パンの気持ち - 2002年05月09日(木) 今まで、いくつものPanをチューニングしてきました。全部自分の娘のように、かわいがって思いやって。「チューニングって子育てみたい」と思います。(子供いないけど) むちでしばいて、言うことを聞かすようなチューニングをしても、スティールパンはすぐそっぽを向きます。自分の思う方向になんて行ってくれない。 言うことを聞かない子を、だましだまし誘導してやる。彼等の欲しがってるツボをくっと押してやる。いろんな事して、ごきげんを伺う。彼等の一番力の出る状態に置いてやる。 そうするといい音が出るのよね。 ハンマーで叩いていると、彼等はいろんな事を言います。きれいな音をするツボは、そこじゃないよ、こっちだよ、ってなぐあいに。(ほんとに声が聞こえてたら、ちょっと病気だけどね) パンはひとつひとつツボが違います。だからその声を聞けないとチューニングがものすごく手間取ります。4時間で終わる物が、8時間、12時間とかかります。彼等の声を聞くために一番大事なのは、自分の気持ちをニュートラルに置くこと。これはたくさんのトリニダード人チューナーの先輩達とお話ししてきた中で、教わったことでもあります。それって、人と会うときでも同じですよね。うーん、人生だ。 嘘いつわりなく、私は今までチューニングしてきた全てのパンを愛してました。私の場合、そうでないとチューニングできないみたい。だから、ほんとにパンを売りたくないのよ。わが子を嫁に出す時みたいに。 逆にどんどん叩いてもらって、活躍してもらいたいとも思う。 いいパンは、ちょっと背筋を伸ばしてあげただけで、いい音になります。 作りの悪いパンは、できるだけ素直に鳴るように、後押ししていきます。 優等生も劣等生も自分が手がけた物は、自分のもとを離れるとなると、みんなかわいいもんです。 いま手元にあるのは、チューニングの仕上がっていないパンが一台だけ。欲しいという人がいたので、長いこと面倒を見てきたパンも、すべてお客さんの手に渡りました。在庫が減った分、ラボは広々としていますが、少し寂しくもあります。 「狂ったし、チューニングしてー」と彼等の帰ってくるのが楽しみな....... .......田舎のおばあちゃんみたいな心境です。 -
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