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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2012年09月30日(日) 規則 vs. 原理 実家が農家なので、一日脱穀に行っていました。
さて、緑本のp.169にある話と同じなので、そちらを読んで頂いた方が良いかも知れません。12のステップに馴染みのない人にとっては少々奇異な印象を与えるかも知れませんが、ステップに取り組んでいる人には共感を呼びうる話だと思います。
12のステップは生き方の原理なのだそうです。
誤解を避けるために付け加えると、もちろん12のステップだけが生き方の原理なのではありません。生き方の原理とされるものは他にもあります。それぞれの原理には共通する部分が多い。だからこその原理と言えます。
しかし、原理を伝えるには手間がかかります。12のステップをスポンシーに伝えるのも(何年もかからなくても)少なくとも合計数十時間はかかるでしょう。しかも、それ以前にステップをやる気になってもらうまでにも、時間がかかります。ぶっちゃけ伝える方も、受け取る方も面倒であり、もっと簡単な方法があったらそれに越したことはありません。
だから、「もっとやさしい楽なやり方が見つかるかもしれないと考え」るのは自然なことです。しかし、この第5章の文章の続きは「だが見つからなかった」であり、それこそが私たちの経験です。
原理を伝える手間を惜しみ、規則を与えることで解決しようとする人もいます。スポンシーに規則を与え、その規則を守るように伝えても、なかなかうまくいかないものです。それはアルコホーリックは、規則は破るためにあると考えるものだからです。なんとか規則を避けたり、例外を見つけたりしようとします。
『AAの伝統が生まれるまで』という冊子によれば、AAが始まったばかりの頃、多くのグループが規則作りに熱心になったそうです。ルールを定め、ルールを破った人に対する罰則を定めました。その仕組みがうまくいっていたら、現在のAAには多くのルールが残されていたでしょう。もちろん、それがうまくいくはずはありませんでした。相手はアルコホーリックなんですからね。
だから、AAはルールを廃し、12の伝統といくつかのガイドラインを残すだけになりました。これらは規則ではなく、グループやメンバーがそれぞれに判断するための材料にすぎません。規則ではなく、面倒に思えても原理(12のステップ)を伝えていくことが最も早道であることが分かったからです。
規則を与えることで解決しようとするのはAAに限りません。覚醒剤を法律で禁止して、破った人間を刑務所に入れる。しかし刑務所で生き方の原理を教えてくれるわけではないから、その人の頭の中身は変わらず、出所後も生き方は変わらずに同じことを繰り返し、ふたたび刑務所に戻る。沢山の税金が使われているのに、問題は解決するきざしがありません。飲酒運転の厳罰化も同じ悪循環を産むことでしょう。
規則を定める人は「これこれをしてはならない」と言います。しかし、どうやったらそれをせずに済むかは教えません。それができて当たり前だとしか思っていません。アルコホーリックは酒を飲んではならないと言われたことがあるはずです。どうやったら飲まないでいられるかを過去に教えてくれる人がいたら、今ごろあなたはこの文章など読んでいないはずです。
一般に、人は原理を理解できなければ規則を破るものです。だからAAは原理を教えます。原理が理解できれば、規則は要らなくなります。まあ、規則をゼロにはできないのが現実ですが、必要最低限で済むようになります。
だからAAにおいて規則作りに励む人は、AAのことを「分かっちゃいない」んです。ソブラエティが長かったり、AAのサービス活動に熱心な人の中にも、ルール作りに励む人がいますが、これも同様です。ルールを作って人に守らせることに熱心なAAメンバーもいますが、そういう人はルールを破る人に対して腹を立てずにはいられません。細かな規則の議論をして時間を費やしたりします。
ルールと呼ぼうが、規則と呼ぼうが、提案と呼ぼうがなんでも構いませんが、それを守ってくれない相手に対して腹を立てているヒマがあったら、原理を伝える方に手間を割くべきです。
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