぐ前にある喫煙所で煙草を吸っていると、ポテトチップスの袋を持っておいでおいでをする。 私は、ナースステーションに入れてもらって、「どうせ暇だから」という彼と他愛も無い話をしたりした。 全く食欲も無く、食事もほとんど食べていなかった私だったけれど、「たこやき食うか?」と彼がデリバリーしてくれたたこやきはぺロリとたいらげた。 「お前の病気は遊んだら治るって。」と、遊びに誘われた。 「俺の車は危険日と生理の日は鍵が開かないようになっているからな。」 と・・・ 私は、お言葉に甘えて、彼にドライブに連れて行ってもらった。 勿論、生理の日に・・・ 色々と女遊びが激しい子だったので、あまり良い評判は無かったけれど、彼には本当に救われた。
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