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me note diary

2006年11月03日(金) 電波耳

 電波耳(ラヂヲイヤー)というのをご存知ですか?


――Radio ear?ハテ、何処かで聞いたような?


 貴殿には確か、電波眼(テレビアイ)のお知り合いがいらしたかと。


――TV eye・・・・・・それは・・・・・・エェ確かに古い友人がそのようなことを言っていたような。


 アレはアレで五月蝿いものなんですな。ご存知でしょう。毎日テレビを見ているうちに、彼の片目はテレビ電波を受信するようになって仕舞った。マァ彼のように、眼帯で蓋をすればいい訳ですがな。


――一寸待ってください。


 はい?


――じゃあ、アレは本当だったんですか?彼が電波を・・・・・・彼のテレビアイというのは?


 無論そうですとも。彼のフザケタ作り話だとでも?いいですか、電波眼は実在する病気です。電波耳と同様。否、ある意味特殊体質と言ってもいいでしょう。
 話を戻しましょうか。電波眼は眼帯で、そう彼のように、カッコよく蓋をすることが出来るのです。ただ、電波耳はまた違う。耳栓なんかカッコ悪いし、ヘッドフォンなんてのも両耳用しか出回っていませんですからね。


――あのう?


 はい。質問ですか?なんですか?


――そもそも、ラジオイヤーというのはなんなんですか?


 アァ、済みません。説明を忘れていましたね。いやいや、あなたが電波眼をご存知だとばかり思っていましたし、いやいや、わたしも歳ですかな。ハハハ。
 では、説明を。
 つまり、電波眼と同様です。毎日ラジオを聴いているうちに、片耳――わたしの場合はこっちですが――がラジオの電波を受信するようになって仕舞うというわけなんです。コレが耳鳴りなんかと違うのは、絶えず色々な音が片耳にだけ流れ込んでくるということです。個人差もあるでしょうがね。たとえば通気口を辿って、遠くの音楽や喋り声が遠く低く流れてくるような、そんな感じでしょうか。そうそう、ある人は愚痴を漏らしていましたっけな。
「如何してチャンネルを切り替えることは出来るのに、ヴォリュウムのコントロールやスイッチのオンオフが出来ないのか」
とね。ハハハ。なかなか面白いでしょう?


――チ、チャンネルの切り替えまで出来るんですか?!


 おやおや。もちろん個人差はありますよ。ハハ、先刻からこればっかりですな、ハハハ。まぁ仕方ない。わたしには出来ませんしね。ただ、どうやらその切り替えというのも、どのチャンネルに、という自分の意思は余り受け付けてはくれないらしいですからね。音楽が会話に、会話がコマーシャルに、といった風に流れていくということですよ。
 さぁさぁ、話が長くなってしまいましたな。詰まりですよ。貴殿にお願いしたいことがあるのです。先刻も一寸漏らしましたが、電波耳はどうにも対処法が面倒でしてな。彼の電波眼対処法のように格好良く――ハハハ、わたしが言うとどうも格好悪いですがね――したいわけです。そこで技術者の貴殿をお尋ねしたというわけです。貴殿の技術で全世界数万人の電波耳患者が大手を振って闊歩できるというわけですよ。もちろん開発費その他は全額出させていただきますし、お礼も充分に。


――しかし・・・・・・。


 戸惑いをお感じになるお気持ちはわかります。わかりました。しばらくお待ちしましょう。また後日、改めてお伺いいたします。とりあえず、お話を聞いていただいたお礼は今日中に、口座の方へ。では。


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 ――このワケのわからない電話をもらった翌日、銀行に記帳に行ったところ、ものすごい額の金額が、前日付けで振り込まれていた。
 一体何なんだ?
 正直なところ、ぼくはこの話を今、警察にするかどうか迷っている。大金は一向に出所がわからないし、電波耳なんてのもわけがわからない。わかっているのは、ぼくがどうにも混乱しているということだ。
 だからぼくは思いついた。
 ねぇ、これをお読みになった、電波耳を所有する皆々様。どうか、その本当のところを、ぼくに教えてはいただけまいか。ぼくが作らされようとしている、片耳用のヘッドフォン。それは本当にあなたを救うのか?


 ――電話はもうかかってはこないし、誰の訪問もない。からかわれた。そう思うにしても、振り込まれた金額はすべて引き出してしまったし、あれきりあの口座は取引停止にしてしまった。
 さぁて、これは一体、何のお話?


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管理人:サキ
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