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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2011年05月03日(火) ホームレスと12ステップ ジョー・マキューの作った施設向け12ステッププログラムである「リカバリー・ダイナミクス(RD)」は、様々な国の300以上の施設で使われているそうです。その中には、依存症とはあまり関係なさそうなホームレスの支援施設(シェルター)も含まれています。
アメリカのホームレスにはアルコールや薬物の問題を抱えた人が70〜80%も存在するのだそうです(日本では20〜30%ぐらいだろうと言われています)。このため、ホームレスの人の自立を促すためには、アルコール薬物問題の解決が欠かせないというのです。
こうした施設では、アルコールや薬物の問題を抱える入所者全員に、RDによるステップ1とステップ2のクラスを提供しています。解説を加えておくと、ステップ1とは「問題」を把握するステップであり、ステップ2はその問題に「解決」があることを知るステップです。この二つのステップを経ることにより、ステップ3から先の「行動」へ進む意欲が生まれます。
クラスが終わった後、さらにステップ3以降に進みたい入所者には、個室が与えられます(個室というよりベッドと荷物置き場)。シェルターなので長期滞在はできないのですが、この場合は例外扱いしてもらえるというわけでしょうか。そこに滞在しながら地域のAAミーティングに通ってスポンサーを得たり、さらに先のクラスを続けることができるようになっています。そうして回復後に社会復帰していきます。
このようにして、せっかく社会復帰した人が再飲酒・再使用してホームレスに戻ることを防ぐ仕組みが出来上がっているのだそうです。
しかし、日本と違ってアメリカのホームレスには基本的なリテラシー(文字を読み書きする能力)を持たない人も多いのではないか? そういう人たちは12ステップができるのか? という疑問が生じてきます。
リテラシーを持たない人のためには、ビッグブックのCDやビデオ教材が用意されており、またステップ4の棚卸しも、本人の話を聞いて他の人が代筆してあげることで解決しているそうです。(棚卸しの代筆はドクター・ボブも行っていた記録があります)。
こうして回復した人の後には、自立後にリテラシーを身につけ、カウンセラーとしての勉強をして、こうした施設に戻り、過去の自分と同じホームレスの人の相手をしている人も少なくないそうです。その姿は新しく来た人にとって希望の姿となっています。
ホームレスの社会復帰の道具として12ステップが使われているところが興味深いです。きちんと12ステップを行うことが社会での自立につながっていくことは想像に難くありません。僕は最近常々思うのですが、12ステップの提供する霊的な解決とは、すなわち極めて現実的な解決なのだということです。(つまり現世利益)。
上に書いたように、アメリカほどではないものの、日本のホームレスにもアルコール・薬物の問題を抱えた人は少なくありません。日本のホームレス支援団体の中には、自分たちの運営する施設で12ステップを提供することを考えているところも出てきていると聞いています。ぜひそういう動きを歓迎したいものです。
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