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diary
2004年01月13日(火) あめふらし
「雨が降るな」
晴れ渡った空の下を歩きながら、ふと、彼が呟いた。
ぼくは足を止める。
「今日は傘なんて持ってないよ」
大丈夫だと彼が言う。
「ぼくらがあそこのディスカウントストアで買い物してるうちにあがるから」
果たして、数十メートル進んだ辺りで、空が暗くなってきた。
「ほら、雨の匂い」
ぼくにはまだわからないその匂いを、彼はすでに感じ取っていた。
ディスカウントストアで小一時間ほど買い物をして外に出ると、アスファルトは濡れて黒光りしていて、所々、水溜まりが出来ていた。
「あ、雨上がりの匂いがする」
ぼくがやっと気づいて口にすると、彼は微笑んでぼくを見てくれた。
彼が雨に気付くのが、こう、人より抜きんでているのはなぜだろう。
いや、そんなのはどうでもいい。
彼は何かに、とても敏感なんだ。
匂いだろうか。
空の色だろうか。
それとももっと、ぼくが感じることもできない何かなのだろうか。
わからない。
わかるのはただ、ぼくが彼のそんな能力を、とても尊敬しているということだ。
そしてぼくが彼を、愛しているということだ。
「雨上がりは、気持ちいいね」
彼はご機嫌だ。
「雨上がりは、気持ちいいね」
同じ言葉を、ぼくも返す。
「今日は、もしかしたら、虹が見えるかもしれない」
思い付きで言ったぼくを少し意外そうな目で見下ろして、彼はそれからにやりと笑った。
「正解だよ」
いつかかかる虹を、ぼくらは空を見上げて、待っていた。
手を繋いで、ふたりで。
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