鍋をたたく...鍋男

 

 

FAQ パンの種類2 - 2002年09月03日(火)

前回の続きから。

スティールパンの種類の話をするのには、まずパンの「何」を基準に分類するのかを考えてみる必要があります。
1. 音程を基準に考える
2. 音の配置を基準にする
3. 楽器の作りを基準にする

1番の「音程を基準にする」、いわゆるパートわけについては、前回書きました。
2番、3番のパンに関しては、明日書きましょうと書いたまま、一週間も経ってしまいました。ごめんなさい。

今日は、2番、音の配置について考えてみます。
主にシングルテナーパンの話になります。

シングルテナーパンの一番大きな特徴であり、また、音の配置デザインを考える上で、頭を悩ます種になるのが、「一つのパンの中に、全ての音--白鍵、黒鍵合わせて12音--がある」という事です。
一枚板をたたき出して、異なる音程を作っている「パン」という楽器は、共鳴する音をできるだけ隣に配置したい。その中で2つ、3つと、パンを分けている方が、デザインは整理できます。

日本で主に出回っているシングルテナーパンは、「4th & 5th style」と呼ばれるものです。
「どこか任意の音を選んだ場合、隣に4thの音が、反対側の隣に5thの音が配置されている」という事から、4th、5thスタイルと呼ばれています。
4thと5thというのは、平たく言うと、「ファ」の音と「ソ」の音です。
つまり、「ド」の音が、「ファ」と「ソ」で挟まれるように配置されているという事です。
この配置のおもしろいところは、5度転調した場合、つまりさっきの「ソ」をキー音と考えた場合、さっきまでの「ド」が「ファ」になるという事。
5度転調の場合だけでなくて、どこの音をキー音にとっても、かならず「4度」と「5度」で挟まれてしまいます。

図で説明すると簡単なんですが、文章で書くと非常にわかりづらいですね。
わかんない人は流して読んで下さい。
つまりは、関係性が、連続しているという事なのですが、、。
これで演奏すると和音も進行も転調もすこぶる理解が楽です。

で、この配置はすごいなぁと思っていたら、音楽理論の本で「5度圏/fifth circle」があるって話で。この5度圏とまったく同じ配置なんですよね。これを知ったのはホンの5,6年前です。5度圏っていうのは、転調とか和音とかの関係を理解するための早見表みたいなもので。早見表で演奏してるなら、和音やら転調やら、簡単に見えて当然です。

冒頭に書いたできるだけ、共鳴のいい音を隣に配置する、というのにとても適した配置なわけです。
ただ、だからといっていい楽器になるというわけではありません。
この4th5thがでてくる前にもちろん、非常にたくさんのスタイルがあり、今でもたくさん使われています。

古くからあるバンドについては、創設時の専属チューナー(メーカー)がほとんどそれぞれに自分のスタイルを持っていて、各バンドによってテナーが違う、という事になっています。調律時の音の善し悪しにプラスして、スタイルの違うテナーだと、かなり音質もかわってきますので、バンドのサウンドを決定するのに大きなポイントになるわけです。
音の配置の種類に、レネゲイツスタイル、スターリフスタイル等、バンドの名前が付いたものがあるのはこのためです。

他にエリーマネットスタイルのように、配置のデザインをしたチューナーの名前がついてるものもあります。

アコースティック楽器の作り手にとって、いい音、大きい音を出すという事は一つの目標です。
そのためにより共鳴するように、きれいなハーモニクスがでるようにいろんな工夫をします。その点では4th5thは非常に合理的に見えます。
反面、「鳴ってしまう」パンをたくさん見受けられるのもこのスタイルのパンです。

Dの音を叩いているのに、AやF#や、下手をするとEやC#なんかの倍音が鳴ってしまう。もちろん、人の耳に聞こえてくるのは、Dの音なのですが、なんとなく「わぉーん」と鳴る。楽器として洗練していく段階で、こういう不協和音は、いらない音、とされます。いらない「鳴り」は消してしまう、「音を殺す」事ができていないパンはこういう音になります。

トリニダードの師匠と話をしていたときに、他のバンドのとあるチューナーについてこんな話を聞きました。
「今年の彼のチューニングはいいよ。彼のスタイルは3rdスタイルの一種なんだけど、一つ一つの音がすごくきれいになっている。だから、いらない倍音がなくて、すごくストレートに音程がでてる。力強い音になってるよ」
4th5thのように互いに共鳴し合うのではなく、一つ一つの音が、完璧にチューニングされ、贅肉をそぎ落とされて、しっかりと鳴る。音量は多少落ちるかも知れないが、楽器としては理想かも知れません。

ただ、この考え方はトリニダードのスティールオーケストラにおいての話で、
非常に考え方の難しい所なのですが、、。
例えば、ソロのプレイヤーが、「わんわん鳴ってる感じこそ、スティールパンの音だ」というイメージを持ってはるなら、いろんな倍音がでてる方が、ファンタスティックな音が出ていいのだろうと考える訳です。私自身もそういうスティールパンの音が欲しいこともありますし。むつかしいところです。





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